ウマシィはウマ娘専門の結婚情報誌である。毎年、その年を代表するウマ娘がブライダルモデルを務めることで有名で、特にティアラ路線で優秀な成績を残した者が表紙を飾ることでよく知られている。過去にはエアグルーヴ先輩が表紙になったことが記憶に新しい。
「スカーレットは今年のティアラ路線で大活躍したから。で、どうする？」
「受けるに決まってるじゃない！　それで、いつ撮るの？」
アタシはもちろん了承する。当然だ。だってウマシィの表紙になれるってことはつまり、1番ってことだから。それに、ウェディングドレスを着てみたいという願望は、女の子なら誰でも持っているはずだ。
「来週末だよ。急な予定で申し訳ないけど、先方にはこっちから連絡しておくから」

アタシのあまりの喜びようにトレーナーは笑みをこぼすと、仕事に戻った。
窓を見ると外は暗くなっていた。そろそろ門限だからもう帰らないと。
トレーナー室のドアノブに手を掛けたとき、振り返って彼のほうを見る。
「トレーナー、アタシの花嫁衣装楽しみにしてなさい！」
「ああ、楽しみにしてるよ」
こっちを見もせずPCの画面と睨めっこしたままの返事に、少しむっとしたけど、今はその返事が返ってきただけ良しとしよう。
アタシは上機嫌でトレーナー室を後にした。

そして迎えた撮影日当日。出版社が指定した撮影スタジオに行くと、撮影スタッフらしき人と話していたグレーのスーツを着た女が、こっちに気づくと目を輝かせてのしのしと近づいてきた。
「ようこそお越しくださいました！　あなたが、ダイワスカーレットさんですね！　先日のレース拝見しました！　いやー凄いレースでしたね！　最初から最後まで逃げ切って1着だなんて。あっそれに、勝負服もとってもお似合いで＿＿」
「あ、ありがとうございます…」
開幕から怒涛のマシンガントークに怯みながらも、何とか返事する。
「そしてその横にいるあなたは、ダイワスカーレットさんのトレーナーさんですね！　新人トレーナーにしてティアラ路線を攻略した天才トレーナーさん！　いやー凄い人ですね！　あなたのご活躍はかねがね＿＿」
「どうもありがとうございます。いえ、ティアラ路線の成績は全て彼女の実力のおかげで、私はほんのちょっと手助けをしただけでして…」
早口で捲し立てる彼女を無視して、トレーナーは言葉を続けている。こういう手合いにも慣れているのだろうか。

「あっ申し遅れました！　私ウマシィの編集長をしております新妻と申します！　」
ようやく話し終えた彼女はポケットから名刺を取り出した。
差し出された名刺は、確かに編集長の肩書が書いてあった。
「それでは、さっそく準備に取り掛かりましょう！　時間は有限ですので！」
「え、ちょっと」
言うが早いか、彼女はアタシの腕を掴むと、とんでもない力で引っ張り出した。彼女は人間の女性なのにどこにそんな力があると言うのか。咄嗟にトレーナーに助けを求めるも、彼は苦笑いして肩をすくめるだけだった。
そのままアタシは彼女にけん引されて、衣装室へと引っ張られていった。

連れ去られた彼女を待ってぼーっとしていると、「お待たせしました！」という編集長の声の後にスカーレットがスタジオに入ってきた。
「…どうかしら？」
くるんと、その場で優雅に一回転した彼女。
青を基調としたドレスを身につけた彼女は、普段とは様変わりしていた。
髪型はいつものツインテールから、長い髪を編み込んでシニヨンにしてまとめていた。プロのメイクが施された彼女の顔は、益々魅力的で艶っぽくなっていた。何より驚いたのは、ドレスの大胆さだ。バストで留められたドレスは、肩と背中が露出していた。胸元には一輪の青い薔薇の装飾があった。
何と声を掛けようか迷って固まっていると、落ち着かない様子でもじもじしていた彼女が、痺れを切らして問うてきた。
「ちょっと！　何か感想は無いの？　黙っていられるとこっちも困るんだけど…」

不安そうに俯く彼女にかける言葉は一つだ。
「悪い、完全に見惚れていたよ。今まで見てきたどんな女性よりも一番美しいよ」
素直に思ったことを口に出す。すると途端に彼女の顔は赤くなって、そっぽを向いてしまった。
「ふ、ふん！　誰もそこまで言えって言ってないんですけど！？」
そう言う彼女の顔は伺えないが、尻尾がちぎれんばかりに振られているところを見る限り喜んでくれているようだ。
「ええ、とってもお似合いですよ！　それでは早速撮影に移りましょう！」
編集長も俺に同調して彼女を褒める。最初は面食らったが、彼女の仕事に対する熱意は信頼できる。スカーレットをこんな美人に仕上げてくれたのだから。
「はい！　今日はよろしくお願いします！」
スカーレットが待機していたスタッフたちにお辞儀して、撮影が始まった。

撮影も終盤になって、次で最後という時にトレーナーの姿は見当たらなかった。
彼は、アタシがカメラマンの要求に完璧に答えている間に、いつの間にか編集長と共に姿を消してしまった。
アイツは何をしているんだ。心が落ち着かなくてイライラしていると、編集長が戻ってきた。
「トレーナーさんをお連れしました！ささっ、こちらへ！」
彼女の手招きの後に、恐る恐るといった様子で入ってきたトレーナーはいつもの黒いスーツ姿ではなかった。
白いタキシードに袖を通した彼は、恐縮そうにアタシのもとに近づいてきた。
「俺は着る予定は無かったんだけど、編集長がどうしてもって…」
気まずそうに頬をかく彼を見て、アタシはさっきの彼のように硬直していた。
「…スカーレット？」
心配そうに彼が声を掛けてくる。
「な、なんでもないわ！　とにかく、撮影を再開しましょう！」
今にも爆発しそうな感情を悟られないように強引にその場を進める。彼は困惑していたけど、カメラを向けられると真剣な表情になった。

カメラマンの指示で、彼と腕を組む。
隣に立つ彼の顔を見上げる。アタシより頭一つ背が高くて、その顔は整っている。体の線は少し細いように見えるけど、一度トレーナー室で着替えていた彼の体をこっそり観察した時は、薄く筋肉がついていた。
その姿を想像してアタシの鼓動が早くなる。密着しているとこの鼓動が彼にも伝わってしまうのではないか、そう思うと顔が強張る。
それを目ざとく見つけた編集長がアタシたちに声を掛けた。
「スカーレットさん、この写真は雑誌には掲載しませんからもっとリラックスしてください」
「わ、わかりました」
そう言われても、と思っていると横にいた彼がアタシを見て微笑んだ。
「大丈夫だよスカーレット、君が一番かわいいから」
「…バカ、余計なこと言わないでよ」

彼の台詞を咎めたけど、それとは裏腹にアタシの表情が緩んでいくのが分かる。
カシャッ、その音に気づくとカメラマンがシャッターボタンを押していた。
「いいですね、もう1枚！」
その後もシャッターが切られて、撮影は進む。
アタシよりも全然緊張していないのが何だか悔しくて、彼に尋ねる。
「アンタは緊張しないの？」
彼はレンズを見つめたまま、アタシの問いに答える。
「緊張はしているよ。でも＿＿」
「君の隣に立つなら、かっこ悪い姿は見せられないから」

よくもまあ、こんな歯の浮くような台詞を言えるものだ。だけど、その言葉を向けられているのがこの世でアタシ一人だけだと思うと、とても幸せな気持ちになった。
「…あっそ。じゃあ、アタシもアンタの誠意に答えないとね」
組んでいた腕を解いて、彼に抱き着く。
流石に驚いた彼を見て、してやったりといった表情をアタシは浮かべた。
「アンタがアタシの一番であり続ける限り、アタシもアンタの1番であり続けるわ。…もう逃がさないからっ♪」
アタシの宣言を彼は受け止めてくれた。
「…ああ！　約束するよ」
最後のシャッターが切られた。

王道ですよ！

後日、発売されたウマシィが届いた。アタシはその表紙を見て驚愕した。
「なによこれ！？」
雑誌を持って肩をわなわなと震わせる。
その表紙は、編集長が掲載しないと言っていたはずの最後に撮った写真だった。
白いタキシードを着た男に抱き着くアタシ。男の顔は移っていないけど、こんなのトレーナーだってすぐにばれるに決まってる！
その時、丁度トレーナーが来た。
「ちょっとトレーナー！　これはどういうことよ！」
肩を怒らせて彼に詰め寄る。
「いや、本当は別の写真を選ぶつもりだったんだけどさ。編集長にどうしてもって頼まれて…」
アタシの剣幕に困った顔を浮かべた彼は釈明を続ける。
「それに＿＿」
「何よ！？」
「それに、あの写真の君が一番綺麗だったから。あの写真は俺が推薦したんだよ」
「なっ！？」

彼女の絶叫が学園中に響いたのは言うまでもない。
結局、すぐにウマシィの表紙は広まりダイワスカーレットは質問責めにあった。その後、ウマ娘たちが自分のトレーナーを写真館や教会に連れ込もうとする事例が増えたこととと、ウマシィの表紙の件との関連性は不明である。

ちょっと掛かり気味ではないでしょうか

私
性
合

おわり
長すぎて渋に上げたほうがいいと思ったのは内緒
推しの花嫁衣装を想像して書いたらどんどん長くなってしまった
花嫁衣装ネタは森羅万象のウマ娘に適合するのでみんなも書こう！

やはり…４年後のエンゲージシステム実装待ちか…！

はよ
結婚
しろ

素晴らしいですッッッッ！！！！

ちなみに2年目でこんなにベタベタになるのかという疑問については目をつぶってくださいお願いします

ティアラ制覇した後ならなってると思う

過去にはエアグルーヴが表紙を飾ったってことだが絶対女帝もタキシード姿のトレーナーと写真撮ってるでしょコレ

読んでるだけで虫歯になりそう

タマちゃん撮影させてぇなぁ…

中等部…なんだよね？？

ウワーッ！

オレにはなんか雑誌のオファーないのか！？

むっ！

よくやったぞ お前が一番だ

>オレにはなんか雑誌のオファーないのか！？
ウオッカはバイク雑誌の表紙を飾るから…

もうこれが次のストイベでいいよ
いやこれがいいよ

できるトレーナーだな

>ウオッカはバイク雑誌の表紙を飾るから…
ウワーッ！ヤッター！

>タマちゃん撮影させてぇなぁ…
たまごくらぶ

圧縮無しバージョン！よくやった！お前がナンバーワンだ！

マヤわかっちゃった

寝る前にいいもの見た

ウマッセ定期購読　ウマのきもち/ヒトのきもち

>>タマちゃん撮影させてぇなぁ…
>たまごくらぶ
孕ませたんか！？

展開からオチまで満足度高い名作アニメの良回を見ているような錯覚を覚えた
ほんとダスカの良さのど真ん中をいったような作品やでぇ…

多分ダスカよりトレーナーの方が掛かってる
浮き足立ってなきゃこんなセリフ出てこないて

トリプルティアラ路線に切り替えるウマ娘がめっちゃ増えそう

かわいいかわいいダスカ怪文書はいずれ万病に効くようになる

ゲーム内でも仕向けられた記者に俺の誇りとか簡単に言う男はこの位簡単に歯が浮くような言葉を言い続けるよ
CV神谷だと更に私性合

このバカップル強すぎる…

CV神谷明か

>花嫁衣装ネタは森羅万象のウマ娘に適合するのでみんなも書こう！
白無垢姿のフクキタルだって！？

>CV神谷明か
若いころのなら普通に格好いいじゃないか

今だってかっこいいもん

あまーい！！

ダスカもトレーナーも掛かり気味ですよ！
だがそれがいい！

よくまとまっていて読みやすい良作ですね

素晴らしい…朝から血糖値上がってきた

>やはり…４年後のエンゲージシステム実装待ちか…！
とんだ重婚野郎になってしまう！！

朝の良バ場ダスカ怪文書は健康に良い