「……わわっすごい音―っ！ねえねえ！もっときかせてー！」

咄嗟に繰り出した言葉のなんと的外れで幼稚なこと。心で七転八倒、隣にトレーナーがいなかったら恥ずかしさで顔を覆うところだ。
不幸中の幸いはこの言動、普段のわたし『ハルウララ』が発したものとして周りに何の違和感も抱かれなかったことか。
……それもそれで、複雑な気分だった。

「ねえねえ、いつ行くっ？明日行くっ？」

人知れず落ちた調子を、取り繕って尋ねる。
日がな部屋に籠り机にかじりついているトレーナー。
そんな彼の顔色は寝不足と栄養失調で常時土気色だ。
また、彼をそうさせてる主たる原因はわたしであろうことは想像に難くない。
どうにか休んでほしかった折に、降ってわいたこのチャンス。逃すわけにはいかなかった。
なんだかんだでわたし、いや『ハルウララ』には甘い彼のことだ。きっとこの提案には同意して――

『…いや、レースのご褒美に取っておくのは、どうかな？』

――体が、震えた。
それは冬の寒さのせいでも、もちろん誘いを無碍にされた怒りのせいでもない。
いつも通りの柔和な表情で、いつも通りの優し気な口調で繰り出されたかに見えた彼の言葉。
しかしその言の葉に内包された感情ががあまりにも空虚で、その目がわたしどころかこの『ハルウララ』でもない、今ここにはいない次の『誰か』を見ていることに気づいてしまったからだ。

…ご褒美、レースのご褒美。
直近に控えた根岸S、来月に迫るフェブラリーS。エルムS、JBCスプリント。
これもループの恩恵というべきか、今後わたしがどんなスケジュールでレースに出るのかはおおよそ把握している。
だが、きっとトレーナーが言った『レース』とはこれらのいずれでもない。
…今、トレーナーとわたしの目指す『レース』と言ったらただ一つ。
シニア12月後半、有馬記念だ。
――ねえトレーナー。その言葉は、わたしが有馬記念で一位をとれるって信じてくれているってこと？それとも…

「ごほうび〜〜っ！！頑張ったすごい子だけがもらえるやつだー！」

はっと口を押え、表情を歪ませるトレーナー。それには気づかないふりをして、わたしは『ハルウララ』を演じ続ける。

「あのね、この券はトレーナーが持っててね！ごほうびはもらうときがうれしいんだよっ！」

そっと、彼の手に『ご褒美』を握らせる。優しい優しい、わたしのトレーナー。わたしがどんなにレースに勝てなくても、どんなに我儘を言っても、見捨てないでいてくれたわたしの彼。
そんな彼が、この繰り返す時の輪の中で未来と過去しか目がいかなくて現在が見えなくなっているとしたら、それはわたしのせいだから。

「だから渡すときは『エヘン！どうぞ！』ってドードーと渡してねっ！」

だから、わたしは贖罪し続けるのだ。いつか、いつの日か、彼の手からご褒美を貰えるその時まで。

未だに有馬を勝たせてあげられていませんがトレーナーと温泉旅行に行きたいハルウララさんを書きました
そろそろ周回数が3桁の大台に突入しそうです

度重なる周回でハルウララちゃんからハルウララさんになってしまっている

一応続き物？ということで今までのまとめです
su4876147.txt

ガールズレジェンドU…

叶えるのが夢だけど叶わなくて夢は夢はさ
なんて歌詞が浮かんでしまう

発言と内心が乖離しすぎてどこかの名探偵みたいになってる…
一体何年間ループを重ねたんだろう

>一応続き物？ということで今までのまとめです
私
性
合

URAは勝って当然ってなってそう

一育成3年分、3桁に差し掛かるのであれば300年分
ハルウララさんになってもおかしくはない
だけど同時にトレーナーも同じ月日を経ていると思うと

憧れが義務に変容して喜びが去るのはあまりに悲しいね

今回は因子継承足りなかったのか…

過去の分も読んだけど
お互いループしてるけどお互い内緒にしてるのか……

お互い内緒にしているけどウララは一方的に知ってるね

勝ちたい
勝ちたい
『君』と勝ちたい

ガールズレジェンドU(ウララ)…

東京大賞典でいいじゃないか

シニア1月って事は4月前半に継承で芝長距離B以上になる目はあるんだ

東京大賞典でも有馬でも適正上げなくちゃいけないのは変わらないからな…