二次元裏@ふたば

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45950 B21/05/09(日)00:21:16No.800820973そうだねx1 01:21頃消えます
「一人でいるのが、怖い」
顔を彼の胸に押し付けつつ言葉を絞り出す。

「…ここに、居たい」
彼の体が硬直する。彼の部屋から一切の音が消えた。お互い、次の言葉が出てこなかった。私は、この体が離れないように夢中で彼にしがみつく事しかできなかった。

「…わかった。タイシンも少し疲れたのかな」
沈黙を破ったのはトレーナーだった。

「なんか悩みとかがもしあるんなら…聞かせてくれ」
トレーナーの言葉を聞いた後、私は首を縦に振り、意思を伝える。

「でも、アレだな。寮へは何て説明したもんか…」
悩んだ様子で彼が呟く。タイシンが戻らないと寮が騒ぎになっちゃうからさ、と続ける。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/05/09(日)00:21:50No.800821217+
「…もう寮長に外泊申請出してある…」
彼の体に抱きついたままの姿勢で答える。元々この部屋に押し掛けるつもりだったので準備はしておいた。

「俺の部屋で申請!?」
「…実家って書いた」
「…それは…ご丁寧に…どうも」
頭上で間の抜けた彼の声が聞こえた。なんだか気まずかった。多少安心し緊張がほぐれた今、彼を正面から抱きしめたままの姿勢が急激に恥ずかしいものに思えてきた。
ごめん、と謝りつつトレーナーの身体に回していた両腕の束縛を解き、彼の体を自由にする。気恥ずかしさから、何か会話を続けたかった。

「お風呂…入る」
とは言ったものの、自分の出した言葉の意味を思い浮かべ、薄れかけていた気恥ずかしさがまたも溢れだしたため、逃げるように浴室へ駆け込んだ。
221/05/09(日)00:22:19No.800821445+
シャワーを浴びながら最近たまに見るようになった夢の事を思い出していた。

誰もいない水族館で私はひとり水槽を見つめている。
天井まで伸びる大水槽には魚が一匹だけ泳いでいる。
魚は孤独感で衰弱しておりやがて死んでしまう。
魚を可哀想に思い水槽に近寄り、しゃがみ込み、死んだ魚を見る。
死んでいたのは魚ではなく私だった。
助けを求めようと水族館を見回しても誰もいない。
私は一人だった。

そこで夢が終わる。嫌な夢。もう、見たくなかった。
321/05/09(日)00:23:29No.800821988+
シャワーを浴び外に出ると彼のスペアのパジャマが用意してあった。とにかくでかかったが、小さいわけでは無いし室内なのでなんとか着ることはできた。でかい。袖から手は出すことができないし上着が太ももに差し掛かってもいる。だが、着心地の良さを感じる。ふふ、と笑顔がこぼれた。綿100%のためだろうか。シッポ穴が無いのでズボンは履けなかったがトレセンの替えジャージがあったのでなんとか寝間着としての形にはなった。

私と入れ替わるようにして彼が浴室へと入る。その間にドライヤーで髪と尻尾を十分に乾かす。こればかりはなかなか時間がかかる。乾かし終えた時には、交代で浴室に入った彼が既に外へ出てベッドの縁に腰かけ一息ついていた。私は彼の隣に歩み、彼と並ぶようにしてベッドの上に腰を下ろす。トレーナーが無言で私に笑いかける。私もつられて笑顔になる。
421/05/09(日)00:24:08No.800822338+
「あの…泊めてくれてありがと。今更だけど…」
「…いいさ、俺はタイシンが相談してくれて嬉しいよ」
「…うん」
ベッドの縁に座る彼との間に少しだけあった隙間を詰めるため自然と移動していた。彼の左肩に体を寄りかかるように座り直した。
彼が一瞬だけ私の方を見たが、気にしない様子ですぐに顔を正面に向けた。

「さっきの話」
己の行動が咎められたわけでもないが、誤魔化すようにして私は話し始める。
521/05/09(日)00:24:46No.800822623+
「先週からトレーナーが出張で居なくって一人で練習してた時にさ、一人で走ってた頃のこと思い出すようになって」
静かな部屋に私の声だけが響く。彼は静かに私の話を聞いているようだった。

「トレーナーが居なくなったわけでも無いのにさ。練習も集中できなくなって。怖い。夜は、特に…だから、トレーナーに会いたかった。会えばきっと落ち着くと思って」
言葉が溢れだした。

「…私、まだ何も信じられていないのかな。ここまで来て。まだ…」
涙が溢れだした。

「タイシンが全て背負う事無いさ」
私の言葉をずっと聞いていた彼が、私の言葉を遮った。

「俺だってタイシンが居ないとできること何一つ無いんだから!タイシン、俺が最も印象に残ってるレース分かるか?」
「…さぁ」
なんだろう。分からなかった。皐月賞?日経賞?有馬記念?それともURAファイナルズ…?
621/05/09(日)00:25:26No.800822910+
「去年の感謝祭のトレーナー参加型二人三脚レースだ!タイシンがペース落としてまで俺にあわせて頑張ってくれて、俺も気合でなんとかタイシンのペースに食らいついていって、それで二人で取った1着、最高だったよ。俺たちは最高の二人三脚コンビなんじゃないかな」
「…アンタらしいね」
「そうか?」
「そうだよ…バカっぽくて。ふふ」
彼の底抜けの明るさ。いつもの事だが聞いていて自然と笑みがこぼれてくる。

「つまりさ」
彼は続ける。

「タイシンがヨレたら俺が気づく。タイシンが疲れてたら俺が気づいて止める。タイシンの末脚を最大に活かして見せる。タイシンがマジだってところを皆に見せる事ができる下地を整える。そしてタイシンは全力でレースを楽しむ。これも二人三脚だろ?俺はそれでいいと思うんだ。だからもし俺がタイシンの隣に居なかったら蹴とばしてくれ。俺はタイシンの事をこの先も、ずっと見てるから」
721/05/09(日)00:26:27No.800823386+
「…それって、さ……一生、だと思っていいの」
彼の顔を見上げて言う。

「…私が、一生隣で見ててって…言ったら…」
「ああ、見続けるよ。見続けさせてくれ」
「…うん」
隣にいた彼の身体に飛びつく。返事をするように私の背中をトン、トンと叩く優しい音がした。

「そろそろ寝るかな」
「…隣で寝ていい?」
「…二人三脚かな、どうぞ」
「…ありがと」
821/05/09(日)00:27:29No.800823876+
部屋を照らす灯りが常夜灯のみになる。私はベッドに入り、彼に寄り添うようにして目を閉じた。

「春の天皇賞、絶対勝つ」
暗闇で何も見えない。私は彼の返事を信じて言葉を投げかける。

「ああ、出来るさ」
彼の力強い言葉が暗闇から返って来る。

「うん」
私も力強く返事をする。迫る影は、全て追い払ってみせる。きっと、できる。

「…タイシンちって、従業員募集してたりするのかなあ」
「…プッ、く…ふふっ…ふ…」
「俺、そんな面白い事言った?」
「……ううん、似合わないな、って思っただけ」
921/05/09(日)00:28:33No.800824365+
オワリ
以前しっぽトリートメントのお詫びにタイシンがトレーナーに料理を振る舞う話(メ欄)を書いた地続きです

今回のは前後半で分けた方の後編部分でした これで終わりです

根性が不足しているのですけべな展開は最後まで書けませんでしたすいません
1021/05/09(日)00:30:32No.800825328そうだねx14
>今回のは前後半で分けた方の後編部分でした これで終わりです
素晴らしい作品だありがとう
>根性が不足しているのですけべな展開は最後まで書けませんでしたすいません
タイヤ引け
1121/05/09(日)00:32:40No.800826251そうだねx7
>「俺の部屋で申請!?」
>「…実家って書いた」
> ここが実家になるんだよ
1221/05/09(日)00:39:12No.800829314+
タイシン引退後にお花屋さんを継ぐのは私の性癖には合っていますよ
1321/05/09(日)00:46:21No.800832441+
タイトレはやっぱり暑苦しいけどちゃんと伝える事伝えてえらいな…
1421/05/09(日)00:54:06No.800835710そうだねx3
タイヤ引けでダメだった
1521/05/09(日)00:56:10No.800836622+
声もでかいし器もデカい
1621/05/09(日)00:59:34No.800837945+
でもタイトレは同衾までは許しても「うまぴょい」は拒否しそう
ウマ娘の膂力に勝てるのって?HAHAHA!
1721/05/09(日)01:14:45No.800843889+
いくらウマ娘が人の何倍も力持ちだろうとウェイトの差というものがある
抵抗できなくなるまでボコボコにすることはできても抑えつけて無理ぴょいは難しい
1821/05/09(日)01:17:23No.800844921+
逆ぴょいは普段脳筋のタイトレに極めて倫理的に説得されて卒業まで我慢させられるんだ
※ただし手ぴょい口ぴょいは除く


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