「おーっす、釣れてるか？」
「うーっす、全然だねー。」
「まあ、そういう日もあるさ…ところで隣いいか？」
「……座ってから言う？いやまあ…断る理由ないんだけどさ？トレーナー？」
「うん、トレーナーだぞ？二冠バのな」
「三冠バになれなかった嫌味？拗ねちゃうぞー？」
「それは困るな…割と誇りなんだぞ？」
「…割と？」
「割と本気で大真面目に」
「…後から付け足すの、アリ？」
「アリだろ？……あ、引いてる」
「えっ……？あっ！」

──数時間後
「……結局夕方まで粘ってこれだけかぁ」
バケツの中には2匹のウグイが泳いでいる
どこへ行けば良いのか分からないけど、泳いでいる
「いいんじゃないか？坊主よりはマシだろう」
そう返されると返す言葉もなくなる
ウグイの様に何も考えなければ良いのか、それとも？
「それもそうなんだけどね……実のところどうしてここに？練習サボった事を怒りに？」
「いや？」
確かに少し傷つきはしたけどさ、そう言われると少しバツが悪い
「……ゴメンね」
今日は、なんとなく……走りたくなかったんだ
「いいよ」

そういう日もあるだろ？なら適度に休んだほうがいいと俺は思ってる
「でも……一言言ってな？」
心配するし
「はーい……。さて、と」
君たちは自由におなりー…
川へバケツの中身を流す
2尾のウグイはなんだか寄り添う様に泳いでいく
競い合ってるみたいにも見えたけどそっちの方がしっくり来る
夕暮れに染まる河原と空は昼間の焦燥感すら少し染めてくれる様で──
なんだか涙が流れていた

日の落ちかけた街を歩きながら会話する
明日のトレーニングの予定、次のレースの事、体調の事、メンタルの事、天気の事、釣りの事──
だんだんと些事になっていく
そんな他愛も無い会話をしながら少し伸びた髪を指で弾く
「…髪、切りに行こうかな」
「いいと思うぞ？明日にでも行ってくるといい」
「…や、次の休みに行くよ」
トレーニング、したくなったんだ

「そうか」
大事だよな、変わっていくのも
「そうだね」
大事だよ、変わるのは
空模様が同じ日は無いように私は変わる、変わっていく
空の様に鮮やかに
雲の様に雄大に
荒れる空に走る稲妻の如く
駆けていくよ

たまにはジットリスカイとかドンテンスカイとかじゃないのもいいかなとか思ってます

いい…
飄々としてこその雲じゃないか

どこへ行けばいいのか分からないけど、泳いでいる
って文章がすごくすき
もやもやの中に諦めが乗ってて、なのに爽やかな感じがしてとてもよい…スカイさんいいね…

良馬場ですね…

アァッ……ドンテンに濡れた心に良バ場がスーッと染み渡って……これは……

良馬場だけど先のこと思うと曇り空みたいな…

お魚の描写がとても心にきました

しゅきぃ……