二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1619434760601.png-(202711 B)
202711 B21/04/26(月)19:59:20No.796656394そうだねx1 20:59頃消えます
もう迷わない道を花瓶に入った一輪の赤いカーネーションを抱きながら歩く。午前零時を時計の針が示す。道には、等間隔の電灯がぽつぽつとした斑点を浮かばすだけだ。薄茶色のコートと白い手袋に月光を流しながら一人商店街の方へと足を進める。南の商店街のゲートから3分程の横道を目指し、ほろ酔いながらスーツを着た何人かの男性と無音で暗いシャッターの連続の横を通る。その横道の角を曲がれば一つ光の漏れた白く四角い建物が見えてくる。壁はところどころ塵なんかが付いているが、ペンキを塗り直した跡は何年もここに居続け、そして大切にされていると話し掛ける。引き戸前の「めしや」とある紺色の暖簾は手垢だろうか、端の方は黒ずんでいる。
いつもの様にその角に指をあて、鍵が掛かっているのであろう引き戸を2,3回コツコツと叩いた。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/04/26(月)20:00:08No.796656663+
「お待ちくだせい」と向こうからくぐもったこえと共に扉はあっさりと開く。鍵は掛かっていなかったようだ。
「すいません、もう営業時間外で・・おお、これはオグリさん。こんな時間に珍しい。」
私と背は同じで、ぱっちり開く二重もある目がある黒い作務衣と頭巾を巻いた姿の少年が顔を出した。
「こんばんは若大将。こんな時間にすまない。」
「いえいえとんでもない、
どうぞ外は寒いですから中へ中へ。」
勧められるままに店内へ。この『若大将』と相性で呼んだ少年は、他のお客さんからも言われているが、
地元の高校を先週に卒業したばかりだ。実際このお店の店主、『大将』の息子であるからこのお店の次期『大将』に決まっている。『若大将』もその覚悟からか
『若大将、若、後継ぎ』など呼ばれるのを好んでいる。
大将は若大将に後は任せているようで見当たらない。
「ああ、オグリさんも卒業ですね。ご卒業おめでとうございます。」
221/04/26(月)20:00:42No.796656898+
手にある花で気が付いたのか、はたまたその心づもりだったのかは分からないが、
そう祝いの言葉を深々としたお辞儀とともに述べた。そしてまた「ありがとうございます。」と深々お辞儀しながら私の花を受け取った。レジの横を見ると鉢植えやら花瓶の上に色彩豊かな花々が所狭しと咲いている。
全て今日のトレセン学園の卒業生からだろう。
「いや皆さんが美しいお花を持ってきてくださったんです。皆さんべっぴんさんですからね。
鬼に金棒、いや違う、ウマ娘に蹄鉄、これも違う、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、
これも違うか。どういえば良いか分かりませんが素晴らしいお姿でしたよ、皆さん。もちろんオグリさんも」
独特とした若のリズムと言葉の羅列は口を緩ませられる。
「他の人のように豪華なものでなくてすまない。」
321/04/26(月)20:01:17No.796657105+
「いえいえ、これはお気持ちの証ですよ。なに卒業式という大切な日にわざわざこの店にまで来てくださった。それが嬉しいんです。お礼と言うのは何ですが、どうです、何か食べますか?」
「いや大丈夫だ。レジはもう閉まっているのだろ?」
と言いつつ私のお腹から正直な音が鳴った。
ハハハ、と若は笑いながらお店の上にある住居から大きな鍋を持ってきて、お店の厨房で火をかけた。カレーのようだ。
数分して白く輝くお米にゴロゴロとした野菜とお肉が混ざるしっとりトロトロしたルーの乗るお皿が二つ机に置かれた。また若に促される形で4人用の席に座り、コートと手袋を隣の空席に置き、カレーを食べることにした。
「いただきます。」二人で手を合わせる。
若は仕事柄か非常に食べるのが速い。私とスピードを同じくしてペロリと平らげた。
421/04/26(月)20:02:11No.796657434+
「おかわりいりますか?」 
私は遠慮した。たくさん食べる気分ではなかった。
「ごちそうさまでした。」
意外そうな顔をした若だが、すぐこっくりとうなずき二人の皿を下げる。
「お代はどうしたらいいだろうか?」私が財布を触りながら尋ねる。
「なに、ただの夜食ですよ。サービス、サービス。夜食にお客さんからお代をいただいちゃいけません。」
「ムゥ・・・。」
「う〜〜ん、じゃあこうしましょう。皆様からいただいたお花の飾りつけ手伝って下さい。それで。」
うなずいて了承する。しかし、それでは足りない気がして机だけでも拭かせてもらった。四角い木の机に写る年輪を磨くように丁寧に丁寧に拭く。かすかだがお酒とから揚げの匂いが残っていた。
充満する花の香とカレーの匂いで気が付かなかったのだ。
若が皿を洗い終わるとレジの横に向かう。私もそれに従う。
一見すると数十本の花々には小さいもの、花ではない小物までも隠れていた。100は優に超えるだろう。
それどころか店の奥、
住居に繋がる道まで贈り物で埋まっている。
521/04/26(月)20:02:24No.796657516+
きっと皆がこのお店を愛しているのだろう。
私もその一人だ。
だから、あのことは言えない、言いたくない。
621/04/26(月)20:19:52No.796664298そうだねx13
ウワーッ!?何そのアスペクト比!?
721/04/26(月)20:25:11No.796666225+
20年前のフラッシュ倉庫のバナーみたいなアス比してやがる
821/04/26(月)20:43:44No.796672835+
記念パピコ
921/04/26(月)20:47:15No.796674018+
太ったのかな…
1021/04/26(月)20:49:13No.796674716+
全部書けているので随日公開いたします。全5話


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