彼はれっきとした経験を積んだ大人で、責任のある立場だ。一方で、女帝なんて肩書を名乗っていても、私はなんだかんだでまだ子どもで、学生。彼に庇護される立場にある。でも、ここから先の意味がわからないほど、幼稚でも純粋でもない。
男女が二人で泊まりの旅行に来る意味。レースや合宿などの名分もない、ただのプライベートな旅行。
信頼し合っているトレーナーとウマ娘の関係であっても、これが普通のことでないのは明らかだ。
それを承知で、私はわざと意識せずに受けた。
それは信頼の証だから。そして、彼はあくまでも普段頑張っている担当ウマ娘の慰安のためである、と心を砕いてくれた。こうして、部屋を2つ用意することで、逃げ道を作ってくれたのだ。同時に、私の信頼を裏切らないためにも、彼が扉のこちら側に来ることは絶対にないと確信する。

だから──ここから歩み寄るには、こちらから足を前に進めないといけない。

鼓動が早鐘のように。深呼吸。緊張でじんわり汗ばんでくる。レース前でもこれほどにはならない。
手が震える。
──ええい、ままよ。
コン、コン、とノック。
──やってしまった！　もう後戻りはできない。
扉の前に人の気配。訪ねておいて、ノックしておいて、開けないでくれと思ってしまう。
扉は開かない。開けようか開けまいか、逡巡しているような雰囲気を感じる。
いま扉の前で彼が何を考えているのか、今は手に取るようにわかる。先程の私と同じ。この扉を開けばどうなるか。このまま開かなければどうなるか。怖い。不安。

──でも、期待も。

カチャ、キィ……。静かに開く。開いてしまった。扉が。

無言。
目が合う。
それだけで、お互いの考えが、感情が、手に取るようにわかる。……そう、わかったのだ。
訪ねてきた意味と招いた意味。
震える足を前に進め、扉の内側に。

ぱたん、と扉が閉まった途端、感情が爆発し、体当たりのように抱きつき、唇を重ねた。彼も何も言わずに抱き止め、舌を絡めてくれた。

なにもかもがはじめてだった。肌を男の目に晒したのも。男の肌を目の当たりにしたのも。あんなにずっと見つめ合ったのも。手を握ったのも。身体を触らせるのも。口を触れ合わせるのも。舌を絡めあうのも。
この口が愛を囁くなんて、想像したことも無かった。甘い声が出る。はじめての音域。くすぐったい。でも気持ち良い。他人と唾液を交換するなんて。それがこんなにも心地良いなんて。
指を絡めるだけで、心が埋まってゆく。熱病に冒されたかのように熱が上がっていく。発汗。息切れ。動悸。思考が鈍くなっていく。指が這い回る。感覚はかつて無いほど鋭敏に。電流が絶えず流れる。

舌で脳みそをかき回されてるみたい。応えようとする私の舌はあまりに弱々しく、蹂躙を受け入れるしかない。呼吸ができない。酸欠。でも何故か、酸素を欲しいとは思わない。少しでも長く絡み合っていたい。このまま溺れたい。
絡み合った指が強く握られる。折られそうだ。ウマ娘の力にヒトが敵うはずかないのに、まるで力が入らず──私はどうしようもなく女で、オスに支配されたい欲に抗えない。
汗にまみれた身体を絡めあう。ただそれだけで、悦びで満たされていく。満たされて、満たされて、それでもまだまだ足りないと渇いてる。

胸をまさぐられる。成長期にはいってから膨らみ続けた忌々しい脂肪の塊。走るのに邪魔だとずっと思っていたら、そうか。これは男に嬲られて悦ぶために膨らんでいたのだ。そう思えるほど、彼のゴツゴツした指が肌に食い込むたびに背中に快楽が走る。先端を摘まれた。弓なりに身体が反ってしまう。私ではない知らない弱々しい誰かの声が、喉の奥から絞り出される。
身体のどこをさすられても、身体は快楽に打ち震える。視線を受け止めるだけで、背筋がぞくぞくと震える。

太ももをさすられる。毎日のトレーニングとマッサージとスキンケアを欠かさない、自慢の脚だ。その脚も、彼の指が這い回るたび、びくぴくと情けなく震える。威厳のかけらもない。
入り口に指が触れる。息が詰まった。足がぴんと伸びた。つりそう。でも戻せない。息が苦しい。汗が止まらない。歯を食いしばり、シーツを握り締めて耐える。彼の太い指が私の頑固な秘裂をほぐすようにまさぐる。激しい水音。かーっと顔が熱くなり、恥辱に死にたくなる。
不足は埋められていくのに。身体の熱は際限なく上がるのに。せつなさはかえって積もる一方だった。

せつない。足りない。欲しい。
身体の中心の不足を埋めて欲しいと懇願した。
彼は応えてくれた。

足のつま先から脳天まで。全身の筋肉と言う筋肉が痙攣した。
嬌声というのをはじめて発した。蜜が溢れる。求めずにはいられない。どうしようもなく寂しい。他人を受け入れたのははじめて。話に聞いたほどの痛みは無く、満たされていく感覚に身体が抑えられない。でも彼も何かを我慢する表情。おあいこ。ちょっとだけかわいいと思った。

お互いの耳元で愛を囁きあう。まともに力が入らず、舌足らず。少し照れくさそうに笑いあった。理性が吹き飛ぶ。ひたすら、ただひたすら、貪りあった。暴力的なほどに腰をぶつけ合い、全身で溶け合わんとするかのようにしゃぶり、ねぶり、絡まった。
囁くなんて嘘。そんな悠長なこと言ってられない。絶叫。或いは咆哮。ただただ確かめ合った。腰が叩きつけられる。内側からえぐられる。痛い。でもどうしようもなく気持ちいい。脳が侵される。快楽しか受け付けない。翻弄される。しがみ付く。
まるでジェットコースター。あるいはバンジージャンプ。宙を舞うような快楽とどこまでも堕ちていく浮遊感。痛い。気持ちいい。楽しい。苦しい。幸せ。怖い。頭がグチャグチャになる。

痺れは肉体と精神の両方に。
限界を迎えそうなことを彼が告げると、私は無意識にしがみつき、受け入れる。そうしたかったから。
天空から滝壺に落ちたような、視界が白で染まったような錯覚。頭のなかはからっぽ。お腹の奥、誰もたどり着いたことの無い場所を熱い何かが叩いている。凄まじいまでの満足感、充足感、そして疲労。
意識が暗くなっていくのを感じた。ひどく眠い。やさしい言葉。やさしい腕。しがみ付いた。口づけ。嬉しい──。

疲労感。スタミナはあっという間に底をつき、そのまま、私は彼の腕の中で眠ってしまった。

私達の関係はこうして、変わってしまった。
これまでの関係と、新たな関係。不安もある。でも、これまでと同じように、理想への挑戦を続ける。隣の彼と共にいれば、いつまでも進められる。そう思えた。これからの新しい道を。

おわり

濃厚な女帝怪文書ありがたい…

梅雨にはまだ早いぞ

トレセン書院きたな...

トレセン書院いいぞ…

苦労人の女帝はどれだけトレーナーくんに甘えて愛されても良い

女帝×トレセン書院＝完璧

お義母さんはどう思う？

あらあら〜

良いと思います

お盛んね〜！

>お義母さんはどう思う？
初孫が楽しみです

女帝もトレーナーの前では恋する女の子に過ぎないんだよな…

女帝っていう肩書き持っていても少女らしい逡巡と葛藤で思い悩むのがとっても好き

あら、エアグルーヴ。その様子だと良い事あったみたいね。
おめでとう…かしら？
ところで…並走付き合ってくれないかしら？
（了承済みと張られた簀巻きのフクキタルを引き摺り）

普段から書いてる人の文だなぁこれ…

>あら、エアグルーヴ。その様子だと良い事あったみたいね。
>おめでとう…かしら？
>ところで…並走付き合ってくれないかしら？
>（了承済みと張られた簀巻きのフクキタルを引き摺り）
そういうのはいらないかな…

短文の連続でとめどなく想いが溢れてくる感じの文体がいいですね…

改めて読み直すとセリフが一切ねえな……

私はいいと思う

完璧です…

じゃあなんですか！女帝みたいな怜悧な女性が褥でトロトロになっているのがそんなに良いっていうんですか！？

女帝の名を一度降ろして一人の女として想い人と愛を囁き合ってるのいい…

>私達の関係はこうして、変わってしまった。
>これまでの関係と、新たな関係。不安もある。でも、これまでと同じように、理想への挑戦を続ける。隣の彼と共にいれば、いつまでも進められる。そう思えた。これからの新しい道を。
ウワーッ！ウワーッ！ウワーッ！

>じゃあなんですか！女帝みたいな怜悧な女性が褥でトロトロになっているのがそんなに良いっていうんですか！？
私の性癖には合っていますね

>>じゃあなんですか！女帝みたいな怜悧な女性が褥でトロトロになっているのがそんなに良いっていうんですか！？
>私の性癖には合っていますね
並走させてもらいます

女帝も中身は未成年の女の子だし理解ある彼の手にかかれば1人の雌になるよね…

トレーナー側も女帝の想い理解して判断を本人に任せてるのが実にそういう本っぽい

ゲームのトレーナーかなりストイックだから担当ウマ娘に自分から手を出すこと無さそうだよね

めっちゃ良い...

女帝初育成したけど好きになった

女帝は幸せな家庭を作れそうで安心する

快楽や恋愛感情に溺れない落ち着いた地に足のついた恋愛しそうでいいよね女帝

>ウワーッ！ウワーッ！ウワーッ！
スト2みたいなのやめなさいよ！

>スト2みたいなのやめなさいよ！
ちょっと湿ってるときに笑わすのやめなさい

まっとうな怪文書久々に見た

消える寸前にウンコ付きが突っ込んでくるの笑うじゃん

突然メールで官能小説を送り付けられる関係者を想像したら駄目だった

文章中に特定の競走馬を示す単語は含まれてないので大丈夫

うまぴょいしたんだこいつら