今の学園内ではその噂と、それを渡されたトレーナーさんの話で持ちきりです。
トレーナーさんの一部はその噂に気づいているようですが……生徒の結束でその内実は知られてないようでした。
マチカネフクキタルさんのしっぽがほぼ丸ハゲになっていたのと、そして彼女のトレーナーさんがお守りだらけになっていたことには流石に学園中の目を引きましたが……。

しっぽの根本に近い内側の毛ほど良い、という噂がついた理由は後で知りました。
恥ずかしいことに、その周辺の毛はウマ娘にとっては特に自分の匂いが濃いところなのです。
それを持っている人からはウマ娘にしかわからない程度ですが、自分の匂いが漂うことになります。
ある種のマーキング行為です。両想いになれる、というより相手が別のウマ娘と結びつく牽制になります。
私個人としては、はしたない行為だと思います。
ただ……自分のトレーナーさんが自分の匂いに包まれている、という想像に惹かれるものがないわけではないです。

「なんか、生徒の間でお守りを渡すのが流行ってるみたいだね」
トレーナー室でミーティングの途中、トレーナーさんが何気なくそのことを口にしました。
「そうみたいです。どこかで耳にされたんですか？」
意識的に、穏やかな口調で答えます。
「あいつ、エルコンドルパサーのトレーナーから自慢されてね。俺はお守りをもらったぞ、って」
私とエルは親友にして最大のライバルで、よく併走トレーニングなども行っています。
そういう関係もあってか、トレーナーさん同士もお互い仲がよく、ライバルとして切磋琢磨されているようです。
「ずいぶん煽られたよ。このお守りがあれば次はエルが勝つって」
トレーナーさんが苦笑されました。
この間行われた学内での模擬レースでは、ハナ差で私が勝利したのです。お互いギリギリの接戦でした。
「相当気合が入っているみたいだから、次も油断ができなさそうだ。またレースでぶつかりそうだし、対エルコンドルパサーを考えたトレーニングや位置取り研究をしたほうが良いかもしれないな」

もしかして、お守りを催促される流れでしょうか……と警戒しましたが、そういうわけでもなさそうです。
しかし、まさかエルにお守りの作り方を教えたことが、巡り巡ってこの様な影響を及ぼすことになるなんて。
敵に塩を送るとは、このことでしょうか。
今更ながら、お守りを用意しなかったことを悔いました。しかし、後出しで渡すのはいかにも負けたようです。

お守りではない、私だけの何かはないものでしょうか……私だけの……。
必死になって考えます。

「話が逸れたね。で、来週からのトレーニングだけど……」
「トレーナーさん。ちょっと良いですか？」
自分の矜持が、暴走気味になっているのが分かりました。でも、もう止まりません。
「どうかした？」
「そのまま座ったままで、頭の位置を落としてください」
トレーナーさんは不思議に思われたまま、椅子にもたれるように腰をずらして頭の位置を下げました。
……ぎりぎり届きそうですね。
私は椅子から立ち上がって、彼の後ろに回り。

彼の首周りに自分の尻尾を回しました。まるで襟巻きのように。
「え？え？何？」
「じっとしていてください」
私の真剣な声を聞いたせいか、トレーナーさんは黙って動かずにいます。
「……グラスのしっぽは、温かいな」
「そうですか？」
顔が赤くなり、声が上擦りそうになるのを必死になって隠します。
「それにいい匂いがする。ちゃんとしっぽもケアしてるんだな」
「嗅がないでください」
しっぽでキュッと彼の首を締めました。トレーナーさんは大げさに苦しがって見せます。
……何をやっているんでしょうか、私は。恥ずかしくてしゃがみこんでしまいそうです。
耐えきれなくなって、私はしっぽを彼の首から離しました。

「で、今のは？」
「……ウマ娘に伝わるおまじないの一つです。こうすることでウマ娘のトレーナーの絆が深まるそうです」
嘘をつきました。こんな恥ずかしいおまじないはありません。
「へぇー……トレーナーの資格を取るときにウマ娘独特の習性や文化を勉強したけど、まだまだ知らないことが多いな……でも、なんで急に？」
「……次のレースでも、必ず勝ちたいからです」
私のボカした答えに、トレーナーさんは不思議そうにしながらも納得されたようでした。
「わかった。トレーニングメニューを見直してみよう」
「はい。……それと、このおまじないのことを誰にも言ってはいけませんよ。言ってしまうと、逆効果になりますからね」
何だそれ……怖いな。ウマ娘は不思議だらけだ……。トレーナーさんはそうこぼしました。

ミーティングが終わり、トレーナー室から出て。
抑えていた羞恥心が顔から吹き出るのがわかりました。紅潮して熱を帯びる頬に、手でパタパタと風を送ります。
しっぽまでブンブンと動いてしまうのを止められません。
ああ、なんてことをしたのでしょうか私は。はしたない。
大和撫子にあるまじき行いでした。

しかし……私の、私だけのものをしっかりと、トレーナーさんにあげることはできました。
これでエルに負けることはないでしょう。

以降、私は彼に週2〜3ペースでおまじないを施す様になりました。

ある日、寮に帰るとエルがジトッとした視線で私を見てきました。
「グラス……自分のトレーナーさんに何をやってるんデスカ？」
「何、とは何でしょう？」
「とぼけないでクダサーイ！あんなにグラスの匂いがプンプンしてるのはおかしいデース！……はっ！もしや、グラス！」
エルが顔を赤くします。何を誤解しているのでしょうか。
「エルが考えるようなことは、何もしていませんよ」
私は余裕の笑みを浮かべました。

卑しいウマ娘デース！

>以降、私は彼に週2〜3ペースでおまじないを施す様になりました。
なそ
にん

こいつもうマーキングしたいだけデース！！！

卑しい

>恥ずかしいことに、その周辺の毛はウマ娘にとっては特に自分の匂いが濃いところなのです。
それってウン──

フクはアホだな…

ウマにしか無い武器を使いやがってよぉ！

それ以上いけない

リアルの方のお守りではギャンブル関連で女性の股の方の毛を入れていたからこともあったそうで
こっちでも尻尾じゃない方の毛を入れた子とか出てきそう

>>恥ずかしいことに、その周辺の毛はウマ娘にとっては特に自分の匂いが濃いところなのです。
>それってウン──
最低だなセイウンスカイ…

これはグラスに見せかけたフク

こいつはとんだ卑しいメスデース！雌豚デース！

別の怪文書でも尻尾を巻きつけるという口に出すのも憚られる破廉恥な行為を行う話を見たな

お守り信仰の一歩先を行く

私対抗心から階段１つ飛ばししちゃって自分も恥ずかしい子好き！

>私対抗心から階段１つ飛ばししちゃって自分も恥ずかしい子好き！
一つ…？

グラスは攻めた後一人で顔赤くしてるのが似合う卑しい女よ…

征服欲が満たされつつももしこの行為がどれほど破廉恥なことかバレたらどうなってしまうのかも内心期待してそう

少し掛かり気味かもしれません

ウマの癖して雌豚という矛盾した存在デース！

>少し掛かり気味かもしれません
彼女の性癖には合っていますよ

>ウマの癖して雌豚という矛盾した存在デース！
エル。貴女が言うな。

ウマ娘がトレーナーに自身の匂いをマーキングするのは割といろんな方法で行われてそう

どうでしょうか今後は床に座ったトレーナーさんに下腹部を近づけて尻尾襟巻きをするというのは

ニヤニヤして見守りてー

グラスはさぁ…アメリカのひと…？

トレーナーにしっぽのケアを任せて欲しい

最近かわいいかわいい担当の怪文書増えてて嬉しいですよ私は

やはり人には無い部分でのアピールはいい…

トレーナーからくれとは言えないしなこれ

フクの丸ハゲになった尻尾はちょっと見てみたい

終わったあと廊下の隅っこで顔覆ってしゃがみこんでそうなグラス

どれだけ見た目が良くても品性だけはアメリカ人デース！

なんだい今日はやけにグラスの怪文書を見かけるが…

グラス怪文書はどの方向性から摂取してもよい

>なんだい今日はやけにグラスの怪文書を見かけるが…
いい一日デース…

そりゃあマルハゲのフクとお守りいっぱいのトレーナーが居たら嫌でも噂広がるわな

グラスはなんというかこう落ち着いていてなおかつ甘酸っぱい雰囲気が似合いますね

ちゃんとお守りうけとってるフクのトレーナーよ

女の子ハゲにしといて恥かかせるわけにはいかないからな…

今からお守りなんかじゃ負けた気がするっていう最高にグラスメンタル

週2〜3スペに見えた

鎖かたびらみたいにじゃらじゃらお守り付けてたんだろうなフクトレ…

ウマ娘は鼻がいいって割と共通認識なのか
本人に気付かれないでマーキングするのいいよね…

フクお前…

フクトレはもう完全にフクの匂いに包まれてるんだな…

この掲示板で恥じらうグラスは貴重なので天然記念物として保護したい

ニ回目…一回目はいつなんです…

あのカバンに缶バッジつけ過ぎて反応装甲みたいになってるやつ思い出した

やっぱグラスはこういうのだよな…すごくいい…

どっかで情報が錯綜してフクは開運グッズか何かと勘違いしてない？

そんな陰毛をお守りにするみたいな

馬の尻尾ってほとんどが毛なんだよな
ほぼ丸ハゲにしたフクお前…
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フクのトレーナーはクソっなんで俺が…とかぼやきながら律儀につけてる男よ…

グラスはこういう独占力を発揮するのが似合うな

>フクトレはもう完全にフクの匂いに包まれてるんだな…
そりゃはんにゃかハッピーだろうよ

グラスの怪文書はなんというか…情緒があるというか…風情があるというか…いいな…

>どっかで情報が錯綜してフクは開運グッズか何かと勘違いしてない？
善意100％だと思う
そして周りにメンタル疑われそう

さてはこのトレーナー全部わかっててやりたいようにやらせてんな？

色々考えた結果がこれなのまだアプローチに幼さが残っててかわいい

フク…何やってるんだフク…

ギリギリ可愛らしいラインでよかった…

学生の女の子が見た目的に割と気にする尻尾丸ハゲにしてきたら受け取るしかないと思う

ウマ娘視点だとフクトレは全身キスマークみたいな状態なのか

>さてはこのトレーナー全部わかっててやりたいようにやらせてんな？
あいつはそういうこと
する

ウマで秘密のおまじないっていうワードで遠野物語で読んだオシラサマっていう神様思い出した

お守りも持ってないのにグラスの匂いがプンプンするトレーナーは絶対生徒からはやってると思われてるよね

全然関係ないがこの世界バイオリンの弓にウマの毛使うのかな…

怪文書のグラス専属トレーナー像が振り幅あるとは言えみんな強キャラ感すごいのはなんなんだろうな…
やっぱグラス自身が強者ゆえなんだろうか

>お守りも持ってないのにグラスの匂いがプンプンするトレーナーは絶対生徒からはやってると思われてるよね
なんならしっぽ由来の匂いとバレたらその辺りに顔突っ込んでると思われるからね

>怪文書のグラス専属トレーナー像が振り幅あるとは言えみんな強キャラ感すごいのはなんなんだろうな…
>やっぱグラス自身が強者ゆえなんだろうか
グラスを御せる時点で相当なやり手で覚悟があるからな

グラスのトレーナーなら背後で顔真っ赤にしてるグラスの気配くらい察知できるかもしれない