目が覚める、シャワーを浴びる気力もないので
取り敢えず顔を洗って鏡を見る。
そこには淀んだ顔と、惨めったらしいのに未練が籠った
指輪を首にかけたボクがいる。
ただ、起きてもすることは無い
無気力な一日がそこにあるだけだ。
走り抜けた先に、誰もゴールに立っていないのに
如何して走れるだろうか？
帝王でいられなかったボクは、金だけ持って全てから逃げた。
あの優しさを向けられるだけで心が壊れそうだ。
だから、もうそこに居る事はできなかった

「トレーナー」
意味もなく呟いて、それを活力に動き出す
今日は買い出しをする予定がある。
こんな抜け殻でも飯がいる、悲しいほど味を感じなくても。
クローゼットを開くと、捨てられない勝負服と共に
飾り気のない服が数着、雑に選んで着る。
帽子を深く被りボクを隠して外に出る
逃げたというのに、未練に溢れた生き方で
今日もまた自己嫌悪するだけだった。
外を歩くと、トレセンに行く生徒とすれ違うのも
忘れきれない未練の一つだろう。

買い物も終えて、一日に必要となる事柄を終えたボクは
つまらない部屋を出て街を意味もなく歩く。
思い出は辛く心に突き刺さると同時に、活力を残す。
生きて行くための未練がないと、ボクは地に足付けていられない。
そうして暗くなるまで思い出に浸っていると
目の前にトレーナーを見た、久々に見る幻覚だ。
昔は余りにも辛すぎて幻覚すら見えていたが…
また限界が来てるのかもしれない。

「テイオー」
幻聴付となるとまぁヤバいなコレ。
「久しぶり、だな」
ガッツリ近づいて来て、ボクを見る
澄んだ目に映る…映る？鮮明すぎない？幻覚なのに？
「だ、大丈夫かテイオー？」
「ト、レーナー？」
久々に声が出た、会ってしまった。

「…」
「…」
沈黙がその場を支配した、公園のベンチに二人並ぶのに
そこには声の一つも無く、地面を見ていた。
「なあ、テイオー」
「ん、あう、ん」
「ずっとその、どうして居なくなったか考えてたんだ」
「…うん」
「その指輪が、答えなのか？」
ボクの首に掛ける指輪が溢れて居た
見られてしまった、こんなものを。

「ごめん、テイオー」
「トレーナーは悪く、ないよ」
「こんなんだから、俺は…本当に」
良いじゃないか、そんな所も受け止めてくれる人が
居たというのは、素直に祝福した事だったんだ。
「…っと、すまん、ただその…久々に会えてよかった」
「っ…ボクもだよ」
「なあ、連絡先、いいか？」
断りたかったけど、ボクはまたそんな未練に手を伸ばして
掴んでしまった、もうボクのトレーナーじゃないのに。
「ありがとう、テイオー」
そう笑う彼の手には、何もなかった。

狭い部屋で、彼を想ったが
冷静な頭の中では後悔よりも疑問が残った。
どうして出会ったのか、なぜ何も付けて居なかったのか。
都合のいい考えが繋がろうとしている
嗚呼、そんな事があり得るだろうか？
でも、彼は指輪に何故気付くのか、そういう事じゃないのか？
居ても立っても居られず、ボクは今一度
仮面を被る、帝王にしてくれボクを今だけは。

トレーナー、今日はどうしてあそこに居たの？
ーちょっと思い出して、行ってみたんだ
ちょっとと言うには遠くない？
ー散歩ついでだよ
でも、汗だくだった
ー…いや、そうだな、少しあってな
話してもいいよ、いろいろ迷惑かけたし
ーそう、だな…

そうして聞いた話を見てからボクは
昏い歓喜を抑え込むのに苦労した、涙も拭いた。
この数年のうちに、彼は離婚した。
あの情熱に彼女は付いていけなかったらしくて
彼は自分が悪かったと言っていた。
どうしてここまでやれたのかわからないけど…
慰め会なんてものすら提案して通せた程に
今のボクは、浮かれていた。

待っててよボクのトレーナー
君が宙ぶらりんになっているのなら
今度は僕が繋ぎ止めるよ。
君の思い出に生かされてたボクが全て返済するから
今日という日の為に、ボクは夢を見て、苦しんで
そして待っていたんだね。
…愛してるよ、トレーナー

夢破れる姿は美しいとも思っているトレーナーでした

脳が再生する前に完成したテイオーいいよね…

なんでみんな幸せになれないのさぁ！

>脳が再生する前に完成したテイオーいいよね…
それは歪というのではないか…？

失う辛さを知った二人なら傷を舐め合って生きていけるさ

ここから逆襲劇が始まればいいんだけどな…

走れテイオー

ちなみにある程度時間経ってるので少しだらしない体つきのテイオー姉さんになってる想定です

>ちなみにある程度時間経ってるので少しだらしない体つきのテイオー姉さんになってる想定です
むっ！

テイオーはしっとりが似合う

テイオー怪文書三つある…

どうかさっき書いてた光のテイオーと合わせて読んでくださいな、どっちも夢オチに出来るしね！

なんだいなんだい今夜はテイオー怪文書が豊作じゃないか