「だいたん……？」
「小学生レベルかい、君は」
「ご教授願います」
「ある比率で液体と粉末固体粒子が混合されている系において急激なせん断刺激を加えると系が固体のような抵抗力を呈する現象だよ」
「……わかった」
タキオンは私の相槌も聞かず、内側に油性ペンで線を引いたバケツに水を湛え、ビニールプールに注ぎ込んだ
「それぐらいの操作なら俺がやるよ」
「そうかい、じゃあこれをあと3杯だね、よろしく頼むよ」
タキオンは蛇口を全開にして子供達の元へ駆けて行った、バケツの取手を握る、タキオンは軽々と注いでいるように見えたが、しっかり膝を使わないと持ち上げるのも困難だった

「ウワーッ！沈むーッ！」「足が抜けないよぉ〜！」
タキオンは子供達の阿鼻叫喚をニヤニヤしながら眺めている
「焦って足を持ち上げようとすると余計に固まるよ、仕方のない子だな、ほら」
タキオンはビニールプールでこの世の終わりみたいな顔をしている子供達をひょいひょいと救出し、足を洗うための水を張ったタライの前に並ばせた
「意地悪だなぁ」
「なぁにここからさ、諸君！今から手本を見せてあげよう」
タキオンはブーツと靴下を脱いで裸足になると、ビニールプールの前で前傾姿勢を取った
「そらっ！」
タキオンがビニールプールの水面上で足踏みを始めた、コッコッコッコッとコンクリートを叩くような音がする
「すごーい！」「なんでー！」
「水面を叩くようなイメージで走るんだよ、正しいフォームでやらないと足を痛めるがね」
子供達にもいまいち原理は伝わって無いようだが、とりあえずタキオンは子供達の尊敬を集める事ができたようだ

その後液体窒素でバラを凍らせたり、ニンジンで釘を打ったりした後、タキオンは分厚いガラスでできた容器を取り出した
「これは真空発生装置……！空間から空気を抜き去り、言わば擬似的な宇宙空間をここに作り出す装置だ……！」
子供達がどよめく
「すごい！」「破裂しちゃう……ってコト？」
「その通り！もし我々が小さくなってここに閉じ込められたら……おお、口に出すのも恐ろしい……」
ぐずりだす子供も出てきた、タキオンに『いい加減にしろ』とアイコンタクトを送ると、『わかったよ』と返してきた
「今日ここに入る哀れな非検体は……これだ」
マシュマロだ、なんでだろう
「マシュマロ？」「なんでー？」
「まぁまぁ見てからのお楽しみさ、じゃあ実験開始だ」

装置にマシュマロを数個放り込み、厳重に密閉する、タキオンが装置の電源を入れると昔の掃除機みたいな音を立て、マシュマロに変化が現れた
「えーっ！」「おっきくなってる！」
「ふっふっふっ、不思議だねぇ！」
「なんでー！」「どうなってるのー！」
「これはマシュマロを無限に増やす事のできる、お菓子メーカーの存続を脅かすわが国の最高機密なんだ、易々と教えてあげることはできないよ、もし自らその答えに辿り着いたのなら私宛に送ってきたまえ、答え合わせをしてあげよう」

「あー……柄にもないことをして疲れたよ、肩を揉んでくれ給え」
「本当によく頑張ってくれたよ、お疲れ様」
「あ゛ーー……なんだい素直に、珍しいな、それに、労う気持ちがあるなら私が何も言わずとも紅茶を入れてる筈だろう？」
タキオンに少しでも譲歩の姿勢を見せたのを後悔しながら、ティーセットを用意し、手鍋に水を張ってIHにかけた
「あーっ！」
「どうした！？」
「焼きマシュマロ！一度やってみたかったんだ！」
応接机の上には実験の残りのマシュマロが袋に入って転がっていた
「海外のとある4コマ漫画でよくやっててね、枝に刺したマシュマロを焚き火にあてて……」
「火って、ここIHしかないけど」
「えーっ！」

「えーって、毎日使ってるだろ」
「モルモットくん、支給焚き木を……」
「ダメだよ、ただでさえ前ボヤ騒ぎ起こしてマークされてるんだから」
「そんな……」
耳はへたり込み下唇を噛み、そして目線はマシュマロを向いている、タキオンはどうやら本気で落ち込んでいるようだ

「……そうだ！君は紅茶の準備をしていてくれたまえ！」
タキオンがトレーナー室を飛び出した、何を思いついたのだろうか
ぐらぐらに沸いたお湯でティーポットを温め、茶葉を測る、すかさずお湯を注いで……蓋をして4分待つ、タキオンとのティータイムではいつも4杯分を入れている
「あったよモルモットくん、新品のが！」
タキオンが戻ってきた、手にしているのは十何年ぶりに見たかわからない、アルコールランプだった

「これなら火事の心配もないよ」
「ガスバーナーならここにもあるけど、それじゃだめなの？」
「はぁ〜……なんて風情のないモルモットなんだ、君は」
焚き火とアルコールランプとガスバーナー、風情の閾値がどこにあるか私には推し量ることが出来なかった、タキオンは鼻歌を歌いながらアルコールランプに燃料を注いでいる、私も紅茶を用意しよう
「割り箸の先端を尖らせてマシュマロを刺すとは、よく思いついたね」
「スライム作りで使ったやつが残ってたから」
今私は、紅茶の香りと理科室の臭いが漂う中、タキオンと一緒にアルコールランプを囲んでいる、数秒すると、そこに甘い香りが加わった
「おやおや、火力もちょうど良かったみたいだよ」
「発見だね」
タキオンはとろけたマシュマロを不用意に自分の口に突っ込んだ
「はひゅいよー！」
先人の犠牲を胸に刻み、私はマシュマロを少し冷ましてから頬張った

以上です

ありがとう

幸せそうなタキオンを見るのは健康にいいとされる

ありがとう　いい薬です

たしかにタキオンは子供相手にノリノリになっちゃうだろうな…

たまにはあたたかな怪文書も良いものだ…ありがとう…

カタログで幼児退行タキオンかと思って身構えたけど優しい光だった

>「はひゅいよー！」
やる気↓

ふーふーして口に入れようとするとき「タキオンがお母さんになったらあんな感じなのかな」っておもむろに言うトレーナー

熱いよー！
冷たい紅茶がないと走れないよー！

タキオンとの平和な1日を摂取するのは今はまだ効かないがそのうち病気にも効くようになる

気の置けない関係いいよね…

ちなみにダイダランシー効果を発現できる食べ物が存在するぜ！

>ちなみにダイダランシー効果を発現できる食べ物が存在するぜ！
片栗粉とか？

子供の中にウオッカ混じってるのかと

>>ちなみにダイダランシー効果を発現できる食べ物が存在するぜ！
>片栗粉とか？
素材単位で言えばそうだけどマックイーンが好きそうな奴だ

>子供の中にウオッカ混じってるのかと
混じっててもおかしくはないな…

カスタードクリームかな

光ったモルモットくんは子供にめちゃくちゃウケそう

>「海外のとある4コマ漫画でよくやっててね、枝に刺したマシュマロを焚き火にあてて……」
スヌ…

銃弾防げるんだっけカスタード

>光ったモルモットくんは子供にめちゃくちゃウケそう
子供はメタリックと光るものが好きだからな…

タキオンしてぇな

>タキオンはビニールプールでこの世の終わりみたいな顔をしている子供達をひょいひょいと救出し、足を洗うための水を張ったタライの前に並ばせた
母性を感じる

マシュマロは真空で膨らんだ後空気入れたら超縮むんだよな…子供の頃なんか興奮したのを覚えている

子供光らせようとしないだけ良心の塊

>子供光らせようとしないだけ良心の塊
まあまず子供のデータとってもなぁ…ってところはあるかと

だが幼いウマ娘だったら光らせたかもしれない…

アルコールランプはエモいけどガスバーナーはエモくないのはなんとなくわかる

>アルコールランプはエモいけどガスバーナーはエモくないのはなんとなくわかる
炎にゆらめきのような何かが足りない感ある

ありがとう
いい光です

モルモット君光らせるのはタキオンなりのマーキングなのかもしれん

紙コップコンデンサで小学生を感電させよう！

ナトリウムの塊をプールに投げよう！

>「あったよモルモットくん、新品のが！」
でかした！

>「ウワーッ！沈むーッ！」
ウオッカ…

>>「ウワーッ！沈むーッ！」
>ウオッカ…
嗚呼…いたのか…

科学教室がメインだこれ
めっちゃたのしそう

>>「ウワーッ！沈むーッ！」
>ウオッカ…
こういうことする

馬鹿ね…

カスタードクリームは銃弾すら止められるからな…