「母さん、味噌汁の具、これなに?」 俺は茶碗を持ったまま、諸星家のいつもの朝を当然のように始めた。いつものちゃぶ台、いつもの白米、いつもの納豆、そしていつもの——空気がピリつく予感。 父さんは新聞を広げたまま、目だけこっちを見て言う。 「……豆腐だ。落ち着いて食え、あたる」 母さんは箸をカチカチ鳴らしながら、俺の茶碗によそった飯の山を見てため息。 「なんだとおもったのこのバカ息子」 「絹ごし」俺が答えると母さんはばーっと大きくため息をついた。 隣でラムが、湯気の立つお椀をもって、にっこり——いや、にっこりの形をした圧をかけてくる。 「ダーリン、ウチとおなじのにすればいいのに」  アホタレ、朝から麻婆豆腐なんぞ食えるか。  油断したら感電するタイプの笑顔だ。俺は平然を装って納豆を混ぜる。  母さんが言う。 「で、今日もまた女の子に声かけるの? それともまた変なのに声かけて、交番のお世話になるの?」 「やだなあ、母さん。俺は健全な高校生だぜ? 若い女の子にしか声をかけんのだ。これ、世の真理!」 その瞬間、ラムの箸がピタッと止まった。 「……若い子?」 「そうそう、若い子。ほら、例えばさくらさんとか!」 父さんが「やめろ」と小声で言った気がしたが、遅い。俺の口はブレーキの壊れた自転車だ。 ラムが目を細める。 「さくらは年上だっちゃ」そうさくら先生は年上の美人保険医だ。あのおしりがたまらん。クールな顔立ちが最高だ。俺はにへらと笑う。 「年上? いいじゃん、ちょっとくらい! まあでもなあ、年上っつっても限度があるわけよ。これ以上はババ——そうこの母のように」 俺は反射で、母さんを指差した。 「え?」 父さんが新聞の影から顔を出した。 「……ダーリン?」 ラムの声が一段低くなった。 次の瞬間、母さんの箸が宙を切った。 ゴンッ! 「いってぇぇぇぇ!!」 世界が白くなった。いや、電撃じゃない。母さんの拳だ。まっすぐ脳天に落ちてきた。ラムの電撃より地味なのに、なんでこんなに星が飛ぶんだ。うる星どころじゃない。目の前が銀河。 母さんが仁王立ちで言う。 「誰がババアですって? それに誰が“この母”よ、“この母”!」 「いや待て待て待て! 今のは不可抗力! 俺の指が勝手に! いや俺の人生が勝手に!!」 父さんがため息をついて、味噌汁をすする。 「……朝食は戦場だな」 ラムは頬をぷくっと膨らませて、俺の顔を覗き込む。 「ダーリンは、口がすべりすぎだっちゃ」  すべってねぇよ!   俺は常に全力で走ってるだけだ!」 「ダーリン」  ラムが、俺の腕にぴとっとくっついてくる。  おいおい朝っぱらから密着サービスか、近所の目があるだろうが。もっとやれ。 「うちはダーリンと同級生っちゃ?」 「ああ、そうだな。名簿上はな」 「だのに、なんでダメっちゃ? うちも若いっちゃよ」 「ダメもなにも、俺はな……」  ここだ。ここで「お前が一番かわいい」とか言っちまったら終わりだ。  俺のガールハント人生が、今この交差点で幕を閉じる。  そんなの男子高校生としてあってはならん。歴史の汚点だ。 「興味がないんでな!」  俺は胸を張って言い放った。  うん、言った瞬間、自分の心がバキッて鳴った気がしたけど、聞かなかったことにする。 「……興味、ない?」  ラムの声が、ちょっとだけ沈む。  やめろ、その顔はやめろ。心が痛い。俺の中の何かが「ごめん!」って土下座してる。  だが表の俺は、鼻歌まじりに口笛なんか吹いちゃうわけだ。  ふふんふーん、余裕。俺は自由な男、諸星あたる。女好き、ガールハンター、束縛お断り。 (……無茶苦茶好きになりかけてるけどな!!)  心の中でだけ、全力で叫ぶ。  あの電撃女がいないと眠りが浅いとか、そんな事実、絶対に認めない。  あの笑顔を見ると胸があったかくなって、他の女と遊んでてもたまに顔がちらつくとか、そんなのは気のせいだ。きっと風邪だ。恋じゃない。断じて恋じゃない。  俺がわざと視線を前方に向けて、口笛を高らかに吹いていると—— 「なるほど」  ラムがぽん、と手を打った。 「興味が出ればいいっちゃね?」 にこーっと笑った。  あ、これ絶対ろくでもないやつだ。 「ちょっと行ってくるっちゃ!」  そう言うなり、ラムは足元からふわりと浮かび上がる。  制服のスカートが風をはらんでふわっと広がり、そのまま電柱よりも高く、木のてっぺんよりも高く、空へ空へ。 「ダーリンが、うちに興味持つようにしてくるっちゃー!」  手をぶんぶん振りながら、ラムはどこか遠くの方向へ飛び去っていった。  青空に、虎柄ビキニのイメージだけが尾を引く。実際には制服だけど、俺の脳内ではデフォルトがビキニなんだよ。しょうがないだろ。  ……で。 「何をしとるのだ、あいつは」  思わず口から漏れた。  興味が出ればいい?  どういう理屈だ。俺の興味のスイッチはそんな外付けでポンポン押せるもんじゃないぞ。  家に帰ったら、いつもの諸星家の居間に、見たこともない巨大な物体が鎮座していた。 「……なんだこれは」  マッサージチェアみたいな、でもなんかもっとこう、宇宙っぽい感じの機械。座る部分が妙に光ってるし、アームみたいなのがいっぱい生えてる。怪しい。怪しすぎる。 「ダーリン! おかえりっちゃ!」  ラムが、いつもの虎柄ビキニ姿で——つまり、ほぼ下着みたいな露出度で——俺の目の前に飛んできた。  緑がかった長い髪が揺れて、その下からぴょこんと覗く二本の小さな角。そして、ビキニトップから溢れんばかりの胸が、俺の視界の中心を占拠する。 「さあ、ここに座るっちゃ!」  ラムが機械を指差す。その動きに合わせて、胸も揺れる。いや、見るな俺。今はそこじゃない。 「興味スイッチャーっちゃ!」  ラムがにこーっと笑う。 「そこに座ると、興味のない相手にメチャクチャ興味が出てくるっちゃよ!」 「はあああああ!?」  俺は思わず叫んだ。 「そんな馬鹿げたもんに座るわけがない! だいたい誰がそんな怪しげな……」 「いいから座るっちゃー!」  ラムの両手から、バチバチバチッと青白い電撃が迸る。  バリバリバリバリッ!!  全身が痺れる。足が言うことを聞かない。体がガクガクする。そして気がついたら、俺はその怪しげな椅子にどっかりと座らされていた。 「ほら、ちゃんと座ったっちゃ!」  ラムが満面の笑みで俺の目の前に立つ。  その笑顔の下に、虎柄のビキニボトムからすらりと伸びる太もも。腰のくびれから丸みを帯びた尻のラインが、こう、なんていうか、視界に焼き付く。 「これでダーリンは、うちに興味を持つっちゃ! 好き好きってなって、キスとかしたくなるっちゃよ!」  ……で。  しばらく座らされた俺は言った。 「……何も起きないんだが」  俺は椅子に座ったまま、腕を組んで言った。 「おかしいっちゃねー」  ラムが首を傾げる。その動きで髪が肩から滑り落ちて、白い首筋が見える。いや、見えてるけど、それはいつも見えてるし。  俺は立ち上がって、ラムを見下ろした。 「こんな機械で好きになってたまるか」  だいたいな。  お前に興味は、本当は、ありありだわい。心の中で強く思う。  (ラムはかわいい女の子だ。うちの母親じゃあるまいし)  目の前にいるのは、虎柄ビキニで俺を見つめる宇宙人だ。  緑の髪、角、そして柔らかそうな胸のふくらみ。腰のくびれ、丸みのある尻。いつも俺を追いかけてきて、電撃を食らわせて、それでも笑顔で「ダーリン」って呼ぶ。 「……ダーリン」  ラムが、ぽかんとした顔で俺を見ている。 「ったく。俺の気持ちは、他人に操作されるほど安っぽくねえんだよ」  そう言って、俺は居間を出ようとして——  ふと振り返ると、ラムがまだぽけーっとその場に立っていた。  虎柄ビキニの、馬鹿みたいにかわいい宇宙人が。 「……なに突っ立ってんだよ」 「ダーリン……今の、どういう意味っちゃ?」 「さあな」  俺は肩をすくめて、部屋に戻った。  どういう意味も何も、そのまんまの意味だ。  でもそれを言葉にするには、まだ俺の男のプライドが邪魔をする。  だから今日も、俺は逃げる。  ラムから逃げて、自分の気持ちから逃げて——でも、逃げ切れないことだけは、もうわかってる。 最近、俺はこっそりと、あの機械に座るようになっていた。  ラムが持ち込んだ"興味スイッチャー"とかいう怪しげなやつ。居間の隅に置きっぱなしになってるそれに、誰もいない夕方、俺は腰を下ろす。 ブルブルブルブル……  座面から伝わる振動が、腰から背中へと広がっていく。 「おお……」  思わず声が漏れる。  これ、気持ちいいじゃねえか。  振動が背骨に沿って上へ下へと伝わり、肩の凝りがほぐれていく感覚。腰のあたりがじんわりと温かくなって、全身の力が抜けていく。 「ただのマッサージ機じゃねえのか、これ」  俺は目を閉じて、椅子に身を委ねた。  ブルブルと揺れる振動が心地よくて、頭の中がぼんやりしてくる。 「あー……気持ちいい」  何も考えたくなくなる。  学校のこと、明日のこと、女の子のこと。  ラムのこととか……ラム?  ああ、そういえばラムっていたな。  なんかどうでもよくなってくる。  ブルブルブルブル……  振動が続く。  俺は目を閉じたまま、ぼんやりとその感覚に浸っていた。 ***  その日の夕食。  いつものちゃぶ台に、いつものメンバーが集まる。  父さん、母さん、ラム、そして俺。  母さんが味噌汁をよそいながら言う。 「はい、今日は豚汁よ」  父さんが箸を取る。 「おお、豪勢だな」  俺は茶碗を持ち上げて、飯を口に運ぶ。  ……うん、いつもの味。なんか俺だけ妙に量が多いような。気のせいか。  そこへ、ラムがぽつりと言った。 「うち、宇宙に帰るっちゃ」  箸が止まった。  父さんと母さんも、顔を上げる。  以前なら、俺はここで「どうした!?」とか「なんでだよ!」とか、色々聞いていたはずだ。  ラムが帰るって言ったら、心臓がぎゅっとなって、慌てて引き留めようとしたはずだ。  でも—— 「ふーん」  俺の口から出たのは、それだけだった。  ラムが、じっと俺を見る。 「……なんか変っちゃ、ダーリン」 「変? 何が」 「興味スイッチャーが正確に作動すると、愛する二人以外はなかなか近づけなくなるとかあるけど……」  ラムが首を傾げる。 「あれは壊れてるはずっちゃし……」  俺は箸を持ったまま、ふと思いついて言った。 「俺に興味ないなら、逆に座ってみたらどうだ」 「え?」 「あの椅子。お前が座れば、俺に興味出るんじゃねえの」  何を言っているのか、自分でもよくわからない。  ただ、頭の中がぼんやりしていて、言葉が勝手に出てくる感じだった。  母さんが、済ました顔でお茶を啜りながら言う。 「そうねえ。試してみたら?」  母さんの顔は、いつも通りだった。  少し面長で、目元に小じわがあるけれど、昔は美人だったんだろうなと思わせる整った顔立ち。着物姿が似合う、細身だけどちゃんと肉のついた体つき。腰のあたりに女性らしい丸みがあって、それが座っている姿勢だとよくわかる。 「母さんも賛成か」 「別に。ラムちゃんが帰るっていうなら、それもいいかもしれないし」  母さんはそう言って、また茶を啜る。  いつもなら「ラムちゃんが帰るなんて寂しいじゃない」とか言いそうなのに。  ラムが、俺と母さんを交互に見て—— 「……なんか、おかしいっちゃ」  そう呟いた。  でも俺は、なんとも思わなかった。  ただ、豚汁が美味しいなと思いながら、箸を動かし続けた。  頭の中が、ぼんやりと、霞んでいた。 ラムは、その夜、興味スイッチャーにちょこんと腰を下ろした。 「……なんともないっちゃ」  しばらくブルブルと振動を味わってみたものの、特に様子が変わったふうもなく、ラムは肩をすくめて立ち上がると、いつものように俺の部屋へ飛んでくる。  畳の上に寝転がって漫画を読んでいた俺の前に、ラムがごろん、と転がり込んできた。 長い髪が畳に広がり、角がかすかに光を反射する。 「なんか、レイに会いたくなったっちゃね」  突然出てきた名前に、思わず顔をしかめる。  レイ、ラムの元彼だが、毛虫でも扱うようにラムは嫌ってたはずだ。あんな男に会いたい? でもなんだか気持ちがぼんやりする。会いたければいいじゃんかって。 「あの興味スイッチャーね、絶対エッチとかしたくない相手ほど、強い力が働くって説明書に書いてあったっちゃ」 「ほーう」  俺は肘枕をしながら、ラムの顔を覗き込む。  そのでかい瞳が、天井をぼんやり見ている。 「つまり今、お前はあのブタのことが好きになったってわけだな?」  ラムががばっと起き上がる。 「そういうこと言うと、嫌いになるっちゃよ!!」  頬をぷくっと膨らませて、腕を組んでそっぽを向く。  その動きに合わせて胸がむにっと持ち上がるのを、俺は見ないふりをした。 「でもまあ……幼馴染だし」  ラムは少し声を落として続ける。 「レイはレイで、放っておけないところもあるっちゃ。ああ見えて、寂しがり屋だし」 「ふん。ブタの世話も大変だな」  俺がそう言うと、ラムはくすっと笑った。  少しだけ、目尻が切なそうに見えたのは気のせいか。  沈黙が降りる。  ふと、ラムがこちらを向いた。 「ねえ、ダーリン」  そう言って、ラムは胸元から小さなペンダントを取り出した。  金属ともガラスともつかない、不思議な光を放つ小さな球体が、チェーンの先で揺れている。 「あたしの宝物」  ラムは、ペンダントをそっと握りしめてから、俺の手の上に落とした。  冷たくて、少しだけ脈打つような感触が指先に伝わる。 「大好きだったダーリンに、せめてものプレゼントっちゃ」 「だった、ってなんだよ」  思わず言い返すと、ラムは目を閉じて、にこっと笑った。  その笑顔が、いつもの騒がしいラムじゃなくて、どこか静かで、胸の奥がきゅっとなる。  気づけば、俺はラムの手首を掴んでいた。  ぐいっと引き寄せると、ラムの身体がふわりと倒れ込んでくる。  細い肩。軽い体温。すぐそばで聞こえる心臓の音。  俺たちは自然に、抱き合う形になっていた。 「……バカ」  自分に向けて言ったのか、ラムに向けて言ったのか、よくわからない言葉が漏れる。 「ダーリン」 ラムの腕が、ぎゅっと俺の背中に回る。  角が俺の顎に軽く当たって、くすぐったい。 「ありがとうな、ラム」  気づいたら、その言葉が口から出ていた。  男がどうとか、プライドがどうとか、そんなものは全部どこかへ飛んでいった。  ラムは俺の胸に顔を押し付けて、小さく笑った。 「……うちの方が、ありがとっちゃよ」  部屋の灯りが、二人の影をひとつに重ねていた。 ラムが宇宙に帰ってから、正直もっとこう、ドラマチックで泥臭い展開になると思ってた。泣きながらシャトルを追いかけるとか、向こうの親父が出てきて戦争になるとかさ。だけど、現実は拍子抜けするほど淡々としてやがる。  あいつ、たまにひょっこり戻ってくるんだ。戻ってくるのはいいんだが、俺に抱きつくわけでも電撃を食らわせるわけでもない。真っ先に居間の隅にあるあの「興味スイッチャー」にどっかり腰掛けて、ただブルブル揺られてるだけ。 「あ、諸星くん。帰ってきたんだ。……じゃ、またね」 「諸星くん」だとよ。あんなに「ダーリン、ダーリン」って耳元でうるさかったのが嘘みたいだ。そのまま、何が楽しいのか満足したような顔をして、空へ飛んでいっちまう。あいつのいなくなった居間には、あの革張りの不気味なマッサージ機だけが、主を失ったみたいに残される。  で、問題はあいつがいないときだ。  最近、学校から帰ってきてあの椅子に座ろうとすると、座面が妙にぬるぬると濡れていることがある。なんだこれ、ラムの奴、座りながらジュースでもこぼしてんのか? とか思うんだが、決まってそんな時、母さんはシャワーを浴びてるんだ。 「あら、あたる。お帰りなさい、早かったわね」  風呂上がりで上気した顔の母さんが、いそいそと買い物の準備を始める。 「バカ息子。今日は何が食べたい? ラムちゃんもいないし、たまには奮発してあげてもいいわよ」  母さんのその、なんだか妙に浮き足立った雰囲気が、今の俺にはどうにも鼻につく。早く一人になりたくて、俺はカバンを放り出した。 「……ステーキ。肉」 「そう、ステーキね。わかったわ、いいお肉買ってくるから。お父さんには内緒よ」  母さんは鼻歌まじりに、買い出しのバッグを提げて玄関へ向かっていく。  ふと、その背中が目に入った。買い物に出かけるだけだってのに、妙に腰をくねらせるような歩き方。あの後ろ姿……あんなに尻の形、はっきりしてたっけな。  母さんの足音が遠ざかり、玄関のドアが閉まる。俺は吸い寄せられるように、あの「興味スイッチャー」に腰を下ろした。  さっきまで誰かが座っていたような、気味の悪い生ぬるさがズボン越しに伝わってくる。  スイッチを入れる。  ブルブルブルブル……!  全身に細かな、それでいて容赦のない振動が走り始めた。 「……ああ、これだよ」  思考が溶けていく。ラムのこと、学校の女子のこと、全部がどうでもよくなる。ただ、さっき出ていった母さんの、あの無防備な後ろ姿だけが脳裏に焼き付いて離れない。 (……ダメだ、母さんだぞ。あんなの、ただのババアじゃねえか)  そう思おうとするのに、機械の振動が俺の理性をバラバラに分解していく。  股間に熱い血が、暴力的な勢いで集まっていくのがわかる。ズボンの中が、どうしようもなく窮屈で、痛い。ちんぽが固くなってくる。なんだこれ。 「……っ、くそっ……」  ビクンと、下半身が跳ねる。  勃起が、制御できない。ズボンの生地が擦れるだけで、頭の芯が痺れる。視界がぼやけて、目の前が白くなる。  母さんの顔が、ぼんやりと浮かぶ。風呂上がりの、少し頬を赤らめた顔。湿った髪。細い首筋。そして、あの尻のライン——  パンパンに張った熱が、もう限界だった。  のどがかわく。チンポさすると、いっぱい出た。 それから数日後。 父さんや母さんが家にいるときは興味スイッチャーも使えない。頭を冷やすために散歩に出た。 夜の帳が下りた友引町は、街灯の乏しい路地裏に入ると、墨を流したような暗がりに支配されていた。吐き出す息は白く、指先をポケットの奥で丸める。 「おー、さむいさむい」  自分の声が、凍てついたアスファルトに反射して妙に空虚に響く。なんだか俺はどこか別の世界にすり替わっちまったみたいなきがするなあ。 やり場のない熱を冷ますように、俺はあてもなく夜道を彷徨っていた。  ふと、児童公園の片隅、積み上げられた土管の陰から、夜の静寂を切り裂くような音が聞こえた。  ――ズチュ、ドクン、という、肉と肉がぶつかり合い、粘つく液体が混ざり合う、生物的な鼓動。 「……なんだ?」  俺は息を殺し、土管の影へと這い寄った。この諸星あたるの興味をひくとは、やるな・  しかしそこで繰り広げられていたのは、やるなどころの騒ぎではなかった。  空き地の裏の土管に隠れるように黄色と黒の縞模様の化け物が腰を動かしていた。レイだ。牛のような、虎のような、そして豚のような醜悪で力強い異形の姿。その太い腕が、折れんばかりに一人の女を抱きすくめていた。 「あ……ん、あ、あ、あああっ!」  ラムだった。  だが、俺の知るラムじゃない。虎柄のビキニは無残に引き裂かれ、剥き出しになった乳房は、レイの荒い鼻息を浴びて赤らんでいる。その先端、小豆色の乳首は、冷たい夜気に晒されて硬く尖り、レイの胸毛に擦れるたびに、ラムは舌を突き出してわなないていた。乳房が快感にしたがってぶるぶる震える。 「ぬううおおお、レイのちんぽ、でっかいい……!」  ラムはレイの野性味溢れる顔を両手で掴み、狂おしいほど深く舌を絡め合わせている。唾液が糸を引き、二人の唇の間で銀色に光った。 「レイ、愛してるっちゃ……レイのこれが、うちのおまんこもっとぐりぐりってしてえ……!」  レイの股間から突き出されたそれは、まさに動物だった。紫がかった熱い肉塊が、血管を浮き上がらせて怒張し、ラムの、かつては可憐だった秘部を無慈悲に押し広げている。  何度も何度も、レイがその巨根を突き入れるたびに、ラムの女陰は小陰唇から大陰唇まで反り返り、溢れ出した愛液が、レイの陰毛をベタベタに濡らしていた。  ラムはでかい尻を、レイのチンポのうえでぶりぶり振っていた。  腰つきは野生を増し、肉厚に膨らんでいる。  レイの猛烈なピストンを受け止めるためか、その尻肉は激しく波打ち、打ちつけられるたびに「パンッ、パンッ」と乾いた、それでいて重い音を響かせていた。 「おっぱいの裏まで、ちんぽいいっちゃああああ! もっと、もっと壊してっちゃあ!」  ラムは狂ったように腰をグラインドさせ、レイの隆起する筋肉にしがみつく。彼女の指先がレイの背中に食い込み、爪が皮膚を裂く。よだれが遠くからでもよく見えた。  絶頂の瞬間、ラムの身体は硬直した。おおっ、おおおっとあえぎ、口端から涎を垂らしながら、彼女の秘部がレイの巨根を千切らんばかりに締め上げる。ぎゅっぎゅっと音が聞こえそうなくらい。 「あああああ! イク、イク、イッちゃうううう!!」  凄まじい噴水のような愛液が土管の壁を濡らし、ラムは全身を痙攣させてレイにしがみついた。  俺は、土管の影でその一部始終を見つめていた。  不思議なほど、怒りも悲しみも湧いてこない。ただ、目の前の光景が「正しい」のだという、奇妙な納得感だけがあった。 「……よかった、よかったな、ラム」  俺は独りごちた。  ラムは、あの美しくてうるさかったラムは、ようやく自分にふさわしい「獣」を見つけたんだ。俺のようなアホな高校生じゃなく、自分の本能をすべて受け止めてくれる、剥き出しの暴力的な愛を。  俺は静かに立ち上がり、二人の狂乱を背にして歩き出した。 学校は相変わらず退屈だ。 「諸星! 貴様、昨日の放課後、何人の女子に声をかけた!」  面堂が、いつものように意味のわからん対抗心を燃やしてくる。こいつ、本当に学ぶってことを知らないのか。 「さあな」  俺は教室の窓から外を眺めながら、適当に返事をした。どうでもいい。面堂とどっちがモテるかなんて話、なんかむなしい。そんなことより—— (早く帰りてえ)  家に帰って、あのマッサージ機に座りたい。それだけだ。 *** 夕日が差し込む通学路を、俺は競歩の選手も真っ青なスピードで駆け抜けていた。  頭の中にあるのは、あの「椅子」のことだけ。  面堂のツヤツヤした顔も、しのぶの怪力も、全部どうでもいい。ただ、早くあの革張りの感触にケツを預けたい。それだけで頭が沸騰しそうだ。 「たっだいまー!」  勢いよく玄関の戸を開ける。  すると、台所からパタパタとスリッパの音がして、母さんが顔を出した。  いつもの赤茶色のエプロンに、くたびれた黄色いシャツ。手にはネギを持ってる。  最近母さんを見るとドキドキする。これをおさえるためにも、あの興味スイッチャーに座らないと。 「あら、あたる。早かったじゃない」  母さんがあきれたように言う。なにを驚くのだ母上よ。 「今日は地球の重力がいつもより強くてな! 早く帰らないと潰れちまうのだ!」 「はいはい。あんたの脳みそが潰れてるのは今に始まったことじゃないでしょ。あ、そうだ。あとで買い物付き合ってちょうだい。重いもの買うから」 「えー? デート」  俺がからかうと、母さんが顔を赤くして、ちがうわよ、バカ、とか言う。これってもしかして脈があるの? ってバカか。母親だぞ母親。  まあいいや、買い物か。まあいい、それまでは俺の時間だ。  俺は「んじゃあとでー」と適当な返事を投げ捨てて、一直線に居間へ飛び込んだ。  興味スイッチャー。  夕日を浴びて、茶色い革が鈍く光ってる。  見ただけで、喉がカラカラになる。股間がズボンの中でビクンと跳ねる。 「待たせたな、マイ・ハニー」  俺はニヤニヤしながら、素早く服を脱ぐ。ベルトを外し、ズボンを落とし、パンツも脱ぎ捨てる。シャツは着たままだ。この方がなんかこう、興奮するんだよな。  白いシャツの裾から、俺の白い尻と、もうすでに半分立ち上がってるチンポがこんにちはしている。  鏡で見たら相当マヌケな格好だろうけど、今の俺にはこれが正装だ。  ゆっくりと、座面に腰を下ろした。冷たい革が、内太ももに吸い付く。それだけで、背筋に電流が走ったみたいにゾクゾクする。尻の肉がむにゅっと座面に沈み込み、冷たさと柔らかさが同時に俺を受け入れる。 「んんっ……!」  声が漏れる。なんか、においがする。甘いような、酸っぱいような。石鹸の匂いと、汗と、もっと生々しい……。  母さんの匂いだ。  そう感じた瞬間、俺のがさあ、一気に勃起したんだよ。  チンポが血管を浮き上がらせてパンパンに怒張する。  皮が完全に剥け、赤紫色の亀頭が空気に触れて敏感になっている。カリのふちがピリピリと痺れるようだ。 「おおっ、おお、かあさん、これ、かあさん」 声が震える。おしりの穴まで震える。おいおい感じすぎだろ諸星君。  猛り狂ったチンポの向こうにたたみの床が見える。亀頭の先端からは、我慢汁がとろりと溢れ、太ももを伝い落ちる。 「ふーっ、ふーっ……」  荒い息が出る。酸素が足りない。でも、足りないのは酸素じゃない。快楽だ。もっと、もっと気持ちよくなりたい。お、おちんぽ、いっぱいこすりたい。 「ふ、ふん、じつは今日は、とっておきがあるんだな」  椅子から起き上がると、俺の指が興味スイッチャーの背もたれの付け根を這った。  ぬるり。  指先が触れた瞬間、そこに“穴”が現れる。まるで俺を待っていたかのように、にゅるんと口を開く。  棒を入れるためだけに存在するような、淫らな穴だ。 つい昨日見つけたのだ。絶対入れてやろうと思っていた。昨日は母さんがいたのですぐ離れたけど、今日は関係ない。だって買い物行く前だし、時間あるし。  俺は椅子の上でごそごそと体勢を変え、うつ伏せになり、背もたれを抱きかかえるような格好になった。  白い尻が高く突き出され、無防備なアナルが空気を晒す。その下で、ギンギンに反り上がったチンポが座面を軽くこする。熱い竿が冷たい革に触れ、それだけで腰がビクンと跳ねる。  台所の方から、バタン、と母さんが冷蔵庫を開ける音が聞こえた。  いい、どうでもいい。  俺の顔が、自分でもわかるくらい甘く歪む。  腰を沈めると、チンポの先端がゆっくりと、その穴に飲み込まれていく。ざらっという感触が、すぐにぬるっとしたあたたかいものにつつまれる。お、お、ちんぽが、吸われる。  キツい。信じられないくらい、締め付けが強い。 「ん、おおおおおお……ッ!」  俺は腰を浮かせ、ギンギンに反り上がったチンポを、逃げ場のない穴へともっと押し込んだ。  プクリと膨れた亀頭が、入り口のひだを無理やり掻き分ける。カリのふちをねっとりと舐める穴。 「ん……ッ! これ、いい……っ、んああっ!」  もうとまんない。こし、うごく。  亀頭が、ズブズブと吸い込まれる。  ただの機械の隙間じゃない。まるで生き物みたいに、柔らかくて、湿っていて、俺の剛直な形に合わせて変形してくる。  カリの出っ張りが、内側のひだをずりずりと押し広げていく感覚。竿の皮がピンと張り詰め、敏感な裏筋が内壁にねっとりと擦れる。 「うっ、う……ここまでとは……ッ」  背もたれを強く抱きしめる。革の匂いと、そこに染み付いた母さんの匂いが混ざり合って、鼻腔を直撃する。ぐっちゅぐっちゅと腰が動く。  キツい。でも、痛くない。絶妙な締め付けが、竿全体をねっとりと包み込んで、逃がさない。 「ん! ん! はあっ!」  尻が上下に動く。太ももの筋肉が緊張して、腰が前後にスライドする。  ズプッ、ズプッ、ズプッ。  へこへこと、間抜けな音を立てながら、俺は椅子を犯している。いや、椅子に犯されている。どっちでもいい。もうわからない。  先端が何かに当たるたびに、脳味噌が痺れて、視界が白く飛ぶ。背筋がゾクゾクする。尻の穴がきゅっと締まって、それがまた快感を増幅させる。  俺は夢中で、目の前の背もたれにキスをした。  冷たい革に唇を押し付け、舌を這わせる。革の味と、母さんの体臭が舌に絡みつく。 「んむっ、ん……はー、母さん……ッ!」  違う、これは椅子だ。でも、匂いが、感触が、味が、俺を狂わせる。  母親がどうとか、常識がどうとか、そんなもの全部どうでもよくなる。  一心不乱に、腰を打ち付ける。  ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ。  音が激しくなる。呼吸が荒くなる。額に浮いた汗が、背もたれの革に滴る。透明な汗が茶色い革を濡らし、それが鈍い光を放つ。 「おおお、いい、これしゅげえかんじる……!」  竿の皮が擦れて、亀頭が内壁を抉って、尿道口がキュンキュンと刺激される。  玉袋が座面に叩きつけられるたびに、ビクンと全身が跳ねる。白いシャツが胸に擦れて、乳首が固くなる。 「はー、はー、母さん……母さん……!」  その言葉が、熱っぽい吐息と一緒に口からこぼれ落ちた、ちょうどその時だった。 「どうしたの? なんか呼んだ……?」  居間の引き戸が、ガラリと音を立てて開いた。  俺の腰の動きが、ピタリと止まる。  そこに立っていたのは、母さんだった。  赤茶色のエプロンを、黄色い長袖の服の上に着けている。スカートは落ち着いた青緑色で、足元はベージュのスリッパ。スーパーの袋を提げた、どこにでもいるごく普通の主婦の姿だ。  短めの茶色い髪が少し揺れて、その下の丸い目が大きく見開かれる。  母さんの視線が、俺の姿に釘付けになった。  白いシャツを羽織ったまま、下半身は完全に丸出し。しかも、怪しげな茶色のマッサージ機の座面にへばりつき、腰を突き出してへこへこと動かしていた息子。 「……あ」  母さんの顔が、みるみるうちに朱に染まっていくのがわかった。  目元がひきつり、口元がわなないている。 「あ、あんた……なにやってるのよッ!?」  甲高い声が、静かな部屋に響いた。  怒り? 呆れ? いや、それだけじゃない。その瞳の奥には、見てはいけないものを見てしまったという動揺と、奇妙な熱が揺らめいている。  俺は、ゆっくりと椅子から離れた。  ポン、と軽い音を立てて、俺の熱り立ったチンポが、椅子の穴から抜け出す。さっきよりでかいみたいだ。母さんが目を離せなくなるのも道理だ。  ぬらぬらと光る粘液が糸を引き、先端からポタポタと畳に滴り落ちる。ピンク色の亀頭はパンパンに腫れ上がり、赤黒い血管が浮き出て脈打っている。 「ひっ……!」  母さんが、短く息を呑んで後ずさりする。  その視線は、俺の顔ではなく、俺の股間で猛り狂うモノに吸い寄せられていた。  赤茶色のエプロンの下で、母さんの胸が激しく上下しているのがわかる。息が荒い。顔が赤い。 「くるな! 寄るんじゃないわよバカ息子! 早く服を着なさい!」  母さんが構えるが、その手は震えていて、足は畳に縫い付けられたように動かない。 「いいじゃん母さん。買い物行くまえに、ちょっと運動しよう」  俺はニヤニヤと笑いながら、一歩、また一歩と距離を詰める。  頭の中では警報が鳴り響いているはずなのに、聞こえてくるのは心臓のドラムだけだ。ドクン、ドクンと、血液が全身を駆け巡り、理性を焼き尽くしていく。  母さんが背中を向け、廊下へ逃げようとした。  その瞬間、俺の身体がバネのように弾けた。 「キャッ!?」  俺は母さんの背中に飛びつき、そのまま畳の上に押し倒した。  スリッパが片方脱げて、どこかへ飛んでいく。 「離しなさい! あたる! お父さんに言いつけるわよ!」  母さんが必死に身をよじり、俺の腕を振りほどこうとする。  黄色い服の袖が捲れ上がり、白い腕が露わになる。赤茶色のエプロンが乱れて、その下の青緑色のスカートがめくれ上がる。 「父さんに? いいよ、言えばいいじゃん。でもさ……」  俺は母さんの耳元に顔を近づけ、荒い息を吹きかけながら囁いた。 「俺のチンポ見てさー、ドキドキどきしちゃったりしてない?」  図星だ。  かーっと耳まで赤くなる母さんに、やっぱりだー、と笑った、うるさい、と叱られた。でも関係ないね。  俺はチンポを母さんの豊かな尻の割れ目に、服の上からゴリゴリと押し付ける。 「おかあさまー、もう……我慢できないよ、俺」 あまえながら俺は、母さんの青緑色のスカートの中に手を滑り込ませた。 「や、やめなさい! あんた何考えてるの!?」  抵抗がよわいなー。俺の手が、強引に母さんのスカートをまくり上げる。  そこには、俺が想像していた通りの、いや、それ以上に艶めかしい光景があった。  白い太ももが露わになり、その奥には、簡素な白いコットンのショーツが見える。だが、そのクロッチ部分は、すでにじっとりと湿って色が変わって、もじゃもじゃした陰毛が見えた。  そして、ショーツの端からはみ出すように黒々と毛のさきっちょも覗いている。 「い、いやっ! 見ないで! あたる!」  母さんが顔を真っ赤にして、両手で覆った。  でも、その足は俺を拒絶するように閉じるどころか、どこか誘うように力が抜けている。  見ちゃダメって言いながら、見られるのを待ってるんじゃないのか? 「見ないわけないだろ。だって、こんなにいい匂いがするんだから」  俺は、母さんの抵抗を無視して、でかい音でにおいを嗅いでみせる。いやあ、とすすりなく母のショーツの中に指を滑り込ませた。  剛毛で湿った陰毛の感触。そして、その奥にあるぬるりとした愛液。  熱い。そして、柔らかい。 「きもちいい?」 「い、いいわけないでしょばかむすこ」  声が震えてる、かわいいんだから。  ちゅっちゅとショーツの上からキスすると、母さんの口から、短い嬌声が漏れた。  身体がビクンと跳ねて、俺の顔を腿できつく締め付ける。  その間にも俺の指は、母さんのショーツを引き下げていた。年の割にあざやかなピンクの女陰が愛液で濡れてる。 「っ……! だめ、そこ……!」  母さんが身をよじるが、俺は構わず小さなぽっち、クリトリスをなめた。 「んううううううううっ!」  あとで聞くと、あんなことされたの初めてだったみたいだ。それよりもさ、母さんがすごい感じながら足で俺の頭をはさむのが、なんかうれしかったんだ。 「っんぐう! あたる……っ、やめなさいってば……!」  なめるごとに違った吐息を見せるかあさん。  もっとなめていたかっだけど、もう限界だ。はやくやりたい。この女とやりたい。俺は母さんの股から脱出すると、顔を唇に近づけて、母さんの顎を強引に上向かせた。とろとろに開いた唇を塞ぐ。 「んむッ……!」  舌をねじ込んだ。  唾液を貪り合うような、深くて乱暴なキスだ。母さんの口内は熱く、ねっとりと俺の舌に絡みついてくる。抵抗するふりをしながら、母さんの舌先が俺を誘うように動くのがわかる。  俺の手が、ついにブラジャーの中に潜り込んだ。  直接触れた乳房の感触に、脳髄が痺れる。  柔らかい。とてつもなく柔らかい。手のひらから溢れ出るほどの量感。そして、指先が触れた乳首は、すでにカチカチに尖っていた。 「……んぐぅッ……! あたるぅ」  唇が塞がれているせいで、母さんの声はこもった喘ぎになる。  俺は乳首を指でつまんで、こりこりと捏ね回した。母さんの膝がガクンと折れそうになり、俺の腕に全体重がかかる。  背中越しに伝わる母さんの心拍が、俺の胸を叩くほど激しい。  母さんの顔は真っ赤で、目はとろんと潤んで、口元からは唾液の糸が引いていた。 「……ねえ、母さん」  俺は耳元で囁く。 「俺の……童貞、卒業させてよ」  直球で言った。言っちゃった。  これ以上ないくらい最低で、最高に興奮する言葉。  俺の張り詰めたチンポを露出させ、母さんの目の前に突きつける。 「……はぁ……? バカ言ってんじゃないわよ……っ」  母さんの目が泳ぐ。俺のモノを見て、明らかに喉を鳴らしたのがわかった。 「やめなさい、バカ。親子なのよ……っ、絶対ダメ……!」 「いいじゃん。今更だろ。おかあさま」  母さんの抵抗は弱い。むしろ、されるがままに脚を開いていく。 「よくないわよ……っ、お父さんにバレたら……」 「バレなきゃいいんだよ。それに……母さんだって、したいんだろ?」  俺は亀頭を、濡れそぼった母さんの秘裂に擦り付けた。  熱い。  お互いの粘膜が触れ合った瞬間、電気が走ったみたいに身体が震えた。 「っ……あ……!」  母さんが短く叫んで、シーツを握りしめる。  先走りと愛液が混ざり合い、ぬるぬるとした感触が、俺の侵入を歓迎している。 「……お願い、母さん」  俺はもう一度、切実に頼んだ。  母さんの瞳を見つめる。そこにあるのは、母親としての理性と、一人の女としての情欲が激しくせめぎ合う色だった。  数秒の沈黙。  母さんの呼吸が乱れる音だけが聞こえる。 「駄目、絶対だめ」  そういってうつぶせになれば、大丈夫とでも思っているようだった。でもそんなのボクには関係ないんですよ、おかあさん。 「入れるよ」 「だ、だめっ……! あたる、お願いっ……! バカ息子!」  母さんが首を振って拒絶する。  でも、俺は知っている。その拒絶が、ただの建前だということを。  俺は、熱り立ったチンポの先端を、母さんの秘部にあてがった。  亀頭が、濡れた入り口に触れる。剛毛がチリチリと竿をくすぐる。 「ん……っ!」  母さんが息を呑む。  強引に尻の淡いに突っ込んで、俺は一気に腰を突き出した。 「ああっ……!」  母さんがぎゅっと目を閉じる。俺の剛直が、母さんの中をこじ開け、奥へ奥へと侵入していく。キツい。熱い。内壁が俺の形に合わせて、ぎゅうっと吸い付いてくる。 「はー、かあさん、はいっちゃったよ……」  母さんはブルブル震えている。泣いているのでなければ、きっと感じているのだ。  母さんの肉壁が、俺の竿をぎゅうぎゅうと締め付けてくる。  陰毛が俺の恥骨に押し付けられて、チクチクする刺激がたまらない。 「あたる……あたるぅ……ッ! あんたなんか……あんたなんか……ッ!」  母さんが、うつ伏せたまま吐き捨てる。口では罵りながらも、その肉体は俺を拒絶せず、むしろ貪るように吸い付いてくる。  エプロン姿のまま、俺の下で乱れる母さん。  その顔は、もう母親の顔じゃない。完全に女の顔だ。  俺は母さんの耳元でニヤリと笑った。 「やっぱり母さんも好きなんじゃないかー!」  俺はゆっくり腰を動かす。母さんの膣内がそれに呼応するようにうねった。  締め付けたり、緩めたり、まるで意思を持った生き物みたいに俺のペニスに絡みついてくる。 「……ぁ、あッ、そこだめ……っ! ばか、もう、きもちよくなるでしょ」  母さんの反応がいい場所を、俺のモノが正確に擦り上げる。教えられたわけでもないのに、俺の腰の角度と母さんの膣の形状が、パズルのピースみたいに完璧に噛み合っていた。  これが相性ってやつなのか。  俺が突くたびに母さんが甘い声を上げ、その声に煽られて俺もさらに深く突き入れる。リズムが自然と同期していく。初めてなのに、何年もこうしていたみたいな錯覚に陥るほど、二人の身体は馴染んでいた。 「……バカっ、あぁっ、んっ……激しい……っ」  快感が脊髄を駆け上がり、脳天で弾ける。  締め付けが強くなる。母さんの内壁が、俺の精を搾り取ろうと波打っているのがわかる。  俺は母さんの首筋に歯を立てながらうめいた。 「……っ、母さん、イクッ……!」 「……だめ、それはだめ……ッ!」  もう遅かった。 俺は最奥まで突き入れ、母さんの身体に押し付けたまま絶頂を迎えた。  ドクン、ドクン、と俺の男の茎から熱くたぎった液が注ぎ込まれていく。 母さんも同時に達したのか、何度も震えている。俺はきつく抱きしめた。  荒い呼吸が重なる。  俺は脱力して、諸星家の母の上に覆いかぶさったまま動けなかった。  しばらくして、母さんが俺の汗ばんだ髪を優しく撫でた。 「……満足した? バカ息子」  その声は、さっきまとは違って、どこか慈愛に満ちていた。でも、その瞳にはまだ情事の熱が残っている。  俺は「した」とこたえて、母さんの唇にキスをした。  今度は、母さんも素直にそれを受け入れた。  深く、長い口づけ。  それでも俺も母さんも、お互いに興味なんて全くないのだった。(続)​