彼らにとって他種は自分に利するものか、害なすものかの二種類しかない。 それは個としては弱い小鬼風情の、涙ぐましい生存戦略の一環であったろう。 利を得られるなら骨までしゃぶる。脅威ならば触れられる前にとっとと逃げる。 亜人というよりはむしろ、虫や何かの方によほど近いような行動原理だ。 彼女を見たとき、黄色い瞳は何かを示し合わせるようにお互いに視線を投げ合った。 正対する女は眼鏡越しに、自分の喚んだ幾人かの緑肌たちに、やわらかな微笑を向ける。 それは友好の証であり、新たな時代の召喚術への期待を込めたものでもあった。 がしりと強く握られる手――そこに彼女は彼らの粘ついた好意を感じ取った。 そして訝しがる間もなく、その腕は横から伸びてきた何本もの緑の腕に掴まれる。 体格そのものは、人間の子供と大差ない小柄な彼らは、しかしその握力と膂力、 内に込めたる悪意において、既に立派な“雄”である。 相手が信頼関係を結ぼうとしているのではなく、一匹の雌としか見ていないと気付き―― 腕を引き剥がそうとした時には、既に何もかもが、遅かった。 縦線の入った立体感のある胸の膨らみは、直に見ることによって更に興奮をそそる。 服の中に詰め込まれた、白く柔らかな女体――肉付きの良さは申し分ない。 一方で締まった細い腰は、なおのこと雌としての価値を引き上げるものであった。 長く艶めいた赤い髪が、小鬼たちの鼻先を弄ぶように軽々と躍る。 瞳と同じく薄ぼんやりと緑に光る髪先は、提灯めいて視線を引きつけてやまない。 当然のごとく、彼らは彼女を、その本来の目的に沿う形で使った。 肌と同じく緑色の性器、皮の剥けても見えるのは暗緑色の亀頭と鈴口だけだ。 両者が種の時点で違うことは何よりも明確に示されていたが、けれど――だからこそ、 異界を跨いでの混ざり子は、否応なしにもたさられてしまうものなのである。 女は小鬼たちが自分に向ける視線の意味を、服を剥ぎ取られる前に気づいてはいた―― 同時にその脳裏には、幼ささえ残る若い見目からは想像できないほど永い人生において、 幾度も彼女の側を通り過ぎていったものたちの姿が蘇ってくる。 それを、自分に――?と、生娘のようなことを考えているうちに、 小鬼はまんまと、彼女の膣口に性器を押し当てるところまで進んでいた。 ずぶり。肉の開かれる感覚が、彼女を現実へと一気に引き戻す。 かつては、召喚をした側がされた側への支配権さえも有していたが、 対等な友であることをその前提に置く新たな技術体系には、何らの縛りもない。 それはすなわち、今彼女がそうされているように、相手側が有無を言わせず動いた場合、 召喚士の安全を担保するものが、何もないということを意味している。 小鬼にとっては、目の前に現れた女体は自分たちの存在意義――繁殖に使えそうかどうか、 という一点のみで物事を捉えているために、新たな召喚術への見識を深めるため、だとか、 名誉職として教育施設に在籍する生徒たちのためになる何かを求めて――だとかの、 格好つけたような理由は、心の底からどうでもいいものでしかない。 その気になれば、彼女は無力な小鬼数匹程度、何の問題もなく打ち払えたはずだ。 だが友誼を結ぶために喚んだ関係上、先に攻撃を仕掛けることは論理的にあり得ない。 なんとか説得を――と後手に回った結果が、膣内に蠢く緑色の芋虫だ。 形は、人間のそれと変わらぬ。それによって異種の雄に犯されているという現状が、 より強く印象付けられる。雄と雌の交わりのその先を、想像せずにいられない。 いや――とかろうじてニ音を発することのできた口は、その先を紡ぐ前に、 我慢汁にまみれた性器を押し込まれることによって塞がれた。 喉の奥に落ちていき――鼻の中に逆流してくる生臭い雄の精の存在感が、 彼女の思考を、段々と現実から乖離させていく。自分の存在を見失う―― 女の肢体が抵抗の意思を失ったと見るや、日和見をしていた個体も続々寄ってきて、 彼女の全身にくまなく精をひっかけ、塗りたくっていく。白い肌の上には、 下等な亜人の精が雨のように降り注いで止めどなく臭気を放っていた。 何匹もの雄の体臭が混ざって、けれど確かに残る雌の体臭がそれらをすり抜けて―― そんな、彼らの故郷の――産まれた場所である繁殖巣の臭いが再現されると、 小鬼たちは本能に従って、より一層興奮を高めていく。自ら性器をしごくだけではない、 彼女の髪から衣類から、精液の染み込まない場所はなくなってしまったぐらいだ。 それらを引っ掴んで手にこすりつけながら射精し、それで拭いて、また出して―― 女の鼻の穴だけは、ひくひくと雄の体臭に反応するように動いていた。 順番待ちの連中がぎらついた視線を向ける中で、膣穴にありついた小鬼は悠々と、 その温かでで蕩けるような膣内を、射精寸前の顔になりながら腰を振る。 何百年と生きて、男の身体を知らぬということもないのだが――ほとんど生娘に近い彼女は、 その未開発の肉体を、呆然としている間に小鬼の好き勝手に弄ばれていた。 手持ち無沙汰の連中は乳房にも尻たぶにも指を沈めてその跡を残して遊び、 むっちりした腿にも、彼らの歪んだ歯型が点々と付けられている。 何体もの小鬼たちが必要に彼女の乳首をこねくり回し、歯を当てたりするのは、 お前のここから、乳が噴き出すようにしてやるぞとの意思表示である。 そうして彼らは増えるのだ。同じ亜人同士だけでなく、人間や他の種族とも交わって。 どろり、と熱いものが弾けて――女はようやく己を取り戻した。 その頃には、既に、濃く立ち上った雄の臭いに嗅覚さえもやられてしまっていて、 気付け代わりに吸い込んだ息は、全身にぞくぞくと交尾の悦びを伝えてしまっていた。 何匹もの雄に、孕んでくれと迫られるのは――雌の本懐であろう。 それを、彼女の肉体は精神より先に受け入れてしまっていた。 ぞく、ぞく、と恐ろしい未来図に全細胞の打ち震えるのがわかる。 鼻先に突き付けられた緑の槍は、次は自分の番だとばかりにそり立っている。 穂先がゆっくりと下を向いて――膣口までをも一直線に捉えたとき、 ああ、自分はもうこの子たちに妊娠させられるんだ――と、彼女は理解してしまっていた。 緑の小鬼たちは、やはり彼女を解放することなどなかった。 召喚のために用いられた校長室は、そのまままぐわいのための新たな繁殖巣となり、 今や部屋の主は、完全に彼らの側になっていた。品のいい調度のあちこちには、 子鬼たちが玩具代わりに弄り回した跡が残って、もう価値など欠片も残っていない。 部屋中に、いつ乾いたかもわからない雌雄の体液の跡が点々と落ちていて、 それらはふと窓からの陽射しに撫でられたとき、思い出したように臭いを放つのである。 女は牛がそうされるように乳房を掴まれ、乳首を握り込まれて、 ぎゅぽ、ぎゅぽ、と胸の付け根から先端――黒く成り果てた乳頭までの、 赤子の頭より大きくなった乳の内側に巡る乳腺、そこに在る母乳の全てを、 毎日毎日、容赦なく搾られる――我が子と、小鬼達の腹を満たすために。 かつては教育のために章句を諳んじた喉からは、搾乳による快楽に蕩けた鳴き声しか出ず、 あるいは、交尾をねだって雄に媚びるか――陣痛に耐えながらいきむ声のいずれかだ。 小鬼たちは一向に老いることも目減りすることもないこの孕み袋を、 自分たちの群れを大きくするための道具として、どこまでも活用することにしたらしい。 彼女の胎が空いているのは、出産直後のだらしなく皮の余っているときぐらいだ。 その瞬間さえも、目の上に垂らされた雄の性器をしゃぶりたいがために舌をちらつかせ、 それが舌先に触れると、黒くなった陰唇を馬鹿そのものの顔で触りながら雄を誘う。 早く次の子を仕込んで欲しい、早く次の子を産みたい――そんなことばかりだ。 毎日の乳搾りも、盥一杯にこぼれそうなぐらいにたっぷりと行われているのに、 赤子の方が、それを飲み干すのに足りなくなるような有様でもある。 女はまた、後産の途中というのに胎児のいなくなった寂しさに耐えかねて膣口を弄り、 臍の緒の残った産道がぽっかり空いたままの心細さにぐずった。 乳房を自分で捏ねても、海綿のようにだらしなくぶびゅびゅと垂れるだけであって、 直に搾ってもらうときのような、激しく、脳細胞を破壊していく快楽には及ばない―― と、一匹の小鬼が嗜虐心に満ちた笑顔で乳首を掴み、乱暴に扱き上げ始める。 高まっていく乳腺内の圧力に、女は酷く下品な声で喘いでみせた――