広々とした解放感のある部屋に、少年は足を踏み入れた。 あたりを見渡せば、色とりどりの星や輝く星粒が部屋全体をほのかに照らしている。 その神秘的な光景に、今いる所は自分の常識を超えた場所なのだという思いを新たにする。 ──ここは、技術を持つ魔術師達が共同で生活し、作品……ウィッチクラフトを作り出す魔法工芸職人ギルド。 魔法に憧れていた少年は、半ば押しかける形でそここの職人達の雑用係となっていた。 今日もまた、いつまで経っても起きてこない『マスター』を起こしてこいと言われて小走りでここまで来たのだ。 空を見上げると、天井から吊られた透明な球体の中に、ふわふわに敷き詰められた布が見える。 これが『マスター』の寝台だ。 少年は恐る恐る、空中に浮かぶ寝台へと足を踏み入れる。 何度登っても落ち着かない。 ここで安眠できる人物はよほど肝の太い人だろう。 その『肝の太い人』は、少年が来た事にも気付かずスヤスヤと寝息を立てている。 メルヘンチックな寝台の上で眠るその姿は、まるで童話のお姫様のようにも見えた。 …口の端からだらしなく垂れている涎から目を逸らせば、の話だが。 彼女の名はヴェール。 少年よりも更に一回りは小さな幼女でありながら、ウィッチクラフトのマスターの座に付いている才女である。 (仕事をしている時の姿は本当にかっこいいんだけどなあ) と思いながら、少年はヴェールの肩を掴んで軽くゆする。 「ほら、マスター。起きてください。朝ですよ……」 「うぅーん………あと3年……」 「長いよ!」 一切起きる気が無いヴェールに、肩を揺さぶる力を苛立ち混じりに強めながら叫ぶ。 それでも、ヴェールが起きる気配は無い。 揺さぶり方を前後左右に変化をつけてみたり。 緩急を付けたり。 そんな事を繰り返している中で。 ふぁさり。 そんな音が聞こえた気がした。 何度も何度も揺さぶったせいで、ヴェールが着ているネグリジェの肩紐がズレたのだ。 それだけなら、少し謝って服を直して終わりだっただろう。 だが、少年は見てしまった。 ズレた服から覗く、薄いけれどほんの少しだけ確かに膨らんで自分が女である事を微笑ましく主張する子供おっぱい。 その先端で膨らむ、ほのかな桜色の乳首。 「…………!」 言葉を失い、動きが止まる。 視界がヴェールのあられもない姿で埋まり、脳の全てがその光景を記録するのに使われる。 「んぅ……?」 声と揺さぶりが急に止んだ事を訝しんだヴェールが、寝ぼけ眼で見上げる。 そして、少年と目が合った。 「あ………っ」 急な気恥ずかしさに襲われた少年は慌てて視線を逸らす。 だが、我慢できなくなったのか、すぐにチラリチラリと視線を戻しては誤魔化すかのようにまた逸らす。 「ふーん………?」 ヴェールは少年のその可愛らしい様子を見、艶めかしく微笑む。 しゃなり、と細い脚を伸ばすと、元々丈の短いネグリジェは引き伸ばされ、下着が見えるギリギリのところで止まる。 「あ……」 無意識に声が漏れ、前屈みになってスカートの隙間を覗こうと身体が動く。 その動きに合わせて、ヴェールはほんの少しだけ脚を動かして視線をかわす。 そのやり取りを2回ほど繰り返した所で、少年は自分がやっている事のマズさに気付いた。 「ちっ!違くて……っ!!」 慌てて立ち上がり、股間から視線を外す。 だが、昂ったまま視線を巡らせた少年は気付いてしまう。 潤んだ瞳。 布団の中で温まり、上気している肌。 その上をツツ……となぞる汗。 スベスベの太もも。 これまで何度もじゃれあってきた女の子。 これまで女性として意識した事のない女の子。 その彼女が、実は滅茶苦茶エロいのだという事に。 「どうしたの……?起こしに来たんじゃないの?」 「えっ……あっ………」 ヴェールの出した露骨に甘い声に、分かりやすく動揺する少年。 そのか弱い姿と甘やかすような態度に脳が揺さぶられ、一気に判断力が0になる。 例えば、脚を掴んで持ち上げれば……秘められたお股の奥まで見られるかもしれない。 無理矢理抱き抱えたら……あの僅かに膨らんだおっぱいを密着させられるかもしれない。 服を掴んだら……もっとあられもない格好にさせられるだろうか。 一瞬にして頭の中をピンク色に染めて妄想に耽ろうとしてしまった少年に、上目遣いでヴェールは言う。 「……えっち」 「ッ……!!」 囁くような、からかいの色を込めた声に頭が沸騰する。 言い訳を口にしようとして、何を言ったら良いかすらも分からずに口ごもる。 「ぅ……ぁぅ………」 言葉にならない声を上げる少年に対して、ヴェールはクスクスと笑いながら手を伸ばす。 「ほら、こっちにおいで……」 少年は誘われるままにその手を取る。 「えっ!?」 あっという間に少年を絡め取ったヴェールは、そのまま細い手足でがっしりとホールドして絡み付いた。 「ふふ……これでしばらく追っ手は来ない……」 「むぐっ………!?」 人肌の温かさと柔らかさを全身に感じて痙攣する少年を尻目に、ヴェールは幸せそうにまた寝息を立てる。 「すー………」 「ふぇぁ、あっ、あっ………」 一瞬でもたらされたあまりの情報量に、少年の頭がオーバーヒートし、シャットダウンする。 ……結局、少年の帰りが遅い事を気にかけた職人達が来る頃には、真っ赤な顔でパンツを汚して気絶している少年と呑気に寝ているヴェールがいて、2人ともしっかりお仕置きを食らったとさ。