雪がしんしんと降る夜。見上がるほどの大樹の根本にて、1人と1体がいた。 彼らはジエスモンとそのテイマーの八千代である。 イグドラシルの側で守護する数少ないロイヤルナイツとしてクリスマスの今日も先程まで警邏の仕事をしていたのだ。 「はぁ、今日の見回りも終わり…。クリスマスまで襲撃が無くてよかった…」 「これで憂いなくクリスマスが楽しめるね!」 「だな、ジエスモン」 「それじゃあ、ボクはこのままクリスマスパーティに行くからヤチヨはハルと2人っきりでよろしくね!」 「ん、いってらっしゃい」 そういって高速で飛び立ったジエスモンを見送った八千代は大樹にある家に帰ろうとする。 その途上にて1人の少女がどこからともなく現れると八千代に飛びついた。 「おわっ!?」 「お疲れさま、ヤチヨ!メリークリスマス!」 「ハ、ハルか…うん、メリークリスマス」 飛びついた犯人は八千代の恋人でもあるイグドラシルの端末の少女ハルだった。 八千代は突然の事に一瞬驚くも飛びつくハルを優しく受け止めると、そのままお姫様抱っこに移行した。 「いきなりどうしたのさ?危ないよ?」 「ごめんな…。どうしてもヤチヨに早く会いたかったら…ダメだった?」 「ダメじゃないさ。オレも同じ気持ち」 そう八千代が同意すればハルは頬を高潮させながら嬉しそうに抱きついた。 お姫様抱っこの状態でより深く密着した2人は自然と顔を近づけ唇を合わせる。 「ん……ちゅ…」 「ぅん……ん…」 数秒ほど軽いキスを交わし顔を離し数秒、目を見つめ合う。 もう一度顔を近づけ様としたところで現在外にいる事を思い出す。 それに2人は少し気恥ずかしくなったのか互いに目線を反らしてしまう。 と、そこで八千代が視線を下に向けて今更ながらにハルの格好に気づく。 「…あー、そういえば今日のハルはサンタの格好なんだね」 「う、うん、折角だから着てみたけど…ど、どうかな?」 「可愛いよ。普段はモノトーンな格好が多いからか赤いサンタの衣装は新鮮だね。この服もハルによく似合ってるよ」 その感想に満足がいったのかハルは笑みを浮かべると、どこからともなく角とベルが付いたカチューシャを取り出した。 「…うふふ、ありがとね!それじゃあ、ヤチヨにはこれ着けてほしいな?」 「これは…トナカイの角?」 「うん!私がサンタならヤチヨはトナカイ!当然だよね?」 「ははは…まあ、それは否定出来ないね」 いつも✕✕✕の時は上に乗られる事が多いからなと八千代は心の中で呟く。 多分、今日もそうなるだろうな…。楽しみだな…。 そういえばトナカイってソリにはするけど騎乗自体は出来るのかな?とおかしな思考になる八千代。 そんな八千代の邪な感情を感じたハルは目を細めながら八千代の耳元に口を寄せて囁く。 「クリスマスだからいつもより期待しちゃってる?…でも、まだ駄目だよ?夜中まで我慢してね?」 「あ、はい」 そんなやり取りをするとお姫様抱っこはそのままに改めて帰宅する為に歩みをはじめる。 お姫様抱っこでの帰宅中でも2人の会話は止まらない。 「そういえば今日はハックモンは居ないんだっけ?」 「うん、ハックモンなら今日はシスタモン協会でクリスマスパーティでお泊りだよ」 「まあ、ハックモンならそこだよね。…じゃあ、今日はずっと2人っきり?」 「ハックモンのお陰でそうなるね」 「…明日、お礼言わなきゃね」 「うん、そうだね」 折角の平和な初クリスマスという事でハックモンが遠慮して2人っきりにしてくれた事や、 「こうやってヤチヨとゆっくりクリスマスを祝うってのはなんだかんだで初めてだよね」 「うん、前のクリスマスはお互いにアレだったし…更にその前は丁度マタドゥルモンとの時か…?」 「ああ、あれは大変だったよね。ふふ、でもあの姿のヤチヨが見れたのはいい思い出かな?今思い出してもあのヤチヨは本当に可愛かったからな〜」 「…変なこと思い出さないでくれ。もうやらないからね?」 「えぇ…」 「えぇじゃありません!…まったく。まあ、何にしてもある意味でハルとのちゃんとしたクリスマスは今年が初めてだね」 過去のクリスマスでの出来事を今だから出来る思い出として語り合う。 そして、家に着き帰宅しようとした所で八千代はふと何かの存在感を感じキョロキョロと辺りを見渡す。 すると、少し遠くに巨大な白いクリスマスツリーが見えるのだった。 しかし、そのクリスマスツリーは明らかに異常だった。 巨大なのもそうだが明らかに次元を超え、空間を隔てて生えてるのである。 「……ハル、あのクリスマスツリー…なのか?は何かわかる?」 「ん、クリスマスツリー?…どれのこと?」 八千代の言葉に反応したハルは同じ様にキョロキョロと辺りを見渡すもそれらしいのは見当たらない。 それに八千代はお姫様抱っこのまま器用に件のクリスマスツリーに指を指す。 「ほら、あそこの大きな白いやつ。何というか次元の狭間から生えてない?」 「えぇ…うーん…?……あ、ごめん。ちょっと認識能力の調整するね」 そう言うとハルはこめかみに指を押し当てて何かを小さく呟きはじめる。 その様子に流石の八千代も何か一大事なのではと心配になる。 「え、急にどうした!?あのツリーってなんかヤバいやつだったの…?」 「ごめんごめん、心配しないで良いやつだから!危険はないよ!…ただ、ちょっと…うん、あれってデジモンなんだよな」 「ただのツリーでは無いとは思ってたけどあれがデジモン…?」 「うん、あの子はセントジエスモン」 「セン…ト…ジエスモン?あれがあのジエスモン???」 危険が無く、正体はデジモンと聞いて八千代も落ち着いたがその予想外な名前に目を丸くする。 「うん、そのジエスモンの亜種だね。知識としては知ってたけど今の私が見たのは初めてだったから驚いちゃった」 「ハルが嘘をつくとは思えないけどあれがジエスモン…どう見ても巨大なホワイトツリーの見た目なのに…」 「あはは、それはそう擬態してるからしょうがないよ。あの子はそう見える様に認識改変してるから」 「な、なるほど…」 「あ、今セントジエスモンがこっちに手を振ってくれたよ!お疲れさまです!」 「わ、わからない…」 セントジエスモンにブンブンと元気よく手を振るハルと、現状はただのツリーにしか見えず本当に手を振ってるのかもわからず苦笑いを浮かべるしかない八千代。 「……しかし、誰かに見られてると意識するとちょっと落ち着かなくなってきたな」 「ふふふ、お外ではヘタなイチャイチャは出来ないね〜」 「………さっきのキスも見られてたのかな?」 「……あー…うん、とりあえず中入ろっか」 「…そうだね」 やっぱり外でのイチャつきはもうちょっと抑えようと心に刻んだ八千代とハルであった。 この後、ハルが作ったクリスマスディナーを美味しく食べ、余暇にボードゲームで遊んだり、最近現実世界で流行りの恋愛映画を見て過ごした2人。 そして、そのまま2人は仲良く床に着く。 〜12時間後〜 「ヤチヨ〜、ハル〜、ただいま〜!昨日はお楽しみでしたね! ……って、あれ?」 『あッ♡あんッ♡ヤチヨ♡いいよぉ♡ヤチヨ♡また頂戴♡♡いっぱい頂戴♡♡♡』 『ぅあ…!ぉおお…お…ッ』 『きたぁ♡…ぁあ♡ああんッ♡♡…………んふ♡…ん、それじゃあ…もうワンラウンドね♡』 『ちょッ!?も、もう無理ぃ…!ゆるしt………あぅッ♡』 「あちゃぁ…2人ともま〜だやってるよ。今までずっとかな?これは洗濯が大変そうだなぁ。……クリスマスって凄いね!」