少し進歩がありましたわ！
この間久方ぶりに日が真南を指すお昼時にお出かけしましたの！
くるみさんと二人で！
おてて繋いで城州の街を練り歩くように闊歩いたしましたの
くるみさんはちょっと怯えてましたけど私の手をしっかりと握り返してくれましたわあい
つないだその掌を、今君に強く握り返して欲しいのです

行き先は西テクノ高等専門学校、高専は5年生なのでくるみさんは4年生になりますわ
くるみさんはずっとわたくしの家に棲んでいましたけど。ちゃんとお勉強も致していましたのよ？
テレワークであってまして？いやお勉強ですからworkではありませんわ。リモート授業ですわ
中学生の頃一時期やってましたわ。パソコンはまったくわからないので授業という名の動画を学校支給のタブレットでぼんやり見つめる毎日でしたわ。
付き添いでわたくしは同行してますのよ？西テクノの聖徒じゃありませんのよ？
まぁ！なんかわたくしくるみさんの保護者気分ですわ！お母様の気持ちが少しわかった気が致しますわ。

授業ではなく先生と面談でしたわ。進路や進級の事、いろんなお話をくるみさんはされていましたの。
わたくしはぼんやりと傾聴致してましたが「くるみさんがなさりたいようにお願いします」と伝えましたわ
お話を纏めるとその内、くるみさんは西テクノの推薦で県立大学に編入致すそうですわ
わたくしと同じ大学生ですわ！まぁわたくしくるみさんの為に約1年休学致してるのですけどそんな事関係ありませんわ！
くるみさんの傍に寄り添いたい
きみをまもってきみを愛してですわ

気がついたら陽が落ちて夕暮れが内房に沈んでいましたわ
担任の先生とお別れをして我が家まで帰宅するまでの間。記憶がありませんわ
電車乗りましたっけ？乗りましたわ！タクシー使いましたっけ？使いましたわ！
何度も、何度も。くるみさんを抱き寄せた覚えがありますの
ベンチシートでも後部座席でも

「くるみさんどうでした？疲れましたか？」
「うん―――疲れた」
地下室。循環さらきれず漂う空気。窓のない空間。推定夜7時。時計がない世界。くるみさん。わたくし。ダブルベッド。隔たりのない身体。二人の躰。
くるみさんはタオルケットに包まっていますわ。丸まって眠る姿はまるで胎児のよう。
くるみさんはｸﾝｸﾝを何かを嗅いでいる。
「落ち着く…」とくるみさん
「ええ、ここは落ち着きますね…今日はいろんな事があって大変でしたから」
「そういう事じゃなくて、このタオルに包まれてるとくるみ落ち着くの」
そうですわね。心が揺れ動いたあの日からずっとこのタオルケットと共に暮らしてましたわね。いわばわたくしたちの臓器の一つですわ。共に生きて、共に暮らしているなくてはならない存在。
…最後の洗ったの何時出たっけ？

鼻腔をタオルケットに近づける…この匂い！？シャボンの香りの中にわたくしとくるみさんの香りが濃厚に交わって！やばいですわ！？芳しいにもほどがありますわ
人が嗅いだら「臭い」の一言で済まされてしまいますわ！お洗濯！お洗濯です！
「くるみさん新しい毛布を出しましょう。もう秋ですしお布団でもいいですわ…これは洗いましょう」
「やだ…」くるみさんが拒む
「どうして？」
「だってこの匂い…落ち着くもん…くるみこの匂い好き」
「くるみさん…」
「みなみぃの匂いがするこのタオルケットが好き…だぁいすき」
わたくしは理性を保つだけでせいっぱいでしたわ
そうですわ！わたくしもこの香りがすきですきでたまりませんわ
くるみさんの匂い、くるみさんの肌、くるみさんの感覚、くるみさんの気持ち。
そこにわたくしの香りがエッセンス少々混ざり全てがわたくしとくるみさんのすべてがこのタオルケットに顕現されている。そうとしか思えないですわ

気がつくとわたくしもタオルケットの中に潜り込んでいましたわ
くるみさんの体温が暖かさがタオルケットごしじゃない。細胞から理解（わ）かるそう感じましたわ
「みなみぃ…落ち着くね」
「ええ、そうですわねくるみさん」
嗅覚中枢をすべてくるみさんに支配されている。
この半年間のわたくしたちの生活すべてがこのタオルケットに凝縮されている。そうとしか思えませんわ。
洗うだなんてとんでもないわ！むしろもっと育てなければ
―――神聖な瞬間が、ここに訪れる。

あいつ

今日、くるみさんは新しい一歩を踏み出すことができました
赫灼（かくやく）とした道が私達に舞い降りた。そんな気がしてなりませんわ
そう、このタオルケットは私達の子宮。ここから生まれ落ちてここに戻って来る
だからお外でどんな事があっても子宮に戻れば怖くない。
二人、今宵もゆりかごに揺られる
冬の兆しを感じさせる澄み切った夜空が、二人を見守っている。

みなみさんってくるみさんの話になると急に早口になって

あいつ

くるみさんはブランケット症候群ではなくて？

>くるみさんはブランケット症候群ではなくて？
みなみぃの匂いがするこのタオルケットがいいの…

くるみさんは専攻科ではなくて大学に進むのですわね
西テクノに居続けるのと3年生から編入するのとどちらが良いのか分からない、難しい選択ですわ

みなみぃ←言ってない！

高専卒業後は簡単な試験で大学の3年生として編入されるのがベターな道と聞きますわ

>霜降を迎えましたわ
みなくる季節の挨拶たすかりますわ
>けれどここには神はいない
どうして…

くるみ吸いしてる…

そのタオルケット末端価格はおいくらでして？
10㌘あたり50万円までなら出しますわ！

どうしてくるみちゃんは南さんと一緒に暮らしてるのかな？
くるみちゃんどうしてお昼にお外歩けないようになったのかな？

>どうしてくるみちゃんは南さんと一緒に暮らしてるのかな？
わたくしが監禁…護っているからですわ

南さんがまた反省文書いてる…

>地下室。循環さらきれず漂う空気。窓のない空間。推定夜7時。時計がない世界。
ここ闇の南さん

なんでナチュラルにくるみちゃんを監禁してるの…

明らかに他校の人間が面談にしれっと参加してて先生驚いただろうな

南さんなんかお母さんみたい
すき

壊れているくるみちゃんと南さんの今日依存関係すき

今日だけではありませんわ！
明日も明後日もずっと一緒ですわ！

いつまでも一緒ですわ
この地下室はわたくし達の子宮
このタオルケットはわたくし達を繋ぐ胎盤
産まれ落ちる事のない二人の命がコンクリートで塗り固められた檻で胎動していますの

くるみさん以上に南さんがもう…

みなくるキてますわ