「アイエエエエエエ! レイヴモン!? レイヴモンナンデ!?」 唐橋チドリにはかつてオペレーションアルカディアでレイヴモン雑賀モードに焼き殺されかけたトラウマがあったのだ!! レイヴモン・リアリティショックを起こした哀れな女店主はたちまち失禁!! そしてそのまま意識を失った彼女の運命は以下に……!? (このあとどうなったかは好きに考えていいですよ)  は?と、声が出たのは斡旋屋だった。  闘争を仕掛けたのだから敵対するか罵られるか、あるいはなんの感慨もなくこちらを殺してくるか、あるいは無視されるでもいい、何らかの敵対的行動をされるかと思ったらガチ失禁だった。思わず声が出てもおかしくはない。  勿論戦場でそう言った行為が起きる場合はある、極度の緊張あるいはその弛緩により膀胱の限界が来るのだ。そうなると老若男女問わず失禁に至るのは仕方ない、仕方ないが、そもそも見られただけで失禁されるのは初めての経験だった。  新兵が銃を向けながら罵りつつも恐怖に失禁することはあった。  自らの子供を守るために気丈に立ち向かう母親が戦闘馴れしないままに立ち向かい失禁することはあった。  子供が恐怖のままにもらすことがあった。  男が敵地で捕まりリンチを食らって痛覚の限界で失禁することもあった。  頭がおかしくなりそうだった、どこかこの場所だけ今だに平時の空気が流れている、闘争の結果起きた失禁ではなく日常のふとした瞬間にトラウマで失禁が起きるということもあるという。そう言った雰囲気。 「いや、これも闘争……なのか?」  わからない、日常に戻ってもPTSDで日常に戻れない兵士がそう言う事になると聞いたこともある。  とにもかくにも、ここから闘争の空気は消えた、戦場のままではあるが。  仕方ない、と、ここに置いておくわけにはいかない、助ける義理もないがここで尊厳を捨てたままの女を放置などもしていられない。もしもここにいれば駆け付けた誰かが尿にまみれたところを見てしまうかもしれない。そうなればこの女の名誉に傷がつく。  偶然ではあるが、買い物に来た客は既に捌けていた、あるいは自分や他の誰かが巻き起こした闘争への対応へ出かけているのだろう。女の体を背に抱えた、尿がコートにつくことも構わない、引きずれば女の肌に痕がつくかもしれない。何よりどうせ死ねばこの世界ではすべてが茶番だ。  いいもの影を見つけたからそこに女を降ろしコートを脱いでから一旦体を隠すようにかけてやる。少しばかりの配慮だ、見る人間が居なくともそれは100そうだとは言えない。  それから女がやっていた売店の商品を漁った。ソフトドリンクのを冷やすための氷入りの水樽、度数の高い無味無臭の酒、軽食の後にぬぐうための紙ナプキンを何枚か見つけて溜息を吐く。これだけあれば十分だろう。 「レイヴモン、手伝え」  意思なき相棒を呼ぶ。そのままに手早く作業を行った。女が履いていたズボンと下着を脱がし、レイヴモンに渡した。洗うように命じるとそれを機械のように実行する。  アルコールを少し水で薄めて濃度を落とした混合物をナプキンに染み込ませてから失禁で汚れた部分をぬぐってから、乾いたナプキンで再度湿り気をとった。昔を思い出す、率いた隊の女兵が新兵で恐怖に負けて失禁したのを処理してやった時のようだった。平時だったら殴られていかもしれないが、そこは戦場だったから仲間に迷惑をかけたことを泣きながら謝っていたことを思い出す。死んだ、確かあれは完全体デジモンの高火力の攻撃で殲滅戦になったはずだ、火にまかれて肺が焼けて苦しみながら死んだ、可能性が費える瞬間だった。一時休戦の際に墓に収めるために死体を探した、ドッグタグだけが残っていた、他は犬か何かに喰われて何一つ残っていなかった。  レイヴモンがある程度手もみ洗いを済ませたのを見ると屋台用のコンロを着火する。外である程度火力の出るいいものだ、近づくとそれなりに熱いことが確認できる。先程まで使っていたらしい、そこに近くのポールを取り外して簡易的な物干しざおにし、それに対してレイヴモンが翼をはたかせて風を送った、熱風が衣類を熱し、水気を飛ばす。乾いたことを確認して、後は元通りに着替えさせてやる、これで少なくともこの女がもらしたとは誰も思わないはずだ。  その場所に寝かせてやり、コートをとり、少しだけその顔を眺めてから嗤った。 「お嬢さんよ……あんた、連れてるデジモン強いんだろ?じゃなきゃこんなところで店だすなんてできねぇさ……だからさ、起きたら今度こそ殺し合おうぜ……刺激的にな」  どうせその言葉は聞かれているはずがない。失禁を伴うような気絶でそう簡単に目を覚ますはずもない。  だからそんな言葉をかけたのは斡旋屋なりの感傷だった、この女がどう戦うのか、あるいはその戦いにさいしどんな可能性を見せてくれるのか、その瞬間が待ち遠しくして仕方がない。  多人数で囲むのか、それとも尋常な勝負でこちらに仕掛けてくるのかはわからない。  だが、どんな闘争であれ、きっとそれは可能性だ。  踵を返し斡旋屋は歩き出す。まだ闘争の熱はあふれている。 ※なおこの後多分斡旋屋は殺されています、南無。