「私が教えた。私がほむらに君の手記を渡したんだ。」 「ワイズモン…どうして…どうして私の邪魔をしたの!!」 彼女が杖を構えた。 「……私は君と30年間共に過ごしてきた…!未だに人間の事はよくわからない…」 私も両手を広げ、戦いに備える。 「しかし…人間は大切に思う人に幸せでいてほしいと願うらしい…私は…君に幸せであってほしいと思う!だから渡した!」 「私は現状で十分幸せよ!あなたこそ私の幸せを壊そうとしてる!」 鏡花がゴーレモンを一気に3体錬成し、私に差し向けた。 私は手をかざし彼らの動きを止め、さらに天井や床などを再錬成し、巻きつけるようにして動きを完全に封じる。 「忘れたのか?君に錬金術の知識を授けたのは私だ」 「なら本気を出すまでよ!」 ゴーレモンの拘束を、彼らの体を突き破り生えてきた結晶が破壊する。 「究極進化…か。いつの間にこんな隠し玉を用意していたんだい?」 「ブラストモン!ダイアモンドヘッジホッグ!」 鏡花の号令で、私目掛けブラストモンたちが転がり出す。 「だが…ある意味好都合だ。」 私は手を一度合わせ、周囲にエネルギーを飛ばし錬成陣を刻印した。 そして、襲いかかってきた彼らはその陣が作り出す境界に触れた途端、バラバラのクリスタルに変化した。 私はそのクリスタルを使いドーム上の鏡面空間を作り、そこに鏡花を閉じ込める。 「さあ、見るんだ鏡花!」 手を組み、頑丈に空間を安定させる。これならば、彼女一人ではしばらく破れないはず。 ━━━━━━━━━ 私が滅多に錬成しない、究極体の錬金人形。パワーが強すぎるし、こっちの消耗も大きい。ゴーレモンで十分。 だから隠し球だった。 「なに⁉︎なんなの!」 そんなブラストモンたちが一瞬のうちにバラバラにされ、その残骸が私を閉じ込める空間を形成している。 キラキラと輝くクリスタルに、私の姿が反射する。 「さあ、見るんだ鏡花!」 鏡のようだったそれに、急に何かが映し出される。 "「はぁ…はぁ…鏡華さん…もう終わりです…全部。」" "「そうね…私を殺して…研究成果も何もかもそのデジモンの力で焼き払えばいいわ。復讐は果たされる…殺人者に裁きが下る。全部終わりね…」" 私と…ほむらが戦っている…⁉︎ 『そこは言わば鏡面空間、私が操作している。そしてそこに映し出されているのは、私が見た未来だ。』 「あら、未来視なんて大層なことできるようになってたのね!」 この空間を破壊するには… 『この未来では君はほむらに殺される!』 ……それなら…それで良いわ。 このドーム…強度は高そうだけど、不壊というわけでもないはず。 だったら巨大な爆発エネルギーをぶつけてやるわ。 "「もっと…こうしたかった…な…」" "「そんな…待って!ダメよ!」" 『この未来ではほむらが死んだ!それは君も望まないはず!』 ほむら……が…っ!? 「そんなのどうだっていい!実験体が一人死ぬぐらい何よ!私はもっと多くの人を殺してる!」 『自分の気持ちに嘘をつくな!』 「私は…嘘なんて…嘘なんてついてない!」 今すぐに私が使えるデジコアは3つ… ”「見ればわかるでしょ!私はもう助かりようがない。助かる価値もない…あなたは生きて。」” ”「────!………わかった。でも…でも…!絶対に…助けるから…お母さんも…逃げてね……私…家で待ってるから………」” ”「ええ…すぐに追いかけるから…行って…!」” 『この未来でも君は死ぬ…君はこの約束を果たせない!ほむらにこんな悲しい別れを経験させていいのか!?』 ギロモンとボマーモン…それにグラビモン。この3体の爆発力なら、この空間を破壊できるわよね。 「さっきからほむらのことばっかり…!私はあの子の母親じゃないのよ!何度も言わせないで!」 完全体の機雷型…多分ワクチン。幼年期のスライム型に…究極体のウイルス。記憶してる。これなら錬成できる。 『ならば何故彼女を支援している!何故彼女を自分の手元に置こうとする!』 「実験体を手元に確保したいだけよ!そこに愛なんてない!」 『君たちが二人とも死んでいる未来も見た!頼む…私は君たちに幸せでいて欲しいんだ」 何よ…勝手ね… 「私が錬金術師になったのも…ほむらが生まれたのも…全部あなたが原因って言っても良いのよ…なのに…なのにあなたは!!……我の僕たる電脳核よ!我の望む形を取れ!」 『鏡花!何をする!』 カドゥケウスでデジコアをデジモンへと錬成する。 「デジクロス!自爆しなさい!」 その三体をデジクロスで圧縮、そして自爆させる。 私の体なら、これぐらいは耐えられるはず。 ━━━━━━━━━ その爆発は、あまりにも大きかった。 彼女がいた研究所は吹き飛び、周囲数百メートルにまで爆発の衝撃が伝わった。 もちろん研究所は瓦礫の山。周囲にあった建物も崩れていた。 「ふ……ん…!」 鏡華は瓦礫を掻き分け、外へと這い出た。 あれほどの爆発を最も近くで受けたにもかかわらず、彼女の体には煤がついている程度で、かすり傷すらなかった。 鏡華が手をかざすと、瓦礫の中からクロスカドゥケウスが彼女の手元に転移する。 彼女は杖を使い爆発で損傷した自らのスマートフォンを修復し、どこかへ通信した。 「…聞こえるかしら夭下、私よ。こっちの研究所が使えなくなった。今すぐ天沼矛に私の研究区画を手配して。良いから早く!」 そのままデジタルゲートを作り出すと、彼女は一言呟いてその向こうへと消えた。 「さようなら。ワイズモン」 ━━━━━━━━━ 「ねえシャウトモン、私…会いに行こうと思うんだ。鏡華さんに」 「本当なのか…そいつが母親…ってのは。」 「わからない。けど…わからないから会いに行くんだよ。一回しか上司に会ったことないってのも、不自然だしね」 「止めねえよ。でも、俺も付いてくぜ、ほむら」