「榊さん、今回は千束の為に本当にありがとうございます」 「いえ、お礼なら遊矢や零児君達に言ってやって下さい。私はただ彼らの願いを聞いただけです。 それに私も千束ちゃんを祝いたかったので」 「彼らには先程伝えました。だから貴方にも礼を申し上げたかったんです。千束の憧れの決闘者 である貴方に」 「はは、あの可愛らしいお嬢さんの憧れが私の様な男とは照れますな」 「貴方が千束に道を示してくれたんです」 「私は何もしてません。彼女が自分の道を往ける様に応援しただけです。彼女が彼女らしくいられ るのはずっと近くで支え続けた貴方達がいたからですよ、ミカさん」 「……私はただ黙って見ていただけです。千束が自分の選択を後悔しないように生きてほしい。 その邪魔をしたくなかったんです」 「それでも、彼女を信じて支えてあげた貴方は素晴らしい父親です。私は……息子の側にいてや れず、信じてやれなかった」 「……榊さん?」 「……ご存知の通り、私は3年の間も行方知れずになり、沢山の人々の心を傷付けてきました。 愛する家族も、応援してくれたファンも」 「……」 「挙げ句の果てには、再会した息子を疑うと言う父親としてあるまじき真似をした自分を彼女は 叱ってくれました。遊矢くんは悪魔なんかじゃない、血なんて関係ない。父親のあなたの事が大 好きなどこにでもいる普通の子供。信じて、愛してあげてと」 「千束が、そんな事を……」 「私はどうしようもなく不甲斐ない人間なんです。遊矢の父親としても、彼女の憧れとしても相応し く────」 「───千束も遊矢君もあの3年間、ずっと貴方を信じてきました」 「え……?」 「世間が貴方を蔑み、罵倒する声が聴こえても、貴方のエンタメと教えを信じ負けずに頑張ってい たんです。いつか貴方に成長した自分達を見せられるようにと。いつか貴方の様に皆を笑顔にす る決闘者になれるようにと」 「─────!」 「貴方の存在があの二人を繋げ、救ってくれたんです。だからそれ以上自分を卑下するのはやめ て下さい、榊さん」 「……ありがとうございます、ミカさん。貴方は本当に、いい娘さんを持たれた」 「貴方も、素晴らしい息子さんを持たれた」 『ふ……フフフフフッ』 「……今日は飲みませんか、榊さん。奥様もご一緒に」 「ええ。こちらこそ是非」 「えっ!なに、飲みに行くの!?それならアタシも────」 「お前はちょっとぐらい慎みを覚えろ。そんなんだからモテないんだぞ」 「うっさいわね小リスゥ!!」