二次元裏@ふたば

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2676241 B24/09/17(火)23:27:25No.1233872193そうだねx5 00:58頃消えます
こいつらの絵本描いた
前の話からちょい続いてるよ
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このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/09/17(火)23:27:43No.1233872308+
 璃奈達と別れた勇太達はグミモンの助けを求める声の通りにテリアンモン達の村に向かっていた。
 テリアモン達の村は璃奈達と別れたはじまりの街から山を2日程登ったところにあった。
 山道は幼年期のデジモンが来れたように緩やかで道もしっかりしていた。
 緑は少ないが緩やかな登りが酸欠も起こさずこんな事でもなければ日本に住む勇太や光にとって異国を感じる素晴らしいトレッキングコースであった。
 しかし、その緩やかさが勇太は嫌であった。
 「みんなあいつに喰われた」生物にとって最も忌避感を覚える原始的な恐怖感である捕食。
 そこへ光を連れて行くのに気が引けた。
 光の性格として行くと決めたら怖かろうがはまず間違いなく行くし、下手な事を言ったら更にムキになって強行するだろう。
 しかもへそを曲げて連携は取れなくなるし、一番は情けない話だが勇太とヴォ―ボモン…否、勇太の力不足で光とデビドラモンの力を借りずにはいられなかった。
224/09/17(火)23:27:57No.1233872378+
 ヒーロー…自分が憧れた存在はそんな事をするのだろうか。
 これは自分の不甲斐なさの為に、言うべき事を言わず他人の力を借りる、いや利用すると言っても過言ではない。
 誰かを助けなければならない。
 この世界に来て、何者かになれる気がした。誰かに選ばれた自分が、かつて憧れたヒーローになれると。
 何人かのテーマ―にあったが、そこで言われたのは自分の激情の強さであった。
 光の気の強い性格か、はたまた気を使ってくれているのがデジモンふたりはある意味厳しいこの世界で当たり前のことなのか言われないが、敵に対しての容赦のなさ、そしてその時のそれすらを当たり前と飲み込んでしまって自分の感情はヒーローとはかけ離れたものであった。
 今まで自分はなれずとも自分に憧れたヒーローに準じた恥じないようにしようとしていたがこれが自分の本性なのか。
 生物的根源に関わる事が待っている状況で勇太は自分自身というものを嫌でも考えざるえなかった。
324/09/17(火)23:28:13No.1233872483+
「お˝え˝え˝え˝」
「大丈夫?光?無理しないで」
「大丈夫…触んな…大丈夫だから…行くから…」
「グルルル」
 陰惨な状態であった。
 村の入り口にある看板には、村の幾つかを映す画面があった。
 そこに映し出されたのは、惨たらしく喰い荒らされたテリアモン達であった。
 いや…損傷が酷くそれがテリアモンかロップモン、グミモン、チョコモンであるかも分からなかった。
 それぞれの身体は徐々にデータとして分解されているようであった。
 デジモンは死後すぐにデータへと分解されるがここまで遺体が残る例はヴォ―ボモン達からも勇太は聞いた覚えがない。
 今回の黒いリングを付けたデジモンの特性なのか。それとも、まだ知らない黒いリング自体の特性なのか。
 可愛らしい外見と相まってそのグロテスクさとテリアモン達の苦痛が伝わってきた。
 光の背中を擦りながらも擦る反対の手には力が入っていた。
 それに気付き勇太は少し冷静になった。自分の中の激情…怪物が今蠢いているのを感じた。
 本能的なものなのか、危機感を感じる状況でアドレナリンが出ているのかヴォ―ボモン、デビドラモンは唸り声をあげている。
424/09/17(火)23:28:29No.1233872575そうだねx1
 陽の上がる時間に併せて来たのもあるが着いたのが正午前、聞いていた村の規模感なら日が暮れるまでに探索は終わらせることができる。
 そう思っていたが、思った以上に時間がかかった。
 デジタルワールドでも現実世界でも直接的な死をここまでまじまじと見る事はなかった。
 近いものでもロードキルでの動物くらいであったが、ここまで近くで見る事はなかった。
 デジタルワールドでは腐敗や現実世界のような小さな病気を媒介する虫はいないことは分かっていた。
 これまでの旅で勇太達小学生が無事にいられたのはそういった心配がなかったからだ。
 腐った食べ物は最初から腐った食べ物であった。
 それが逆に血と臓物の臭い…死のその瞬間そのまま死臭が伝わってきた。
524/09/17(火)23:28:43No.1233872659+
 勇太と光それぞれ数度の嘔吐を経て日が傾き始めた頃にようやく村の殆どを見て回る事ができた。
 小さな村を見て回る筈が終わる頃にはふたりとも疲れ果てていた。
 結果は生存者などどこにもいなかった。
「…」
 後は、村はずれの家。結果と疲れから4人とも始終無言で家へ向かった。
 襲われたのは一瞬の事であったのだろう殆どのデジモンの遺体と一緒にそのデジモンの生活が見て取れた。
 友人と遊んでいた。働いていた。家族と共にいた。誰かを庇いそのまま両者とも喰われたのか、手を伸ばし合っているデジモン。
 慈しみ合い、確かにこれからの人生があったのにそれをむざむざと奪われた。
 勇太は村を探索する間、これを起こした相手に強い怒りを覚えていた。
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624/09/17(火)23:29:00No.1233872769そうだねx1
「きゃあああああああああ!!」
「!!」
 外れの家から絶叫が聞こえた
 4人はそれまでの倦怠感から変わり力強く素早く走り出した。
 家の入口をくぐるとそこには3人のデジモンがいた。
 怯え抱きしめ合うテリアモンとロップモン。そして、そのふたりに銃口を向けるブラックガルゴモンであった。
「勇太」
「ああ!」
 ふたりがデジヴァイスを構えるとそれを見てブラックガルゴモンは口を開いた。
「デジヴァイス…そうか君達が選ばれし子ども達か…」
「そこの子達から離れろ。ひと喰い」
「…そうだな君達に託してみよう何か変わるかもしれない。選ばれし子供達である君達なら」
「?何を言ってるんだ?」
「あんた、私達の事何か知ってるの?黒いリングについても?他のに比べて随分ちゃんと話すわね。」
「…まずは見極めさせてもらう。」
724/09/17(火)23:29:13No.1233872871+
 ブラックガルゴモンは勇太達に銃口を向けた。
「!」
 勇太達はすぐさま臨戦態勢を取った。
 ブラックガルゴモンは勇太達の間に発砲をした。
 轟音と発砲によってまった土煙で視界が閉ざされる。
 勇太がフェアリモンの力で土煙を飛ばすとそこには既にブラックガルゴモンの姿はなかった。
「あの野郎逃げ足早いわね!」
「君達大丈夫だった!?」
「う…うん。ありがとう」
「…」
 勇太は怯える二人に目線を合せるように屈んだ。
「怪我はない?」
「…」
 暫くの無言が続いた後、小さくふたりは頷いた。
824/09/17(火)23:29:26No.1233872945そうだねx1
「頑張ったね。ふたりとも俺達は味方だよ」
「ごめんね…家族はふたりだけ?」
「うん…」
「そっか…ここは危ないから俺達の仲間がいるところに行こうと思うけど大丈夫?」
「うん…」
「早くするわよ!あいつまた襲ってくるかもしれないわ!」
 6人は早々と村から離れた。出る頃には日が暮れ始めようとしていた。
 勇太は抱き抱えているロップモンが他のデジモン達を眺めているのを見た。
 目元を抑えながらこの子達の考え、唇を噛んだ。
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924/09/17(火)23:29:42No.1233873047+
 夜が更け、山脈の中腹でキャンプをする事となった。
 後ろと左手には切り立った崖が傘のようになっており襲撃は2方向のみで、戻る必要があるが急な襲撃にも逃げる事もできる立地である。
「ほら、ふたりともどれがいい?」
「あるがと…えっと僕ハンバーガー…ロップモンは果物好きだからリンゴちょうだい」
 しばらくして、少し安心したのかロップモンはまだだがテリアモンは少しずつ口を開いてくれるようになった。
「ふたりは兄弟なの?」
「うんデジタマの時から一緒なんだ。僕が兄貴だよ」
 コクっとロップモンも頷いた。
「そっか偉いなテリアモンしっかり弟守ったんだな」
「う…うん」
 勇太はテリアモンの頭を撫でた。テリアモンは嬉しそうでもあり悲しそうなはにかみを見せた。
「あいつがあんた達の村を襲ったの?」
 勇太が光の方を見る。
1024/09/17(火)23:29:55No.1233873128そうだねx2
「何よ。分かるけどそこだけは確認しとかないとでしょ。あいつに警戒して実は別で、襲われましたじゃ本末転倒じゃない」
「そうだけどう〜ん」
「…う…うん。あいつに襲われた」
「だいじょうぶデビドラモンたちがあいつやっつけるから!」
「う…うん…ありがとう」
「どうしたのロップモン?お腹減ってない?」
「…リンゴ食べたくない」
「?リンゴ好きだったろ?」
「お肉食べたい…」
「こっち食べる?」
「大丈夫。肉はこれ以外も焼いてるから。ホラ」
「あり…がと」
 そう言うとロップモンは一心不乱に肉を平らげた。少し元気が出たのか。どこか一辺倒な悲しい顔ではなくなっていた。
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1124/09/17(火)23:30:12No.1233873234そうだねx1
 それからはふたりとも少しずつ打ち解けたのか口数も増えていった。
 特にロップモンは勇太に懐いたようであった。
「お肉おいしい」
「そこ僕の場所…」
「ヴォ―ボモン今は我がまま言わないの。この子達よりお兄ちゃんだろ?」
「あんた達ふわふわで良い匂いね」「光食べ辛いよ〜」
「ねえ僕達どこ行くの?」
 ロップモンが勇太を見上げて聞いた。先ほどまでの暗い表情ではなくあどけない表情を見せている。
「うん?ああ麓のはじまりの街だよ」
「海!海ってある!?」
「海ならはじまりの街からちょっと行ったとこにあったわよ?何そんなに行きたいの?」
「僕達今まで村から出た事ないから本とかでしか見た事なくて、ずっとこいつ憧れてるんだ子供だよな〜」
「兄ちゃんも行きたいって言ってたじゃん!本当だよ勇太!」
「あんたらほんと可愛いわね」「やめて〜光ぐりぐりしないで〜」
1224/09/17(火)23:30:23No.1233873315そうだねx1
 そろそろ寝るという頃に眠れないのか勇太と光のテリアモンとロップモンが胸元で話しかけてきた。
「ねぇ勇太はなんで僕達を助けてくれたの?」
「う〜ん。この馬鹿はお人好しだからよ」
「寝ぼけながらひとをディスるのやめてよ光…」
 そう言っても勇太もだいぶうつらうつらとしていた。
「ヒーローに憧れてるんだ…それに恥じないように…」
「ヒーロー?」
「う…ん…ふたりいるんだ…ひとりはさ…好きなウルトラマン…うんそういうヒーローがいるんだけど…そのウルトラマンがさ…ヒーローに憧れたきっかけがヒーローショーのアクターのひとに勇気を分けてもらって…アクターって?あ〜うん…なんかアクター…俺も昔…ショー見に行って迷子になった時…泣いてる俺の手を引いて一緒に探してくれたんだ…ずっと…ずっと…誰かに優しくできるひとがいるんだって…怖くなる時…馬鹿々々しくなっても…そんな風に…あの優しさに恥じたくないんだ…」
1324/09/17(火)23:30:35No.1233873400そうだねx2
「もうひとりは…」
「従兄にさ…叶…持田 叶…俺より頭も運動もできて…なんでもできるんだけど…ずっと助けてくれて…ムカつくけど格好良くてさ…ゴーグルも意地悪する奴に立ち向かえる勇気にって…欲しがってたから…くれてさ…あいつみたいになりたいんだ…」
「一緒に…いた奴でしょ…あんたより顔も比べ物になら…なかったわね…」
「うるさ…な…それに俺も妹いるから…兄弟守りたい気持ち凄い…分かるから…」
「勇太も…兄弟…大事…?」
「もちろ…ん」
 勇太達はそのまま眠りについた。
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1424/09/17(火)23:30:56No.1233873531そうだねx1
「オ…ヘッタ…」
 異音…勇太を微睡みから覚醒させたのは異音と重みだった。
 デビドラモンの聴力や嗅覚で近づくデジモンや異変があればすぐに反応してくれる。
「痛っ」
 痛み。敵意のある感覚に一気に目が醒めた。そこにいたのはロップモンであった。
 痛みは爪と立てられ血が出ているためであった。
「お腹減った…食べたい…勇太…」
「ロップ…モン…?…うわっ!?うぐっ!!?」
 瞬間、ロップモンが勇太の顔目がけ噛み付いてきたのを避けたが肩に噛み付いた。
 噛み付くだけではなく、そのまま力を籠めてくる。これは…
「こ…れ…喰おうと」
「勇太!」
 ヴォ―ボモンが横からロップモンを蹴り飛ばす。
1524/09/17(火)23:31:10No.1233873628+
「あ…痛っ!!!???」
 肩から激痛が走る。勇太が肩を見ると服の上から噛み付かれた肩の一部が抉られていた。
 光とデビドラモンも起きてその光景を後ろから見ていた。
「なに…これ…?勇太!?」
「…」
 デビドラモンもスイッチを切り替えられないのかどう反応していいか分からずにいるみたいであった。
「ぐちゅ…美味…んぐっ…しい…はぁ…あぁ足りない…お腹減った…食べたい…食べたい…食べさせて…!」
「まさか…こいつが…」
「くっ…!」
 テリアモン達で見た惨劇とこのロップモンの反応それが結び付き、今の状況の理解は出来なかったが構えなければならない。
 それを見てロップモンは耳を抑えて丸まってしまった。
 それは最初に見たポーズと同じだった。それを見て今まで接していたロップモンと同じだと理解できた。
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1624/09/17(火)23:31:23No.1233873719そうだねx1
「やめて…勇太!」
 テリアモンが勇太達とロップモンの間に入っていた。
「あんた達なの…?」
 光が怒りなのか悲しみなのか別の感情なのか複雑な表情をしている。
「違う!違うの!黒いリングはブラックガルゴモンが…壊れてて…!だからもう違うんだよ!」
「…べたい…お肉!!!!」
 ロップモンはテリアモンを突き飛ばし勇太達に向かって行く。
「駄目だよ!駄目!!!ロップモン!!!お肉いっぱいあげるから!僕が何とかするから!!もうみんなを食べないで!!!」
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1724/09/17(火)23:31:35No.1233873798そうだねx1
 進化の光がロップモンを包み形状が変わっていく。
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!」
 身体は巨体にウェンディモンへ進化し、叫び声が衝撃波のように周囲の岩肌を破壊しそのまま、周囲を破壊しつつ勇太達へ突進して来た。
「喰ワセロオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
「勇太!」
「やめて!勇太!!!!」
「なんで…くそっ…ヴォ―ボモン進化!!」
「デビドラモン進化!」
 ラヴォ―ボモンがウェンディモンと組み合い動きを止める。
「お前自分が何やってるか分かってるのか!お前がみんなを!?」
「オ腹減ッタ!食ベタイ!!!全部!全部食ベル!!」
「…勇太黒いリングは見当たらないし…もう正気じゃない…このままじゃ…下手に長期戦にしてもし逃げられたら他のデジモンが喰われるかもしれない…」
「レディーデビモン…」
1824/09/17(火)23:31:46No.1233873873そうだねx1
「…私も覚悟を決めたわよ勇太…」
「…ラヴォ「やめて勇太!!!」
 テリアモンが攻撃を指示しようとする勇太に飛びかかり止める。
「やめて勇太!殺さないで!!違うんだ!黒いリングが付く前まではあんな事しなかったんだ!優しい奴だったんだよ!黒いリングがなくなからもう大丈夫だって!ブラックガルゴモンみたいな事言わないで!!!」
「あんた達やっぱり隠してて!」
「兄弟なんだ!たったひとりの家族なんだ!!!取らないでよ!!!」
 どうすればいいのか勇太には分からなかった。身に降りかかる危険と対処できる方法も検討が付かない。
 検討は付かないが、妹の日花の顔と昔自分の両親を懸命に諦めずに探してくれたアクターを思い出した。
 勇太は腹を括った。
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1924/09/17(火)23:32:02No.1233873957そうだねx1
 ラヴォ―ボモンが体勢を崩され投げ飛ばされた。
 「ぐっくそ…!…勇太!」
 勇太はゆっくりとウェンディモンの前に立った。
「何やってんのよ!あんた!死ぬわよ!」
「ロップモン!俺だよ!勇太だ!分かるだろ!」
「勇…太?…オ腹減ッタ」
「ぐっ」
 ウェンディモンは勇太を掴み持ち上げ口に運ぼうとする。
「馬鹿!レディデビモン!」
「大丈夫!光!…ロップモン!さっきテリアモンを吹き飛ばしはしても喰いはしなかった!分かってるんだろ!全部が全部食欲だけになった訳じゃないんだろ!なら負けちゃだめだ!海が見たいんだろ!それなのにこんな黒いリングに全部塗りつぶされちゃ!大事なもの全部を失くしちゃ駄目だ!!これ以上家族を失くすような事をしちゃ駄目だ!!」
2024/09/17(火)23:32:15No.1233874041そうだねx1
「ウ…ミ、家族…ミンナ…ミンナ…オ腹」
「ロップモン!!」
 テリアモンがウェンディモンの顔面にへばり付き目を見据える。
「食ベ…食べ…」
「ロップモン!!」
「テリア…モン?勇太?僕は…?」
 正気を失っていたウェンディモンの目が焦点が合い、光が戻っていった。
「ば…馬鹿!!何やってるのよ!こんの馬鹿達!!!無茶すんじゃないわよ!!!」
「ごめん…なさい勇太…僕」
「大丈夫だから…もうロップモン…大丈…」
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2124/09/17(火)23:32:26No.1233874117そうだねx1
 その場のみんなが安堵した瞬間であった銃声が鳴り響いた。

「えっ」
 勇太のすぐ横を何かが通り過ぎたのを感じた。次の瞬間には血しぶきが顔に飛び散り地面へと落ちた。
 何が起こったのか分からなかった。体勢を取り直すとそこにはウェンディモンが倒れテリアモンが呼びかけている。
「なんで…」
 ただ目の前の状況が飲み込めずに勇太は佇んだ。
 全てがなんとか上手くいった…ロップモンは正気に戻ってテリアモンも笑って…違う目の前のウェンディモンの顔面にはぼっかりと穴が開き、目には既に生命を感じ取れなかった。もう…˝それ˝としか言えない物体にテリアモンが懸命に呼びかけている。
「勇太!!!!」
 ラヴォ―ボモンの声に勇太は我に返り銃撃の方向を見る。
 既に光とレディーデビモンは臨戦態勢を取っている。
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2224/09/17(火)23:33:47No.1233874658そうだねx1
 そこにいたのは女性型ガンマンのデジモン、ベルスターモンであった。
 なぜこのタイミングで現れたのか、今までの事の流れから全く関係のない相手の出現に勇太と光は困惑した。
 だが、明らかな敵意は感じられる。いち早く動いたのはレディーデビモンであった。
 パートナーである光が指示…敵意を覚える前に危険を察知し指示までの時間が惜しいと考えるのではなく感じ取ったからだ。
 その動きに遅れて光と勇太は目の前の存在が敵である事に気付いた。
「ハッ!優秀なデジモンだがパートナーがお粗末じゃな!」
「レディーデビモン!ダークネスウェーブ!!!」
 無数のコウモリがベルスターモンを覆い隠し、直撃したかに思われた直後、発砲音と共にコウモリは破壊され霧散してしまった。
2324/09/17(火)23:34:02No.1233874773そうだねx1
「ラヴォ―ボモン!アーススタンプ!!!」
 コウモリで覆い隠された死角からラヴォ―ボモンが全体重を乗せ腕を振り下ろす。
「嘘でしょ!?」
 が、ラヴォ―ボモンの巨体をベルスターモンは片腕で完全に抑え込んでいた。
「クソ!グレイトフレ…うぐ!?」
 ラヴォ―ボモンが大きく息を吸い込むのに合わせ、ベルスターモンがもう片方の手でラヴォ―ボモンの鳩尾に一撃を叩きこんだ。
「ハハハ!!!図体通りの愚図だな!」
2424/09/17(火)23:34:15No.1233874853そうだねx1
 吐き出すために溜め込んだ炎が口で炸裂し、そのままラヴォ―ボモンは倒れ込んだ。
 気を取られたその隙を突き目の前にレディーデビモンがベルスターモンの眼前に現れた。
「どんなに強くてもその力を利用されればお前でも一溜りないだろ」
「レディーデビモン!プワゾン!!!」
「馬鹿が当たればの話だろ」
 完全に決まったと思われる距離からベルスターモンは回し蹴りをレディーデビモンの顎へ当て、仕込みがあるのかそのまま炸裂を起こした。
 硝煙で顔を覆い隠しながらレディーデビモンはそのまま地に伏した。
「クッククいいねぇ…このレディーデビモンのパートナーはそっちのメスガキの方か?名前は確か鬼塚 光だかだったな…おめえとこの蝙蝠女は生かしてやるよ…だが、そっちの日野 勇太てめえは駄目だ」
 瞬きもしないうちに、ベルスターモンは勇太の首を締め上げた。
「うぐ…!?」
「勇太!」
「つまんねえよ…見込みなしだ!殺せ言われてるしなここで死ねよ!!」
「ゆ…勇太!」
 光は恐怖からか止めに入る事が出来ずにいた。
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2524/09/17(火)23:34:28No.1233874945そうだねx1
「こ…殺せって誰に…!…?」
「あ?お前達、何を誰を相手にしてるかも分からないで喧嘩売ってたのかよ。冥途の土産に教えてやるよ七大魔王のデーモンだよ。」
「で…ぇもん?」
「てめえらが壊して回ってるあの輪っかを使って作るんだとよ何者にも束縛されない自由な世界ってのをよ。
 オレは強い奴と戦って喰えればいいんだがよ…まっそのうちデーモンも殺せるようになるくらいは喰いてえからよ。
 デーモンも気にしてるてめえら選ばれし子供がどんなもんかと思ったが、ガッカリだよ」
「なんで!なんでロップモンを殺したんだ!」
「あ?」
 ウェンディモンに縋りついて泣いていたテリアモンがベルスターモンへ向かって行った。
「だ…駄目だ…駄目だ!!来ちゃ駄目だ!!!」
 テリアモンがベルスターモンに飛びかかろうとした瞬間、ベルスターモンはテリアモンの眉間を打ち抜いた。
 顔面が抉られ眼球、脳漿が飛び散り一目で生き物ではない物となった事が分かった。
2624/09/17(火)23:34:42No.1233875041そうだねx1
「んなもん使えねえゴミだったからに決まってるだろ」
「…」
「話の途中だったなあのゴミに使ってたのはデーモンと一緒に流れ着いたイービルリングを改良したインスティングリングてんだ
付けた奴の本能を刺激して本能のままに行動させる。壊しても自分の本性を知った奴は本能に抗えない。
それが強く混沌を産むデジモンになるって算段だったらしいが…このゴミにはがっかりだな
お喋りはここまでだなホレ死ねよ」
 ベルスターモンはそのまま勇太の首を掴む手に力を込めてゆく。それは窒息させるためではなく首の骨をそのまま潰そうとしていた。
「勇太!!!」
 眼前に迫る死、どう転んでも覆らない実力差。痛みと薄れる意識の中で全ての取り繕っていたものが剥がされ腹の底から言葉が湧いて出た。
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2724/09/17(火)23:34:53No.1233875117+
「ブッ殺す」
2824/09/17(火)23:35:27No.1233875309そうだねx1
 瞬間勇太のデジヴァイスが今までと違う黒色の光を輝かせ、同時にラヴォ―ボモンも同様の黒い光を纏い姿を変えていく。
「進化する…?」
 呆気に取られる光を体勢を立て直したレディーデビモンが抱えて離脱する。
 瞬間光のいた位置から光と同じような黒色の炎が立ち上がった。
 周辺に同様の黒炎が立ち上り周囲の岩肌を破壊していく。
「勇太!その進化は駄目だ!光が危ない目に!分からないの!?勇太!!」
「ゲヘナガリータモン…殺せ!!!!」
「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝!!!!!!!!!!!!!!!!」
2924/09/17(火)23:35:38No.1233875387そうだねx1
「少しは楽しめ…ガハッ!!」
 ベルスターモンが言葉を発し終わる前にゲヘナガリータモンは勇太事ベルスターモンを弾き飛ばす。
 勇太は地面に叩きつけられたが一切気にせず、自身もフェリアモンの脚に変化させベルスターモンに向かった。
 ゲヘナガリータモンが巻き起こす炎がベルスターモンを包み込む。
 (ダメージはあるが、あのデカブツの打撃程じゃない…あいつ完全体か?それでこのダメージ!おもしれえ!スピードは不意を突かれるとやべえが意識すれば躱せねえ事はない)
 瞬間であった巻き上げた炎からゲヘナガリータモンの腕が生えそのままベルスターモンを弾き飛ばし壁面に衝突させた。
「ガッハッ!!!」
3024/09/17(火)23:36:43No.1233875847そうだねx1
(こいつ炎を自由に身体を移動させられるのか!?)
「おもしれえ!だが対応してみせ…!?」
 黒炎を突破し自身の身体を焼きながら勇太はベルスターモンへ飛び蹴りを放った。
 ベルスターモンは身体を回転させ壁面に沿って避けるが勇太はそのまま追撃の蹴りを壁面に喰い込ませながら放っていくそれ自体はベルスターモンは避けきれたがその先にゲヘナガリータモンの炎が上がっていた。
「ッチ!!!」
 ベルスターモンが銃撃で腕を破壊するが背面から勇太のゲヘナガリータモンの炎を纏った蹴りが当たり吹き飛ばす
3124/09/17(火)23:36:59No.1233875969+
書き込みをした人によって削除されました
3224/09/17(火)23:37:21No.1233876108そうだねx1
「クク…ハハハハ!!!!!!!やるじゃねえか勇太!人間が殴りかかってるなんててめえみたいないかれた奴初めて見たぜ!しかもその身体!!!自分も炎で焼けてるじゃねえか!!!ハハハハ!!!!」
「殺す…殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!」
「駄目だ!勇太!このままじゃ勇太が死んじゃう!!」
 レディーデビモンの声は勇太に届いていなかった。
「殺おおおおおおおおおおす!!!!!!!!」
「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア!!!!!!!!!!!」
「来いよ!勇太!!!!!」
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3324/09/17(火)23:37:32No.1233876173+
 勇太とベルスターモンの間に銃撃が放たれた。
 硝煙と銃声、勇太もベルスターモン動きを止め銃撃があった方向を向いた。
 そこにはブラックガルゴモンがいた。
「チッ撒いたと思ったのにもう来やがったか」
「はぁはぁはぁ…あいつ」
「勇太いいとこだが今日はここまでだ!」
 ベルスターモンは銃撃で土埃を巻き上げ姿をくらませた。
「!…待て!!逃げるんじゃねえ!!!!!!!逃げるな!!!!!!」
「おめえの事殺そうとして悪かったな!楽しかったぜ!そのまま強くなれよ!」
「逃げるな!!!追うぞゲヘナガリータモン!!!」
 より強い炎が巻き上がって周囲を破壊していく。
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3424/09/17(火)23:37:47No.1233876291+
「進化…」
 ブラックガルゴモンは小さく呟き姿を変えアンティラモンへと進化した。
 周りが見えず破壊しながら進もうとするゲヘナガリータモンの目の前へ瞬間移動し体組織を変質させゲヘナガリータモンへ強力な一撃を放った。
 そのままゲヘナガリータモンは地面に伏せてヴォ―ボモンへと退化した。
「何するんだ!!!これじゃああいつを!!!!?」
 アンティラモンへ掴みかかろうとする勇太に向かいアンティラモンは周囲を指さした。
 雨が降り始めた。
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3524/09/17(火)23:38:01No.1233876384そうだねx1
「…」
 崩壊した周囲。倒れ込むヴォ―ボモン…そして怯えた目でただただ勇太を見ている光。
 瞬間、全身の血の気が引いていくのを勇太は感じた。
(何を…しているんだ俺は…みんなを守る…テリアモン…ロップモン…兄弟…守らなきゃ…許せない相手…許せない…何を
?…同じじゃないか…光…守らないと…なのに…あともう少しで俺は…)
「はぁ…はぁはぁ!…はぁ!」
 目の前が暗くなっていく胸が苦しい立っていられない。
 勇太は過呼吸となりその場にへばりつくした。
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3624/09/17(火)23:38:15No.1233876478そうだねx2
 薄れる意識の中、それでもまとまらない思考で勇太はヴォ―ボモンを抱き抱えた。
「…すまない私があいつを逃さないで…もっと早く君達の元へ来れていれば…」
 アンティラモンは小さく呟いた。
「ごめん…ごめんごめんごめん」
 ヴォ―ボモンへ向けてなのか光に向けてなのかテリアモンとロップモンに向けてなのか勇太自身にも一体誰に向けて謝り続けているのか分からなかった。
 しかし、自然と言葉が止まらなかった。
 雨はより強さを増し始めていた。
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3724/09/17(火)23:38:26No.1233876553そうだねx3
オワリ
3824/09/17(火)23:39:19No.1233876879+
非常に丁寧な物語と絶望…やはりすげぇぜ
3924/09/17(火)23:39:35No.1233876977+
大作だ…暗黒進化とは苦い経験になったな…
4024/09/17(火)23:40:07No.1233877183+
うおきっつ…
あと従兄の名前出たのもしかして初めてか
4124/09/17(火)23:40:43No.1233877402+
いい絶望ね!
4224/09/17(火)23:42:10No.1233877932+
素敵だな…絵本かつここまで自身のキャラをしっかり冒険させられる
4324/09/17(火)23:55:09No.1233882699そうだねx6
普段優しい人を怒らせてはいけません
4424/09/17(火)23:56:21No.1233883158+
やはり暴が勇太の本質…
4524/09/17(火)23:56:51No.1233883360+
想像以上に激情が激情だった
ゲヘナかぁ…
4624/09/18(水)00:01:12No.1233884928+
勇太…
4724/09/18(水)00:03:01No.1233885483そうだねx2
そりゃ殺意も湧くよ
あれ……思った以上に強烈に出たな……
4824/09/18(水)00:09:27No.1233887340+
まあ少し時間を置けば優しい勇太に戻るんだろうけどみんなの頭にここまで行くやつだって残っちゃうな……
4924/09/18(水)00:20:15No.1233890708+
何気に三人目の七大魔王デーモンだな
5024/09/18(水)00:26:12No.1233892558+
従兄弟の闇堕ちフラグとかストーカー真のパートナーもいる勇太の明日はどっちだ
5124/09/18(水)00:30:59No.1233893964そうだねx2
>従兄弟の闇堕ちフラグとかストーカー真のパートナーもいる勇太の明日はどっちだ
(4年後にユニバースする)
5224/09/18(水)00:33:33No.1233894736+
きみ誰ぇ!?日野勇太!?選んでないよ!?を誰かしらに直接言われるかもしれないもあるぞ
5324/09/18(水)00:36:42No.1233895686+
これで本来?のパートナー出てこないってことは多分敵側にいる存在とかなんだろうな……
5424/09/18(水)00:39:07No.1233896470そうだねx1
可愛い系のデジモンに対して死に方が全体的にグロい!


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