「デモンロード初勝利まで4戦を要するなどデビュー当初は苦戦が続いていたが、4戦目の東京芝2400で念願の初勝利を挙げると続く日本ダービーではミナミホマレに次ぐ2着と大健闘。その後は3連勝し挑んだ菊花賞でも2着と実力は見せたが、中々大レースでは勝ちきれずクラシックシーズンを終える。シニア級の初戦を勝利し挑んだ春の帝室御賞典では判定の末勝利し、ついに大レースでの勝利を飾る。続く春の目黒記念も勝利し春シーズンを無敗で終えると秋になってもその勢いは止まらず、秋初戦も勝利、続く秋の目黒記念も制覇し史上初の目黒記念春秋制覇を達成。この時点で未だシニア期に入ってから無敗であり年間無敗を賭けて中山記念に挑むが、疲れや直線の短さもあったのかここは5着敗退。戦況の悪化に伴って走れるレースがなくなったこと、追い込みという脚に負担のかかる戦法を取っていたことによる疲労もありこの年を最後に引退。クラシック期の序盤こそ苦戦を強いられたものの勝ち上がってからはダービー2着、菊花賞2着という成績を残し。シニア期に入ってからは引退レースとなった中山記念以外では負けなしという実力に加えて、ゴール板ギリギリで差し切ることが多く判定の末の勝利が多かったこともあってか高い人気を誇った。クリフジやセントライトに並ぶ人気と実力を兼ね備えた戦前を代表する名ウマ娘。引退後は担当トレーナーと結婚、レースとは離れる生活を選んだこともありその後の消息は詳細不明。…そして俺の担当ウマ娘ラシヨウモンの母親でもある。」 「ラーちゃんのお母さんはトレーナーさんならご存じかもしれませんが、デモンロードさんっていう方です。」 「…!あのデモンロードかい!?」 「はい、今トレーナーさんが思い浮かべてる方で間違いないと思います。」 「そうか…。…なら一つ疑問なんだが、なぜそのことを俺含めた多くのトレーナーは知らないんだ?確かに戦後の混乱もあって多くの名ウマ娘達が今は行方知れずになってしまったが、トレセン学園に娘を入学させるとなればこの学園にだって保護者として来るだろう。そうなれば誰かしらが耳に挟んで噂なりが聞こえてきそうなものだが、俺はラシヨウモンについてそういった話を聞いたことがない。」 「それは…デモンロードさんがトレセン学園には来られていないからだと思います。」 「…来てはいなかったとしても書類等に保護者として名前は出る。あれほどの名ウマ娘だ、名前が出ただけでも噂の一つは立つだろう。それさえなかったということはつまり…その…。」 「はい…ラーちゃんの入学にあたってはおじい様。トレーナーもご存じだとは思いますが、ダイエイの社長を務める私の祖父がデモンロードさんに代わって保証人を務めています。」 「…デモンロードさんとご主人は亡くなられたのかい?」 「デモンロードさんのご主人は戦地で亡くなられたそうですが、デモンロードさんは生きています。ただ…。」 「…ただ?」 「…意識不明なんです。デモンロードさんもう何年もずっと意識が戻らないんです。」 「…!…なぜと聞いてもいいかな?」 「はい…元々それを話すためにこうして話しかけましたから。…ラーちゃんって時折フラフラとどこかに行っちゃうようなところありませんか?」 「…いや、そういうところを見たことはないな。」 「…子供の頃はそういうところがあったらしくて、それこそお母さんであるデモンロードさんが心配するくらいには親から離れて遠くに行っちゃうような子だったんだそうです。」 「へぇーなんだか少し可愛いな。」 「ふふっ…そうですね。…誰が悪いなんてないんです。強いて言うなら運が悪かったんです。…ある雨の強い日ラーちゃんは雨の中、外に出てしまったそうです。当然デモンロードさんは探しに出ました。雨の中を傘も持たずに必死に探して、探して町の端の方でフラフラとしてるラーちゃんを見つけたんだそうです。あとは連れて帰ればそれで終わり、いつも通りの日常で終わるはずでした。ただ…」 「そうはならなかった。そうだね?」 「はい。その時、近くに積んであった木材が雨や風の影響なのか倒れてきたんだそうです。ラーちゃんを助けるためにデモンロードさんはラーちゃんを突き飛ばして下敷きになりました。幸いなことに完全に下敷きになったのは脚だけだったこともあり怪我も脚の骨折くらいで一命は取り留めたんですが、脚が治ってもどれだけ時間が過ぎても目を覚まさないんです。お医者様が言うには木材の崩落に巻き込まれた際に頭を打ったのが原因かもしれないとのことなんですが、お医者様もどうしたらいいのかという状況で手の施しようがないと仰られていました。」 「…。」 「お父様は先ほど言ったように既に亡くなられていましたから、ラーちゃんは天涯孤独。ラーちゃんのお父様と親交もあった祖父が見かねて引き取って現在に至るというわけです。」 「…デモンロードさんはよく言っていたそうです。クラシックレースで勝てなかったもの悔しいが、皐月賞には出ることもできなかったのが一番悔しいと。」 「…!そうかラシヨウモンはだから…。そうか…。」 「…ラーちゃんにとってクラシックレースはお母様と一緒に見た夢そのものなんです。」 ピ、ピ、ピ、ピ 「お母さん…ごめんなさい…ごめんなさい…」 「勝てなくてごめんなさい…!」 ウマ娘 ピオニエーレネロ 第2.25R 「皐月の夢 叶わず」 オニムシについてはこれからも解説とか頑張っていくのでどうか許してほしい。