─皆様。 皆様御機嫌よう。 …でいいのかな?確かアスタ商会ってこんな語り口だったよね。 残念だけど私はアスタ商会じゃあないよ、私は真、七津真。 ダークエリア最下層のここコキュートスを、七大魔王たちと一緒に統治と管理してるよ。 皆は私のことを女王とか陛下とか呼んでるけど、まぁ好きな呼び方でいいよ、私は気にしない。 さて、今日は私の妹の話をしようか。 私の妹、七津 綴(つづり) 結論から言おう、彼女は…天使だ。 もうかわいい、とにかくかわいい。 年齢に比べて小柄な私と違い、綴はあちこちぷにっとしている、ほっぺたとかを突くととてもいい感触だ。 膝枕なんてしてもらって日にはもう最高だ、「これじゃどっちがお姉ちゃんか分からない」と呆れられたこともある、かわいい。 共働きを始めた両親の代わりに、交代で七大魔王達に面倒を見に行かせてるんだけど、その時送られてくる写真がもうかわいい。 ルーチェモンと共にトレーニングをしている場面、ベルゼブモンの銃の手入れを手伝っている場面、バルバモンの料理を手伝っている場面。 とにかくいろんな写真が送られてくる、全部私の宝物だ。 おおっと?そんな話をしていたら丁度リリスモンから写真が送られてきた …わあ、ベルフェモン、ロップモンと一緒にお昼寝してる、かわいい。 両親にも送っておこう。 と、次は綴のパートナーデジモン、ロップモンについても話しておこうか。 自分のことを「われ」と呼び、可愛らしい外見と声とは裏腹に、不遜な態度を崩さない彼…彼女? まぁいいか、ロップモンは綴にぬいぐるみの様に抱きかかえられて移動するのがお好みらしく、自力で歩いているところを私は見たことがない。 それ以外は寝ているか、綴の膝の上に乗っているかだ、少なくとも私の目の前では。 それが綴によって進化すると一転、ウェンディモンへ変わり荒々しい戦闘スタイルで敵を拳によって粉砕する。 …綴と共に。 そう、綴と共に、なんだ。 綴は「デジソウル」を発生させることが出来るんだよね。 発生させたデジソウルを拳に纏いウェンディモンと共に戦う。 それが綴の戦闘スタイル。ってところかな 初めて私が綴から発生したデジソウルを目撃したのはいつだったか。 あれは確か綴が趣味のタロット占いをしていた時だったと思う。 タロット占いは綴の以前からの趣味だ、でも彼女の前にロップモン…当時はチョコモンだったけれど、ロップモンが現れる前には出ていなかった。 今のところの仮説としてロップモン、デジモンとの接触によってデジソウルが生じる様になったと考えているよ。 興味深いのはここからでね?明らかにデジソウルが発生する前と後で綴の占いの精度が上がっているんだ。 ほぼ未来予測に近いレベルで。 「デジソウルを込めた占いによる高精度の未来予測」私はこれを綴の持つ特異技能だと仮定した。 デジソウルをロップモンの進化、特異技能による未来予測、そして拳に纏わせた強力な徒手空拳。 デジソウルを戦闘リソースとして積極的に運用している訳だね。 と、まぁ二人についてはこんなところかな。 それで… また綴のことを狙ったのはやっぱり綴の持つ「特異技能」が目当てってことで良いのかな? 自称『デジモンイレイザー』さん。 ……そう、やっぱりだんまり決め込む気なんだね。 一応、キミがデジモンイレイザー本人でなく、使い走りにされてるだけの木っ端なら命だけは見逃してあげるつもりなんだけど。 それでも何も話さない気なのかな。 …本人だったら? へぇ、ようやく口を開いたね。 もちろん殺す。 ─ 「…ツヅリよ」 「どうしたの?ロップモン」 「パパ上とママ上はまだ帰らぬのか、われはもう腹ペコだぞ」 「今日は二人共遅いよ、バルじいと一緒に作り置きしてあるから、晩御飯はそれあっためよう」 「うむ…」 さて、と バルバモン…バルじぃの話をしたら、久々にお姉ちゃんを占ってみたくなった。 私の姉、七津真はデジタルワールドの奥底、コキュートスでなにやらすごいことをやっているらしい、よくわからないけど。 大体月イチくらいでウチに帰ってはくるけど、それでも忙しそうなのは伝わってくる。 「すぅ…」 目を閉じ、手先に意識を集中する。 あとはできるだけノイズ、つまり私の思考を乗せないようにカードを取る。 結果は 「『正義』の逆位置かぁ、また碌でもないことやってるのかな…」