「ニンジャはいない、イイネ?」 これが世に溢れている常識だ。だがニンジャはいるんだ…この世界の裏側を支配してるのはニンジャだ。 アンダーグラウンドに詳しくなれば「それの話」はいくつも耳にする。 だがそれが本当かどうかは俺たちは知らなかった。あの時までは。 「アイエエエエエ!コワイ!コワイよぉ!」 「バカ!大声出すな!見つかるぞ!」 路地裏を逃げる俺とクライアント…何者かに追われている。 そいつは少なくとも相当なアサッシン…もう一人いた同行者もなすすべもなく殺された。 「やっぱり!やっぱりいたんだ!ニンジャは!!」 日刊コレワの記者の一人である出っ歯の男が叫ぶ。そう、あれはまさしくニンジャだ。 <<ネオサイタマの都市伝説を追う!ニンジャは本当にいるのか!?>> コレワの記者たちはそんな胡乱な企画を立ち上げた。もちろん彼らもニンジャなど信じてはいない。 だが低知能な読者が満足すればそれでよいわけだからそれらしい取材して記事にする、毎度のことだ。 もし万が一ニンジャがいたら困るというので俺に依頼が来た。実際のところは日ごろ世話してる縁ってところだったのだろう。 記者ってのは取材と称してネオサイタマの危険地域に踏み込むこともある。そういう時に対策として用意されるのが俺たち非合法ヨージンボだ。 専属ってわけじゃないがコレワには気の合うやつがいたもんでな。実際半分記者まがいのこともしてたわけだが。 そいつはニンジャのスリケンであっという間に頭を砕かれて死んだ。 「真ん中だ!あそこなら大通りへ抜けられる!」 この辺の地図は頭に入ってる。さすがにアサッシンは大勢に姿をさらすのを嫌うだろうという判断だ…だが。 「イヤーッ!」 カラテシャウトが響き、俺たちの眼前にニンジャが降り立つ。 「ドーモ、野良犬めいて嗅ぎまわる薄汚いパパラッチの皆さん。貴様らにはここで死んでもらう」 「アイエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ…アバババババ!!」 隣の出っ歯の記者はニンジャを目視したとたん泡を吹いて死んだ…奴から放たれる殺気のようなものが影響したのか…? 俺はとっさにカタナを抜き、イアイドーを構えた。死んだらオワリ。だが俺はまだ死ぬわけにはいかない。 「へっ、まさか本当にニンジャがいるとはな。こいつぁ大スクープだぜ…」 「イアイドー?無駄なことを」 ニンジャがせせら笑う。虫けらか何かを見るような目で俺を見る。イヤな目つきだ…。 だがイアイドーのアティチュードで心を平坦にしておのれの刃を研ぎ澄ませる。ニンジャと言えど人間だ。 首を斬るか心臓を突けば死ぬはずだ。ならばそうすればいい。 「「…イヤーッ!!」」 シャウトが重なる。そして俺のカタナは空を切った。 「なかなかのワザマエだな。だがモータルでは届かん」 俺の胸が熱く…燃えるような熱と痛みが…。意識が途切れる。 ニンジャはいる。 すべては…ニンジャなのだ。 そんな声が聞こえた気がした。 起き上がった頃にはニンジャは消え、無残に死んだ記者の死体だけが残った。 ニンジャはいる。この世界の裏側に。都市伝説は真実なのだ。 ならば俺がその真実を証明する…このニンジャの力を使って…! 本能的に俺は理解した。俺はニンジャになったのだ。 「ニンポをつかうぞ!ニンポをつかうぞ!!」 大通りを歩くニンジャ装束の男が騒ぐ。 カトゥーンから出てきたような恰好をした発狂マニアックの類だろうか? 背中にはカタナを。メンポ・ブレーサー・装束…まるでフィクションのニンジャそのものだ。 何かの気配を察したかのように男はビルの屋上へ視線をやり、懐からスモークグレネードを取り出す。 「ケムリ・ニンポ!」 男は叫びそ地面へ放り投げ爆発させる。煙が晴れたころにはすでに姿が掻き消えていた。 屋上にニンジャが二人。一人は先ほどの発狂マニアック…いや…。 「ドーモ、アーバンレジェンドです。お前を痛めつけてインタビューする!」