〜あらすじ〜
黒白（に偽装した有無）から送られたマイクロビキニを挑戦状と勘違いしたアルケアは当日に彼にブーメランパンツ送り、それを着てプールに来るように促す。
互いに恥ずかしい水着を着て先に根を上げた方が負け、という羞恥心対決を行おうというのだ。
今、どうでもいい戦いが始まる――！

「ようやく来たか、恐れをなして逃げ出したかと思ったぞ！しばらくは我に付き合ってもらおうか！」
人と会う約束をしていた黒白を待っていたアルケアはマイクロビキニを纏った状態で少年へ宣言した。待っている間その姿で衆目環境にいたが元々人の視線に疎いのもあって着始めたころよりは少しこなれて堂々としている。
「いや付き合うのは構わないけどそれ…いや…わかったようんとりあえずどこ行くの？」
（まさかあの水着も…いやでも本人の趣味の可能性が消えてないから今突っ込むのは野暮か…？）
一応個人の意思を尊重する黒白。先程すみれと会話した件の被害者かどうか見極めるため話を合わせる。

（むむ……想定していたより動揺が見られない、もっと攻めて褌とかにすべきだったか？だがまだ始まったばかり、衆目環境に晒しつつ泳げないのがバレない場所……）
思考を巡らせ、最初の目的地にしたのは。
「ふふん、まずは手始めに流れる森とやらに向かうとしよう！浮具を用いてしばし揺蕩おうではないか！」
（なんだ遊びたいだけか？）
ずんずん目的地へアルケアの様子から血生臭い戦いにはならないようだととりあえず一安心。
「オッケー…決着をつける前のインターバルってやつかな？」
さっそくすれ違う思惑に気づく者は誰もいなかった。

＊＊＊

「おお凄いぞ映塚黒白！この流れる森というのは快適だな！何もしなくても進むぞ！」
泳ぎが苦手で浮く程度しかできないため、遊泳施設に親しみがない葵にとって流れるプールは新鮮な体験だった。
来て早々はおっかなびっくり、といった感じだったがしばらく浮き輪をつけて流れている間に気に入ったのか、自身の格好や目的も忘れて上機嫌にはしゃいでいる。
「うんうん、たまにはいいもんだよね」
一方名前を呼ばれている黒白は慣れたフォームで追従しながらも周囲の視線が気になり意識がやや散漫としていた。
戦いにはならなかったものの泳いでいる間に少し冷静になると、別の意味で状況があまりよくないことを自覚したのだ。
少し恥ずかしい自身より少女のが注目を集めているものの、それはそれでマイクロビキニの年下の子を連れ回してる形になるわけで、もし知り合いに目撃されたらと思うと気が気でない。
そんな注意不足の状態では突然カーブ前方に現れた障害物に気づくのも遅れ――
「あ、葵ちゃん前！」
「？きゃあ！」
警告したものの遅く、流れに身を任せ油断していた少女がもっちりとした体躯に激突、浮き輪ごと裏返り見事に転覆する。

「あら〜ごめんなさいね〜」
プール上に詰まっていた物体――ドリモゲモンの上方からおっとりした声と共に顔を覗かせたのはそのテイマーである大森ほのか。他にも声が聞こえるので数人のテイマー、デジモンが上に居るようだ。
柔らかそうなので怪我しているわけじゃなさそうだがなかなか浮上してこない。
もしかして……泳げない？
思いついた最悪を想定して潜水し救助を試みる。
幸い水中で手を縦にバタバタさせていただけなので脇を抱えて浮上するまでは簡単だったが、問題はその後。

慌てふためいていた少女が抱え上げられた救いに縋りつくため少年の背中に手を回し――真正面から抱きつく形になった。
その拍子に年不相応な胸部が思い切り押し付けられ、上半身の素肌が柔らかな感触を享受するわけで、幾ら年の割には泰然としている少年も流石に多少動揺するというもの。
結果――
「わー絶対離さないで映塚黒白「いやでもこの体勢まず」貴様宿敵だから見放すつもりか薄情者！鬼畜！！人でなし！！！「いや離さないからそのビジュアルで誤解招く発言やめよう？！」助けてえええ！！「違、俺何もしてなくてあっ視線が痛いからやめて！」」
2人揃ったパニックが収まるまでしばらくかかった。

＊＊＊

（ああ……醜態を晒してしまった……！）
先程の騒動がおさまった後、どっと疲労感を感じた2人は早めに昼食を摂ることにした。
脳内反省会を繰り返していると食事のトレーを抱えた黒白が戻ってきた。
「お待たせ、適当にって言ってたけどどっちがいい？」
「ん、ありがと……じゃあサンドイッチで」
もそもそと頬張りながら改めて連れ添っている少年を見る。
露出の高い水着を着ているが、焼きそばを食べるその姿は自然体だ。年上の余裕、というやつだろうか。
自分だけが意識しているようで面白くない。むすっとしながら正面の少年を眺めていると声をかけられる。
「やっぱこっちの方が良かった？」
「いや……」
否定しようとしたその時、アルケアに電流走る。今こそ攻める時！

「うむ、少し我に賞味させよ。交換だ」
サンドイッチの入っていたプラスチックのフタ側に焼きそばが盛られていく。しかし真の狙いはそこではない。
手元のサンドイッチを食べやすい一口サイズに千切り手でつまんで差し出す。
「はいあーん」
「えっ何してんの」
コイツマジで腹立つ。
怒りで眉が痙攣してる気がするがあくまで平静を装う。
「この黒曜将軍が直々に食べさせてやろうというのだ、光栄だろう？それともまさか――恥ずかしいとは言うまいな？」
(よし完璧！これで拒否するようなら私の勝ち、恥を忍びながら食べるようであっても精神的優位を取れる完璧な立ち振る舞い！)
自身の頬がほんのり赤くなっていることにも気づかず突発的に思いついたナイスな案に酔っていたが、

ぱくり。

事もなげに差し出したサンドイッチを食べる少年。
味の感想を述べているらしいがフリーズしている少女には何も聞こえない。
――今何された？/なんで全然平気な顔してるの？/ていうか今指が、口の、中に――！
脳内で思考が暴れ回って収まらない。自分が今どんな感情なのかないまぜになってわからない。
「……あれ？どうしたの？というか顔が真っ赤だけど？」
「……きゅう。」
情けない鳴き声をあげて机に突っ伏した。

その日、自分が仕掛けた一人相撲でネオデスジェネラルの黒曜将軍は歴史的大敗を喫したのであった。

＊＊＊

「フッ――我の負けだ、映塚黒白……しかしこの度の屈辱は忘れぬ、次は我が勝つ！！」
（何の勝負だったんだろう……）
プールを連れ回されて軽食を食べていたらいつのまにか勝者扱いされていたが、藪蛇起こすのも面倒なので追求しないことにした。
「それとその……」
「？」
「まあ……楽しかったから、きてくれて……ありがと」
意地っ張りなアルケアの精一杯の感謝を聞いて、ふと頬が緩む。
「そっか、まあ楽しかったならよかった」
「！」
不意に見せた少年の笑顔は、普段のギャップも相まって輝いて見えた、ような――
(ないないない！こんなマジレス陰気男にドキッとするわけないんだから！)
ちょっぴり揺れ動いた自分の感情を否定するように顔を振る。

「どうしたの急に…」
「なんでもない！あなたも用事あるって言ってたし解散！！次会った時は覚えてなさいよ！！！」
口調を繕うのも忘れて相手を指差し捨て台詞。そのまま背を向け歩き去る。
「急に怒ったり笑ったり恥じらったり……女の子はよく分からん……」
ポツリと呟いた少年もまた次の目的地へ歩き出す。
こうして不思議な羞恥心対決は、日の高いうちに決着したのであった。

この後、アルケアがすっかり違和感がなくなってきたマイクロビキニのまま知人と遭遇しててんやわんやすることになったり、黒白が尾鰭のついた噂話で友人達にイジられるのだが、それはまた別の話。

『夏のある日の芍薬勝負』　おわり

一瞬花が貫通してた気がしたが気のせいか…
振り回されてるなぁアルケアちゃん

なけなしのラブコメ筋酷使しながら絵本の真似事してみようかと思ったけど1シーンごとにお手描きするなんて無理！！１
改めて絡んでくれた黒白公式に感謝です

これはどっかにねじ込もうと思ったけどできなかった趣味

イケメンだなクロシロ

黒白公式です
うおおまともにラブコメしとる…
ありがとうございます色々ぶん投げたのに応えて頂いて
しかもイケメンに描いてくださいってまあ…

うちの子とドリモゲモン登場させて頂いてる！ありがとうございます！
アルケアちゃんと黒白くんの組み合わせ良いなぁ…なんかほっこりする

普段のイメージとは違う屈託のない笑顔を見てちょっと惹かれてしまうの良いですよね

絶妙にかみ合わないかみ合い加減がいいね…好き…