仲間の数名は大怪我を負い撤退、それの護衛にさらに人員を割かれ、アルケアから分離したアルカディモンは単体で暴れ始めている。およそ戦況は最悪手前だ。不幸中の幸いは、死者がいまだに出ておらず自分以外にも戦える戦力があることだろう。 「D86、A04、F68!」  ディモビーモンはすでにグランクワガーモンに進化済み。ドットマトリックスを避けるために適宜退化させているが、それでも被弾は徐々に増えてきている。離れて観察している私の指示と、グランクワガーモンの歴戦の感。両方がなければとっくに吸収されているだろう。  徐々に追い込まれている現実に背筋に冷や汗が流れる。ウェヌスモンやそのパートナーが説得しているが、自我の形成時間からして言葉が届く前にこちらが擦りつぶされるのが先だろう。  この状況を打破する手立ては、おそらくある。ただ初めて使う手段な以上どうなるかは未知数で、上手くいくとも限らない。究極体への進化に正規の手段を使っていない以上、暴走する可能性すら――ふと、相棒と目が合った。「何を躊躇している」という視線が私を射抜く。  どうやら、気づかないうちに弱気になっていたようだ。失敗前提で考えて躊躇するなんてあまりにもかっこ悪い。 (……やるか)  覚悟を決めた少女は、今一度敵を見据える。花の騎士を従えた少女との共闘を経てやり方は覚えた。  必要なものは戦意と意識の切り替え。指を鳴らし、デジソウルを呼び起こす。 「チャージ!」  横に傾けたデジヴァイスに手をかざし、純白のデジソウルを読み込ませる。 「デジソウル……バースト!」 「……!」  デジソウルがグランクワガーモンを白く染め上げる。損傷した翅を補うように光が覆い、新たなる翅となろうとし――デシヴァイスが黒い光を放った。枢要罪から七大罪へ。虚飾は傲慢へと統合され、紋章は冠へとその姿を変える。 「……!?」 「う、ぐぁ……」  少女と相棒の精神に、悪意が滲む。周囲の悲しみや怒りといった感情に、闇や呪いといった攻撃の残滓。周囲からかき集められた悪性データが精神を蝕む。おぞましいそのデータの奔流をその二人は―― 「「邪魔だ!!」」  己の意志力のみ、でねじ伏せた。 「気分はどうだ?」 「最悪……というか喋れるの?」 「おそらくは今だけな」 「へぇ、後で見せてもらっていい?」 「好きにしろ」 「じゃあそのためにも――」 「「終わらせるか(ようか)」」