それがエーテル体で構成された仮初の身としてのものであろうとも、構うものか。愛しい伴侶は目の前にいて、手を伸ばせば触れることができる。
そして私が唱えたそんな突飛な記念日を、彼は一笑に付さずに私の──私と彼が契約した記念日として、共に祝うことを選んでくれている。
それで十分以上だ。


「カルデアからの観測では、放っておいても消える規模の微小特異点だって言うから。ただ調査して帰るだけの。せっかくなら、今日を一番一緒にいたい人と…と思って」
「いい判断です、と言いたいところですが足りませんね」
「もしもご満足頂けないようであれば、今日を飾るためのディナーもカルデアのキッチン組に頼んで準備中ですがいかがでしょうか陛下」
「よきにはからえ。花丸をくれてやろう」


リツカの茶目っ気に私も我ながら丸くなったもので、芝居がかった女王然とした言葉で返す。彼が破顔し、私もふっ、と思わず笑みが漏れ出てしまう。
慣れ合いでもへりくだっているのでもない、信頼しているからこその敬意交じりの格好付け。

我が夫は得な性格をしているものだ。こんななんでもないようなやりとりで、私の心がゆっくりと和らいでいくのを感じる。
年通してこれに晒されていた私は、今や気付けばすっかり絆されてしまっている。それはきっとこのマスターの特性なのかもしれない。
それは魔術師としては？考えるべくもない。私もそれなりに魔術に一家言ある身だが、贔屓目に見ても赤点もいいところだ。
人類最後のマスターとしては？知識に判断力、それなりに優良成績。好かれやすく、力を貸すのもやぶさかでないと思えるような人柄も含めた総合点で合格。
我が夫としては？──決まっている。リツカ以上などいるものか。


「……それじゃあ、そんなに急がずのんびりと、でもやることはしっかりと、調査を開始！だね。…うーん、湖の向こう、草原の中に道が微かに見えるような…湖畔をぐるっと回ってあっち側へ行こうか？」
「湖の向こうへ行くのですね？それなら遠回りすることもありません」

え？と呆ける我が夫の目の前で、私は上着を取り払い、履いていたブーツとソックスを消して素足となり。とん、と軽く地を蹴って湖面に身を投じた。リツカが息を呑む暇もあらばこそ、私は爪先で水面になんでもないように着地する。
振り返り、未だ湖畔に立ったままの彼に片手を差し伸べた。


「湖を真っすぐ突っ切ります。貴方も魔術で水の上を歩けるようにしますのでこの手に……リツカ？」


私の手をとらず、ただ立ち尽くしているような。変に空いた間があった。
この身がかつての湖の妖精で、この程度のことができるのは水着を着こんだ時に我が夫も既知になっていたはずだが。
訝し気な私に向けて、やっとで微笑みを浮かべたリツカが。少しの逡巡の後で。

「湖に立ったモルガン、びっくりするくらい綺麗だったから…」
「…っ」

まったくもって許し難い。然しこれだから汎人類史は侮り難い。
そんな急に、私の心を揺さぶってくるのはやめろという。
いいから早くしなさい、と言うようにそっぽを向いて差し出した手を振る。咄嗟の動揺を隠せた自信はない。せめて顔が赤くなっていなければいいと切に願う。
しかし甘く見るな、これでも元妖精國女王。心を無理矢理落ち着ける。
差し出した手が優しく握られる感触を得て、真正面から彼の顔を見た。
瑞々しく青い草原を、この身の意匠の如く黒い彼の髪を、風が穏やかに揺らして。
それは一枚の絵のようで。

「………」
「………」

手を振れあったままの時間。またもや止まりかけた時間を、すんでのところでお互いにはっと気付いたようにどちらともなく手を引っ張り合うことで常に戻す。
人とサーヴァントの力関係上、彼が引っぱられて湖の上。ようやく水面で向き合った。

「……それでは行きましょう。リツカ」
「そ、そうだね。ところで、モルガン」
「なんですか」
「ブーツとソックスを脱ぐことは無かったんじゃ…」

ただ身軽になって素足で水の上を歩くのも悪くない、と興に乗っただけのことだったがそれが何か…？
そう言えば、さっき手を握ったときに風が吹いて、我が夫までも一瞬止まって…まさか。

「………リツカ」
「ごめん。見えちゃってからちょっと…余計に意識がそっちに…」

風の悪戯だ、彼に責は無い。それにあえて言うなら、私も浮かれていた。…浮かれて、いた。

"興に乗った"？幼子のような所作といい、今の私はどうにかしているらしい。
それを認めるのも度量というものだ。と無理矢理自分を納得させる。
少なくとも、我が夫の前でなら構うまい。

「……記念日のために準備を怠らなかった貴方の功績に免じて不問とします。行きますよ、我が夫」

一点して楽しそうになったリツカの顔からして、声が弾むのを抑えきれなかったのは明白。だが少しばかりの粗相などもはや気にするものか。
今日は一年に一度の特別な日だ。

「……そうだね、行こうか。特異点の調査を、そこまで急ぐ必要はないけれど」
「ええ、大事なのはこの日をしっかりと味わうことです」

手を繋いだまま、並んで歩きだす。暫しのデート、二人きりの湖上散歩。

「ハッピー召喚記念日です。リツカ」

「でもその格好、あんまり他の人には見られたくないかも」
「湖を抜けたらまた着直します。安心しなさい、我が夫」

＃モルガン実装三周年でトレンド入ってたのすごかったね召喚記念日は人それぞれだけど辛かった分いっぱい超級幸運イベント楽しんでっていうのと普段の妻の格好で素足になってるのが見たいっていう感じの話
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妻実装から三年経つんだな…

ちゃんと祝ってあげるやつだよぐだは

>fu3651168.jpg
おめでとう召喚記念日

今日だっけ?と思ったらゲーム的には6月11日だったわ

湖の妖精ヴィヴィアンだから水の上歩けるんだよね
湖上デートいい…

>今日だっけ?と思ったらゲーム的には6月11日だったわ
その日は上にある通りXのトレンドに入っておりました

もう3年なんだな…早いなぁ…

ずーっとかわいいままだよこの妻は

>もう3年なんだな…早いなぁ…
人によっては絆15になるのはもちろん水着の方まで絆15になってもおかしくない時間

>「でもその格好、あんまり他の人には見られたくないかも」
>「湖を抜けたらまた着直します。安心しなさい、我が夫」
ちょっとした夫の妻に対する独占欲いいよね

もうずっとイチャイチャしててくれ

どっちもお互いに見惚れてない？

アヴァロンの風景がこんな感じだった気がする

3クラス目欲しいな〜！

防御力が低いことで知られる妻のおみ足

>3クラス目欲しいな〜！
既に持ってる鯖がそこそこいるし確かに欲しい！

水着の方では誕生日にブリスティンで二人きりの夕べを楽しむ凄いロマンティックな夫婦だからな…

>水着の方では誕生日にブリスティンで二人きりの夕べを楽しむ凄いロマンティックな夫婦だからな…
>やっと誕生日になりましたね。ではこちらに。この日のためのブリスティン、この日のための水妃の姿なのですから。人の身で日頃、私を支えてくれるパートナーに、最高の思い出を。妖精國の黄昏とは違う、暖かく、燃えるような夕景を。貴方だけに与えましょう。

もっとこういう幕間ほしいよね…夏イベではもって一緒にいたかったし

すごく夫婦なんだけどイチャイチャもするけどどこか初心さが残ってるっていうぐだモルは実にいいものですよと

多分何もかも終わっても夫婦二人でずっと暮らしてくんだろうな

家族だった雨の氏族を虐殺されてからずっと人生ハードモードだったけれどカルデアでやっと愛する人を伴侶として立ち直り建前だけじゃない夫婦になりつつあるモルガン
そんなかわいい年上の新妻と支え合いながら戦いの日々を切り抜けていって愛情も芽生えてくる藤丸

>fu3651168.jpg
リアル召喚記念日に怪文書とは恐れ入った

>もっとこういう幕間ほしいよね…夏イベではもって一緒にいたかったし
ちょっと夏イベでは同行した組と違って掘り下げが足りなかった分別の機会が欲しいところ

きのこ「冬の女王になった時点で妖精國での結末は避けられないものでちゅ」

きのこ「だけどそんなあまりに苦難の人生だったモルガンにはその反動としてぐだという何よりも大切な存在ができる超級幸運イベントの可能性を残すでちゅ」

> きのこ「冬の女王になった時点で妖精國での結末は避けられないものでちゅ」
>きのこ「だけどそんなあまりに苦難の人生だったモルガンにはその反動としてぐだという何よりも大切な存在ができる超級幸運イベントの可能性を残すでちゅ」
このオニ！原作者！ありがとう！

>>やっと誕生日になりましたね。ではこちらに。この日のためのブリスティン、この日のための水妃の姿なのですから。人の身で日頃、私を支えてくれるパートナーに、最高の思い出を。妖精國の黄昏とは違う、暖かく、燃えるような夕景を。貴方だけに与えましょう。
こんなこと言ってくれるのちょっと夫婦すぎるよ…
誕生日迎えてやっと完成する関係すぎるじゃん

>きのこ「だけどそんなあまりに苦難の人生だったモルガンにはその反動としてぐだという何よりも大切な存在ができる超級幸運イベントの可能性を残すでちゅ」
正確にはあまりにも苛烈な人生だけどさすがにきのこもちょっと報われなさすぎてかわいそうだとは思ったんだろうな

>どっちもお互いに見惚れてない？
湖の上に素足で立つモルガン
草原に佇むぐだ
夫婦がお互いに惚れ直す瞬間である

最終的に子供をもうけて幸福にくらしてほしい夫婦個人的第一位

ちゃんと召喚記念日も誕生日もお互いに祝い合ってるんだと思うと和む

身内認定した妻はスカートの下見えたくらいなら許してくれるのか

3年経ったけど性能は未だに最上位じゃないですか？

>身内認定した妻はスカートの下見えたくらいなら許してくれるのか
夫婦なら一糸纏わぬ姿まで見せることになるからな

>3年経ったけど性能は未だに最上位じゃないですか？
全体狂としては水着伊吹が並んだけどまあ最上位と言っていい強さである

いいだろ？神代の魔術師で異聞帯の王で妖精の女王だぜ？

よき先輩としてお先に楽しんでいますよ異聞帯の姉上
年下の若く理解ある優しい男の子の伴侶いいですよね
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