《何とか大量のモンスターの猛攻を躱した榊遊勝選手!だが相手のフィールドにはモンスターは 未だ健在のまま!これは大ピンチかぁー!?》 『私は魔法カードスマイル・ワールドを発動!フィールドの全てのモンスターの攻撃力はターン終 了時までお互いのモンスターの合計分アップする!私はスカイ・マジシャン1体、君は5体。合わ せて6体で600上がるワケだな』 『フン、わざわざこっちのモンスターの攻撃力まで上げるとはな!ヤケにでもなったか?』 『いいや、これも私のエンタメの布石さ。この状況を引っくり返す為のね」 『ハッ!出来るもんならやってみな!この大量のモンスターの壁をどう攻略するってんだ!?』 「ならばお見せしよう!私はここで罠カードオーバースペックを発動!元々の攻撃力よりも高い攻 撃力を持つフィールド上のモンスターを全て破壊する!』 『何いいいッ!?』 『It's Show Time!!』 《な…な…なんと!ミスタートシアキ選手のモンスターが一掃されたあああっ!》 『ぐっ……だ、だがフィールドの全てだという事はそっちのモンスターも破壊……されてないだ と!?』 『永続魔法、バリア・バブルの効果で自分フィールドの全てのEMは1ターンに1度だけ戦闘・効果 では破壊されない。だから私のスカイ・マジシャンは無事なのさ』 『そ、そんな……』 『これでショーはフィナーレだ!スカイ・マジシャンでダイレクトアタック!』 『ぐわあああああっ!』 《WINNER!稀代のエンターテイナー榊遊勝!3枚のカードのコンボにより圧倒的な不利な状況 を覆し見事逆転勝利を決めました!これぞエンタメ!》 「すごい、ですね……」 「でしょでしょー!?いやー何回見てもこのスマイルワールドの使い方はシビれるぅ〜!」 「フトシ君の真似しないで下さい……しかし、結構えげつない手を使うんですねこの人。これがエ ンタメデュエルと言っていいんでしょうか?」 「ミズキもそう言ってたなぁー。でもこのクレバーさがたまらんのよ遊勝さんは!これ見て私ますま すスマイル・ワールド大好きになったもん!」 「そ、そうですか……」 「ホント、一日でもはやく帰ってきて欲しい。遊矢くん達も心配してるし、たきなにも会わせてあげ たいし……それに」 千束は一度言葉を止め、自らのソウルジェムを取り出してそのまま自分の眼前へと掲げる。 そこには、深紅に輝く光を黒い濁りが覆い尽くそうとしていた。 「……私がいなくなっちゃう前に、さ」 「……っっ」 ぽつりと呟かれた千束のその一言にたきなは歯噛みする。 吉松により仕組まれた千束のソウルジェムのロック。それのせいで千束は今穢れの浄化が出来 ずにいる。 その仕掛けを解くためにたきなは魔法少女になろうとした。だが、千束により止められてしまう。 『私の為に魔法少女にならなくていい。たきなはたきなの為に願いなよ』 たきなには理解出来なかった。 何故終わりを受け入れているのか。 何故生きようと足掻かないのか。 このまま全て、諦めるつもりなのか──? (そんな事、許してたまるか) まだ、まだ時間は残っている。 必ず呪いを解く方法を見付け、千束を生き延びさせてみせる。 千束が好き勝手にやるなら、自分だって好き勝手にやってやる。 彼女一人が笑顔で終わる結末など絶対に認めない。 迎えるなら皆が笑顔になれる結末でないと意味がないのだ。 だから─── 「……負けませんよ、千束」 「んー?何か言ったたきな?」 「いえ、何でもありません」