●駒門うずら&ボムモン 「うっわー!ここが例のゲーミング寺ってやつぅー?ライトギラギラで超うけるー!金閣寺もドン引きっしょコレ!」 駒門は微妙に貶したような言葉を紡ぎつつ、寺を背後に自撮りをしている。 彼女はとあるデジモンの町で「16万色に輝く映えスポット」の話を聞きつけ、相棒のボムモンと共に訪れた。 「うへー…本当にビカビカしてる…。映えっていうかマブいっていうか…」 「アハハ!!!ボムっちボキャブラリーがレトロすぎんですけどー!超うけるー!」 撮影を終え、近場にある小さな岩に腰かけた駒門は、先ほど撮影した画像にデコレーションしていく。 「はぁ、お寺って静謐にあふれた場所だって聞いたんだけど。なんていうか、バチあたりというか…。」 「なにいってんのボムっち〜。ウチのいた国にも金ぴかのお寺あるんだから、これも十分アリっしょ!」 「こんなのと同レベルのものがあるってのか!?」 金ぴかのお寺がある、という信じがたい言葉を耳にし思わず呆れた顔を浮かべる。 こんなゴキゲンな場所が現実世界にもあるのかと驚きつつ、彼女の世界に興味が尽きないボムモンであった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●物部武雄&パンダモン 「ねぇパンダモン。どうして戦いは起きるんだろうね」 「ど、どうした武雄。急に哲学的なセリフを呟くだなんて。」 舗装された坂道を歩く一人の少年が独り言つ。 ほんの少し前、彼らはとあるデジモンたちの諍いを仲裁していた。 「そうだな…、怒ったり、悲しんだり、そういうのもあるだろうけど。譲れないものがあるから、じゃないかな。」 「ゆずれないもの?」 「そう、これだけは引けない、これだけは認められない。心あるものは誰しもそういうものを持ってるんだ。」 「パンダモンが一番かわいい…とか。」 「まあ、そうだな」 「そっか。なんだか悲しいね。だって、ぼくもそれだけは譲れないもん。」 最初はふとした疑問だったが、それは少年の心に深く刻み付けられることとなった。 「大丈夫だよ、武雄。武雄の気持ちは分かってる。みんな仲良くするほうがいいもんな。」 「うん」 武雄の気持ちを察したパンダモンは、彼の手をぎゅっと握りしめる。 その手の柔らかさに、ほんの少しだけ、武雄は顔を緩める。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●三津門伽耶&エレキモン&ガジモン ●デュアルビートモン 「さぁ…往きなさい!あの女を捕獲するのです!」 デュアルビートモンの合図と共に、飛翔する昆虫型デジモンの群れが空を覆う。 「相手は所詮成熟期…けど……数が多い!」 ケルベロモンに進化したエレキモンへと騎乗した伽耶がそう呟きながら、3人は疾走する。 「カヤ!どうするの?このままにげつづけるの?」 「いえ、どこかでアレを相手にする必要が…」 「伽耶、あそこだ!あそこに逃げ込むぞ!」「…そうか、閉所なら!」 3人は薄暗い通路に入り、少し進んだ先で振り返る。 「二人とも!」「応!」「まかせて!」 伽耶の合図に二人は黒い閃光を放ち、密集状態となった昆虫型デジモンたちを掃討する。 「おやおや、中々やりますね。……ですが、これはこれで好都合。」 デュアルビートモンは翼を広げ、伽耶たちが逃げ込んだ先へ埋め込まれたスピーカーを向ける。 「さぁ…演奏の時間ですよッ!」 その言葉と共に、爆音波が放たれる。振動は衝撃となり、伽耶のいる通路を無残に粉砕する。 ◇ 「…ふむ、少々やりすぎましたか。まあ良いでしょう、この程度で駄目になるならそれまでの――」 セリフを遮るように黒い閃光がデュアルビートモン目掛けて放たれる。 デュアルビートモンは間一髪で避けると、建物から伽耶たちが飛び出してくるのを目撃する。 「おやおや、こちらの手の内は把握済み、という訳ですか」 彼女の手に握りしめられた装置を目にし、デュアルビートモンは溜息を吐く。 (音響相殺機器…。まさか、あの人からもらったコレが役に立つ時が来るとはね…) 「カヤ!やっちゃう?」「ここでケリをつけるのも悪くはないだろう」 「ええ…そうですね。これ以上付きまとわれるのも迷惑ですし…後顧の憂いを断つとしましょうッ!」 伽耶は冷静に言い放つ。その言葉を合図に二人の攻撃が放たれる。 「ふふ…中々に好戦的なお嬢さんだ。それでこそ…壊し甲斐があるというものです!」 お互いの攻撃の重なり合い、それが激戦の始まりの合図だった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●扶桑しずみ&サンダーボールモン デジタルワールドのとある場所、とある町、とある家に一室にて―― 鼻孔を擽る香しい香りに誘われて、幼年期のデジモンたちが扉の中を覗き込む。 「あら、どうしたのかしら……。どうしたの?なにか御用?」 しずみはデジモンたちと目線を合わせるようにしゃがみこんで語り掛ける。 「おいしそーなにおいー!」「なにつくってるのー?」「ぼくもたべたーい!」 (どうしましょう…、二人分しか作ってないのだけれど…) 少しだけ悩むしずみだったが、息子の夕飯を催促する姿にデジモンたちが重なり…。 「そうね、みんなの分も作ってあげるから少し待っててくれる?」 「ほんとにー!」「やったー!」「はやくはやく!」 (一時的とはいえ、この町のデジモンたちにはお世話になってるんだもの。これくらいは道理というものよね…) しばらくの後、幼年期たちと食卓を囲むしずみ。 一口ずつゆっくり食べるもの、がつがつと勢いよく食べるもの。そんな多種多様な姿を見て少しだけ笑みがこぼれる。 口の端に米粒をつけたサンダーボールモンの頬を拭いながら、息子を探す旅路の幕間は流れていく――。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●南野清子&セルケトモン 「ぐ、ぐぉ…こ、腰が…ァ!」 「ハッハー!よーちゃん腰いわしとるー!」「ちっちゃいのにばばくせー!」「ぎゃははは!」 重い荷物を運ぼうと中腰になり、持ち上げた瞬間腰に激痛が走る。 (ぐおおっ…!おのれ…おのれガキンチョども…!) ひきつった笑みを浮かべながらも、内心は煮えくり返っていたのだった。 保健室へと戻り、棚に常備してある湿布を張る清子。 「くっそー、私はまだ28だぞ…!こんな年寄りみたいなことになるなんて…!」 ――場面は変わり、デジタルワールドにて。 「おらっ!腰ッ!腰ッ!そして腰ィッ!」 「ぐえー!今日はやけに腰を狙ってくるじゃねえか!毒はどうした毒は!」 「シャラァァプ!そしてダァイ!今日のアテクシは腰の気分なのよ!大人の苦しみを食らいなさいッ!」 頭部のしっぽを鞭のように操りながら、私怨交じりの一撃を放っていくセルケトモン。 「なにが大人だよ!どうせぎっくり腰かなんかだろ!?若い子供に嫉妬しやがって!このおばさん!」 「な、な、なんですってえええええええええ!」 セルケトモンは激高し攻撃は苛烈になっていく。どうやら今日の清子の鬱憤は晴らされないようだ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●伊本奏音&メイクーモン 「おっ、これが噂のネブラ・ディスクかぁ〜!」 青銅の円盤を持ち上げ奏音は満足そうに眺める。 「なあなあ奏音、ネブラディスクってなんだ?」 「私もよくは知らないんだけどぉ、オーパーツ?ってやつで、暦を測るものっぽいよぉ」 奏音はネブラ・ディスクと思わしき物体を様々な方向から撮影しながら説明する。 「それで、この珍妙な円盤をどうするつもりなんだ?」 「ほら〜、前に奇妙なものを集めてる蒐集家のデジモンがいたでしょ〜? アイツに押し付けるのよ。あいつ日本銀行券結構持ってたし、これと交換して貰うつもりよぉ」 奏音はにやけながらメイクーモンへと語るが、当の本人は溜息を吐いて一蹴する。 「収集家が物々交換に応じると思うか?」 「馬鹿ねぇ、ああいう収集家ってのは貴重さというステータスを重視してるもんなの! 日本銀行券なんて山ほどあるのはアイツも承知の上でしょぉ?絶対応じると思うわ。」 かつてこの世界に赴く際、奏音は大枚を叩いたという。それを回収する腹積もりなのだろう。 「まっ、応じてくれるのを祈ってるよ」 メイクーモンは再び溜息をつきながら、はしゃぐ奏音を見つめるのだった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●名無鬼&シスタモンノワール ●二本柳海砂緒 「ん〜、あーでもない、こーでもない、ろくでもない…。」 色とりどりのドレスたちを目前に、その場をぐるぐる回るシスタモンノワール。 「そこまで迷うのでしたら、私が決めてさしあげましょうか?」 そんな彼女の元へ、軽やかな足取りで海砂緒は近づいていく。 「うーん、そうですねぇ。わたしじゃこういうのよくわからないから。」 申し訳なさそうな顔色を浮かべるシスタモンノワール。 護衛任務の過程でおめかしをすることになり、令嬢の好意でドレスを借りることになったのだが…。 「その、わたしがこんなの着ていいんですかね…。デジモンなのに…。」 「んもう、馬鹿ね。貴方、あの殿方に好意を抱いているのでしょう?」 「…バレてましたか。」「バレバレです。」 バツの悪そうな顔をしながら、彼女は部屋の奥に待機している名無鬼を見つめる。 「デジモンと人の恋は多くの壁が待ち受けているもの、当たって砕ける覚悟がなくては結実しませんわ!」 熱烈に語る令嬢を前に、シスタモンノワールは少しだけたじろぐ。 いつもと毛色の違う戦場を前に、果たして彼女は生き残れるのだろうか…。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●ジジ・アーブラー&エンシェントガラモン 「エンシェントガラモンよ、あれが見えるか? あれは灯台という、海を征く者たちの道しるべとして建造されたものだそうだ。」 隣に立つ異形にに語り掛ける、これまた常軌を逸した人型が一つ。 夜の帳が世界を黒一色に染める中、闇に沈んだ地平線へと眩い光を放つそれを見つめながら語る。 「かつて人は、野山を駆ける獣と同じだった。そんな人類が野生へと袂を別つ契機となったものがある。 それがあれだ。光だよ。人間は自ら光を自在に生み出し、夜の闇を振り払った。 光、炎、熱。心を満たし、己を奮い立たせるもの。そして、文明を興すきっかけとなるもの。 ……面白い話だ。人類文明とは、まるで空に輝く星のようなものではないか。」 男は空を見上げ、満点の星空と人類の未来に思いを馳せる。 人の、文明の在り方については思う所はある。だが、醜いだけでもないだろう。 暗き路を征く者たちを照らしたい、無事に帰還してほしい。帰る場所を知らせたい。 そんな人々の祈りは、こんなにも美しいものを生み出したのだから。 人類もまた、空に輝く星に祈りを捧ぐような、我々の同類なのだろう。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――