海上に浮かぶ巨大な影…デジモンイレイザーが配下のマリンキメラモンに周囲の海域に棲んでいた水棲デジモンを強制デジクロスして生み出した怪物・クロスウォーズネプトゥーンモンに、真菜は対峙していた。 自身を乗せているプレシオモン(シードラモン究極進化)をも上回る巨体の威圧感はかなりのもので、それなりの場数を踏んだ今の真菜でさえ身がすくんでしまう。 (………だめだ、こんな所で臆病になってたら。雪花さんやシンラ君に絶対に帰るって約束したんだから…!) 心に陸に残した仲間たちを思い浮かべ覚悟を決める真菜であったが、敵はその隙を見逃さない。 『くるぞ、真菜!』 『ボルテックスペネトレート!』 「!?プレシオモン、ソローブルー!」 敵の突き出した槍はプレシオモンのを容易に貫き、二人に襲いかかる。ソローブルーの衝撃により直撃は免れたものの、槍が海面を穿った衝撃は真菜をプレシオモンの背中から弾き飛ばした。 「きゃーーーーー!?」 『真菜ああああっ!?』 『ぐおおおおおおお!』 『くっ…邪魔を、するなぁぁぁ!!』 真菜を救う為に必死にネプトゥーンモンを引き剥がそうとするプレシオモンを嘲笑うかの様に、衝撃により意識を削られた真菜は海底に沈んでいく。 (………ああ…私…ここで終わるの?) 薄れゆく意識の中で見える真っ暗な海の中、そこに一瞬何かが輝く。 「………………ん………………ちゃん!」 (………………………え?) 「……真菜ちゃああああああん!!!」 そして一瞬の輝きは、一筋の奔流となった。 『ギガシーデストロイヤー!!!』 『ぐおおおおおおお!??』 突如海中から放たれた砲撃が、プレシオモンに絡みついていた怪物を吹き飛ばす。しかし、特に効いた様子もなく会場に着地した。 『な、なんだ!?』 突然の事に目を剥くプレシオモンの横の海上に浮上して来たのは黄金と蒼の鎧を身に纏ったシードラモン。 「くっ、覚悟はしてましたが、ああも平気な顔をされると腹が立ちますね…」 そしてその頭上に乗る、真菜をお姫様抱っこした見知った変質者であった。 「ごほっ…ごほっ……あ、貴女は…シードラモンのお姉さん?」 「ふふっ、助けに来ましたよ真菜ちゃん!」 格好をつけたウェットスーツの女に、真菜は困惑の顔を向けて、プレシオモンは威嚇をする。 『貴様真菜をはなせ!!』 「いや………確かに私にだけは色々優しくしてくれてましたけど、貴女一応敵じゃ」 「世界の危機にそんな事気にしてる場合じゃないでしょう!それに私は真菜ちゃんの味方なので!」 あとオアシス団についてはその組織力を布教に利用する為に入っただけで子供達にちょっかいかけてる姿は正直見るに耐えないと思ってる…とは言わないでおいた。 『ぐおおおおおおお!』 そんな緊張感の無い空気を引き裂く様に、怪物が規制を上げる。それを聞いた真菜とシードラモン女は、苦々しい顔をする。 「うう…あの声苦手…」 「さてどうしましょうか、折角進化したギガシードラモンの必殺の砲撃も大したダメージになりませんでしたし」 その言葉にギガシードラモンは腹立たしげに唸り声をあげる。そしてプレシオモンが、物凄く言いたく無さそうに口を開いた。 『………………言い伝えによると、プレシオモンとギガシードラモンが力をあわせる事によりあらゆる邪悪を祓う最強の戦艦が産まれるという。シードラモン女、貴様の持っている機器は確かジョグレス進化が出来る代物であったな?』 「た、確かに私の持ってるD-3ならばできますけど………その、私達とって、大丈夫なんですか?」 シードラモン女の言葉に、プレシオモンは深い深いため息をついて言う。 『無論物凄く嫌だ、だがこの際背に腹は代えられん。一応貴様の真菜を助けたいという意思は本物だと認めているしな。て、そっちのチンピラの方は大丈夫なのか?』 「えーと…"ワルにとってプライドは大事な物だが、それに拘りすぎて勝機を捨てるのは三流のワルだぜ!"…との事です。大丈夫みたいですね!」 相棒達の同意を得たテイマー二人は、黄色と青のカラーリングのD-3を二人で握り締める。 「………あの、顔を逸らしてどうしたんですか?」 「い、いやその、推しと手を繋いでこんな顔を近づけるとか流石に恥ずかしいというか………」 「ふふ、相変わらず不思議な人ですね。それじゃあ行きますよ!」 「は、はい!」 「プレシオモン!」 「ギガシードラモン!」 「「ジョグレス進化あああああ!!!」」 ーーー超究極進化ーーー ーーイージスドラモンーー ーーAegisdramonーー 嵐の空に穴を開けながら舞い降りたそれは、陽の光を浴びて黄金の艤装を眩く輝かせていた。 「これが、二人の海の覇者が力を合わせた姿………なんて神々しい」 「いける……これなら行けるよ!!」 その御姿に感動する二人のテイマーに対して、相対する化け物はその破邪のオーラに大いに気圧され、いち早く目の前から消し去ろうと攻撃を仕掛ける。 『ぐおおおおおおおウェーブオブデプス!!!』 化け物の起こした大津波は空を覆い隠すこの世の終わりの様なモノ出会ったが、真菜の瞳にはもはや恐怖は一寸たりとも映っていなかった。 「行こうお姉さん、イージスドラモン!」 「はい!」 「「テラハイドロブレスっ!!!」」 イージスドラモンの口から放たれた海の奔流は大津波を撃ち破り、そのまま化け物を消し飛ばした……… とある会社の休憩室。机にもたれて船を漕いでいた女がアラームに耳を貫かれて目を覚ます。シードラモン柄のケースに入ったスマホを操りアラームを止めると、LINEの通知が入っているのに気付く。 シードラモンのアイコンを使う発信相手からの連絡を見て喜色満面の笑みを浮かべると、シードラモン柄の弁当箱をシードラモン柄のランチクロスに包み、ルンルン気分で休憩室を出て行った。 今までの映像は過去の実像か、それともただの夢想なのか………それは神のみぞ知る事であった。