ゲームに打ち込んだテキスト集です 性質上ネタバレの塊なのでせめてちょっとはやってね… 凡例 \C[0]・\C[18] … テキスト文字変更用文字列 \I[122]    … ハートのアイコン用文字列 @       … キャラ名変更可能な印 ★       … エンド分岐選択肢発生 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【OP和室】 霧島神境――九州は鹿児島の、ある山地を指して言う。 神、あるいは鬼。ヒトならざる超常のモノを祀る民の聖地。 一人の巫女を頂点として分家の六人が、それを支える祭祀形態を持つ。 “神”――八百万の霊と、人界の橋渡しをするために。 「姫様」と呼ばれる本家の少女は、他に替えの利かない存在。 神霊を降ろすということは、超常の理屈に身を委ねる行為であり、 さながら避雷針のように――あるいは生贄のように、 “代わり”として、呪力を受けるべき器がある。 “石戸 霞”(いわと かすみ)。 姫こと“神代 小蒔”(じんだい こまき)の一つ上、 六人の中でも、まとめ役になることの多い少女。 彼女が修行の中で経験した、ある出来事の話―― 霞: お呼びでしょうか。 老婆: うむ、来てもらったのは他でもない… お前にも、そろそろ別の修行をつけてやらんといかん。 ――自分の役目は、理解しておるな? まとめ役である老婆は、皺と頭巾の襞の間から、じっと霞を見つめた。 無論、霞の方とて、形代たる己の役割、意義は把握している。 なぜこのような場にて、改めてそれを問う、のか。 短く返事をした霞に、老婆は一揃いの衣服を手渡し、着るように促した。 霞: あの…その、この格好は… 青を基調としたボディラインの強く出るレオタード状の衣装に、 四肢をぐうっと包み込む長い赤紫の手袋と、靴下。 元から豊満な胸と腰は窮屈そうにぎゅうっと押し込められており、 一方で、細い腰はなだらかに背骨までの線を、艶めかしく描き出す。 老婆: 人の世にもお前が降ろすような存在、御すべき存在は紛れ込む。 それを、自らの手で祓う訓練――有体に言えば、退治、じゃ。 妖魔の類を、打ち倒すための道具と思えばよい。 老婆: 小蒔より先にお前が始めるのは、年が上なのもあるが―― 本家の跡取りに、何かあっても困るでな。 きちんと修練し、お前が先導をできればそれでよい。 霞にとって正直なところ、恥ずかしさが勝つデザインだ。 それでも真面目な彼女は役目を果たすために、と言葉を飲み込み、 やがて、小蒔が同じ修行をする助けになるなら、と思いを新たにする。 そんな霞に向けて、最後に老婆は―― 老婆: ええか、それを脱げばお前はそこらの女と変わらんのだぞ。 若い娘が、力を失ったらどうなるか――肝に銘じよ。 …脅してすまんな、内容は後から伝えさせるわい。 *【OP廊下】 初美: ――ちゃん、霞ちゃん、聞いてますかー? 霞ちゃんの修行先のお話なんですけどー 霞: …ええ、ああそうね、聞いてるわ、ありがとう。 候補がいくつかある、のよね? 霞と同い年で親友の、“薄墨 初美”(うすずみはつみ)。 今回、神境の外にて修行を行う霞の、アシスト役を担う。 彼女もまた、小蒔に仕える六女仙の一人である。 初美: これがリストですー。洞窟とか、街とか。 スパイみたいなお仕事も、混ざってるみたいですねー。 ――ちゃんと、帰ってきてくださいね? 心配を顔に出す初美に、霞は柔らかく微笑んで返す。 初美から手渡された書類を手に、霞はゆっくり目を閉じた… …… … ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【人買い開幕】 人気のない、とあるビルの地下。霞は、そこにいた。 既にすっかり夜も更け、街には行き来も絶えたような時刻でありながら、 その一角に籠るぎらついた熱気は、肌に汗すら浮かぶほど。 フロアの中心に据えられたステージの上、男たちの視線を浴びる姿は―― 霞: (潜り込めって言われたけど…  商品として入り込んだのは失敗、かしら  男の人たちの視線がなんだか怖いわね…) 外套の上からも、その異様さは伝わる。獣欲――そう呼べるほどの。 身を守るためのスーツは潜入前に隠して、手元にはない。 今の霞は、抵抗するための手段を失った一介の少女に過ぎない。 マイク越しに司会者が、コートを脱ぎ捨てるように促す。 おお、とどよめきと歓声。一層、熱気が強くなる。 凹凸の豊かな肢体に張り付いた水着が、少し体を動かすごとに揺れ、 落ちていく汗の一粒にも、飢えた獣の眼が注がれる。 再びの指示。水着のまま、腰をくねらせて踊ってみせろ、と。 揺れる。子供の頭ほどもある二つの肉毬が。 跳ねる。肉と肉のぶつかる音と、水の散る音。呼吸音が合間を繋ぐ。 吠える。目の前に極上の雌をぶら下げられた男たちが、本能的に。 そして―― 一人の男が、たまらず手元のパネルを高らかに挙げた。 霞の立つステージからその細かい文字列はわからなかったが、 他の客たちが、慌てて我もと掲げるその姿に、焦りのようなものを見る。 繰り返し掲示され続けるパネル。書き換えられるたびに列は長くなった。 喧騒と熱狂のボルテージが最高潮に達した瞬間、高い鐘の音が響きわたる。 獣の視線は一斉に、スポットライトの当たった先――落札者の方へ。 悔しさと諦念、わずかの殺意。勝利者はただ、敗残者を見下して笑う。 霞を引き取ることになる主が、決まったのだ。 *【人買い一回目分岐前】 霞を買い上げたのは、後ろ暗い噂もある、柄の悪い実業家。 自身の所有するマンションの一室に、彼女は軟禁されることとなった。 生活一切の面倒を見る代わりに、無許可での外出は禁止。 男がその気になったら、いつでも体を差し出す約束… 霞: あの…@…様、私の服は…? @: ヤられるだけの穴に服なんか必要ねぇよ。 外に出るときだけは用意してやるからここでは裸でいろ。 ほら、さっさとベッドに上がって尻向けろや。 ステージの段差を挟んで、じっと睨め上げていたあの胸、尻、腰。 それを自分のテリトリーに囲って、自分だけが好きにできる。 男の興奮はあの夜の熱狂よりもさらに、どろどろと滾っていた。 なかば突き飛ばすように強引に、霞はベッドの上に転がされる。 霞: あ…やめて…! か細い悲鳴も空しく、男の腕力でベッドに押さえつけられたまま、 濡れてもいない霞の秘所目がけて、固くそそり立った男の槍が沿わされる。 その熱と脈動、押さえられた手足の痛み、全てが恐ろしい。 じたばたと体をくねらせるも、やはり抗いようもなく―― 霞: 痛、っ…! やだ、やだ…! 容赦なく、未熟な肉洞を穂先が切り開き、形を変えていく。 じんじんと鈍い痛みが、優しさの欠片もない抽挿に乗って全身に広がる。 無力感が、頬と股を白と赤の涙となって伝う。シーツの上に、赤い花が咲く。 泣いたところで男の動きが緩まるはずもなく、純潔が戻るわけもなく。 @: へへ、初物はやっぱたまんねぇな…! たっぷり仕込んで、きっちり孕ませてやっからな…! 孕む――その言葉が、ぐちゃぐちゃになった思考に冷や水をぶちまける。 初めてを奪われるだけでなく、この雄の子を妊娠させられる、ということ。 役目を果たすどころか、故郷にも帰れなくなる―― 友人の言葉が、霞の頭の中を何度も跳ね返って心を揺らす。 だが――無力。弱弱しくなる抵抗と裏腹に、ますます強くなる男の力。 肉付きのいい尻をクッションがわりに、ばいんばいんと弾かれる腰は、 ほんの数十分前まで異性を知らなかった肉穴を、無慈悲なまでに破壊する。 思わず、霞がシーツを強く握り締めたと同時に―― @: うっおぉお…っ、やっべ、止まんねぇ…っ! 孕めっ、孕め霞っ…! 霞: っ――! あつ、ぁ…なか…! 雄として、眼下の雌を自分のものにした、という証。 奥へ奥へ。霞の卵子を狙いに、無数の精子が膣内を昇っていく。 射精の余韻に、長い息をふーっと吐きながら肩を震わせる男。 取り返しの付かない感覚に、背筋の凍るような恐怖に震える女。 ずるり、と粘ついた音が、霞の耳に届く。 自分の中を蹂躙した凶器が、泡立つ二人分の体液をベッドに垂らす。 怒りと、悲しみと、それを上回る恐怖を交えて、霞が後ろを振り向くと、 その表情は、却って男の興奮を煽るだけに過ぎなかった―― @: ふー…ああ、いい顔してんな。 どうやら、まだ自分の立場わかってねぇみてぇだし―― もう一発、じっくり教えてやるぜ…! ★ @: あぁ、満足満足、っと… じゃあ俺は帰るが… 逃げようなんて、考えるんじゃねぇぞ? 霞: 台所…にしてはちょっと殺風景かも。 何が作れるってわけでもないわね… 霞: ゴム、とか…か。 さっきは使ってくれなかったのに… 霞: ほとんど飲み物とか…精力、剤…? 本当に、暮らすための部屋じゃないのね。 霞: くしゃくしゃになった洗濯物… 私が着るには、少し大きいかしら? 霞: 丸まったティッシュ…ばっかりね 凄いにおい… 霞: お風呂…に入ったら寝ちゃいそうね… もう少しだけ、見て回ってからにしましょう。 霞: バスタオルばっかり… でも、質は…悪くない、かな? 霞: …顔、洗わなきゃ… なんだか、疲れちゃった。 霞: (このままじゃまずいわね…) 無理やり逃げる/機会を伺う 霞: (大丈夫、服さえ回収して連絡できれば…!) 逃げる準備をする/考え直す 霞: (…そうだ、誰かに見つからないかしら…?) とにかく脱出する/考え直す 霞: (見張りは、いない…よし!) 霞: (ここはもう少し機会を伺いましょうか…) 休憩を取るべき/考え直す 霞: (そうだ…いつから、寝てなかったっけ…) とりあえず眠る/考え直す 霞: うう、まだあそこがじんじんする… 少し、眠るぐらい、いいわよ、ね…? ……… 霞: (急いで決めるのは危険ね) *【人買い一回目逃走】 まともな女物の服を調達できずにいた霞だったが、 @の脱ぎ捨てたものの一部を纏い、隙を見て監禁場所から脱走… スーツを預けたロッカーからなんとか引き出し、神境への連絡に成功。 這う這うの体で、ようやく帰還したのだった… 小蒔: 霞ちゃん…私のために酷い目に遭ったって本当ですか…? 私、なんて謝ったらいいか… 霞: 気にしないで、姫様のために身を捧げるのが私の役目だから。 …小蒔ちゃんがそんな顔してたら、私も辛くなるわ。 ほら、ね?小蒔ちゃんの時は、私が絶対、守ってあげる。 泣き出したいのは、霞の方とて同じ。 だが彼女はそれでも、気丈に小蒔を慰めてみせた。 霞を修羅場に送った老婆は、ぐっと、霞への謝意を呑み込みながら―― 二人がより強くなってくれることを、神々に祈願した…… *【人買い二回目分岐前】 逃げ出すための機会を伺いながらも、好機は訪れず。 一日、二日、三日と、日が昇っては暮れ、また昇り。 @の来訪は不定期で、もし、見つかれば――そんな想像が、 一刻も早い脱出を霞に渇望させつつも、足止めし続けていた。 男の要求自体はシンプルで、毎度変わらない。 霞の持つその女体の全てを、ただ、思うがままに貪る。 彼の好みに合うのか、体位は決まって背中側からの後背位。 ばるんばるんと大きな胸が揺れるのを、突き上げながら楽しむのだ。 @: なぁ、そろそろここでの生活、っも…! 性に、合ってきたんじゃねぇ、か…? 尻たぶをがっしり握りこみ、思うがままに叩きつける抽挿は相変わらず。 だが、彼の言葉の通り、霞の声には、日毎、少しずつ艶が混じり始めた。 凌辱者を喜ばせてなるものか、と声をぐっと堪えてみせるものの、 開発され始めた若い体は、次第に雌としての本性を開花させていく。 霞: そんな、こっ、と…! ありませんっ… @様、の気のせい、で、す…! ぐちゅりと泡立つ結合部は、かつての、涙に塗れた姿ではなくて、 明らかに、雌としての悦び――屈服させられることへの涎を吐きながら、 しかし霞は、自身の変化に、いまだ目を背け続けていた。 ――自分の膣内が、彼の射精する兆しを感じ取れるようになったことにも。 霞: (また、出されちゃう…  このままだと、本当に…) その予想に違わず、男はまた霞の膣内に、何の遠慮もなしに精を吐く。 孕め、ガキを産め、一生飼ってやる…そんな言葉を耳元で繰り返しながら。 熱の塊が、自分の中を跳ね回る悦楽に、霞の喉から甘い声が漏れる。 受け入れたくない――そう考えるほどに、それは切なく、心地よく。 @は己の汗を、ごつごつしたその拳の甲で、無造作に拭う。 汗だくになった霞の長い黒髪は、所々跳ねても一層美しく流れて。 セックス漬けの軟禁生活にあってなお、彼女の魅力は陰らなかった。 そうしてそれこそが――彼の独占欲をまた煽る。 霞: んっ、ま、た…! もう、休憩、しましょう、よ… 確実に、霞を孕ませるために。逃げようのない、楔を打ち込むために。 男は何度も何度も、霞を抱いた。そのためだけに、この部屋に来た。 ――執着、というにはどこか子供の駄々めいた姿があった。 絶対的な支配者、のはずが――そんな思いが、ふと、霞の胸中に沸く。 @: 絶対、お前を… 他のやつになんか、くれてやるか、よ…! 霞: あっ…あ…んふっ… もう、限界、です…っ! ぞわりと背筋に走った刺激は、かつての絶望とは様相が異なるもの。 もし、これを自分が受け入れてしまったら―― そこから先の想像は、己の変質を認めることに等しい。 霞はまだ、言語化するだけの勇気を持てずにいた。 ★ 霞: ふぅ… ここに閉じ込められてから、どれくらいかしら… …!うっ、ぷ… 霞: (この…気持ち悪さ、もしかして…) 霞: …見るだけでなんだか気が滅入るわね… 霞: …結局、一度も使ってくれずじまい… こんなにあっても、意味ないと思うわ。 霞: 水、何か水… 梅干しとか…ない、わよね… 霞: げほっ、きつい、わ… 前より、耐えられなくなったみたい… 霞: 相変わらず、ほとんどティッシュ… することないから、仕方ないんだけど。 霞: …うぅ、湯気でくらくらする… もっと、ぬるくした方がいいかしら… 霞: なんだか最近、タオルに汚れが… …最後に生理来たの、いつだったかしら? 霞: …鏡、見たくないわね… むくんでないかしら。 霞: (私…もう…) 諦めない/… 霞: そうよね、ここで諦めたら本当に… 早くあの人が、戻ってくる前に…ここから… 様子をうかがう/考え直す 霞: (人気もないし…逃げることはできるかも) 急いで脱出/考え直す 霞: (ふぅ…体が重いけど…なんとか…) 霞: (私のお腹には、もう…) 諦めてしまおうか/考え直す 霞: (…ここまで育ったら、どうにもできないわよね) 大人しく待つ/考え直す 霞: 今更、霧島には帰れないわ… こんな体で… 霞: (一呼吸置きましょうか…) *【人買い二回目逃走】 なんとか脱出に成功した霞だったが、逃走劇は困難を極めた。 不定期に訪れる重篤な体調不良、倦怠感に疲労感。 ふらふらになりながら、神境の縁者に連絡を繋いだものの、 彼女の予想通り、その体には新しい命が宿っていたのだった。 小蒔: 霞ちゃん、元気になったんですね…よかった… 戻ってからずっと、入院してたって聞いて… …! 霞: 心配かけたわね、ありがとう小蒔ちゃん。 …ほら、姫様にご挨拶なさい。 ふふ、まだ恥ずかしいのね… 霞が軟禁先で妊娠した子は、霧島に所縁のある病院で産まれた。 命に罪はないから、と霞が産む決断をしてからしばらく… こうして母娘ともに、六女仙の関係者に顔を見せるのは久しぶりのこと。 霞の表情は一層母性に溢れ、とても二十そこらの姿には見えなかった。 父親の姿も、名も知っていながら、教えてやることができない。 母にはそれが、酷く心苦しく、娘に申し訳ない思いで一杯だ。 汚された自分の代わりに、次の女仙に相応しいように育て上げる―― 霞にとって、娘の生末そのものが、新たな生きる目的となった。 *【人買い三回目】 霞が@の下で暮らすようになってから、既に数年の歳月が経った。 霧島に残してきた友人たちのことは確かに心残りだったが、 今の彼女にとっては、あの部屋こそが帰る場所となっていたのだ。 事実、子を産まされてしまっては――彼女に道はなかった。 今宵、霞はまたあの人買いの場に、主と共にやってきた。 商品として、ではなく、その後の姿を、他の客に見せるため。 @の様子は実に誇らしげで、男たちの視線も意に介さない。 これは俺の女だ、とばかりに、霞に向けてアイコンタクトをする。 霞がするり、とコートを脱いで体を晒すと、一同は息を呑んだ。 彼女の体の上には、びっしりと淫猥な刺青が入れられており、 ピアスや装飾品が、ぎらぎらと照明を受けて輝いている。 だが最も特筆すべきは、その大きく膨らんだ胸と、胎。 セックスを繰り返し、主の子を孕んだ結果としての、雌の体。 黒々と広がった乳輪、それと対照的な白い肌。 陰毛もぎっしり、肉びらを飾り立てるように生え揃い、 下品――そう表現するのが適当な姿でありながら、 彼女を見つめる男たちの視線は、崇拝に近いものさえあった。 母性、神聖性、貞淑さ――そういったかつての霞が持っていた全てを、 雄との性の泥濘に全て放り込んでぐちゃぐちゃにしたというのに、 それでも、彼女の中にある、ぴん、と張った何かが、光っている。 @がどれだけ執拗に汚しても、彼女はいまだそこにいた。 彼に刺青を足し、ピアスを通すように命じられても笑って受け入れた。 五人、十人と産ませるぞと脅しても、男の頬に優しく口づけをした。 沼に先に足を踏み入れたのは――果たして、どちらであっただろう? *【人買い三回目後半】 霞: あんまり激しくっ、しちゃ、だめですよ…\I[122] 寝かしつけた、ばっかり、ですから…っ 音で、起きちゃい、ますっ…\I[122] 今、霞の胎内にいるのは四人目だ。 三人目を産んですぐ、次を仕込み始めて一年弱、 彼女の腹はまたすっかりと大きくなって、重たげにだるりと垂れている。 乳離れが済むまでは母親が育て、以降は@が預かる決まり。 妊娠中でも構わず、男はいつものように激しく腰で突き上げるし、 霞も、自分が臨月であろうとお構いなしに、淫らに尻をくねらせ男を誘う。 二人分の汗と、精液と、愛液とがベッドの上に無数の染みを作る。 乳房と腹の三つの肉塊が、ぶつかり合って前後左右に揺れ、跳ねる。 何人もの我が子を育ててきた胸は、常にだらだらと乳汁を吐いており、 二人の体が、ベッドをぎしぎしと揺らすのに合わせて、 部屋のあちこちに滴が飛び、甘ったるいような匂いを撒く。 搾っても搾っても、母性がそのまま液体として流れ出るかのように。 @が霞を自慢げに連れ出した時は、ちょうど二人目の予定日すぐ。 他の雄の羨望を一杯に受けながら、その足でこの部屋に二人して戻り、 興奮を直接ぶつけるかのごとく、ひたすらにただ交わり続けた。 破水が起きても、陣痛が来ても、発露を経ても、尻と口と胸を使って。 臍の緒のついた赤子を抱く霞に、@はべとべとの性器をしゃぶらせ、 後産も済まない内から膣内に射精を繰り返し、 胎盤が抜けてだるだるになった腹の皮を引っ掴んで、また犯した。 この雌を一秒たりとも、他のものになど触らせるものか、とばかりに。 @と霞の関係は、夫婦のそれになぞらえるには余りに歪だ。 だが、単なる性的搾取の加害者と被害者、というのも違う。 彼女の全身に入れられたマーキングは、男の執着の証。 だがそこにあるのは、果たして―― 霞: うふふ…\I[122]おなかの、子も…っ 早く、パパに会いたいって、喜んでますね…\I[122] @: 肉便器の分際でっ、 いっちょまえに母親面かよ、色ボケが…っ おらっ、お望み通り、くれてやる…! そう吐き捨てながらも、@の口角は嬉し気に吊り上がる。 シーツを握る霞の指も、纏うのは無力感よりむしろ、悦びだ。 自分が年老いたら、飽きられたら、男が破滅したら―― そんな想像も、不思議と霞の中には、ないのだった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【クラブ開幕→一回目分岐前】 限られた人間しか存在を知らない、とある会員制の興行施設… 表向きは、ごく寂れたアミューズメントセンター。 しかし実情は、違法な賭博を専門とする遊技場であり、 そのさらに深奥に――霞はいた。 子供も出入りするような表の顔から一変、薄暗い店内には、 酒の入った赤ら顔の男たちが、若い女の接待を受けている。 彼女らの格好は様々だ。水着のもの、一応の衣装はあるもの、裸のもの。 服装の違いが、そのまま彼女らの立場を表している。 店に貢献し、手厚い福祉を受ける一握りの最上級のものから、 服を着ることを許されず、体で奉仕して働くものまで。 賭博場での借金を元に、労働を強いられるものはこれになり、 娼婦さながらの方法で、自分の自由を賄わなければならない。 霞: (査定するからとりあえず踊れ…と言われたけど…  ちょっとこの水着…動いてるうちにズレちゃうかも…) 男たちの視線はちょくちょく霞の方へと向かうものの、 自分を接待している方のコンパニオンへ意識を傾けるものも多く、 霞の持つ天性の美貌を持ってすらも、大していい評価とは言えなかった。 内心、ほっとしたような気持ちと悔しさとが、霞の心の中に広がる。 支配人: お疲れ様、えーと…霧子ちゃん、だっけ? お客さんあんまノってくれなかったみたい、残念だね。 ほら、軽く一杯やって休憩してよ。 霞の様子を見ていた店の支配人は、一杯のグラスを傾ける。 未成年であることを隠すため、年齢と本名とを偽って潜入した霞。 飲めません、と強く断ることもできず、軽く一口、こくりと。 アルコールとは明らかに違う酩酊感に、意識はたちまち霧散する―― 支配人: ――チッ、誰だよこんなクソガキ通しやがったのは? 名前も年齢もデタラメ――おい、裏洗っとけ、すぐだろこんなの。 そんなに働きてぇってんなら一番割のいいのをやらせてやんよ―― 霞: う…んん…いった、あたま、がんがん… …あれ、何、この人…? 支配人: 皆様、長らくお待たせいたしました。 女優が意識を取り戻しましたので、これより、 石戸霞嬢の、BBC処女卒業式をまもなく開始と致します。 意識を取り戻した霞はステージの上に仰向けで寝かされ、 着ていたはずの水着すらはぎ取られた、完全な裸の状態だった。 その上に、がっちりとした体系の、肌の黒い男が覆いかぶさっている。 確認こそできないが、彼もまた裸なのだとの想像はつく。 昏睡中に、本名だけでなく霞が処女であるかまで検められた上に、 その喪失の瞬間を、客に対する見世物にしよう、というのだ。 興奮した男の鼻息と吐息が、生臭く霞の鼻腔を通る。 支配人が高らかに、指をパチリと鳴らした刹那―― 霞: ぐっ、あ、あぁ…! ぎっいぃいいいっ、さけ、さけるっっ…! 太く、長く、固く。杭、と形容するしかない、それ。 処女が前戯もなく受け入れられるサイズではなく、 眼を見開き、口を魚のようにぱくぱくとさせて、足をじたばたさせながら、 肉の削れる激しい音が、悪趣味な観客たちの目と耳を愉しませる。 男はそんな霞の悲鳴に、少しばかり同情した視線を向けるものの、 それが仕事なのか、ただ淡々と、霞の膣道を滅茶苦茶に穿ち貫く。 入りやすいように、あらかじめ潤滑薬の類は塗ってあるとはいえ、 霞の手首ほどの太さのある男性器は、処女には耐えがたい。 一突きごとに肺が空になる圧迫感、不意に戻る酸素による意識の乱高下。 体力の残っている間は、霞の声も動きも派手なものであったが、 段々と反応が鈍くなるのに合わせ、支配人はまた指を鳴らす。 ぐっ、と竿役が体をくっつけ、霞の最奥へと一気に滑り込んだ。 最後の一声を、唇をべちゃべちゃにした涎の泡と共に吐いた後、 霞は途切れかけの意識で、男の性器が激しく脈打ち、精を放つのを感じた。 どくん、どくんとまるでもう一つの心臓が跳ねるように、熱く、猛々しく。 ごぶり、と泡立った精液の垂れる様に、歓声が遠くから聞こえる―― ★ 霞: いたたたた…おまたが、はずれ、そう… …もういや、帰り、たいよぉ… 気絶状態のまま霞は控室――という名の独房へと移される。 意識を取り戻し、状況を把握した瞬間の彼女の絶望は、測り知れない。 科せられたペナルティも莫大な額で、とても一人で返しきれず、 最最下級の、“備品”の立場に、霞は割り当てられることとなった。 @: カスミちゃん、ちょっといいカナ? …入ルよ。 ノックと共に姿を見せたのは、先ほど霞を犯しぬいた男。 軽いフラッシュバックに目を白黒させる霞に、深々と頭を下げた。 仕事とはいえ酷いことをした、申し訳ない―― その姿には、先ほどの荒々しさは感じられない。 @: こう見えテ、ここで結構稼イデるんだよネ。 もし、カスミちゃんがオ金で困ってるナラ、 代ワリに、話つケテきてあげタイんだケド、どうかナ? 巨体を縮こめながらも、@はちらちらと上目遣いに霞を見る。 一目惚れした、だとか、ここで壊れさせるのは忍びない、だとか、 自分がそうする理由を、体に見合わず小さな声で、並べていく。 突然の申し出に困惑する霞に向けて、わずかの下心を交え―― @: 今、一緒二暮らシテる人、いなくて、サ。 その…よかっタラ…ね? ああ、もちロン、カスミちゃんの意思が、一番、だヨ? 耳を傾ける/考え直す 霞: (悪い人では…ないのかしら…) 申し出を受ける/考え直す 霞: そうですね…お願いして… いい、でしょうか…? @: ホント!? さっそク、シャチョーさんノとこ、行っテくるヨ! …ありがと、ネ。カスミちゃん。 霞: (…大事な選択よね…) 霞: (ああは言ってるけど…どうかしら?) 自分で…どうにか…/考え直す 霞: (いくら親切でも…やっぱり…?) 人を巻き込めない/考え直す 霞: ごめんなさい、お気持ちは嬉しいですけど… これは私が撒いた種ですから。 @: そっカ…いきナリ、言われテモ困るよネ。 じゃア…ちゃント、稼いデ楽になれルよう二… 思いっきリ、ぶっ壊シテ、あげル。 @: スキになった女のコ、殺しタクないからサ… セックスしか、考えられナイように、とこトン、ね… …また、明日…お休み、カスミちゃん。 *【クラブ一回目逃走】 @の申し出を受け、借金の肩代わりをしてもらった霞。 交換条件として、同棲を申し入れられたが、 霧島に帰るまでの間なら…とそれを了承する。 家と仕事は、店の関係者からの紹介であるそうで、 普段の彼が、あの店にとって大きな役割を持っていたのが伺える。 同棲相手としては、彼は思った以上に真っ当な人物であった。 何を@に返せるでもない霞が、紳士的に口説いてくる彼に対して、 自分から体を開くようになるまで、そう長い時間はかからなかった。 @: タだいま、パパ帰ったヨー。 霞: お帰りなさい、あなた… この子ったら、お帰りになるまで起きてるって聞かなくて。 当然、そんな生活を繰り返していれば、霞と彼の間には子ができた。 自身の妊娠を知った頃には、霧島に戻りたいという想いも薄れ、 そのまま結婚、若くして家庭に入ることとなる。 既に二人の間には、一男一女が設けられていた。 霞: ――それでね、今日病院に行ったら、三人目、ですって… そろそろ…新しい子を作るのも、控えたら、どう、かしら…? @は報告をにこにこしながら聞き、彼女をぐっと抱き寄せた。 彼が服の上からでもわかる妻の丸い尻肉に大きな指を沈めて、 耳元で軽く囁くと、霞は母親の顔から、たちまち一匹の雌になる。 蕩けた目でじっと、甘えたような視線を向けて。 @: ウチの故郷じゃ、三人はまだまだ少ナイ方だヨ。 それに、カスミだってスるの、大好きデしょ? 霞: はい、あなた…\I[122] 霞も、本当は…もっと、赤ちゃん、産みたいです…\I[122] かつては強引に純潔を引き破り、悲鳴を上げさせたその肉槍を、 霞は心底愛おしそうに、指でなぞり、舌を這わせ唾液をまぶす。 顎の外れそうな太さになっても、喉の奥まで使って擦り上げ、 筋の一本一本に、丁寧に、口づけをしていく。 鮮烈な処女喪失の記憶は、霞の心身に深く刻まれてしまっていて、 強い雄に無理やり屈服させられることを、無意識に霞は望んでいた。 そんな相手が、時に優しく、時に激しく、自分の全てを喰らうのだから、 ほんの一時、という当初の目論見は、最初から破綻していたと言えよう。 日頃、よい母親、よい妻の姿を演じるほど、@とのセックスに溺れ、 自分が一匹の雌であることを突きつけられることに史上の悦びを見る。 彼の大きな掌が、頭をがっしり掴むと、胸の中がきゅううと熱くなる。 しばらく舐めさせると、@は霞に手で静止のジェスチャーをした。 霞: あっ…\I[122] ね、ベッドまで…行きましょう? あの子たちが、起きて、きちゃう…\I[122] 言葉ではそう言いながらも、霞の手は彼の胸板にしっかりと沿わされ、 足は腰を挟み込むように背中に回り、舌を伸ばしてキスをねだる。 二人産んだ膣口は、すんなりと彼の性器を飲み込んでしまえるほど。 それでいて、きっちりと互いの弱点を刺激しあう相性のよさだ。 根元までを一気にぶちこまれて、抜ける寸前までの長い長いストローク。 また子宮口までを槍の穂先が貫いて、膣襞をぎゅうぎゅう押し潰す。 声を小さくするのも忘れ、霞は甘えた声で、夫にしがみつく。 子供部屋から物音がしても、それは却って興奮を高めるスパイスになる。 霞: ほんとに、起きてっ\I[122]きちゃうからぁ…っ\I[122] ずぼずぼされ、ってるところぉ…みられちゃうう…っ\I[122] @: これカラも、もっト、作るんだカラ…っ! パパとママの、ナカいいトコ、見らレテも平気、だヨッ…! 幸い、二人がベッドで三回戦を始めるまで長女は起きてこず… 両親の服がリビングに脱ぎ散らかしてあるのを横目にトイレに行ったのは、 霞がすっかりへばりきって、カエルのように足を開いて気絶してからだった… そんな生活が、この先、何人目の時にもずっと、繰り返されていく―― *【クラブ二回目分岐前】 霞がこの店で働くようになってから、既に一月が過ぎようとしていた。 彼女の立場は店内で最も低く、一般の客への奉仕によるチップ獲得は不可。 店の所有物という関係上、他のコンパニオンとの関係は維持されているが、 仕事に呼び出されれば休憩時間であっても関係なしに出ねばならない。 不特定多数とのセックスがない、という意味では、気楽かもしれない。 だがそれゆえに、他が避けるような内容でも、否応なしにやらされる。 自身の純潔を奪った男性従業員のそれから型を取ったディルドを、 ステージの上で思い切り股を割って挿入するパフォ−マンスや、 コンパニオンの中でもトップクラスの胸を大きく揺らして踊り、 流れる曲が終わるまで膣圧だけで両穴に入ったバイブを維持したり、 あるいはもっと直接的に、人前でのオナニーを見せられたり… 自分の雌としての部分を、見世物として嘲笑と興奮の視線に晒す毎日。 霞: …あっ\I[122]、ふっ…はっ、あ…! おきゃく、さま…入ってるの、見え、ますか…? んん…\I[122]、こえ、でちゃう…っ! ショーの終盤では、実際にディルドの元の――つまり例の男性と、 セックスをし、膣内に射精されるまでの一部始終が流される。 毎日毎日、陰唇から産道までを玩具のように使いながら働くために、 霞の性感はすっかり開発されきって、すぐに甘い声を出すようになった。 男の方も、随分仕事熱心であると見えて、霞を堕とすのに全力を注ぎ、 今では互いに目隠しをしたって、性感帯を的確に攻めることができる。 活かさず殺さず、快楽だけをひたすらに心身に刻み込む―― 本人も知らない資質が、日を追うごとにどんどんと開花していく。 貞淑でありながら、誰もが目を惹かれる容姿に、不釣り合いな体の凹凸。 もし、霞が備品の立場でないなら――ほとんどの客が抱きたがるだろう。 それをハードなプレイの中で使い潰していくのを見る、という贅沢。 だが霞は想像以上に、こちらの分野への才能があった。 そんな生活が続く中で、霞は自ら肌を焼き、より淫らに自分を演出し始めた。 当初の彼女の美しい黒髪や、それに映えるすっきりした肌を覚えている者は、 霞がそれだけ淫蕩な雌へと羽化していく様を、何よりも喜び、嗤う。 薄紅色の照明の下で汗にてかる若々しさの証は、男たちを虜にしてやまない。 ぐっぱりと開かれた膣肉から、匂い立つような濃さのザーメンが漏れる。 まだ若いというのに、既に色素の沈着し始めた肉びらは赤黒く艶めいて。 たっぷりと胎内に貯めた精液を、ぐっと臍の下から押すように留めて、 霞はステージを降り、観客へ挨拶をしに回る―― ★ 客: いやぁ毎回ほんとたまらんね 俺が後十五…いや十若けりゃ身請け交渉したんだが。 霞: うふふ…\I[122] ごめんなさい、お店の人に怒られちゃいますから… でも、そういっていただけて嬉しいです\I[122] 客: あんた見てるとつい娘のこと思い出しちまうよ。 …正直なところ、いくつなんだい霞ちゃん? 霞: さぁ…いくつ、でしょうね? 想像にお任せしますね、パパ\I[122] 客: よく入るねあんなごっついの… 見てるだけで冷や汗出てくるよ。 霞: 毎日練習してますから\I[122] まだ赤ちゃんの頭よりは、細いと思いますよ? 客: なぁ、これ終わったら内緒でさ… いいとこ知ってるんだけど、どう? 霞: もったいないお言葉です…でも、ダーメ\I[122] 他にも可愛い子たちいますから、そっちと…ね? 霞: (今控室に用はないわね…) @: どう、カスミちゃん、 あいサツ、終わッた? 終わりました/もうちょっと 霞: お待たせしました… じゃあ続き、しましょうか\I[122] @: ん…あ、マダ? 休憩シテるから、また言ッてヨ。 ★ 日々こんがりと色を貯める彼女の肌は、そのまま堕落のバロメーター。 汗とオイルとに瑞々しい肌をぬめらせて、細く突き立てられたライトを弾く。 もちろん、それはダンスやパフォーマンスのためだけではなく、 日課と化した、男とのセックスショーを飾り立てる意味もあった。 相も変わらず、子供の手首は優にあろうかという太さのそれを、 どこまでも妖艶に、霞は呑み込み、結合部が見えるよう股を開く。 時には、勃起したそれを喉の奥の奥まで使って収めて見せたり、 大きな胸を使って、それでもなお収まらない長さをアピールしてみせたり。 いつしか霞の出し物は、それだけで客を呼べるだけの人気を博すようになり、 彼女が科せられた多額のペナルティも、完済が見えるところまできた。 もっとも、今の彼女は義務や仕事というより――あるいは趣味として、 自分の雌の部分を、より下品に、激しく、曝け出すことに溺れている。 仕事上のパートナーである彼をまともに相手できるのは自分ぐらい―― 同僚たちへの優越感も、そこにはいくらかあっただろう。 普通の女ならば、あっさりと精神を病んでお払い箱、といったところだが、 霞は貪欲に、彼が与えるあらゆる苦痛と快楽を、取り込んでいく。 セックスしか考えられないように壊す――かつて男がそういった通りに、 今の霞は、その恵まれた容姿と資質とを、全て性の快楽に注いでいる。 では、もし――ここでの仕事という軛から彼女が解き放たれたなら? 変質した心は、かつての清らかな日常に耐えられるのだろうか…? ★ 霞: (あ…意識してなかったけど、  今日の分のお給金で、罰金払い終わるんだ…) 霞: (どうしよっかなぁ…) 客: 霞ちゃんって結構長いけど、いつまでこの店にいるの? 霞: そうですねぇ…もうしばらくいてもいいんですけどぉ… 細かいことはまだ決めてませんねぇ。 客: お疲れさん、やっぱいいねぇ… 他の女の子たちじゃ、あそこまでやる人いないんじゃない? 霞: 私に向いてる仕事なのかもしれませんね\I[122] 皆さんが楽しめるように頑張っていきたいです\I[122] 客: 男優の彼と、個人的に付き合ったりしてるの? 霞: 私はあくまでここの備品ですし、そういう関係じゃないですね。 でも体の相性はすーっごく、いいんですよ\I[122] 客: こういうの聞くのもなんだけどさ… なんでここで働き始めたの?せっかく美人なんだし。 霞: もう忘れちゃいましたねー… でも、意外に悪くないお仕事だと、自分では思ってます。 @: おツカれ、今日モ最高ダッたね。 …そうイや、ソロそろお仕事、終ワルんだッケ。 このお店、ヤメちゃう…のかナ? そのつもり/まだ残る 霞: しばらくここから出られませんでしたから… そろそろ、故郷を見に帰ってもいいかなーって、ね。 お元気で/まだ残る @: うーン…ま、淋シイけど故郷ハ恋しいモンね。 ボクも、たまニハ帰ろッカな… 体には、気ヲつけテネ。 霞: もうちょっと考えてからにしましょうか… 急ぎではありませんし。 霞: (このままここで働くのもいいかしら…?) 悪くない/考え直す 霞: (私に合った仕事…なの、かなぁ) 明日の準備をする/考え直す 霞: (うふふ…明日はどんなこと、しようかな…\I[122]) 霞: (やめるなら今がちょうどいいんだけど…) *【クラブ二回目逃走】 足枷となっていた店への借金を返し終わり、自由の身となった霞。 故郷鹿児島の地に足を踏み入れ、友人たちとしばしの再会を喜びあった。 焼いていた肌も、修行の途中でこうなったと軽くごまかして、 建前上は、平穏な日々に戻った…かに、見えた。 初美: あれ、霞ちゃんまたどっか行ってー… 姫様、どこ行ったかわかりますー? 友人たちと街に繰り出した最中、もしくはほんの目を離した隙に。 霞は不意に、名も知らない男性とどこかに消えてしまうことが増えた。 しばらくすると、何もなかったかのように戻って合流するのだが、 その間何をしていたか、について一切語らないのだ。 霞の様子が、どこかおかしいことには皆気づいてはいるものの、 それを問い詰めるだけの確証も勇気もなく、ただ日常が少し変わっただけ。 霞の方は、と言えば――羽振りがよくなったり、肌が艶々していたり… 決定的なところで尻尾を掴ませずに、今日も別の男と連れ立って消える。 あの店での数か月が、彼女の心身に与えた影響は未だに根深く―― 発作にも近い体の火照りを、霞自身、コントロールできずにいた。 そこでの経験は、彼女の魅力を怪しげなまでに高めて、男を喰らわせる。 一度火の点いてしまった躰は、容易には元に戻れぬもの… *【クラブ三回目】 課せられた役目としてではなく、自らここで働くことを決めて―― タガの外れた霞は一層、自分をモノとして消費することに抵抗がなくなった。 髪もすっかり金色に染めてしまい、かつての濡れ鴉はどこにもいない。 いくつも開けたピアスがキラキラと、安っぽい金属光沢を放っている。 備品としての立場からは既に解放されているので、その気にさえなれば、 好きな客を見繕って個人的な接待を行ったり、チップを貰ったっていい。 だが彼女は、そういった他のコンパニオンでもできる仕事には手を出さず、 あくまで、自分にしかできない――ハードなプレイに傾倒していった。 霞: ん、ふっ…\I[122] ダーリン、お腹は心配しなくていいからね…\I[122] いつもみたいに、思いっきり、しちゃって…\I[122] プレイの相手方――@との間に子を作るように決めたのもそうだ。 彼を好きになったというよりは、妊娠していないとできないプレイ… 大きく膨らんだ下腹で擦るようにして射精を促したり、 胸との間の三角地帯に挟み込んで上下から圧迫したり―― 太い太い性器で容赦なく妊婦腹を突き回されながら、甘い声を出し、 一突きごとに、大きな胸と胎がばいんばいんと重量感たっぷりに揺れるのは、 観客たちのサディスティックな嗜好を大いに満足させている。 ――霞にとっても、それぐらいでなければ満足できないのだ。 母乳が出始めてびっちょり濡れた、大きく黒い乳輪を自分の口で吸って、 口内に溜まった乳汁と唾液のカクテルを舌先から垂らしながら、飲む。 それにつられて、客も皆ごくりと唾を飲み、ドリンクを慌てて注文する。 今の霞は、店の中でも相当額の売り上げを担当する看板娘といってよい。 ゆえに、わざわざリスクを伴ってまで避妊を止める必要もなかったし、 店の側も、妊娠してまでプレイの激しさを引き上げろとは言わなかった。 そこまでして得た子供に対して、あまり母性を感じない――わけではないが、 自然と覚えた酒やタバコを、妊娠中でも霞は止めるそぶりを見せなかった。 もちろん、不摂生やスパンキング、膣内射精も含めた激しいセックスが、 胎児によくないことは彼女自身も知っている。それでもなお続けるのは、 産まれることができたら育てるが、そうでないなら――という感情。 あくまで、今の生活――快楽ありき、で彼女は生きている。 ★ 客: お腹おっきくなったねぇ…もうじきじゃない? 産むのもここでやってくれるのかな? 霞: ええ、この調子だと無事に出てこれそうですね… 是非、出産ショーもご覧になってくださいね\I[122] 客: その子の父親って、やっぱあの外人さんなわけ? 他の人としてるの見たことないんだけど。 霞: そうですね、DNA鑑定とかはしてませんけど… 100パーセント、ダーリンの子だと思います\I[122] 客: 俺は昔の黒い髪と白い肌も好きだったけどなー でもこうして間近で見ると、テカりがエロくていいもんだな… 霞: 染めた方が似合うよって言ってくださる人多くて… 私も、今の格好結構気に入ってるんですよ? 客: よく流れずにここまでおっきくなったねぇ… こんなとこに来て言うのもなんだが、無茶は駄目だよ? 霞: お陰様で、この子は元気なままですから\I[122] 産むところを、皆様が楽しんで頂けたら嬉しいです\I[122] @: どう、カスミちゃん、 あいサツ、終わッた? 終わりました/もうちょっと 霞: お待たせ、ダーリン\I[122] あっ、おなか…んっ、ふっ… ごめん、途中で、産まれる、かも…\I[122] @: オッケー\I[122] じゃあパパとしてチャんと出テコれるヨウに… 産まレルまで、ハメ倒しテ、アゲるネ\I[122] @: ん…あ、マダ? 休憩シテるから、また言ッてヨ。 ★ 再び、霞は@との激しく肉を打ち合うセックスに戻る…が、 霞の表情は、普段の恍惚とした微笑みから段々と痛みを堪えるものになる。 陣痛を快楽で塗りつぶしていたのが、少しずつ抑えきれなくなってきて、 接合部からは、透明な体液――羊水がばちゃばちゃと、こぼれ始めてきた。 霞はアイコンタクトをしながら、今の一回を終えることに集中して、 男がそれとなく気遣って緩めた動きに合わせ、なんとか絞ろうと腰を揺する。 性器が引き抜かれ、薄まった白濁液が垂れるのが見えるように股を開き、 ぐっと両腿に手を回して、霞は呼吸を整え始めた。 霞: ひぅ、ふ…!ひっ…っく…ふ…! ん、は、ぁ…ひっふ…ふぅうう…っ! セックスから出産へと、シームレスにショーの出し物が入れ替わる。 囃していた観客たちも、霞のいきむのに合わせて息を詰まらせながら見守り、 その間、@はバックヤードに駆け込んで、産後の準備をし始めた。 ステージには霞の呼吸とBGMだけが、ただ繰り返されている。 時間の感覚すらなくなるほどの緊張感と高揚感が、誰もを酔わせる。 あんな美女が、鼻水を垂らしながらガキをひり出すなどそうは見られない。 ましてや、その股座から覗く頭頂部は、日焼けた肌よりなお黒い―― 非日常の生命の神秘を、性的コンテンツとして消費する冒涜的所業。 霞: は――はぁ、っ…はぁ… ふ、ぁあ…ひ… うま、れ、まし、たぁ…\I[122] 止まっていた時間が急に流れ出すように、観客は一斉に拍手をした。 霞も、あらゆる体液にまみれた自分のことなど顧みずに、赤子を見る。 肌の色は父親に、髪の色は母親に…と、いっぱしの母親面をして。 どうなっても構わない、と思っていたものでも、産まれてしまえば愛おしい。 まだ臍の緒をぶら下げたままの第一子を、誇らしげに霞は客に見せる。 じんわりと疼く胸の先は、我が子への授乳をしたいと駄々をこねるかのよう。 ――だが霞の胸を占めるのは、次をどうやって孕もう、どう産もう… そんな、仕事にまつわることばかりで、大事なものが欠けている。 女としての悦びを歪んだ形で促成栽培された霞には、本来持つべき―― 母親としての情や母性というものが、同じだけの速度では育まれていない。 霞がこの子や、その次、さらに次を――真っ当に愛し、見られるかどうか。 この場にいる彼女以外の皆が感づきながら、欲のために目を背けていた。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【ショタ開幕】 霞: ふう…大丈夫? 怪我は…ないみたいね、よかった。 閑静な住宅街、その一角…人気が不意に減る、そんな細道にて。 霞はちょうど、異形の生物――彼女が祓うべき存在に襲われる少年を見た。 これぞ自分の役目、とばかりに霞はその異種に立ち向かい、 大した損害もないままに、撃退することに成功したのである。 @: ありがとう、お姉ちゃん…すっごく、強いんだね。 変なのが飛び掛かってきて、もうダメかと思ったよ… …その服って、何?ヒーローの着るやつ? 一息つくと、霞は自分の格好が急に恥ずかしく思えてきた。 確かに、これを着れば力が身につくものの、街を歩くためのものではない。 人助けのため、と思って他を鑑みる余裕はなかったが、冷静に見れば―― 少年の様子を確認し終えると、霞はそそくさとその場を立ち去ろうとする。 霞: じゃあ、私はこれで… @: ごめん…腰が抜けちゃって歩けないんだ… ぼくの家、すぐ近くだから… 送ってって、くれない…かな? すがるような視線を振り払うだけの理由を用意できるでもなく、 霞は少年が伸ばした手を、何の気なしに掴んで肩を貸す。 密着した幼い体の奥底に、ほんのりと窺える男としての筋肉と骨―― その意味を霞が知るのは、もう少し後のことであった。 *【ショタ一回目分岐前】 @の言う通り、彼の住む家へはさほど歩かないうちに着き、 せっかくだから、と言われるままにジュースと茶菓子をご馳走になった。 目を輝かせて、どこかのヒーロー戦隊の一員なのか、だとか、 自分もそうなれるか、といった質問を、霞は適当に愛想笑いでごまかす。 気が付けば日も傾き、外がぼんやりと紅くなり始める頃合い。 彼の親が帰ってくるはず、と席を立とうとする霞に向かって、 うちはお母さんとの二人暮らしで今日は帰ってこない、 もう遅いし、一人では寂しいから泊まって欲しい――と訴えかける。 @: ぼくんちね、お風呂すっごくおおきいんだよ。 お姉ちゃんも、一度入ってみて? 霞: そうねぇ… …わかったわ、じゃあ今日だけ、ね? 明日になったら、私も帰ることにするわ。 多少、彼に強引に流されたきらいはあるが――悪くはない。 どうせ乗りかかった船なら、一晩ぐらい面倒をみてあげよう。 そういう考えに至ったのも、彼女の生来の優しさのため。 実際、この風呂も――個人の邸宅としては、羽を伸ばせる広さだ。 霞: ふぅ――霧島の皆、どうしてるかな… 思ったより、あっさり終わっ、て… …あら、うふふ…覗いてる。 霞: ねぇ、一緒に入らない? お風呂借りてるんだし、背中洗ってあげるわ。 浴室からの声に、少年はどきりと飛び上がるように背を伸ばし、 顔を真っ赤にしながらも、視線を裸体から逸らすことはなかった。 もじもじと気恥ずかしそうに様子を伺う彼に、霞は優しく手招きをする。 迫力ある大きな胸を間近で見ると、@の眼は驚きに円くなった。 体を洗う際に、彼との体の間に柔らかなクッションが挟まると、 @の心音は張り裂けそうに高く強くなり、頬の赤みも深くなる。 ぽやぽやと浮足立つような様子だった彼を霞は隣に引き寄せ、 二人でゆっくりと、一から数字を数え上げていった… 霞: お世話様、いいお湯加減だったわ… 体が冷める前に、早く寝ましょうね。 @に布団を掛けてやり、そのまま霞もベッドで目を瞑ると、 疲れや緊張に固くなっていた体は、すぐに眠りの中に落ちていく… …… それから少しして、ごそごそと枕元に響く音に、霞が目を開けると―― @: あ…ごめんお姉ちゃん、起こしちゃった…? その…ちょっと、眠れなくて… 少年の顔は、あの浴室前と同じだけの赤みで耳まで染まり、 霞に向ける視線は、なお申し訳なさそうにちらちらと様子を窺うもの。 首を傾げながら、つられて落とした視線の先、彼のズボン―― ふっくらと盛り上がったテントの上に、その理由はあった。 @: お姉ちゃんとお風呂入ってから…あのね、 なんだか、ここ、が…かたくなっちゃって… 胸も…痛くなって… 女所帯で過ごしているとはいえ、霞もその意味を知らないわけではない。 一人の男である@に対して、不用意に近づきすぎたのは事実。 その責任を、彼女は取らねばならない――巫女として教えられた方法で。 次代を授かる儀式のために、彼女ら六仙女が修めたやり方―― 霞: いい、じっとしててね… 怖かったら目をつぶっていいから、 何か出そうになるまでじっと我慢してね… @: ねぇ、裸になって何するの…? やだぁ、そんなとこ口で…汚いよぉ… 艶々の唇が、小さな男性器をぱくりと包んで、圧をかける。 男性に奉仕する技の一つと知ってはいても、実践するのは初めて。 拙さの残る動きでこそあれ、その柔らかな熱と湿気の渦は、 少年の精通を促すには、十分すぎるほどの効果―― @: あっ、あぁ…ぇっ、ひ、 おちんちん、なくなっちゃう…! わぁ、だめぇ――っ…! 涎の中に、ぎゅっと苦い汁が混ざって、霞は思わず大きくむせた。 口中に残った分を反射的に呑み込むと、青臭いような精の臭い。 二人して荒れた呼吸を整えて、呆然とする少年の顔を見ると―― 霞の胸に、ぞくりと愉悦の波が広がっていった… ★ @: …帰っちゃう、の?あのね、実は…お母さん、しばらく帰れないんだ。 昨日から、お手伝いさんに、来てもらう約束だったんだけど… お姉ちゃんが一緒にいてくれたら、それでも…ぼくは… 少年は名残惜しそうな顔で、じっと霞の顔を見上げた。 母性に近い感情が、きゅうっと胸を締め上げていく。 ここで何も見なかったことにして帰ってもよいが―― 昨晩の熱はまだ、霞の喉にべったりと絡んでいるかのようだった。 霞: 早く霧島に帰って、報告しなきゃ… 出発する/ちょっと待つ 霞: えーっと…忘れ物、は、と… 準備は済んだ/ちょっと待つ 霞: …また遊びにくるわ、その時はよろしくね。 霞: 修行の期日はまだ結構残ってるけど… @: お姉ちゃんが一緒にいてくれたら…ぼくは… 今日だけなら…/帰らなきゃ 霞: 修行の期日はまだ結構残ってるけど… しょうがないなぁ/帰らなきゃ 霞: …わかった、じゃあ、一日だけ、ね? そのかわり、ちゃんとお手伝いさんに電話してちょうだい。 @: やったあ、お姉ちゃんありがとう! ちょっと寂しかったんだ…ほんとはね。 霞: …また遊びにくるわ、その時はよろしくね。 *【ショタ一回目逃走】 少年と再会を約束しながらも、帰還後の忙しさの中に後回しとなって、 やがて降り積もる時の澱のずっと下、記憶の底に沈んでいく… 霞が彼のことを思い出したのは、もう一年が経とうという頃。 急いで電話を掛けたのだが、連絡は付かず仕舞い。 ならば、と合間を縫って直接会いに行ったものの、既に引っ越したのか、 彼らの家に入っていたのは全くの別人、先住者のことも知らないという。 大家に尋ねても詳しいことはわからず、霞はそのまま帰路に就いた。 あの人懐っこい眼差しを裏切ってしまった罪悪感を抱えながら… 初美: ねぇ霞ちゃん、例の子には会えましたかー? 向こうで会ったっていう、男の子の… 霞: それがねぇ…しばらく前に引っ越しちゃったみたいで… 悪いことしちゃったなー…って、謝りたいんだけどね。 初美: そうですかー…でもまたきっと会えますよー。 ほら、気持ち切り替えていきましょー? 気休めに過ぎないと理解しつつも、そうやって自分を騙すしかない… 少年に対する申し訳なさと向き合いながら、霞は生きていくのだろう。 もし本当に、彼と再会する日が来るのであれば… あの日の“続き”を、してあげたいような気持ちに、なっていた。 *【ショタ二回目分岐前】 少年との共同生活を始めてから既に数週間…霞はあの家におり、 @が帰らないで欲しいと願うたびにずるずると流されて、 食事をするのも、風呂に入るのも、寝るのも毎日一緒。 そして、幼い彼が股間の変調を訴えた時の処置も―― @: あっ、お姉ちゃん…! また、また出ちゃう…! 霞: んっ、ぬっぶ、じゅぶ… ん、いつでも、いいから、ね…\I[122] @: ――っ、あ…! …はぁ、はぁ、はぁ… 一人で風呂に入っていても、不意に彼の裸を思い出して―― 思わず霞の指は唇に伸び、あの柔らかな皮被りの感触が口内に蘇る。 ごくり、と喉を降りる唾には、小便臭い苦みのあるあの匂いも… ぼうっと体が熱くなり、指は正中線を伝って下半身に―― 霞: んん、ふっ…\I[122] だめなのに、指が…っ\I[122] はぁ、なんだか、っく、せつないよぉ… 本来なら、@が処理しきれない欲求を受け止めているはずなのに―― 自分の方が、それにあてられて我慢できなくなっている気がする。 指はますます激しく、陰唇と陰核とをこするものの、とても足りない。 やはり、他の人にシてもらわねば――収まりがつかないのだ。 霞: ねぇ、@くん…\I[122] ちょっと、お風呂にきてくれる…? @: どうしたのお姉ちゃん、お顔まっかだよ? あついなら、はやく上がったほうが…? 霞の額に掌を当てようとする@の手をそのまま霞は掴み、 柔らかい胸にぎゅうっと押し付けるようにして、体を密着させた。 石鹸とシャンプー、女性特有の甘い匂いがむわりと汗に混じって香る。 少年はあっという間に、霞と同じぐらいに頬を紅く染めた。 霞: お姉ちゃんね、@くんにここ…触ってほしいの。 おっぱいを…思いっきり、ぎゅっと、ね? 小さな鼻の穴からは困惑と歓喜にぴすぴすと音が繰り返し、 恐る恐る、@は自分の頭より大きな霞の胸に指を沈めていく。 どこまでも沈むようで、しかし確かな張りが指に手応えを返し、 ずっしりとした重みが、自ら彼の指にその肉を食いこませてくる。 少年の手が己の柔肌を撫でると、霞は堪えきれずに甘えた声を漏らし、 それを聞く@自身も、知らずのうちに性器を固く反り立たせていた。 乳首に細い指が触れると、そこから電流が乳房全体に広がるようで、 ただの拙いマッサージひとつで、霞もすっかり出来上がってしまっていた。 霞: ふふ、ありがとう、@くん…\I[122] じゃあ、今度は…いつものより、もっと… すごいこと、しない…? @: ねぇ、ここからどうするの…? ねっころがって、はだかになって… 霞: @くんのそれを、お姉ちゃんの…わかる?ここに入れるの。 いつもお口でしてたのを、こっちでするのよ。 そのまま…思いっきり、中に入れてみて。 二人は裸のまま、リビングで正常位の体勢を取っており、 霞は指で優しく誘導しながら、@の性器を自分の性器へと導く。 勝手がわからずに目を白黒させる彼の頬に霞が手をやると、 @は決心したように、腰を落として全体を霞の膣内に挿し入れる。 @: あ、なにこれ、なにこれ…! すごい、なんか、すごい…! っぁ、だめ、すぐに… 霞: っふ、がんばって、@くん…\I[122] 何回も、入れて、出して…! 出そうなら、いつでも、いいから、ね…\I[122] @: ごめん、もう、だめ… あっ、ん――はっ、ぁ…! でちゃ、でちゃうよぉ…! 少年は腰を目いっぱいに霞の尻に押し付け、背をぐっとそらせながら、 床についた腕に体重を預け――霞は両足で、抱きとめるように支える。 口淫とは比べ物にならない射精感、明滅する@の視界。 どくん、どくんと脈動する彼の熱に、霞も多幸感を覚え―― 本能的に、彼が運命の相手であると、子宮で理解してしまった。 彼の子を孕みたいという欲求が、彼女の行動原理を上書きしていく。 年の差など無関係に、彼を夫にしたいという気持ちが胸の中を埋め、 霞は衝動的に、@の頬と唇に柔らかく情深いキスの雨を降らせた… ★ @: お姉ちゃん、また…その… ごめんね、わがままばっかり言って… …でも、そろそろ、帰るん、だよね…? 霞: ううん、いいのよ…\I[122] 私も、@くんのこと、大好きだから、ね? …だから、約束して?ずっと、一緒にいるって…\I[122] 少年は、霞の言葉に顔を赤くしながらも、にこにこと笑い―― それがどれだけの重みのある約束か、しっかり理解しきらないうちに、 誓いの証として、霞の頬に、小さな唇の跡を付けた。 そこからまた電流がびりびりと、霞の全身を灼いていく―― 霞: 霧島に帰って、紹介したいな…\I[122] 出発する/ちょっと待つ 霞: 善は急げ、よね…よし。 準備は済んだ/ちょっと待つ 霞: ちょっとだけお家に帰るから、それまで待っててね。 すぐ帰ってくるから、ね。 霞: 名残惜しいわ… @: お姉ちゃん、さっき帰るって…? やっぱりやめる/そうだった 霞: もうちょっとだけ…いても、いいかな… しょうがないよね/帰らないと 霞: …帰るの、もう少しずらそうかな? ね、そろそろお風呂の時間だし。 @: え、いいの…? でもうれしい、ありがとう! 霞: 名残惜しいわ… *【ショタ二回目逃走】 初美: しかし驚きましたねー… 帰ってくるなり、婚約者がいる、ってー? 霞ちゃん、どこでそんなひと見つけたんですかー? 霞: うふふ…内緒\I[122] でもすっごくかわいいのよ… あの子が大人になったら、すぐ結婚するつもり…\I[122] 親友のどことなく不穏な惚気話に初美が眉をひそめようとも、 霞は我関せずとばかりに@との想い出に身悶えしている。 十にも満たない年齢差など、取るに足らない障壁である―― 恋に落ちた少女には、そんな想いで胸がいっぱいだ。 こまめに手紙を出し、時には直接会いに行って、気持ちを確かめあって… 霞という無二の相手からの懸想を受ける@も、並の女子には目もくれず、 干支が半周と少ししたぐらいに、二人は晴れて夫婦となった。 ちょうど出会った当初の霞と、彼が同じ年頃になってのこと… 幼さの残る風貌に、他の女仙たちは衝撃を隠せなかった。 神境に婿入りすることになった@は、霞との子作りに明け暮れ―― 五男四女に恵まれる、子沢山の夫婦となっていく… そのうちの数人がまた新たな女仙として――母の役目を継いで行くのだ。 *【ショタ三回目】 @: わぁ…おなか、おっきくなっちゃったねぇ… ねぇ、この中にいるのって、やっぱり…? 霞: ええそうよ、@くんとの赤ちゃん… あともうすぐで、パパになるんだよ? 霞はなおも@との共同生活を続け――当然の帰結として身籠った。 年端もいかない男児を人の親にすることへの葛藤もあったが―― 恋慕に灼かれてしまった頭では、避妊という選択肢は取れなかった。 当然、彼が背負いきれないなら――一人で育てる覚悟だってある。 霞: うふふ…私のおなかをこんなにしちゃった悪いおちんちん、 ちょっと触っただけで…また、こんなに固くなってる\I[122] さぁ、いつもみたいに、どうぞ…\I[122] 妊娠発覚時から、霞は口と手とで@の性欲をコントロールし、 安定期を迎えて、安心して成功できるまではお預けをさせていた。 そうして蓋をされていたものを、一気にぶちまけさせられて―― @はますます霞の体に溺れ、霞自身も、彼を深く愛した。 霞: だいじょうぶ、だから…\I[122] もっと強くして、いい、よ… んっ、そう、そこ…ふぅ、あ…\I[122] 純潔を捧げた相手とひたすら性に溺れて、霞の性器は彼専用の形となり、 お互いに弱いところを、言葉にするでもなく知り尽くしていた。 自分よりずっと背が高くて、賢くて、強くて、優しい人… そんな相手を、自分の性器一本で、自由によがらせられる、という自信。 いつしか@自身も、霞との生活の中で、たくましさを増していった。 ようやく帰ってきた彼の母に、霞が息子をくれと頼み込んだ時も、 この人は自分を守ってくれた人で、一生大切にするから――と、 自ら母親を説得する役を、買って出るまでに成長したのだ。 そうして、二人はこの家で彼が成人を迎えるまで同棲することになり、 セックス三昧の日々が、こうして霞の腹部に結実した。 大きくなったお腹を抱えて家事をする彼女を@は助けながら、 第一子のお産に向けて近づく日取りを、指折り数えて待ち望む。 @: そういえば、ベッドの隣にあったあの箱… お姉ちゃんが、頼んだやつなの? 霞: あら、気づいてたのね…じゃあ、 お風呂上がったら…どう使うか、見せてあげるわ\I[122] @: わぁ… …すっごく、きれい… @の眼前で霞は、その荷物を取り出して纏ってみせた。 シルクのヴェールに銀色のティアラ、肘まで伸びる手袋と長靴下… ウェディングドレスの胴体部分だけを除いた、嫁入り衣装の一式だ。 ごくり、と@の喉に、無意識の唾が降りていく。 霞: お嫁さんが着る服なんだけど…全部は、まだ早いからね。 @くんが大人になってから…もう一度ちゃんと着ましょう。 今は…これだけ着て、してあげる\I[122] 誓いのキスをするように――そっと髪を横にかきあげて、 霞は@の股間に向けて口紅を引いた唇を、そっと重ねる。 皮全体を赤いキスマークで覆いながら、それごと舌ですうっと舐り、 唾液で全体をコーティング、そのまま激しいストローク。 霞が全霊をもって、彼に奉仕することを誓った証でもあり―― @の魂を、霞という雌に縛り付ける呪縛そのものでもある。 幼い竿は、たちまちのうちに限界まで勢いよく反って固くなり、 ちゅぽん、と音を立てて霞が中断すると、恨めしそうな視線を向けた。 霞: ん…ふふ、さっき途中で止めたから怒ってる? いいよ、一番強く…一番深くまで、抉って…\I[122] @: おねえちゃん…ぼくの、ぼくだけの…! ずっといてよ、やくそく、やくそく、だよ…! 霞: はい\I[122]約束ね、あなた… でも…お姉ちゃん、じゃなくて、霞って、呼んで…\I[122] @くんの、お嫁さん、なんだから\I[122] あまりに歪な形の婚姻――だがそれは、二人にとっては世界の全て。 自分だけの雌に、ありったけの青い欲望をぶつける少年と、 その全てを受け止め――彼自身をも呑み込んでしまう底なしの母性。 二人はこれからもずっと、離れることなどできはしない… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【洗脳開幕】 妖魔: ギギギ… 【この女、俺じゃ敵わないぞ…】 霞: ちょっと手こずったけど、もう逃げ場はないわよ。 さぁ、とどめを…! 街の一角で鬼のような異種を発見した霞は、追撃を開始。 抵抗されながらも袋小路に追い詰め、後は最後の攻撃を…という局面で、 窮地にいるはずのその生命体は、ニヤリと牙を見せて笑った。 いぶかしみながらも拳を握る霞の目の前で、黒い光がぐるりとねじれた。 青年: んー…あーあーあー… ゴホン…… 助けて――!誰か――!殺される――! 通行人: おいなんだなんだ? 通行人: あら、誰かいるわね…? 通行人: こっちから人の声が… 霞: (なっ…!こいつ急に、人を呼んで…!) 人間の姿に化けた異種は突然耳をつんざくような悲鳴を上げ、 辺りには野次馬や正義感に駆られたものたちがぞろぞろと集まってきた。 霞の不思議な格好に眉をひそめながらも環視する彼らに向けて、 青年の姿のそれは、パチンと指を鳴らす―― 青年: 形勢逆転、だね…おっと動かないで! 今、こいつらは完全に俺の操り人形だ。 死ねと命令すれば喜んで首を掻っ切るだろうね… 不意を突かれて人質を取られ、彼らの手元には尖った石やガラス片―― 中にはすでにうっすらと、首筋から赤い血を垂らしているものもいる。 一度退いて態勢を立て直そうとする霞を制するように、 にたにたと笑いながら手を広げ、降伏するよう促した―― *【洗脳一回目分岐前】 霞: 下衆ね…人質取ってから随分ご機嫌じゃない。 敵がねぐらとしている廃墟に連れられてきた霞の周囲には、 いまだ洗脳の解けていない人質が虚ろな眼でたむろっている。 途上で追加された人質と、安否を確認できないよう離された人質… 時間を掛けるだけ不利になり、チャンスを失うのは明らかだ。 妖魔: そういうな、俺だってあの時必死だったんだぜ。 …さてこんなところに来てもらったのは… ま、言うより始める方が早いか、っと… 嗤いながら、妖魔は指を宙でくるくろと回して命令を出す。 すると操られた内の数人が、服を脱いで霞に詰め寄ってきた。 胡乱な表情にもかかわらず、股間はみっちりと怒張し熱気を纏って、 霞を服の上からがっちりと、信じられないほどの握力で掴まえる。 妖魔はなお一層にたにたと嬲るような表情を深めたまま、 ゆっくりと体を透けさせ、虚空にその姿を消していく… 影は見えずとも、視線と気配だけはそこに滞留しているかのよう。 残された霞と人質――特にその中の男たちが、何をさせられるか? 霞: 待って、落ち着いて…! ねぇ、正気に… っぐ、っ…! 訴えかける声も空しく、霞の処女は易々と破られ床の染みとなる。 無理に抵抗すれば、彼らを傷つけてしまうし――洗脳も解けていない。 純潔と命とを天秤にかけるまでもないが、選択肢はないに等しい。 逡巡する彼女を尻目に、男は淡々と腰を打ち付け、内腑を抉る。 霞: いた、いたい…っ、 やめ、てぇ…! 男の腰使いには、霞に対する配慮や申し訳なさなどは欠片もない。 自由意思を持たず、与えられた命令のままに性向を行うだけの人形。 ――だがそれでも、男女の行為には必ず存在する終点、容赦のない射精。 見世物としてなら、悪趣味極まりない趣向と言えようが。 一人が射精を終えても、また別の人形が霞を強引に立たせ、犯す。 脚は痛みと疲労と屈辱にがくがく震えて今にも崩れ落ちそうな様だが、 スーツの上からでも明らかな稜線を描く豊かな胸は大きく弾み、 圧迫感と嘔吐感で、繰り返し霞はえずく。ひたすら突き上げられながら。 強く掴まれている腕の痺れは、やがて脊髄から脳までを揺らす。 どうしてこんなことになってしまったのか――形を成さない自問と後悔。 重く垂れる瞼に、体に合わせて上下する視界はゆっくりと押し潰されて、 誰に向けるでもない謝罪の言葉と共に、霞の体から力が逃げていく―― ★ 霞: う…あれ、終わった…? 何度目かの凌辱が一段落し、気絶するように寝入った霞… ちょうど目を開けたタイミングで、人質が皆倒れていることに気づく。 操られているといっても、体自体が動けない瞬間は存在するのだ。 いつの間にか、辺りに満ちていた妖魔の監視も緩んでいるような―― 霞: (逃げるなら…今しかないかもね…) 霞: (ここから出ることさえできれば…) ひとまず脱出/心残りが… 霞: (助けを求めるにしてもまず逃げないとね…) 立て直しを図る/心残りが… 霞: (次は必ず倒す…だから、今は逃げなきゃ) 霞: (この人たちを見捨てていいのかしら…?) 霞: (このマット、布団のつもりかしら…) 眠気に負けそう/そんな暇はない 霞: (ふぁ…やだ、あくびが…) 倒れ込む/そんな暇はない 霞: (だめ…からだが…おもい…) 霞: (…!しっかり、しなきゃ…!) 電池が切れたように動かない。 生きてはいるようだが… *【洗脳一回目逃走】 廃屋自体は街からそう遠くない立地であったため、逃げることは容易。 ましてや、装備を取り上げられたわけでもないのだから、なおさらだ。 監視用の人間には、その姿を視界の端に捉えることも難しく、 そのまま隠れおおせた霞は、派遣された仲間と共にリベンジを達成する。 今にして思えば――多少強引にでも逃げるか、被害を気にせず攻めれば… と、冷静な判断を下すこともできただろう。所詮は結果論に過ぎないが。 だが廃屋に追い込んで討伐した妖魔の躯の横に、あの時の人質―― 自分を凌辱したものの亡骸があったことは、まだ胸に引っかかっている。 小蒔: その…あんまり気に病まないでください… 霞ちゃんが脱出してなければ、きっと、もっと多くの… 霞: わかってるわ、大丈夫。 でも、なかなか割り切れないものよね… 顔を知っている相手が、あんな風に… そういいながらまた沈んだ表情をする霞に、小蒔は優しく微笑みかけた。 多数と少数のどちらを取るか――答えなど出しようのない問い。 自身の純潔と命を捧げてでも、彼らを守るべきであったのか―― 今となっては、選ばなかった道を口惜しく想うしかないのだ。 *【洗脳二回目分岐前】 霞: っぅ…おねがい、正気に…! あっ、あ…っ! 有効な打開策を見つけられないまま、霞はいまだ捕らわれていた。 入れ替わり立ち替わり、新しい男が廃屋にやってきては、彼女を犯す。 監視役も日毎に別のものと入れ替わっているようで、実態が掴めない。 時間が経つごとに、ますます反撃の機会は遠くなっていく… 霞の膣内を機械的に責め立てる男たちは、何の感慨もなく腰を振り、 彼女が苦痛や快楽を感じているかにかかわらず、好き勝手に精を吐く。 セックスというよりは、それは種付けという作業に近いものであり、 必然的に霞はその果ての――女性機能の到達点について、想像してしまう。 霞: なかは、やだぁ…っ! やめてよぉ…うぅ… たとえ泣き叫んでも、男たちは一切の容赦なく彼女を穢し、 女性の最も神聖なる最奥に、意志も責任も持たない熱をぶちまける。 守ろうとした相手が、自分を辱めるための道具として使われている―― それはどれだけ、霞の心を揺さぶり、無力感を突き付けるのだろうか。 凌辱と凌辱の間隙、ぐったりとへたり込む霞の耳に、また扉の開く音。 何人かの足音を引き連れて、新しい人員が補充されたという合図。 つかの間の休憩すら中断されることに絶望感を抱いていると、 操られている人間には出せないはずの、あるものが―― 男: へぇ、こいつが話にあった好き勝手に使っていいやつ? 男: おっ、結構な美人じゃん…胸もでけぇな。 …カッコだけ変だけど、コスプレかなんかか? 入ってきたのは、操られている風でもない――ただの一般人。 だが、彼らは明らかに、霞に対して邪な感情を抱いていた。 抵抗のできない相手を自分の好きなように使える――そんな思いを。 さも当然とばかりに、座り込んだ霞を引き起こして犯し始める… 霞 やめて…おねがい、やめて、ください… なんで、こんな… 男: あれ?なんだ、結構嫌がってんなこいつ。 好きにヤっていいって聞いたから、相当な好きもんかと思ったのに。 男: 嫌よ嫌よも…ってやつじゃねぇ?逃げようとしないじゃん。 あの変なガキは、気にしなくていいって言ってたしよぉ。 疲労に輪郭のぼやけた思考に、うっすらと彼らの言う相手―― 人に化けたあの妖魔の、厭味ったらしい顔が浮かんでは消える。 人質の次は、あちこちから人を集めて本人の意思を使って辱めるのだ。 霞が人間に対して、失望するよう仕向けるために―― 監禁され、犯され続けた霞の腹部は、やがてはっきりと膨らみを持ち、 犯しにくる人間も、妊婦となった霞を好き好んで抱くようなものばかり。 身重の彼女を、その中の誰も助けようとはせず――責任も取らない。 体だけでなく心も、ゆっくりと地の底に縛り付けられていく気がする―― ★ 男: ふー… おっし、じゃあ次、誰か―― 男: えーっと…ん、全員周ったかな。 ちょっと休憩しようぜ、喉渇いちまったし。 霞: (やっと、やすめ、る…) 男: なんだよ、まだ足りねーのか? 俺らがしんどいんだよ、ちょっと待ってろや。 男: …その腹、俺のじゃないよな? まぁ、知ったこっちゃねーけどさ。 男: 出ていくつもりか?その体で無理するなぁ… 警察には連絡するなよ、面倒くさいから。 霞: (特に引き留める気はないみたい…) 霞: (逃げるなら…今しかないかもね…) とにかく逃げる/大丈夫かな… 霞: (人質はいないし…なんとか…?) 他に方法はない/大丈夫かな… 霞: (うっ、ぷ…まずは、病院、に…) 霞: (この状態で…逃げるといったって…) 霞: (もう、疲れてきちゃった…) 心が折れそう/諦めたくない 霞: (私は…なんで…こんなところに…) …わからない/諦めたくない 霞: (明日…また、考えよう…) 霞: (…この子…どうすればいいのかな…) *【洗脳二回目逃走】 逃げることこそできたが――数か月に及ぶ監禁と凌辱の日々は、 妊娠という形以外でも、霞の心身に重大な後遺症を残していった。 膣へのダメージもさることながら、根強く残る人間不信―― 人々が自らの意志で、自分を犯していたという忌まわしい記憶… そのリハビリには、さらに年単位の時間を要し… 霞が霧島の知己のもとに帰ったのは、彼女が成人してからだった。 隣には、あの時に身籠ってしまった子供を引き連れて―― 今の彼女が心を許せるのは、血を分けた娘しかいない。 小蒔: お帰りなさい、霞ちゃん。 …大変だったそうですが、その… ごめんなさい、何を言っても…無責任、ですよね。 霞: いいの小蒔ちゃん、私が甘かっただけだから… そのかわり、この子にはあんな経験、させたくないの。 口調こそ、昔の霞のようにおっとりとした優しいものであったが―― 小蒔は霞との間に、決して越えられない隔たりのようなものを感じた。 唯一の心の拠り所である肉親以外を、信じようとはしない分厚い氷の壁… おそらく、娘も彼女自身も、六女仙からは身を引くだろう… もうあの頃には、誰も戻れないのだという諦観がそこにはあった。 小蒔も、初美も…あるいは他の女仙たちも、それは理解している。 道を違えて互いに向けた背の裏で、小蒔はぼろぼろと涙をこぼし―― 霞は娘に対して、この世の全てのような深い深い愛を込めた視線を投げた。 *【洗脳三回目】 監禁はさらに続き、霞が臨月を迎えてもなお、男たちは変わらない。 ひたすらに彼女の体を弄び、出っ張った腹が揺れるのを嗤い、 スーツの上から、黒くなった乳首を捻り上げ、尻に大きな手形を付ける。 傷さえ残らないなら、何をしてもいい――邪悪な免罪符と共に。 霞: あか、ちゃんがぁ…っ! だめに、なっちゃう、やめてぇ…! 強引に孕まされた子であっても、霞の卵子からできたものには変わらず、 否応なしに彼女は、母親としての愛着をそれに持たされてしまう。 胎を庇おうにも、両手はしっかりと拘束されて回すこともできず、 思い切り腰ごと跳ね上げられて、奥の奥まで小突かれ回されながら、 もうすぐ訪れるであろうその瞬間――出産という大きなイベントが、 無事に済んでくれること――産み終えることだけを、霞は祈る。 生地に圧迫されて押し潰された乳首からぶじゅうと溢れる乳汁は、 さながら白い涙のように、服の内外から彼女の肌を汚していく。 男: おい、次やるやつ――? 臨月の妊婦なんて、今しかヤれねーぞ? 男: へへ…じゃあ、俺がやる。 破水まで、ノンストップでやってやろうじゃねーか… 先の精液と、体を守るために本能的に出た愛液とでぐじょぐじょの中を、 また次の男が無頓着に自身の性器で掻き回し、襞に塗り付けていく。 浅くなった膣道からは、泡立つ体液のカクテルが溢れ出していて、 いくら犯しても足りない最上級のオナホとして、霞は扱われていた。 霞: うぐっ…おなか、いたい…! や、めて…うま、れるぅ… 破水が始まろうと、男は繰り返し霞の腰に思い切り己の腰を打ち当て、 その苦悶の顔をにたにたと笑いながら、身勝手な射精で踏みにじる。 足元の絨毯に彼女が倒れ込むのに手を差し伸べようともせず、 股間から勢いよく漏れる液体を、スマホのカメラで撮りもした。 男: ほっといたら、直に産まれるだろうけどよ… 赤ん坊の扱いについて、どうするつもりなんだ? 妖魔: なに、ここの廃屋もその女も俺の持ち物だからな。 あんたらは勝手にやってくれればいいし、何も必要ない。 妖魔: 【なんせ、次の依り代に育てるつもりだ…  母胎が絶望するほど、いい体になるのさ】 妖魔の言葉は、霞以外にはわからず…男たちはへらへら笑うだけ。 せっかく守ろうとした我が子も、この悪鬼の道具にされてしまう… 奴の思い通りになるとはわかっていても、更に絶望せざるをえず、 いよいよ強くなる陣痛に、霞の心はより深く沈んでいった… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【カルト開幕】 仄暗い部屋の中、異様な雰囲気の漂う一室にて… 頭から爪先までを覆う丈長のコートに身を包んだ一行が、 数メートルはあろう神体の彫像に向けて、一心に祈りを捧げている… 霞はその宗教集団の実情を探るため、信者見習いとして潜り込んでいた。 霞: (うーん…今一つ内情がわからないわね…?  他の人に聞いても、聖母がどうの、だとか…) 教祖: では皆さん、本日の集会は――おや? 男: ようやく追い詰めたぞこの詐欺師どもめ! 妹を返してもらおうか! 集まっていた信徒の中から数名が、教祖に向かって強い剣幕で詰め寄った。 手には刃物のようなものも見え、剣呑な空気が部屋の緊張感を高める。 一般の信者たちはざわざわとどよめくばかりだが、霞はその中に―― 教祖と同じく、余裕や嘲笑を込めた表情を向けるものがいるのに気づく。 教祖: ――あなた方は熱心に参加してくださっていたのですが、実に残念です。 妹さんは我が教団が手厚く保護しておりますので、ご心配なく… 神経を逆撫でするような言い回しに、一層激高した男たちの目の前で、 教祖がパチンと指を鳴らすと、稲妻が男たちを貫き、その場に転がした。 ゴミでも見るかのような表情をする教祖に、霞は思わずコートを脱ぎ、 自分の役目はこの男を成敗することだ、と信じて睨みつける。 教祖: 今日は忙しい日ですね… ですが運がいい、素質があるようです… 意にも介さない教祖の表情に、霞はなお敵意を燃やして、一歩踏み込む。 すると足元に描かれた紋様から光が立ち上り、霞を包んだ。 突然の倦怠感にがくりと倒れこんだ霞は、信徒たちが近づく足音と、 教祖を称える声、彼の笑い声が遠くなっていくのを聞いた―― *【カルト一回目分岐前】 教祖: ――起きなさい。 遠のいていた意識が一瞬でクリアになり、怠い体とのミスマッチを起こす。 何をするでもなく瞬きを繰り返し、だらりと伸ばした四肢の先を見る。 すぐそばから聞こえる水の音と、それよりさらに明晰に聞こえる声。 霞は己が、どこかの地下――水源に繋がったどこかにいる、と気づいた。 教祖: ――立て。 再び、何よりも明確な指示の声が、霞の脳を貫く。 すると、まるで紐か何かに引っ張られたかのように体はぴん、と起き上がり、 それが自分のものでないような、不思議な感覚に捕らわれた。 動きにつられ、大きな乳房だけが、だるん、と重たげに揺れる。 教祖: …暗示はよく効いているようですね。石戸霞、さん。 先ほどの一件で倒れている間に、少しばかり細工をさせてもらいました。 ――ああ、あの時のお召し物はこちらで処分済み、ですよ。 霞: 私に、何を…? 教祖: 我々の悲願を成すため――といっても、今は知らなくていいことです。 簡潔に言えば、ここで他の信者さんたちとセックスしてください。 ――股を開き、誘え。 教祖: ふふ、実に美しいお姿ですね… では皆さん、存分に―― コートを翻して歩き去る姿とすれ違いに、一人の信徒が霞に迫る。 抵抗しようにも、自分の両手はがっしりと太ももを握りこんでおり、 性器も尻穴も、何の目くらましもなく外気に晒され、ひくひく蠢く。 そしてそれは、男の側も同じ。痛いほどに勃起したその様を見せられる。 霞: ぐっ、うぅ…! い、痛…! 破瓜に呻き声をあげ、脂汗を浮かべて首をよじって逃れようとしても、 体は正反対に、男と肌を密着させるように抱き寄せ、足で挟み込む。 心が体を制御できない――否、与えられた命令が自分を支配している。 痛い。だがそれ以上に、こうせねばならない、と体に理解させられている。 順番待ちをしている男たちにも、羨望や焦れといったものは見受けられず、 霞とのセックス、という目的のために、一丸となって動く蟻か蜂の如く。 ごく淡々と、男は射精の準備を整え、ごく当然のように、膣内に出す。 避妊という概念など、初めから存在しないか、と思わせる。 霞を抱く男の表情は、彼女という極上の雌を相手にした雄としては、 あまりに淡白で、本能的な悦びに根差さない事務的なものだ。 役得、どころか、内心では単なる流れ作業か何かのように―― 霞の純潔は、じめじめとした地下の暗がりの中に、散った。 ★ 信徒: 許可のない外出は認められない。 次の聖交の時刻まで待て。 信徒: お前はただ役割を果たせばいい。 それ以上何も考えるな。 信徒: ここがお前の住処だ。 必要なものは我々が手配する。 霞: (ずっと同じことしか言わないわ…) 霞: (この蓋、ちょっと引っ張ったら外れるかも…?) 力を込める/やめておく 霞: (…!やっぱり、すぐに外れそうね) 外して飛び込む/やめておく 霞: (じっとこちらを見てるわね…) 霞: (少し、休憩しようかしら…) 目を閉じる/やめておく 霞: (隙ができるまで…しばら、く…) 眠りにつく/やめておく 霞: (…逃げる方法、あるかしら) *【カルト一回目逃走】 体を清めるための水路の蓋を外して、自らその中に飛び込んだ霞。 ローブを着た信徒たちはその反応に追いつけず、 ばしゃばしゃと重い水音が追ってくるのを尻目に、 霞は近くの川へと逃げ出し、難を逃れることができた… 件の新興宗教は、まだ大した影響力を持ちえないのか、 追手がかかるようなこともなく、神境の近くに進行したわけでもない。 あれは悪い夢だったのだ、と思い込もうとする霞に、 その労苦をねぎらわんと、初美が声をかけた。 初美: お疲れ様ですー。よく無事で…心配したんですよー? 霞: ええ、ありがとう…もう、お陰様で大丈夫よ。 そんなに、酷い目に遭わされたわけではないから… あの無気力な者たちを集めて、いったい何をしようとしていたのか… 教祖の目的とは何だったのか…結局わからず仕舞いであったが、 今こうして無事に戻れたこと以上に望むものはない、と霞は思う。 自分と同じような立場の人がいたのかも、という想像から目を背けながら… *【カルト二回目分岐前】 来る日も来る日も、霞は地下でひたすらに犯され続けていた。 何人かの信徒が入れ替わりでやってきては、容赦なく膣内に射精し、 身を清めた後に、また別のものが現れては彼女を抱く。 中には、多少反応のあるものもいたが、ほとんどが種付けの機械のよう。 なぜこんなことをするのか、と訊いても誰も答えず、 いつ終わるのか、と尋ねても黙れと短く制されるばかり。 ――もっとも、霞の方もそれについてはぼんやりとした想像は、ある。 この行為――雄と雌の交わりの先にあるのは、一つだからだ。 霞: (…っ\I[122]だめ、声が、出ちゃう…!) 愛のない行為とはいえ、何度も掘り穿たれた肉穴は勝手にこなれていく。 何人もの男を相手し、様々な形・長さ・硬度の性器を覚えさせられ、 どのあたりをどう突かれると弱いのか、知りたくないのに知ってしまう。 びりびりと、脳髄を貫く刺激が、また一枚理性の皮を剥ぎ落とす。 呼吸を整える間もなく、男は二度目の射精を行うために抽挿を再開。 敏感になった膣内を、まだ半勃起の状態からぐりぐりと掻きまわし、 霞は自分の腹の中でぐんぐんと硬さを取り戻していくその穂先と、 びくびくと脈打つ熱の塊が、その中を昇ってくる感触にまた達する。 霞: あ!――っく\I[122]…んんんっ! 絶頂によって意識が一瞬、白く飛ぶものの、体はいまだ熱く火照り、 ぐちゃぐちゃにされた心を、強引にこの雌の体に引き戻されてしまう。 ノルマとしての射精三回を終えた男が、次の男に代わるまでの刹那、 荒い呼吸に胸郭を上下させる時だけが、霞の心が休まる時間だ。 教祖: やはり私の見立ては正しかったようですね… あなたには実に素晴らしい、神胎としての素質があります。 あとは――心持ち次第、といったところですかね。 霞: 神、胎…? 私に、何をさせようっていうの? 教祖: この汚れた世界の穢れを全て吸い上げ浄化なさる、 我が教団の奉ずる神霊の宿りし器、それを産む母親のことですよ。 他にも色々な雌で試しましたが――あなたほどの逸材はなかった。 底なし沼のような、暗い暗い瞳でじっと、男は霞を見た。 狂気や妄想のない交ぜになったものより余程濁った、暗色の虹があった。 体の自由は効かないままだが、本能的な嫌悪感が霞の全身を包む。 心だけはまだ、自分の手の中にある、とどこか安心する気持ちもあった。 教祖: ご自分で我らの教えに帰依していただけないと意味がありませんから… もうしばらく、この作業にお付き合いいただきましょうか? あなたの体を見る限り、目的は既に成っているようですが、ね。 その視線は、霞の下腹部に注がれていた。 明らかな異変を示すぷっくりとしたその膨らみ。 このような生活を続けていれば、ごく当然の帰結として起こるもの。 彼女が若く、健康な雌である、ということの何よりの証左―― 霞: (違う…これは…そんな…!) 教祖: 神母となる名誉を受け入れるのです… あなたの他の、誰にもできないことなのですからね… また、別の男が霞の上に覆いかぶさり、無感動な抽挿を始める。 もしかすると、自分が孕ませた子であるかもしれないのに―― 何の躊躇も配慮もなく、腰の動く速度までいつもと変わらずに。 もっとも、それで蕩けた声を出してしまうほど――霞もまた、堕ちている。 ★ 信徒: 神母様を外の穢れに触れさせるわけには参りません。 ご自愛ください。 信徒: 直に神胎の役目を果たされるのです。 御心が安らかになりますよう。 信徒: 俺は最近ここに来たんだが…へへ、あんたも災難だね。 …おっと、こんな口きいてたら殺されちまうな。 信徒: 神母様、何かご入用でしょうか? どうぞお申しつけくださいませ。 霞: (態度はこうでも…やってることは変わらないわね…) 霞: (この蓋、ちょっと引っ張ったら外れるかも…?) 力を込める/やめておく 霞: (…!やっぱり、すぐに外れそうね) 外して飛び込む/やめておく 霞: (じっとこちらを見てるわね…) 霞: (…もう、駄目かな…?) 受け入れる/やめておく 霞: (ここで…私は…) 新たな役目に準じる/やめておく 霞: (諦めるわけには…) *【カルト二回目逃走】 身重の体ながらも、水道に繋がる道へと飛び込んだ霞。 無意識にお腹を守りながら流された先は、近くの水場だった。 ぼろぼろの体を引きずって、霧島へと戻る最中… 無理が祟ったために胎児は、不十分な形で排出されてしまった。 若い身空で子供を抱えずに済んだ、という安心感と、 自分の行動のせいでそれを失ってしまったという罪悪感… 板挟みの感情の間で悩む霞は、神境でもしばらく塞ぎ込んでいた。 友人たちは、彼女の心の穴を埋めてやろうとするが… 初美: 霞ちゃん…今度、一緒に出掛けませんかー? ほら、前に行った海とか…川とかー… 霞: …そんなに、気を遣ってくれなくていいのよ? お医者様にも、特に問題はないって言ってもらえてるし… でもせっかくだから、たまには遊びに行きましょうか。 初美の差し出したいくつものパンフレットを、霞は一つずつ眺めていく。 風光明媚な写真の合間に、旅行会社やホテルの名前が並ぶ… その中に、霞は忘れようにも忘れられない、ある団体の名前を見つけた。 どくん、と強く鼓動が打ち、思考が明瞭になるあの感覚―― 霞: そうね――この教会とか、綺麗だと思わない? 六女仙みんなと小蒔ちゃんで…どうかしら? その目には、あの暗色の虹が―― *【カルト三回目】 霞: さぁ、思いっきり奥に出しちゃってくださいね…\I[122] うふふ、凄い量… 自分の運命を受け入れ、教団の教えと共に生きると決めた霞。 信徒たちとの義務的なセックスも、心の持ちようを変えれば心地よいもの。 教義に支配された機械のような人間たちも、射精の瞬間だけは―― 一匹の雄に戻る、ほんの少しの兆しがある。その小波が、愛おしい。 あるいは、まだ染まりきっていない新参の信者が、霞との交尾の中で、 ずぶずぶと泥濘にはまっていき、心身ともに束縛されゆく哀れさすらも、 神母として信徒たちの苦悩を引き受ける役割を担う霞には、愛すべき対象。 膣内を自在に動かし、下半身経由で完全に骨抜きにしてしまうのだ。 力と恐怖を軸に支配するのが教祖のカリスマの根幹であるならば、 霞は無尽蔵な愛と母性に引きずり込むところに、カリスマ性を持つ。 精通もまだな少年信徒が、自分でしか勃起できない体にされたとき―― 彼女の心は、どこまでも暖かな黒いヘドロに、満たされていくのであった。 信徒: 神母様、そろそろお時間です… 信徒の皆の前に、お越しくださいませ。 霞: わかりました。ちょうどお腹の方も…んっ… もうすぐ、みたいですから…\I[122] …あなたも、して、いきますか? 先ほどまで数人と交わっていたとは思えないほど、軽やかに霞は立ち上がり、 全身に浮いた汗も、出されたばかりの精液をも、羽織ったローブに包み込む。 体のラインを隠す服でありながらも匂い立つような強烈な色香が、 先導役の信者の理性を、役目を忘れる淵ギリギリまで剥ぎ取っていった… *【カルト三回目後半】 教祖: 皆さん、今日は良い報せがあります… ご承知のように、神母――霞様の出産予定日は、ちょうど今日… 霞様は先ほどまで、信徒の業を受け止めるお勤めに励んでおられました。 つう、と霞の腿を生暖かい塊が伝って落ちる。ぞわり、背筋に震えが走る。 彼女の役目は、神体となるべき赤子を孕むことであると同時に、 信者たちがそれぞれに持つ心の澱みをも、受け止めて呑み込むこと。 そうすることで、赤子のうちから人の罪を背負う存在とするのだ、と。 もちろんそれだけではなく――肉体を使って堕落させるのももう一つの仕事。 霞が自ら体を差し出すようになってから、教団の勢力は一気に増した。 軽い気持ちで彼女をヤり捨てにきたものはたちまち奴隷になり、 心の揺れた者を、体の虜にして雁字搦めにして引きずり戻す。 体に描かれた紋様は、教祖が操る呪術によって、儀式を行うためのもの。 出産直前に鼻の上に軽く一本線を引いて、術式は完成する――と、される。 あとは、霞がこの生活の中で孕んだものを、皆の前で産むだけ―― しかし、破水を既に迎えたにも関わらず、まだ頭が見えてこない。 霞: もうじき、ですけど…っ、まだ、かかりそうですから…\I[122] どなたか、お迎えするために…霞の、ここを… 突き回して、くれませんか…\I[122] 産婦相手でありながら、男たちはいつもよりもさらに激しく、霞を抱く。 大きな腹が、突かれるたびにずんずんと揺れていようが、胎動が強まろうが、 そんなこととは無関係に、ひたすらに腰を振り、霞も、声を出して甘える。 それを、この部屋にいる誰も、咎めようとはしない。 霞: んっ、遠慮、せずに…\I[122] どんどん、出して、ください…っ\I[122] あっ――ふっ\I[122]…くっ…! 四人目に抱かれている最中に、性器の先端に違和を覚えた男が離れると、 霞の赤子は、いよいよ出産のための準備を終えて、頭頂部を覗かせた。 呼吸に合わせ、母の肉穴を押し広げながら、少しずつ、少しずつ。 一同はただ固唾を飲んで見守り、部屋には霞のいきむ声だけがする。 霞: ひっ…ふぅー…っひぃ…ふ、うぅう… だい、じょう、ぶ…っもうすこ、しぃーっ…! ふっ―― 精液と愛液ででろでろになった産道を潜り抜け、ようやく神子は産まれた。 霞はぼんやりと、自分と臍の緒で繋がったその先に、視線を向ける。 やがてそれが、もぞもぞと動いて産声をあげると、彼女の表情は和らいだ。 神母の笑みに合わせ、ぽつぽつとまばらに拍手が上がっていく。 後産も済まないうちから、教主は赤ん坊を直に高らかと抱え上げた。 彼らの教義における信仰のアイコンであり、教徒の苦悩を雪ぐ存在となる。 感涙しながら跪き、忠誠を誓う者や深々と頭を床に擦り付ける者もいた。 霞はへとへとの体で、我が子をその手に抱き寄せ、乳を含ませる。 彼女の役割はこれで終わったわけではなく――育てることも役割であるし、 罪をその子宮に受け止め、神子の魂に昇格させるという建前上、 近いうちに第二子も第三子も、同じく孕まされては産むことになるだろう。 この薄暗がりの中に、彼女自身を含めた、誰も彼をも繋ぎ続けるために―― *【憑依開幕】 霞: (この怪物…私一人じゃ手に余るわね  少し危険だけど、“あれ”を使わないと…) 神域に仕える巫女である霞は、人知を超えた存在の力を借りることができる。 その器としての女仙であり、器として神々を現世に降ろすのが彼女らの使命。 現に、麻雀のような小規模なテーブルゲームの際にも力は行使される。 日常的に憑依と解除を繰り返してこそ、コントロール技術は培われるからだ。 霞: ふう…危ないところだった。 あとは巴ちゃんに連絡して祓ってもらわない、と… …あ、れ…?体、が… *: \C[18]【そうつれないことを言うな  次は妾の都合に付き合ってもらおうかの】 意識はくっきりと明瞭に保たれながら、指先が固まったように動かない。 取り出した携帯をそのまま懐に差し戻し、発信画面の手前で表示は消える。 自分の背中、肩からずっしりと冷たい霧が纏わりつく感覚。 だがそれは物理的質量を伴わない、超常の“何か”の重み。 *: \C[18]【力には対価が要る…そう習わんかったか?  自分一人で祓えぬものを降ろすとは迂闊じゃのう  若くして出来上がった雌の体…ふふ、楽しめそうじゃな】 ぞっとするような寒気が、背骨を伝って全身に広がっていく。 神境でなら、すぐに仲間からのサポートを得られたものを… 自分の修行だから、と単独での行動に走ることのリスクを霞は噛み締めた。 自分のものでないように、指が着物の隙間に気持ち悪く差し込まれる。 霊: \C[18]【さて…これだけのものなら、男も捨ておくまい  一年ほどこの体貸してもらうゆえ、悪く思うな?】 霞: (あ…声が…出ない…い、や…!) それから少しして、霞は人通りのまばらな街角、その暗がりにいた。 巫女装束も身を守る強化服も脱ぎ捨てて、生地の薄く透けた黒い下着だけで。 暴力的なサイズの乳房、それに負けない安産型の尻、ほっそりくびれた腰。 男なら誰しもが見とれるボディラインを、惜しげもなく外気に晒しながら。 霞: \C[18]そこな御仁…おほん、あー… ねぇお兄さん、少しお時間いいですか…\I[122] 男: ん…俺のこと?うわっ、なんで君下着なの!? 困るよ、そういうの…ほら、ねぇ…? あまりに刺激的な装いに、男の視線は激しく動揺を表している。 だがそれ以上に、霞の肢体への興味や劣情が色濃く覗いていて、 男が周囲の様子を伺うのは、このような状況に巻き込まれたことへの心配より、 他の男が割り込んでこないか、という警戒心の方に根付いたものであろう。 霞: \C[18]うふふ…\I[122] ほら、そこのビルで…ね? 大丈夫、何も心配なさらなくていいんですよ―― ごくり、と唾を飲む音がひっそりとした陰の中に溶けていく。 霞はコートを羽織り直し、男の手を引いてゆっくり歩き出す… 二人分の靴音は、やけに重く町の雑踏に響くように感じられる。 自分の体が勝手に動くことへの、霞の恐怖を表すがごとく… *【憑依一回目分岐前】 霞が男を誘った路地が見下ろせる、すぐ近くのビルの一室。 トイレや風呂こそ完備されてはいても、生活をするには心もとない設備。 それに反して大きなベッドと、やけに手入れの届いた内装は、 霞と――そして男が、この部屋にいる理由そのものを表すようであった。 男: わざわざ部屋取ってるなんて…君、変わってるねぇ… …確認だけど、後から誰か乱入、なんてことないよね? 霞: \C[18]ええ、もちろん… 私も…こういうの、すごく、好きなんです\I[122] だから今日は…たくさん、可愛がってくださいね\I[122] もはや完全に男の意識は霞の一挙手一投足に縛られている。 衣擦れの音、窓から差し込む光にてかる瑞々しい肌、濡れ烏… よもや霞が未成年とは、わずかにも思うことはないだろう。 あまりに艶めかしい、彼女の指の動き一つ取ってさえ。 霞: (こんなこと…したくないのに…!) \C[18]では…そろそろ、始めましょう、ね? 霞の意志では、眉をひそめることも歯も食いしばることもできない。 己の身体が、異様の知れない何かに操られている不快感―― \C[18]【せめて楽しめ、ここから永いのじゃぞ?】\C[0] 思考の隙間に、“何か”の言葉がするりと入り込んでくる… 男: まさか初めてとは、くっ、思わなかった…! 君、こういうの、向いてそうだね…ぇっ 破瓜の赤にほんのわずかに驚きを見せた男も、すぐに目の色を変え、 ただひたすらに、目の前の雌の全てを貪ろうとする―― 自分に跨って激しく体を上下させる霞の動きにつられて腰を突き上げ、 暴力的なまでの胸の軌道に、思わず鼻息を荒げながら。 霞: \C[18]んっ…はっ、あ…\I[122] いいですよ、もっと、はげしく、しても…\I[122] 霞の爛々と輝く瞳――その奥には、ぼんやりと蒼い光が宿っていた。 だが、霊感のない男はその妖しい色彩に気付くことなどできない。 彼女の瞳に目を奪われて、体の奥から無尽蔵に湧き出てくる繁殖欲求―― 自分の何もかもをも吸いつくそうとする異常性に、流されるまま。 霞: \C[18]はぁっ、ん、んっん… また、でてます、ねっ…\I[122] ねぇ、もっと…できる、よね…? 男: うっ…あ、あぁああぁ… むり、もう、むりぃ… やすませて、ほんと、む、り… 霞: \C[18]おや、気を失ってしまいおったか… 十回やそこらで情けない男じゃのう… まぁいい、ほれ、体を返すぞ―― 霞: ……っ! いっ…!た、ぁ…! え、からだ、うごく…? 処女を失ってからの痛みと疲労が、一気に霞の体にのしかかってくる。 がくん、と力が抜けてベッドの上にへたり込み、瞼が重くてたまらない。 汗と精液とでべちゃべちゃになった肌が、物凄く気持ち悪くて―― 何かを言おうとしたまま、霞の意識はゆっくりと薄れていった… ★ 霞が意識を取り戻した頃には、男はさっさと部屋を発ってしまっていた。 財布の中にあった札を手切れ金とばかりに全て吐き出し、一目散に… \C[18]【と、いうわけで、しばらくお前にはこれを生業にしてもらうぞ】 \C[0]ガンガンと痛む頭の奥から、あの声が聞こえる―― 霞: (いや、だ…にげ、なきゃ…) 霊に抗う/体が重くなってきた… 霞: (指…まだ…動かせる…!) ドアを開ける/体が重くなってきた… 霞: (巴ちゃん…たすけ、て…) 霊: \C[18]【おや、逃げられると思うたか?】 霞: (ねむく…なってきた…) ベッドに倒れ込む/そういう訳にも 霞: (うぅ…もう、むりかも…) 意識を手放す/そういう訳にも 霞: (だめだ…なにも、かんがえられない…) \C[18]【しっかり休むがいい、我が器よ…】 霞: …! だめ、こんなことじゃ…! *【憑依一回目逃走】 何度も何度も、体に圧し掛かる超自然的力に抗いながら、 霞が霧島に帰還できたのは、彼女の器としての素質ゆえか? 祓うのも一苦労な強大な存在のはずが、解放される時は一瞬のこと。 心身共にボロボロになった霞は、ようやく一息つくことができた―― 初美: 霞ちゃん、お疲れさまですー。 …今回はほんとに、災難でしたねー。 霞: ええ、ほんとに…力不足を実感したわ、 もっと修行して、自分一人で制御できるようにしないとね。 自分の身体が自分のものでなくなるという恐怖感――それは何より耐え難い。 今でこそ自分の意志で動いている――と思ってはいるが、 またいつそれが破られ、魂ごと握られるか霞自身にもわからないのだ。 そのことを何より意識させるのは、あの日の名残の―― まだ膨らみこそ目立たないが、帰還までの半月ほどの間にできた、それ。 戒めとするには余りに重すぎる。だが流して忘れることもできかねる。 その感情さえ、自分のものと信ずることができぬまま、 母の二つの心の狭間に、しかしそれは確実に存在感を増している… \C[18]【よもや己が子を見捨てまいな、母上――?】 *【憑依二回目分岐前】 霞: \C[18]あはっ\I[122] すごい、すごぉいっ…\I[122] こんなに元気ある人、初めて、ですっ…\I[122] 男: へへへ…体力だけはっ、自信あんだぜ…っ うおっ、くっ、うぅおっ…! ふー…やべぇ、全然収まんねぇわ… 今日も霞は、あのホテルの一室を借りて、また別の男を呼び込んでいる… 年齢も、顔も関係なしに、ただひたすらに、一日中セックスに耽る日々。 宿泊代金だけでいい、と霞が断っても、男たちは自ら全てを貢いでいく。 この極上の雌の生き様に、少しでも爪痕を残したいと願うように… 霞: \C[18]さて…そろそろ慣れてきたか? \C[0]ふざけないで…!人の体で勝手に…! 早く解放しなさい! 霊: \C[18]【ふん、つまらぬのう…  では、少し趣向を変えるとするか?】 その言葉とともに、霞の意識はゆっくりと掠れていく―― 痛む体とぼたぼた垂れる体液と共に、体が返ってくるまで何も感じない… それが、この霊に取りつかれてからの日常であった。 だが、今回ばかりは、事情が違うようで―― 霞: えっ、あっ――ぁ、あ、ぁ…なっ、なに、これ…っ!? やっ、ん…んんっ――! 思考が弾ける。ばちばちと、火花が飛び散る。 全身の毛穴が開いたような感覚と共に、汗が一気に爆ぜていく。 目の前に顔。見知らぬ男の顔。醜い。自分の欲しか考えていない顔。 だが、霞はその背中に無意識にしがみついていた。甘えるように。 男: おいおいなんだよ急にかわいい声出しちゃってさ…! へへ、やる気になっちまうな、そんな顔されると…! 男が伸ばす舌が、磁石のように霞の舌を引きつけ、絡み、舐る。 わけがわからない、正体不明の高揚感が、やがて薄れていき―― 二度目に意識が戻ってきた途端、また、脳内に電流が暴れだす。 そして一度目と同じように、下腹部では男の熱が脈を打つ。 霞: はっ、はっ、あ、ぁ――くっ、いや、なんなの、ぉっ…! \C[18]【一番よいところを、味あわせてやったというに  ふふ、好い声で鳴きおるな?かわいいことよ…】 絶頂の瞬間だけ、霞の意識が戻る。どうしようもない、体のざわめき。 途中までは妖艶に、しかしその一瞬だけ、幼ささえ残した反応を見せる霞に、 男はますますのめり込み、より激しく、より深く、彼女を穿つ。 そのたびに、霞の喉からは心ならざる嬌声が絞り出される―― 声を上げて抗おうとしても、全身を蕩かす快感の中では言葉がまとまらない。 玩具のように、体と心を弄ばれているのに、我慢も何もあったものではない。 \C[18]【ふふふ、いい加減体もこなれてきたであろ?ああ、もう少し、で…】 \C[0]脳内に響く言葉が何を意味するかもわからず、ただ時だけは過ぎて行き―― ★ 霊: \C[18]【ふぅむ…しかし見事に孕んだのう、母上?  現世に降りるには、肉体がなければいかんのでな…  これで、久々の生を楽しめるというものよ、くふふ…】 何人もの男との性生活を経て、霞の胎には誰ともしれない男との子ができた。 一年ほど体を借りる――半年前の言葉の意味が、重く心身にのしかかる。 耐えようとしても、またあの快楽の崖っぷちから突き落とされるだけ… 霞の心に、\C[18]受け入れていいかも…\C[0]そんな囁きが聞こえてくる… 霞: (このままじゃ、ここから逃げられなくなる…!) 霧島に帰る/… 霞: (そうよ…こんなところにずっといたって…) 霧島に帰りたい/… 霞: (皆に、会いたい…) \C[18]【ほう、まだ逃げるだけの気概があるとはのう…】 霞: (帰って…私は…何を…?) 霞: (ここにも…段々、慣れてきた、かも…) ベッドに腰を降ろす/やめておく 霞: (考えるのは、また明日にしようかな…) 部屋の明かりを消す/やめておく 霞: (この子を産んだら…私は、どうなるんだろう…?) 霞: はぁ… 本当に、これでいいのかしら? *【憑依二回目逃走】 霧島になんとか辿り着いた霞だったが、既に堕胎も不可能な状態で、 そこから二月もしないうちに、霞は女の子を産むことになってしまった。 大きな不安に駆られても、腹に手を当てれば気持ち悪いぐらいに心が和む… 初産といえど霞は、それが単なる母性からのものではないと気付いていた。 しかし、自分の内側から沸き起こる感情と、後から植え付けられた感情… その境界線は、既に彼女にとって限りなく薄く、不確かなもの。 我が子の吸い込まれそうな目に、彼女は抗うことなどできなかった。 乳を吸われるたびに、ぞくぞくと背筋が震えて悦びが体を支配する… 初美: …霞ちゃん、その…気を落とさないでくださいねー? 私たちも、精一杯、その子を… 霞: ありがとう、助かるわ。 \C[18]私にとってこの子は、何より大切な宝物ですもの。 \C[0]兄弟も、作ってあげたいなぁ… 父親もわからぬ子の兄弟を作る――ぞっとするような霞の発言に、 知己は皆、彼女の正気を疑うのだが――満面に湛えた幸福の笑みと、 不気味な輝きを放つ、赤子の瞳の前には、何も言えなくなってしまう。 人ならざる何かが、既にそこに降りてきてしまっているかのよう… やがて霞は遠からず、また誰ともしれない男との間に子を設け―― 妖しい魅力を持った子を、この霧島で育てていくのだろう。 単なる想像でしかないのに、それは奇妙な確信を持っている… この霧島が変わり果ててしまう日も、すぐそこまで迫っている、と… *【憑依三回目】 すっかりここでの日常にも慣れてしまった霞… 絶頂の瞬間だけでなく、自ら腰を振り、跳ね、快楽を貪るようになり、 ぱんぱんになった臨月胎と、子供の頭ぐらいある乳房を暴れ回らせて、 名も知らない男との交尾を、今日もひたすら繰り返している… 霞: うふふ…もっと、もっと激しく… 突いて、くだっ、さいね…\I[122] あかちゃんがっ、とびでる、っくらい…っ\I[122] 最初は恐る恐るの抽挿しかできない男たちも、すぐに霞の勢いに呑まれ、 いつ産まれてもおかしくないその胎を、ただひたすらに責め立てる。 彼女の妊娠が明確になった当初は好事家しか訪れなかったものが、 本来妊婦に興奮しなかった男たちも、自然と誘い込まれるようになった。 次は自分の子を孕ませたい、いいや妻に、愛人に、恋人になって欲しい… 身重の霞を散々に抉り、精で最奥まで白一杯に染めながら、男は皆そう言う。 そのたび霞は、何より蠱惑的に笑うだけで、答えを返したりはしない。 また男たちの興奮は高まって、堕とそうとするも――誰にもできなかった。 霞: っく…うっ…うまれ、るぅ…っ…! っ…!は、ふぅうう…っ! そんな生活は――当然のごとく、出産するその寸前まで続き、 先ほどまで自分を激しく犯していた――無論、名前も知らない男の前で、 霞は大きく股を開き、すっかり肉厚になった大陰唇の狭間、膣道を広げ、 大きな息の塊を吐きながら、精液塗れの産道に赤子を通す。 男は何度も射精をしたその肉穴が、艶めかしく、グロテスクに蠢く様に、 一層性器を固く反り立たせ、手元のカメラでお産の様子を撮り続けている。 出産に立ち会えたら、撮るのも見るのも自由――という約束をしたからだ。 自分の番でそうなるよう、全身全霊でお迎え棒をした甲斐がある―― そんな二人のすぐ横で、青白い超自然の火の玉が、ぼおっと輝いている。 霊感のない男には見えもしないが、それは、霞に取りついていた存在だ。 今、霞の身体は彼女自身の制御下にあるが、お産でそれどころではない。 ようやく全身が出きった我が子を呆然と見つめる霞の視界の下端で―― 霊: \C[18]【よぉしよし、待ちに待った我が肉体よ…  さっそく、もらい受けるとするかのぅ…】 赤子の身体が一瞬、火の玉と同じ青い光に包まれたかと思うと、 まだ見えないはずの目を開き、霞ににたりと笑いかけ――産声をあげた。 臍の緒を手繰るように、霞は目の前の赤ん坊を抱きかかえる… \C[18]【では、“次”も――嫌とは言わぬな?】 ――それから、さらに時間が経って。霞は未だに、そこに泊まっていた。 彼女がいる、ということ自体が、ホテルの評判を広めるまでになり、 霞を抱きに来る男は引きも切らず、彼女にあらゆるものを捧げて枯れていく。 例の“何か”もまだまだ、霞を解放するつもりもないようだ。 男: うっ、くっ、うぅ…二人、産んでる、ってのに…! なんでこんな、やばっ、ぁ…う、ぁあ… 霞: あれぇ〜?もう、限界…? 三人目、産ませるまでっ、がんばるんじゃ、ないんですかぁ\I[122] ふたりとも、だらしないっ、ですねぇ…\I[122] こなれきった膣は男を容易く虜にし、精魂果てるまで搾り尽くす。 運良く彼女を妊娠させることができた男たちも、とっくに廃人だ。 自分の体に、何十、何百もの男が魂ごと吸い込まれていく快感… 霞は今日も、男を誘い、喰らい、孕んで、産む。他でもない、自らの意志で。 霊: \C[18]【ここまでの素質があるとは、思わぬ収穫じゃわい…  これからもどんどん産んで、我が器を増やしてくれよ?】 頭の中に響く声に、霞はにっこりと笑い返す。激しく腰を打ち付けながら。 その微笑みに、男たちは本能的な畏怖を覚えつつも、惹きつけられてしまう。 羽虫が火に飛び込むように、霞の体を仰ぎ見て―― また男の股間から力なく精液がこぼれ、そのまま彼は気を失った… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【孕み袋開幕】 老婆: …今日、呼ばれた理由はわかっておろうな。 霞: はい…先日の、修行の際の事故のこと、ですよね… 重苦しい空気が、二人きりの和室の中に広がる。 霞は、神境を出て外部で経験と見分を高める修行の最中であったが、 霊を降ろすことに失敗し、守るべき市井の民に、怪我を負わせてしまった。 幸い、大事になる前に事態を収束させることはできたのだが―― 老婆: お前には、荷の勝つ役目であったかの… …だが神境に住むものとして、何の役割も持たぬというわけにもいかぬ。 別の仕事を、お前に持たせねばならぬが…どうする? せっかく六女仙としての役目を得て、誉ある任務に就いたというのに、 このまま汚名を晒せば、他の皆にも申し訳が立たない―― 責任感の強さから、霞は老婆の誘いに、一も二もなく頷いた。 退魔の仕事以外にも、自分にできることは、きっとあるはず… 老婆: …二言は、ないな。 ……そう、か… では、この目隠しをして、案内役の手を握れ。止まった先で、説明がある… ――ひっそりと冷たい空気が、頬を撫でる。 目隠し布の向こうにちらちら見えていた外の光も、すっかり見えなくなって。 真っ暗な廊下をずうっと、手を引かれながら霞は歩いていく。 どこまで歩いたのか、まるで見当もつかないぐらい、長い長い道のり―― 霧島にこんな、人気のないところがあったのだろうか。 六女仙としての経験はもっとも浅い霞であったが――こんな感覚は初めてだ。 思わず不安に駆られるも、先導者は無言で、霞の手を強く握っている… その皺だらけの指に、霞の心にうっすらと、後悔の二文字が浮かび始めた―― *【孕み袋一回目分岐前】 やがて霞たちの足が止まった先――埃臭い、澱んだ空気の漂う部屋で、 霞は目隠しをしたまま、着衣を全て脱ぐように、先導者から指示を受けた。 なぜ見てはいけないのか――訝しみつつも一枚一枚脱いでいく霞は、 ふと…周囲に、数人分の息遣いがあることに気が付いた。 霞: (えっ…この人たちに、裸を、見せろってことなの…?) だが同意した手前、今更やめるというわけにもいかない。 肌が火照る感覚を呑み込みながら、一糸まとわぬ姿になると、 そこでようやく、霞は目隠しを取ることを許された。 急に入り込む光に、目がちかちかとする。一呼吸ののち―― 霞: ひっ…! 座敷の中には、立派な体格の男が数人控えていた。 いずれも霞と同じく裸のまま。髪の毛を一本残らず剃り上げて、 奇妙な紋様の掛かれた白い仮面で、表情ごと顔を隠してしまっている。 そして、全員の股間に――太く、たくましい男の象徴そのものが。 恐怖と疑念に混乱する霞――背後の壁に向き合って彼らから視線を切るも、 仮面越しのぎらぎらした視線はより一層、霞の体を貫くようである。 するとそのうちの二人が素早く霞の両脇に駆け寄り、腕を捕まえてしまうと、 残りの二人が、何やら重いものを運んでいる音が聞こえてくる… 霞: いや、なにするんですか、放して…! ちょっと、やめて…! ――すぐ後ろに、とても、ぐらぐらと灼けた“何か”がある。 汗の粒がぶわっと、恐ろしい想像に耐えるかのように背中を濡らす。 両腕は男の力でがっちり抑え込まれ、逃げる余地など一切ない。 ああ、つまり…これから、自分は―― 霞: ――っ! ぐぁ、あぁ――っ、ぎぃ…っ――! いた、あ、ぁあつい…っ! 肉の焼ける音。血の弾ける音。熱した鉄に肉の絡まる臭い。悲鳴。 ここに連れて来られるまでの道のりよりも永いとすら思える一瞬。 焼き鏝が、霞の白い肌を容赦なく焦がし、後戻りできない印を付ける。 彼らの仮面に刻まれた紋様と同じ、大きな傷跡を… 霞: うっく…ひっく… ひどい…なんで、こんな… 顔をべとべとにして泣きじゃくる霞の背中と腹部には、くっきりと焼き印が。 道具を片付け終えた男たちは、そんな霞を気遣う素振りを見せることなく、 彼女を布団に押し倒し、未通の穴を容赦なく抉り始める… 役目を果たせぬものたちが得る、最後の役目――嗣子作りを成すために。 霞: っ…うぅ…っ! やだ、いやだぁ…っ! たすけて、だれかぁ…だれか…! 助けを求める言葉は、冷たく土壁の下に跳ねるばかりで… 処女を失ったばかりの霞はそのまま、部屋にいる全員に抱かれ続けた。 それが、“畑”となった女の役目で、運命であり―― 同時に、“種”の役目を与えられた彼らの、存在意義なのだから… ★ 一段落して霞が体を起こした時には、男たちは無言でまた佇んでいた。 彼らにとって霞は自分たちの役目を果たすための道具に過ぎず、 彼女がどれだけ女性として魅力的な体であっても意味を持たないのだ。 霞が役目に従う無抵抗な傀儡となるまで、何度でも容赦なく―― 目付: いかがされましたか? 役目のことを訊く/ここから出たい 目付: 次のお役目は、直に始まるでしょう… 必要なものがあれば、私にお申し付けください。 次の役目まで眠りたい/話すのをやめる 目付: では、“種”の皆さまにも… しばし休憩を取るよう伝えましょうか。 お願いする/もう少し起きている 目付: よき夢を… 目付: 貴女がここを“石戸霞”のまま出ることは許されません。 それが決まりですから。 それでも出たい/話すのをやめる 目付: “種”の印のある体で、どうなさるおつもりですか? 悪いことは申しません、受け入れなさい… 耐えられない/諦める 目付: ――そうですか… 全てを、捨てることになっても… わかりました、話だけはしてみましょう。 目付: 貴女の役目が滞りなく進みますよう。 男は無言で、じっと霞に顔を向けている… *【孕み袋一回目逃走】 老婆: では、小蒔、初美、巴… お前たちに、修行の内容について―― 霞が指示を受け取ったあの和室。 本家の跡取りと二人の女仙が、外部での修行の説明を受けていた。 三人に相対した老婆が、手元の指示書を読み上げるより先に、 小蒔がおずおずと様子を窺うようにして、手をあげる。 小蒔: あの、一つよろしいでしょうか…? 老婆: 何だ? 小蒔: 霞ちゃん――いえ、石戸霞の修行は、どうなったのでしょうか? 彼女が出発した、と聞いてから…もう数か月になります。 それを飛ばして、私の番、というのは一体… 老婆: 石戸霞――はて、霧島にそんな者はおらんな。 誰あらぬお前のことじゃ、人よりも自分のことを気にせい。 …よいか、読み上げるぞ―― 老婆の態度に、三人は釈然としないものを感じつつも、追及できない。 それ以上触れるな、という強い拒絶と口封じの意図を見たからだ。 後に霞の従妹の明星にも尋ねたものの、詳細は何も知らぬようで―― “五女仙”の誰も、霞と再会することはできなかった… *【孕み袋二回目分岐前】 霞: うぶっ、む、ぐぶ…! ぶっ、あ、んんっ…! 今は何月何日だろう。昼も夜もない、この時間はいつから始まったのだろう。 時折、傷がずぐりと呻いて、それでようやく、生の実感がある。 種付け目的の行為とはいえ、定期的に、膣以外での性交為も行われる。 無意味な射精。子を成さない、霞を辱めるためだけの時間。 大きな掌ががっちりと霞の後頭部を捉え、喉の奥にどろりとしたものを流す。 食道を通って、胃の中に雄臭い白濁がぼどり、ぼどりと垂れていく。 泡立った精液の臭いが、鼻腔を逆流して脳をゆっくりと汚す感覚… 最近は食事の時間にも、この臭いが残っているような気がする。 霞: げほっ、げほっ… うぇ、おぇえ…! 男たちは、霞が話しかけても返事はおろか、反応すらまともに返さない。 目付け役が仲介してくれなければ、霞は一人では何もできないのだ。 自分の体の、雌としての部分だけしか必要とされず―― 既に自分は、人間ではないのではないか?そんな疑問を拭いきれない。 ほんの少しの休息と、体調を調べるためのメンテナンスの時間… それ以外は、ずっと、男たちに蹂躙され続ける毎日。嫌になるほど。 心を閉じて、何も考えずにいられるなら――と考えたのも一度ではないが、 友人や家族の顔を思い出すたびに、心が張り裂けるような思いがする。 霞: どうして…私が、こんなこと… うぅ… 精液臭い恨み言をぶつぶつと繰り返しても、誰もそれを聞くものはいない。 変わり映えのしない時間がずっと続く…いつまで?終わりはあるのだろうか? それでも、本当に一切の変化なく続くのなら――慣れることもできたのだろう。 しかし霞は健康な若い“畑”であり――“種”もまた、優秀なのであった。 霞: うぅ、あ、あぁ… おなか、いたいんです…やめて… せめて、ゆっくり、して… ――膨らみが目立ち始めても、霞への“種蒔き”は休まる気配もなく。 仮面越しの彼らの視線は、より激しく、ぎらついているように感じられた。 日毎に重くなっていく体、どうしようもないほどの焦燥感と不安… 自分がこれからどうなるのか――明確な答えがあるのに、直視したくない。 突き殺すほどの激しさではなく、かといって労りがあるわけでもなく。 セックスの快楽に溺れきるには、不純物が多すぎてそれも不可能だ。 内臓ごと、全てを吐き出せてしまえるのなら――とも。 自死など許されないだろう。産ませるために飼われているのだから。 早く終わってほしい――と、処女を奪われた直後は思っていたが、 どうせ一人が打ち切っても、休憩していた別の男に替わるだけである。 それに、相手の腰の動きは、霞の意志では制御などできない… ああ、本当に――ここにいるのは、“石戸霞”なのだろうか? ★ よろよろと、重く、軋む体を無理やり引き起こして、立つ。 ずっと続く吐き気は、疲労と心労のためだけでないのは明確だ。 男たちは相変わらず、無言で霞に視線だけを向けている。 腹の子が自分たちの誰の種で成ったのかにも、一片の興味も示さず… 目付: いよいよ、でございますね。 産むのが不安だ/ここから…出たい… 目付: 母になるとは、そういうものです… お心安らかになさいませ。 この先どうなるか訊ねる/話すのをやめる 目付: 嗣子をお産みになったのち…“次”が始まります… 貴女が、“畑”の役目を果たせるうちは、ずっと… 運命として受け入れる/怖い… 目付: …罪深いことよ。 目付: …出るわけには参りません。 決まりですから。 どうしても…/話すのをやめる 目付: 一度嗣子を生せば、確かに役目を果たしたことにはなりますが… ここから出る時は、“石戸霞”の死ぬ時です… それでもいい/よくわからない 目付: ――貴女のお気持ち、わかりますよ… 私も、かつて… 目付: 大切なお体、どうかご自愛を。 *【孕み袋二回目逃走】 霞が消息を絶って数年――かつての友は皆、彼女との記憶に蓋をした。 上役が皆、霞のことを初めからいなかったように扱うだけでなく、 かつて彼女がいた六女仙の末席が、空席のものと公式に決まったからだ。 いつしか彼女らも成人を迎え、胸にだけ秘めた約束が風化し始めた頃―― 老婆: さて、“六女仙”の最後の一席について―― 見ての通り、こやつをそこに据えようと思う。 年はまだまだ幼いが、色々と手伝ってやってくれ… 紹介されたのは、十にも満たない年齢の少女。 女仙の座に就く年齢として、前例がない、とうわけではもちろんない。 だがなぜ、数年続いた空席を急に埋めると言い出したのか―― それぞれに首を傾げつつも、わかりました、と小蒔が答えた途端。 小蒔: 霞…ちゃん…? 少女の瞳に、髪に、振る舞いに…かつての友人の姿が重なって見えた。 霞、という言葉に、老婆はほんの一瞬、苦虫を噛み潰した顔をしたものの、 すぐに何も聞かなかったような表情へと切り替え、少女に挨拶を促した。 名前は流石に、石戸姓でこそなかったが―― 神境の誰も、石戸霞の名を口に出さなくなってからもう何年も経った。 一人だけ年の離れた新入りも、女仙の名に恥じぬよう修練を重ねている。 そして神境のどこかで――長く、艶やかな黒髪を束ねた女が、 新たな“畑”の世話役に、任命されたのだった… *【孕み袋三回目】 霞: はぁ、はぁ…うぅ、いたぁ…っ! くっ…!さけ、るうぅ…っ――! “畑”に選ばれた女の、当然の仕事として――霞は、苦しんでいた。 ずっしり重くなった胎の中から、血を引いた我が子が産まれ出る瞬間。 だがそれは祝福に彩られたものでは、決してなかった。 霞の産みの苦しみを分かつ者も、ここには誰もいないのだ。 けれど、人一人産むということの大変さは、地上も地下も変わらない。 目付が産婆代わりにお産を手伝っている間中ずっと、 霞に種を蒔いた男たちは無言で、環視しているに過ぎなかった。 きちんと赤子を孕み、産むことがお前の役目だろう、と冷たい視線で―― 霞: あっ、あ…あぁあ――っ! やだ、でちゃう、でちゃう…っ… うみたくない、うみたくないよぉ… いくら泣いても、胎の子がどうにかなるというわけでもなく。 若く健康な霞の身体は、母親としての仕事を勝手に遂行してしまう。 ぐったりと項垂れた霞の視線を辿った先で、今まさに産声を上げた赤ん坊が、 臍の緒をちょきりと、鋏で裁ち切られているのが見えた―― 目付の言った通り、第一子のお産を終えてすぐ、体調が戻り次第に、 “次”の種が、霞の膣内に向けて、無感動に蒔かれるだけの日々が戻った。 またすぐに、子ができてしまうのだろう――諦念が心を塗りつぶす。 自分は無力な孕み袋に過ぎないのだと突き付けられて、麻痺していく… 霞: … あ…また…でて… 二度目の妊娠。出産。三度目。四度目。繰り返し。ただ産むだけの存在。 産んだ子を育てさせて貰えるわけでもない、無為な時間が延々と。 いつしか、霞は産んだ子の数も、ここに来てからの日数も数えなくなった。 意味のないものを覚えていても、心がどんどんと擦り減っていくだけ… 体は何度もの出産を経て、生娘だった頃からは変わり果てているのに。 この刺激のない地下での生活は、自分を大人にさせてはくれない。 自分の産んだ子は、大事に大事に産着にくるまれ連れていかれるのに。 彼らがどんな名をもらったのか、何一つ知ることはできない。 啜るべき相手のいない母乳が、乳房の上を自然と垂れて、落ちていく。 とっくに忘れた涙のように、きらきらと輝きながら、無力に消える。 まだ確信はないが、今、自分の胎の中には――新しいのが、できている。 そんなことばかり、覚えてしまうのだ。哀れなことに。 天井をぼうっと見つめる霞の耳に、牢の扉が開く音が聞こえた。 そろそろ休憩か、食事だろうか。歩く音で、大体はわかってしまう。 しかしその想像に反して、足音は二人分。聞きなれない、軽い足音が一つ。 その足音は、べとべとになった霞の体を見下ろすように―― 霞: 誰…? 子供…? 足音の主は、仮面を付けた少年。一糸纏わぬ姿だが、髪は剃っていない。 こんなところに来るということは、彼もまた“種”なのだろう。 やがては他の“種”同様、無個性なただの雄として使われるだけの―― 自分の境遇をよそに、少年の行く末にきりきりと霞は心が痛む。 ――すると少年は、被っていた仮面を外し、じぃっと霞の顔を覗き込んだ。 本来“種”は仮面を外してはならず、“畑”に入れ込んでもいけないのに… 疲れ切った体では意図がわからず、ただ少年の顔を見返す霞だったが―― その瞳に、なにやら筆舌に尽くしがたい感情が沸き上がってきた。 霞: あなた…もしかして… 私…の…? 否定してくれ、という願いの籠った、震えた問。 少年は無言で頷き、母の体にぎらぎらとした視線を投げかける… 母親が“畑”に墜ちたから――その子も、まともな役目は得られない。 全身の血液が一気に凍り付く感覚。子供たちへの、尽きせぬ罪悪感が湧く。 “種”としての仕事始めに、自分の出てきた“畑”にて筆を降ろす… この少年の他に産んだ子たちも、きっとろくでもない運命を辿るのだ。 喉の奥から、言葉にならない長い長い悲鳴がひたすらに絞り出されていく。 その時ばかりは“種”も目付も、居た堪れない、と顔を逸らすのだった… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【牛開幕】 牧場主: いやはや、見学に来られるとは熱意ある学生さんですな。 ま、あまり変わったところがあるわけでもありませんが… ゆっくりご覧になっていってください。 霞: 無理を聞いていただき、ありがとうございます。 こちらの牧場は、最近急成長されているとか… 是非、しっかりと勉強させていただきますね。 霞は男性に連れられて、特に何の変哲もない厩舎を見て回っていた… 指示書の住所を調べても、大した特徴のあるような場所ではなく、 周辺住人への聞き込みも、これといって成果があるわけでもなし。 ならば、と見学という体で、強引に中に潜入したのであった。 牧草と獣に、たまに混じる薬液の臭い――確かに、特筆するところはない。 周囲に他の牧場はなく、何度住所を確認してもやはり、ここしかない。 牛やら羊やらが呑気に草を食んでいるのを、横目に歩いていると―― 壁の継ぎ目に、うっすらと隠し扉のようなものがあるのを見かけた。 さすがにこの牧場主の目の前で調べるのは問題だろう、と一旦無視をして、 彼が適当にふかす自慢話や家畜の名前を、メモを取るふりをして受け流す。 ――その夜、私服からスーツに着替え、件の場所へと忍び込むと、 厳重に封をされた何枚もの隔壁が連なる、怪しげな通路に辿り着いた… 霞: 上の牧場はほとんどダミーってことね… …あら、この部屋、出口が…? 袋小路の部屋に入り込むなり、周囲は警告音とライトで騒がしくなり、 けたたましいアラートと扉の閉まる重い音に隠れて、何かが噴出する音。 それが侵入者を捕えるための罠だと霞が気づいた頃には既に体は動かず、 床にばたんと倒れ込む自分の体を、どこか他人事のように感じていた―― *【牛一回目分岐前】 霞: う…ここ…どこ…? …それに、鎖…! なに、この格好は…? 瞼に当たる無機質な光に、思わず霞は意識を取り戻す。 硬い壁と天井、金属製の床と分厚いガラスに遮られた、四角い隔離室。 着ていた衣装は脱がされて、代わりに斑点の浮いた白い長手袋と長靴下、 髪飾りと尻尾のアクセサリーだけの格好で、腕を鎖に拘束されていた。 牧場主: どこ、とはご挨拶だねお嬢さん。 君がこんな夜遅くに忍び込もうとした、 この牧場の最奥の、特別実験施設だよ。 隅のスピーカーから、日中、霞を案内していた男の声が響く。 霞が何の目的で探りにきたかなど、最初から見抜かれていたのだ。 途中まではスムーズに潜入できたのも、捕縛用の部屋に誘導するため。 まんまと術中にはまった迂闊さを呪うものの、手鎖は少しも緩まない。 ガチャガチャと固い音が色気のない内装に無為に響くばかりで、 このまま見世物になるのだろうか――と霞が考えたその時、 廊下の向こう側から、ドスン、ドスンと重い足音が向かってきた。 それは人間の体重や歩幅で出せるような音とは、明らかに違うもの。 牧場主: さて…君にルームメイトを紹介しよう。 我が社が作り出した次世代型労働力…もとい家畜だ。 人間の遺伝子を組み込み、再構築した新しい種族だよ。 成人男性の倍はあろうかという巨躯に、筋骨隆々としたその姿。 鋭い角と鼻輪がぎらりとライトに光り、なお威圧感を増す。 恐怖を感じて身をよじるも、拘束された身では逃げることもできない。 牛人が腕を掴むと、鎖は突然パキリと外れ、霞は宙に持ち上げられた。 牧場主: “それ”を創ったはいいがつがいになる相手がなかなかできなくてね。 人間との交配が可能か、実験したいと思っていたのだよ。 なに、君も捕まればどうなるかぐらい、わかって来たのだろう? 霞: ちょっと、こんなのって…! 今すぐ放して、ここから帰して…! 牧場主: では博士、記録を頼むよ――私は寝る。 君も、これから長丁場になるから――体には気をつけたまえよ? その言葉を合図に、ずん、と熱く硬いものが霞の膣内をぶち抜く。 体に見合った太さと長さで、強引に子宮口までを押し潰す勢いだ。 自分自身の体重がもろに股間に圧し掛かって上下左右に肉を割られ、 霞は細かく断続的な悲鳴を上げ、なすがままに揺さぶられていた。 霞: っぐ…うっ、う…! あが、こわ、れる…! そんな苦悶の声も一字一句余さずに記録として残されて、 どれだけのダメージが交尾相手に入るのか、耐久力はいかばかりか、 単なるデータとして、霞の受ける苦痛と屈辱は数値化されてしまう。 その裏にどれだけの、言語化不可能な感情があるかなど関係ない。 霞を軽々と担ぎながら犯す牛人は、彼女の揺れる大きな胸に興奮を高め、 視線は二人の結合部と、桜色の突端の軌跡にばかり向いている。 ストロークがより深く、より強くなり始めた頃には、 霞自身、宙に投げ出されないように必死で相手にしがみついていた。 研究者: 一度目の射精を確認――射精までの交尾時間は… 受精及び着床を検査するまで、インターバルを… 実験体二十七号に鎮静剤を投与―― あくまで彼らの声は事務的で、霞の容態など顧みてはいない。 交尾相手の牛人と同じく、自分から転がり込んできた実験動物―― そんな都合のいいものとして、彼女はこれから扱われるのだ。 口封じも兼ねた、一石二鳥の方法… ★ 牛人は興味深げにじっと霞を眺めている。 自分のパートナーとなる雌への気遣いのつもりだろうか? 霞の言葉や姿勢にわずかに表情で反応を示しており、 軽いコミュニケーション程度なら取れそうだが… 霞: (あまり期待はできないけど…) 逃げる手助けを頼む/馬鹿らしい… 牛人は軽く頷き、耳を霞の方に寄せるそぶりを見せた。 それに対して霞は… もう一度頼む/馬鹿らしい… 霞: 他に頼れる相手もいないし…よろしく、ね? 霞: (人間に近いといったって…) 手枷はカチャカチャと固い音を立てている… 人間の力で外せるような作りではなさそうだ。 霞: (しばらく隙を伺うべきかしら…?) 少し休憩する/そういう訳にも… 霞: (逃げられそうにもないしね…) 目を閉じる/そういう訳にも… 霞: (今は…体力、を…) 霞: (もう少し考えてからにしましょう) *【牛一回目逃走】 ここから脱出したい――そう牛人の耳にささやくと、 牛人はアイコンタクトで、ちらりと霞の目にサインを送る。 彼が手枷をがちゃがちゃと弄ぶふりをして、強引にねじると、 見かけ上はほとんど変わらずに、手首を抜くだけの余裕ができた。 それを悟られないよう、霞はしばし、チャンスを探る。 二人がそれぞれに離され、個別の検査を受けるタイミング―― 自動ドアのロックが開いた瞬間に、二人は一斉に駆け出した。 驚いた様子の職員を横目に、二人は研究所を走り抜けて、 最後の自動ドアを牛人が強引に開けた隙間から、霞は出られたものの、 彼の体躯では、とてもその穴から出ることはできない。 手を伸ばす霞に、牛人は複雑な表情を浮かべながら手を振って見送る… その背後から、何人もの銃を持った警備員が走り寄るのが見えた―― 医者: お体には特に異常はなさそうですね、もうすぐ退院できるでしょう。 …そう言えば聞きました?違法な実験をしていた研究所の話。 摘発を受けて、解体されることになったとか… 霞が身を寄せた病院の主は信頼できる相手だったようで、 追手がかかることも、身柄を引き渡されることもなく休むことができた。 医者の見せた新聞には、あの牧場主が情けない顔で逮捕される写真が―― だが、あの牛の顔をしたもののことなどは、どこにも書いてはいない。 人間との交配の可能な新型の家畜など、闇に葬られるべき――と、 霞自身の倫理観に照らしてみても、それが妥当であるとは思う。 だが、彼がその後どのような境遇を辿ったか――どう想像しても、暗い。 あの時見せた知性は、確かに人のそれで――きっと、心も… *【牛二回目分岐前】 交配実験の成果はてきめんで、霞の胎にはあっさりと牛人の種がついた。 モニター越しに、自分の子宮内写真を見せられるのも恐怖だったが、 自分がこうして、人ならざるものの母親になって――させられて、 体だけでなく心も、受け入れ始めているのがなおも恐ろしい。 霞の妊娠が明らかになると、さすがに牛人も交尾を避けようとしたが、 首輪を含めた、全身に付けられた電極からの放電により逆らえず、 妊娠中の性交時の影響を調べる――という名目によって、 霞の腹部が安定期を迎えてからも、交尾は半ば強制的に行われた。 霞: ひっ、ぐ、ぎぃっ…! つぶ、つぶれ、る…! あかちゃん、つぶれるぅ…っ! 研究員: その心配はありません、実験体二十八号。 あなたの体力および子宮壁の強度、二十七号との相性… いずれを取っても、母胎と胎児が損傷する恐れはありません―― 霞という一個人がどう苦しもうが喚こうが、データを覆せない限り、 彼女に掛けられる負担が和らぐことも、休憩が与えられることもない。 相手方の牛人は、若干の情けを持って霞に挿入しているものの、 元の太さと長さが規格外である以上、苦痛の最低値は依然高い。 霞: かっ――は――っ… ひゅー…っぐ、げほ、おえぇ…! あ、おなか…だめ…! 交尾を終えて、腹を押さえながら息も絶え絶えになっている霞の姿に、 陣痛が始まったのだと察した研究員は、さらなる指令を飛ばす―― 出産直前まで交尾をし、そのまま出産に繋げた場合のデータ… いわゆるお迎え棒の一部始終を記録に残す、というのだ。 霞: だめ…ほんとに…だめ…! まって、あなたの、あかちゃんなのに…! 羊水で股座をべしゃべしゃに濡らした霞を、牛人はまた軽々と持ち上げ、 強制的に勃起させられた太い太い槍を、ゆっくり膣内にねじ込んでいく。 肺から空気が絞り出され潰れた蛙のような悲鳴を上げる霞は、 赤ん坊と肉棒に、前後から産道をぐちゃぐちゃにされる。 太腿と尻をがっしり掴む牛人の手に、自分自身の掌を重ねるようにして、 真っ白になった視界に色を取り戻すため、夢中で酸素を肺に取り込む。 いきむための呼吸と、命を保つための呼吸――それらは自然と重なり、 噛み締めた歯列の横から、ぼたぼたと唾液がこぼれては床に散った。 霞: ひっ…ふぅう…っ! ひふ、ぅうう…! あっ、あ…! どちゃり、と血の塊が転がるような音。すぐにそれは産声となる。 父親譲りの角、母親譲りの黒髪、下半身は牛の革のごとく黒くてかり。 繋がった臍の緒、うっすら黄色がかった目から、それは明らかに霞の子。 人間のようでありながら、確実に、人ならざる一線を越えたもの―― 研究員: お疲れ様です、二十八号…診断の通り、女の子ですね。 医療班を向かわせますが…回復次第“次”に取り掛かってください。 なにせ、まだまだサンプルが足りませんからね―― ぶつりと途切れた意識には、その先の言葉は届かなかったが… 宣告された通り、第一子を産んだあとの体であっても種付けは終わらず、 またすぐに霞の胎内には、二人目、三人目と宿ることとなる… 彼女がそれだけ母胎として優秀だという、不名誉の表れ―― ★ 三人目を妊娠した頃、霞と牛人には転機が訪れた。 人間とのハーフを親が育てた場合と、他者が保育した場合の対照実験。 そのために、霞たちを一時的に離して、休息期間を設けるのだという。 度重なる妊娠と出産で体力を削られていたが、霞の眼はまだ―― 霞: (これが…逃げる最後のチャンス、かも…) 牛人は心配そうにじっと霞を眺めている。 身重のつがいへの気遣いがそこには滲んでいた。 霞の言葉や姿勢にある程度表情で反応を示しており、 意志の疎通程度なら難しくはないが… 霞: (あなたも、逃げたい…?) 逃げる手助けを頼む/どうやって…? 牛人は軽く頷き、耳を霞の方に寄せるそぶりを見せた。 それに対して霞は… もう一度頼む/どうやって…? 霞: ごめんね…でも、あなたの他にいないの… 霞: (この体じゃどうやっても…) 霞が所在なげに手枷を触っていると、 スピーカーからは急かすような声が聞こえてきた… 研究員: 何をしているのですか二十八号、 あなたがこちらの飼育室に残るのですか? そうする/移動するふりをする 研究員: あなたの娘をどこで育てるか、という話ですよ。 無責任なことをしていないで決断しなさい。 ここで…/移動するふりをする 霞: はい…あの子を…二十九号を…呼んでください… 研究員: 早く決めなさい、時間はそんなにありませんよ。 *【牛二回目逃走】 移送の際に、霞が傍らの牛人に向けてちらりと視線を投げると―― 霞を抱え込んだまま一気に走り出した牛人は、研究員用の通路に飛び込み、 警備の比較的緩やかな区画を通って、地上へと駆け上がっていく。 実験体を纏めて失う、と慌てる彼らを尻目に、二人は脱出に成功した。 幸い発信機の類を付けられておらず、山に逃げ込んでしまえば追跡は困難。 彼らの計画は、成功例の雄と母胎を失って大きく停滞することとなった。 そのまま二人が身を隠したのは数多ある洞穴のうちの一つ… 日光と湧き水のあるその奥に枯れ草を敷いて、霞はそこで一夜を明かした。 霞: なんとか落ち着けたね…ありがとう。 …そうだ、まだ私、あなたの名前も知らないんだ… ――あいたた、あっ、これ――まずい、うまれっ…! 元々予定日が近かったために、逃走の際のストレスで産気づいてしまって、 あたふたする牛人の前で、霞は自然分娩で第三子を産むこととなった。 経産婦とはいえ、一切のアシストもなく子を産むのはこれが初めて―― 狭い洞窟の中を巨体がうろうろしながら、産湯代わりの水を汲む。 霞: はー…はー…はー… やっと、うまれ、た… 三人目、だね…\I[122] 牛人は伏し拝むように我が子をその大きな掌のなかにすっぽり包み、 血と涙でべっとり汚れた妻に向かって、拙い言葉で感謝を言った。 人と牛の端境にありながら、その姿は極めて純粋なつがいの在り方―― 霞の胸に――残してきてしまった娘二人への、罪悪感が沸き起こる。 霞: ねぇ、あなた…あの子たち…どうしてるかな。 あの施設で酷いことされてたら…私… 赤ん坊を片手に抱きながら、牛人は霞の頭を優しく撫でた。 君との子供は、きっと取り返すから――そんな決意を秘めながら。 それから数年ののち、ある牧場が角のある怪物に襲われて壊滅し―― 何かを盗み出していく姿が、新たな都市伝説として残ったという。 *【牛三回目】 脱出を諦めてしまった霞――いやもうその名前に意味はあるまい。 彼女は飼育下でひたすら、つがいとなった牛人と交わり、 彼の子を孕まされ、産まされ、また孕み…代り映えのない生活が続く。 心が擦り減るのと反比例して、雌としての体はどんどん仕上がっていく。 二十八号: もぉ…もぉ… 牛のような格好で、牛のような亜人とまぐわい、牛のような子をひり出す。 彼女が人間であったということはもはや何の価値も持たず、 実験体としての番号でしか呼ばれない日々の中で――壊れてしまった。 だが母胎としての優秀さは、いささかも陰ることはない。 研究者: ほら三十六号、中が見えますか? あれがあなたの母親の二十八号…隣は父親の二十七号ですね。 目の前のは妹の…ええっと、三十八号、でしたかな。 三十六号: あれは わたしの おや? はじめて みました。 産んだ子は取り上げられ――場合によっては乳を与えることもできるが、 新世代家畜の生産用の備品としてしか見られていない彼女に、休息はない。 つがいである二十七号も、不要に情をかけないように、と、 性欲のリミッターを弄られ、繁殖のことしか考えられなくされてしまった。 二十八号: あぅ…あ… う…もぉ… もぉお… 何度も出産を繰り返したせいで、お産は実にスムーズに進む…が、 赤子を含めた子供たちの前で産むことに、何の抵抗もなくなっている。 孕めば産むのが当然。それが家畜であり、自分の仕事だから―― ぼろぼろになった心には、それ以上入れるスぺースは残っていないのだ。 商人: 博士、先日購入した三十三号ですが…実にいいですね。 おや…ちょうど産まれたところですか、あれも元気そうだ。 またうちに卸してください、お願いしますよ。 三十六号: わたくし 三十六号も よろしくおねがいします。 はは 二十八号のように たくさんうみます。 商人: ほほう…これはまた賢い、期待できますね… 霞の産んだ子――さらにその子孫、また別の女性との交配でできた子… それが家畜業界に膾炙するまで、ひたすら霞は子を産まされ続け―― すっかり擦り切れて、独房の中で最後に産んだ赤ん坊に乳をやりながら、 張り付いた笑顔を、じっと虚空に浮かべていた… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【犬開幕】 想像に反して、指示書に記されていた異様の存在は貧弱なもので、 大した苦労もなく、霞はそれを祓うことに成功する。 消える直前に、その怪物が霞に何かを吹きかけはしたものの、 特に体の変調もなかったため、その足で霞は神境に戻ろうとする… 霞: ちょっと驚いたけど、何もなし…かな。 !…人の声…これ見られるの、ちょっと恥ずかしいわね… 子供: ――でね、パパ、さっきさあそこで… あ、犬さんいるよ、あそこ。 うしろうしろ。 親子連れの話し声に、一瞬どきりとした風を見せるものの、 犬、という単語に、霞はほっと胸を撫で下ろす。 そういえば、さっき戦った相手もどこか犬に似ていたような―― 二人が去った後、早く着替えよう、と霞は思い直した。 霞: はぁ…こういうところに、まだ野良犬っているのかしら? 誰かの飼い犬…あれ、え…? 何気ない街のビル、そのガラス窓に映った自分の横顔。 長く、枝毛一つない黒髪に豊かな胸と尻、細い腰。 そのどれもが、毎日鏡の中で見てきた、己を構成するパーツのはず。 だが、その横顔は、明らかに今の自分の姿とは違った点があった。 霞: 耳…?犬、の…? それに、これ、尻尾…まで…? 霞: あの、すみません… 私の頭に、何か付いてませんか…? あ、行っちゃった…ねぇ、ちょっと…! 手を伸ばしてみても何ら変わった感触はなく、尻尾についても同じこと。 道行く人に聞いてみても、怪訝そうな顔をしてそそくさと立ち去るだけで、 中には恐怖と驚きに目を丸くして、走って逃げていくものまでいた。 仕方ない、と霞は自分の足で、近くにあった窓の方へ歩み寄る。 霞: 見間違いじゃないわ…やっぱり犬みたいな… もしかして他の人には、犬に見えてるのかしら。 これって、さっきの…? \C[18]――お前にも同じ苦しみを… 怪しげな光に包まれ、目を開けた霞が見たものは犬のような格好の自分… 着ていたはずのスーツも消え、先ほどは感じなかった感触―― 耳や尻尾が、確かにくっついているような手触りがある。 目線の高さも、姿勢も、人のそれのままなのにも関わらず。 霞: ――今の私は他の人から見たら犬みたいな格好で、 自分で自分を見たから、私自身にもそう、見えてるの…? この耳と、尻尾、も…あるって、思ってる、だけ…? これでは、神境に帰ろうにも石戸霞だと認識してもらえないのでは? そんな想像が、霞の肝をぞくりと冷やす。 車や電車の類は使えない。スーツごと携帯や財布も認識できなくなった。 呆然としながら、街をふらふら歩く霞に、一頭の大きな影が―― *【犬一回目分岐前】 霞: あ… ちょっと、これ、は… 霞の後を付けていたのは、がっしりとした体躯の大型犬。 首のタグがキラリと光り、どこかで飼われている――いた、ことはわかる。 だがそれより優先して考えねばならないのは、なぜ、という部分だ。 人間から犬に見えるのであれば、犬から見た自分は――? いくら犬を模した姿とはいえ、その走力に人間が敵うはずもない。 じりじりと近寄られ、霞がほんの一瞬怯んだ隙に、 犬は素早く、彼女を地面に引き倒し、その上へと覆いかぶさった。 数十キロの重りをいきなり押し付けられ、抵抗などできず―― 霞: やめて、待って…! 私は、人間だから、だめ、あ…! 興奮した雄犬が、目の前の孕みごろの雌をわざわざ見逃すこともない。 かつては丁寧に手入れされていたであろう、灰色の長い体毛が、 霞の白い肌をごしごしと擦りながら、傾き始めた日差しに光る。 処女膜など犬にはないのだから、初めての相手でも遠慮などはしてくれず、 組み伏せた体勢のまま、雄犬は雌に種を付けるべく、腰を振り始めた。 爪先立ちで器用に下半身を支えながら、しかし勢い良く野生味に満ちた動き。 屈辱、苦痛、困惑のミックスした悲鳴が、霞の喉からこぼれ出る。 アスファルトは固く、爪を立てて耐えることすらままならない。 いつの間にやら付けられていた首輪の留め具が、抽挿に合わせて鳴る。 ちゃり、ちゃり、ちゃり。大きな乳房のたわむ音と混ざりながら。 泣いたところで、それは却って己の惨めさを強調するだけに過ぎず、 犬の動きが緩やかになるまで、霞はただ、犯されるしかなかった。 不意に拘束の緩んだ瞬間に、なんとか、四つん這いでその場を動く。 ずきずきと痛む股間、硬い路面の感触、腿を伝う血と先走り。 それでも、霞は半ば反射的に、逃げざるを得ない。 自分が人間であると信じるために、せめても、の足掻きだ。 しかし、体力を削られた状態では、逃げる道はなおのこと遠い。 犬の方も、ただ無意味に霞を解放したのではなく、 あくまで、その次に移るために、ほんの少し体勢を変えた結果だ。 大きな尻が、誘うように振れているのを捕まえて、また、挿入する。 逃がしはしない、きちんと最後まで付き合えと言わんばかりに。 互いの背を向けあい、性器だけを重ねて行う、交尾結合。 雌の性器の中で雄の性器が膨らみ、脱落を防いで確実に孕ませる体位だ。 射精時間も人間の比ではなく、一時間以上続くこともある―― 霞: ぬけ、ない… おねがい、やめて…たすけて… 四つん這いのまま、がっちりと固定された性器のコブが外れず、 霞は犬と同じ格好で、ただひたすらに精を受けるしかない。 奇しくも、彼女の長いまとめ髪が犬の尾と絡み合って、 一匹の雌犬として、雄の求愛を受け入れているかのような有様だった。 ★ 霞: (うう…凄い量を、出されちゃった…  これから、どうしよう…?) 雄犬は満足したのか先ほどまでの荒々しい雰囲気を纏っていない。 交尾相手の霞を気遣っているのか、肌をぺろぺろと舐めたりもした。 もし当てがないなら、付いてこい――そんな風にも見える。 霞は、犬の態度を見て… 付いていく/考え直す 霞: (まずは落ち着ける場所を探さないとね…) 犬の背を追う/考え直す 霞: (とりあえず付いていきましょう…) 霞: (焦ったところで仕方ない、か…) 霞: (うう、これからどうしよう…?) 逃げるのが先/考え直す 霞: (早く…霧島に…) 這ってでも帰る/考え直す 霞: (きっと、いくらでも方法はある…!) *【犬一回目逃走】 時にはトラックの荷台に、時には船のコンテナの隙間に、 霞は身を隠しながら、九州へと旅を続けた。 食料の調達や寝床の確保だけでなく、保健所の監視も潜り抜けながら、 なんとか懐かしき霧島へと、帰ることができたのだった。 知己は皆、馴れ馴れしい大型犬が迷い込んだかのような顔をしたが、 幸いにも呪いに詳しい者の助けを得て解呪に成功し、 人としての生活を取り戻す――もっとも、純潔ばかりは返らない。 犬の子を孕まなかったことだけは幸い、と霞は胸を撫で下ろす… 初美: 大変でしたねー…霞ちゃん、 一人で、車と、船と…乗り継いで、ここまで? 霞: …わん。 ――じゃなかった、うん、そうね… まだ、犬の頃の名残が、残ってる…かしら? 行きはよいよい――などという言葉はあるが、その通りだ、と霞は思う。 だがあの何か月もの旅路も、いつかはきっと記憶の底に埋もれていく。 初体験としては散々――しかし、犬好きの人に助けられた思いもある。 ほんの少し、犬というものに優しくしてあげよう、と秘かに心に誓った。 *【犬二回目分岐前】 行く当てもなく、問題解決のビジョンがあるわけでもなく、 霞はただ現状を凌ぐために、自分を凌辱した犬の後を付いていった。 野良生活に慣れているのか、二頭分の食料や住処には困らず、 霞の方も、自然と犬に心を許し始める。しかし―― 霞: もう…さっきしたばっかりでしょ? そんなにがっつかれても… 雄犬が体を擦り付け、肌を舐め回すのが交尾をねだるサイン。 霞の方にその気がない時は、ただ無視して相手が諦めるのを待つのだが、 お返しにと毛繕いをしてやると、許可を得た雄犬が一気におぶさってくる。 四つん這いになって尻を向けるのにも、どこか慣れ始めてしまった。 雌が逃げるそぶりもなく交尾を受け入れてくれている、との確信からか、 雄犬も当初のように激しく押し潰すように固定する体勢ではない。 尻尾を大きく振りながら、へこへことその大きな体をくっつけて、 霞の最奥、本来なら人間の子を孕むための場所に―― 霞: そろそろ、出る…? ほら、背中、向けて…\I[122] 膣内にさらに広がる圧迫感、がっちりとホールドされる亀頭球。 雄が雌を確実に孕ませるための体位に、自然と霞の側も協力してしまう。 下半身に犬の体をぶらさげたままでは動けない、というのも理由の一つ。 だが、どくどくと精が流し込まれる感覚を、霞はどこか嬉しく思った。 人間として見てもらえない自分が、この瞬間だけは仲間を得たような―― 極めて危ない発想ではあるが、孤独感を埋める方法として、 あるいは不安感を紛らわす行為として――霞自身、それを望んでいる。 自分は人間だから、これで妊娠するはずはない、という慢心もあろう。 彼女も知らぬことだが、雄犬の発情は雌の発情臭によって引き起こされる。 交尾をねだられる頻度が増えたのは、霞自身の無自覚な発情によるもの。 心の隙間を埋めるパートナー…あるいはつがいとして認めた証拠。 彼女の心が揺れるほどに、雄犬はそれにつられて霞に甘えてくる。 雄犬からの誘いを段々と霞が跳ね除けられなくなっていったのは、 彼女自身が、雄犬との交尾の中に悦びを見出し始めているからだ。 ――ああ、また知らずのうちに霞はつがいの肌を慈しむように撫でている。 人間と犬、決まった発情期を持たない獣同士のまぐわりのために―― ★ 交尾を一段落させ、一度離れた霞と犬の下に、何人かの足音が近づく。 野良犬の駆除に来た人間なら、急いで逃げ出さないと――と構えたものの、 なぜかつがいの犬は、足音と話し声を聞いても立ち去る雰囲気がない。 不安に駆られた霞は、そっと、彼の隣で息を呑む。 子供: あ!ポチ、こんなとこにいた! …ねぇママ、ポチいたよ! それに、隣の…まえ、どっかで見たかな? 雄犬は少年のポチ、という声に尻尾を振って、舌をぺろりと出した。 どうやら元の飼い主であったらしく、長らく探していたようだ。 その隣の母親も、息子と同じくポチの元気そうな姿を喜び、 つがいと思しき雌犬――霞に、軽く眉を吊り上げた。 子供: ポチ、おうち帰ろうか?お風呂にも入らなきゃ。 …この犬さんは、ポチのお嫁さんなの? ママ、一緒に連れて帰っていい?…ダメ? このままでもいいかも…/考え直す 霞: (もう、いいかな…?) 犬として生きる/考え直す 霞: (私は…私は、どうしたいの…?) 霞: (こんな生活してたら…私は…) 人間でいたい/考え直す 霞: (駄目、このままじゃ…!) 背を向けて走り出す/考え直す 霞: (ごめんね…さよなら) 犬は主の様子を伺いながら、じっと霞の姿を目で追っている。 そこにはどこか寂しさのようなものさえ感じられる… 子供: わぁ、この子結構人なつっこいね。 ママ、どう思う? 母親: うーん…ちゃんとお散歩に連れていける? ポチだって途中ではぐれて、こうなったんじゃない。 …まぁでも、お世話するなら…考えてあげる。 *【犬二回目逃走】 ギリギリのところで人としての尊厳を思い出し、その場を去った霞… 雄犬やその飼い主の視線に後ろ髪を引かれつつも、なんとか自分を取り戻す。 だが犬として生きた数か月は、霞の人としての感性に深く根を張っていた。 車の音に驚いたり、水が苦手になったり、野菜より肉を好んだり… 他者から人間と認識されなくなる呪い自体の解除には成功したものの、 思わず四つん這いの姿勢を取ってしまう、といった後遺症のリハビリを終え、 霞が神境の知己の下に戻ったのは、さらに幾月もの時間が経った後。 だが、彼女にはもう一つ、その頃の名残が… 初美: 霞ちゃん、お久しぶりですねー。 なかなか会えないから、心配で―― …あれ、その犬…最近、飼い始めたんですかー? 初美: 綺麗な毛並み…霞ちゃんにそっくりの毛色、ですねー。 ペットは飼い主に似る、って聞いたことありますー。 親友のそんな言葉にも、霞は歯切れ悪く言葉を濁して愛想笑いをするばかり。 毛色、瞳、どこかおっとりした気性…その理由は女仙たちにもわからない。 餌の与え方がペットへのそれではない、だとか、風呂に入れる頻度だとか… 霞がその子犬に向ける優しい視線の意味を、彼女の他には誰も知らない。 *【犬三回目】 柔らかな春の日差し、遠くに聞こえる鳥の鳴き声。 広い敷地を備えた屋敷の一角、庭へと降りる縁側のすぐ隣。 媚びに媚びきり、蕩けに蕩けた雌の鳴き声が、何度も何度も繰り返される。 だがそれも、所詮犬畜生の声としか聞こえないのだ。出している本人にすら。 子供: またポチとくっついてるー。 クロ、あんまり大きな声出しちゃダメだよ? クロ: わんっ、わんわんっ\I[122] はひ、っ…わん、わんっ! 石戸霞、とかつて呼ばれた少女――今では、クロ、の名を与えられている。 人としての生き方を捨て、名を忘れ、言葉さえもとうに失った。 飼い主の下で何の苦労も心配もなく、つがいと交わるだけの日々。 仮に、まだ話せたとして――それは誰にも人の言葉に聞こえまいが。 犬のごとくに四肢で這い、餌を直に食い、そのままの姿勢で小便を垂れる。 人であった頃の彼女なら、そんなことはとてもできなかったはずだ。 ぶら下がった大きな乳房が揺れるたび、母乳がぼたぼた庭を汚す。 みっちり張った臨月胎と、連動するように大きく踊って。 父親: こら、ポチとクロの邪魔するなって言ったろう。 クロはもうすぐ、赤ちゃん産むんだぞ? …ほらみんな、餌だぞーいっぱい食えよー クロ: くぅーん… 妊娠で大きく膨らんだ胎と乳、繋がったままの下半身の重さに、 体を伸ばしても餌皿に届かず、雌犬はひもじさにみっともなく鳴いた。 去年産んだ子犬たちは既に自分で餌を食べられるまでに成長しており、 父母が交尾の途中であるにも関わらず、我先にと群がって食べ始める。 子供: クロは次、何匹産むかな、パパ? もう十匹も産んでるから、次も四匹とかかな? 父親: ポチと仲がいいから、どんどんできてしまうな… クロには悪いが、また何匹かはよそに引き取ってもらわないといかん。 ようやく解放された雌犬は、当然のように地面を這って餌皿まで歩き、 がつがつと、頬にいくつもの食い残しを付けながら無心に食べていく。 横から歩いてきた雄犬が彼女の食いカスを舐め取ってやると、 雌犬は心の底から愛おしそうに、つがいの全身を舐めてやるのだった。 自分が初めて産んだものが、人でなくて犬――それも複数匹。 人間としてのアイデンティティを打ち砕くには、それで十分だった。 自身を完全に犬と思い込んだ霞は、もう神境のことは覚えていない。 ここが己の住処で、夫たちと死生を共にすると、そう信じている。 腹を痛めて産んだ子が、乳離れしてすぐに貰われていくときだけ―― 母としての寂しさが、ほんの一瞬人の心の名残をそこに甦らせるのだが、 そんな残滓も、別の子を作るための交尾の始まりと共に消えてしまう。 何も考えられない、考えなくていい――今の霞は、そういうモノだった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【触手開幕】 霞は人里離れたとある山の中、岩肌同士の隙間に覗く洞窟の前にいた。 手元の地図と指示書を確認しながら、麓から時間を掛けて登った先… 通常、女性一人で到達するのは困難な奥地であったが、 彼女の纏っている強化服が、驚くほど容易に踏破を可能としていた。 霞: えーと…ここ、かしら。 …なんだか、気味の悪い場所ねぇ…? 霞の言う通り、わずかに残っていた緑も失せて灰色の壁がそり立ち、 生物の気配が薄いわりに、生臭い空気だけが滞留するがごとく漂っている。 遠目から赤くなった岩の割れ目に視線を向けると、それは苔のようでもあり、 ミミズか何かのように、細く脈打つ無数の筋であるようにも見えた。 さらに一歩、もう一歩…と近づいて確認するとそれはまさしく、血管。 生物の体を外側にひっくり返したものがぶちまけられているような―― あるいは、網のように地面や壁に指先を伸ばして掴んでいるかのような。 異常な雰囲気を感じ取った霞の足元が、突然ぐらりと揺れる。 霞: あら、え…? きゃぁあああぁぁぁ… …… 足元に開いた大穴にすっぽりと呑まれるように、霞は下へと落ちていく。 穴の淵は唇がもぞもぞと蠢くように揺れながらゆっくりと閉じ、 この一帯が既にこの生物のテリトリーであったことがうかがい知れる…が、 今まさに落下している最中の霞には、そんなことを考える余裕はない。 暗くなっていく視界が、頭上の穴が閉じていったせいであるのか、 段々と光が差し込まない遥か下層に落ち行くせいであるのか、 落下の衝撃で意識が遠くなりつつあるせいなのか… 霞がそれを知るまで、まだしばらくのラグがそこに存在した… *【触手一回目分岐前】 どこまで落とされたのか――霞が目を開けると、視界を染めるは肉の色。 壁、床、天井、あらゆる側面が赤黒く脈動し、気味の悪いガスを吐き出す。 直視すれば、すぐにでも狂気に取りつかれてしまいそうな世界。 その中でも、人間の背丈と同程度の高さの細長い塔―― そんなものが地面の上をゆらゆらと動きながら、全身の触手を振っている。 生物であろう、ということまではわかっても、正体など掴めず、 ましてやそれがどのような命題によって動いているか、見当もつかない。 ただ言えるのは、ここは人間のいるべき場所ではない、ということ―― 霞: あ、ぐ…ぎぃ… しま…っ! 脱出口への意識を回した瞬間、霞の首にぎりりと太い縄が掛かる。 細い首が圧迫感に悲鳴を上げ、反射的に霞は指を触手に食い込ませて抗う。 だが、そんな抵抗も空しく、彼女の手首より太いそれは千切れることなく、 四肢から少しずつ意識が抜けていくのを、ただじっとりと観察していた。 獲物の抵抗が弱まるのを確認すると、触手の生えた物体は小さくかがみ、 霞を下から持ち上げるようにして、大の字になるよう四肢を絡めた。 赤紫の胴体からは、さらにおぞましい血色の突起が覗いて―― 弛緩した霞の股間、まだ男を知らない場所へと、一息に突き入れる。 霞: ――! っん、あ…ぁ! わざわざ雌の個体をこのような場所に引きずり込む意味―― 疑う余地もなく、この生命体は霞を用いて繁殖を行おうとしている。 無論それは、人間でいうところの妻として迎える、といったような、 霞に対する優しさや愛情を纏ったものでは、決してない。 体ごと宙に持ち上げられて大きく揺さぶられ、股間をぐりぐりほじられて、 痛みと酸欠、本能的恐怖が霞の胸中を一杯に満たしていく。 逃げる、というビジョンよりもっと短絡的な、死にたくない、という渇望。 いつしか目端に浮いた涙は、彼女がまだ幼い少女であることの印だ。 母胎がストレスを抱えると、産まれてくる胎児に悪影響がある―― そんなことを触手は知っているのか、首筋に向けて一本の針が伸びる。 予想外の角度からの予想外の刺激。歯を立てて耐えようにも肉の縄は太く。 緊張と痛みが、波の引くように緩んだその瞬間―― 霞: (あつい…!から、だ…  とけ、とけて、く…!) 注射された薬液が血管を這い回って全身を巡り、感覚が一気に明瞭になる。 混濁する思考の中、下腹部と胸だけが紅く輝くようにくっきりと。 それは、すぐにもどかしいほどの火照りとして霞の体を灼き、 股間からは蜜が、口からはくぐもった喘ぎ声がこぼれ始める。 霞: (やだ…かんじたく、な、い…  きもち、が…とかさ、れ、る…) 抵抗するための体力と気力が、感じたことのない快感へと置換されていき、 時折打ち寄せる軽い絶頂の余韻とともに、霞の心身を揺さぶっていく。 拘束が緩んで、床に投げ出される直前、胸に走った二点の痛み―― 曖昧な意識の中では、その効果について考えを巡らせる余裕はなかった。 ★ 霞: うーん…ん… あれ、そうだ、私… うつぶせで気絶していた霞の意識が戻った時、最初に頭を過ぎったのは、 あの物体の子を孕んでしまったのかどうか――という心配。 だが現状、心配するほどの段階――に要する時間の疑念がない以上、 次は脱出口を――と思考を切り替えた霞は、ふと違和感に気づく。 霞: おっぱい…これ、私の…? え…なに、なんで…? 元より大きかった――三桁センチに乗ろうかという両乳房が、 さらに二回りも三回りも、大きさと重量を増した肉の塊としてそこにある。 こんな場所で悠長に測る暇はないが、胸囲は身長と同程度にすら見えた。 胸の付け根に見える赤い虫刺されは、先ほど打たれた注射の証―― スーツの胸元はぐっと押し寄せられて巨大化した乳房を抑えきれず、 ぷっくりと大きく厚みを増した乳首が、ぬめるような外気に晒されている。 重心が大きく前に傾く感覚にようやく抗いながら、それでも霞は、 現状を打開するための方法を考えることにする… 壁には穴が開いている…外界に繋がっているだろうか? かがめば通れないことはないが… 霞: うう、胸が重いわ… でも、他に方法が… 穴に入る/少し考える 霞: お願い…外に、つながってますように…! 霞: …急いで決めるのは危険かしら? 霞: なんだか空気が変わってきたけど…? でも、油断は禁物ね…! 触手の柱の中に女性が取り込まれながら犯され続けている。 既に心身ともに完全に呑み込まれてしまっているようだ。 口から泡をぶくぶく吹き、母乳と愛液をだらしなく垂らすだけ… もう助けることは不可能だろう。 霞: あ…やった、出口だわ…! 急いで出る/息を整える 霞: はぁ、酷い目にあった… 霞: …ふぅ、あともう少しね… ★ 霞: しまった…! まずい、足…! かかとに細い触手が一瞬にして絡みつき、鈍った腿に更に太い触手。 あっという間に下半身を絡め取られ、掬い上げるようにして体を浮かす。 腕もいつしか同じく封じられ、じたばたと宙をもがくだけ。 覚えのある体勢、覚えのある流れ。つまり、次に来るのは―― 再びの衝撃。だがそれは破瓜の瞬間のような苦痛を伴うものではなく、 明らかに、自分の体がこの物体との性交に最適化されつつあるのがわかる。 先端がひだを擦り、胸を揉み上げるごとに熱がじんわりと体を巡り、 逃げたい、逃げねばという気持ちをほぐしてどこかに持っていってしまう。 霞を捉えた触手塊は、犯しながらゆっくりと巣の奥へと移動していく。 出口――のあるであろう方向から引き離されていると感じつつも、 この快楽と拘束とを振り切って逃げるだけの余力はとうになく、 絶望的な感情を抱いた瞬間、それは熱く迸る絶頂に塗りつぶされていく―― *【触手一回目逃走】 なんとか触手の巣からの脱出に成功した霞は、麓に向けて歩き出す。 巣に充満していたガスは獲物の気力をゆっくりと損なっていくもので、 綺麗な空気を吸うことにより、心身には次第に活力が戻り、 スーツの破損もなかったため、往路と同じく移動には苦労しなかった。 だが、凌辱によって体に埋め込まれた快楽の火種―― それは日常生活のほんのささいなきっかけで霞の体をどろどろに融かし、 欠落を埋めようと自慰にふけっても、到底抑えられはしないもの。 巨大化した胸も、全体的に感度が上がってしまっている―― 医者: …うーむ、拘束期間が短かったのは幸いでしたが… 毒の影響を完全に抜くとなると、数か月単位の観察が必要ですね。 それに、胸部の肥大も…うちでは対応しかねます… 霞: 付けられる下着がなくなってしまって、困りますね… …でも、しばらく我慢すれば、 体の疼きはなんとか、なるんですよね? 獲物の体を生殖に特化させていき、人間界への復帰を妨げる… あるいは、忘れようのない快楽を覚えさせ、依存症を引き出す… どれも、人間の雌を繁殖の道具として利用するための進化の結果。 それに抗えず、自ら繁殖巣に戻ってしまう事例も後を絶たない。 こうして医者の監視下に置かれてさえ、霞の指は思わず下半身に伸び、 指三本を使った激しいオナニーで欲求を解消したくてたまらない。 もし、リハビリの最中にあの快楽と人生を天秤にかけられたら―― 即答できない自分がいることに、ぞっとするような気持ちが沸いた。 *【触手二回目分岐前】 触手を持ったこの異様な生物の巣に捕らわれてからずっと、 霞は胎内にその性器を挿入され続け、延々と精を放たれている。 休憩と言えるものは別の個体に交代するために離れた瞬間だけで、 泡立つ水音が聞こえない時間など、遠い昔であるかのよう。 霞: っく――\I[122] ふーっ、ふっ、うぅう…! \I[122]っ――! 既に体のコントロールは完全に奪われ、絶頂の波に耐えるだけ。 逃げようと体をよじっても、それを制するように刺激を送り込まれ、 体がビクンと跳ねた瞬間に、より強く拘束され、より深く抉られる。 無為に抵抗すれば、ますます体力を削り取られる…不愉快な経験則。 快感が気の遠くなるようなスパンで不規則に押し寄せてくるのを、 ビジョンのないまま、脱出の希望にかけて噛み潰していく日々。 たまに訪れる、頭が真っ白になるほど強く、抗いようのない大波。 肺の中の空気を全て搾り出されそうな、重い重い余韻。 視界がちかちかして、反射的に吐き気を催して―― もっとも、喉には液体状の餌を流す管がねじこまれている―― 涙が下瞼を伝い、ぶわりと浮いた汗の粒が全身を舐め、 ただひとつ自由になる眼球を、ぐりぐり回して抗うしかない。 なぜ自分はこんなことをされているのだろう――なぜここにいる? なぜ自分は苦しささえある快楽を我慢しているのだろう―― これをまともに味わわずに堪えることに何の意味がある? ――そもそも、逃げるといったって、どこに?どうやって? 霞: うー…! ぶはっ、っく…! はぁ、はぁ、はぁ…うう、ぅぅ… 霞の腹部はぼってりと膨らみ、妊娠していることは明らかだ。 苗床として捕らえられた女性は、ほとんどが妊娠前に壊れてしまう。 そういった哀れな先輩たちに比べれば、霞は遥かによく耐えた。 ――だが耐えたところで、どうやっても事態は好転などすまい。 この巣の中に充満するガスは、薄い媚薬であり精神を摩耗させる毒。 肉体を触手たちとの性交に特化した体へと置換させていき、 受け入れずに抗う雌の心を削り、何も考えない肉袋に作り変える。 より効率的にその子宮を使い、より効率的に個体を増やすために。 薬液によって肥大化を促された胸は、妊娠によりさらに大きさを増す。 ぎゅうぎゅうに張った乳腺は、痛いほどに母乳を張り巡らせている。 触手どもに孕まされた子に与えるための、望んでもいないものを。 この胸の疼きすら、快感として体が咀嚼しようとしている恐怖。 霞: あっ…! ゃ、あ…ん――\I[122] いっ、ひぃ…っ! 乱暴に地面に転がされ、重くなった体が弾力のある肉の絨毯を転がる。 床との間に挟まれて圧迫された乳首からはぶじゅうと白いシャワーが、 不意に解放された衝撃と胸からの熱い痛みに喉からは甘い声が、 そんな反応をしてしまう自分への情けなさに、涙が。 泣き喚いてこの臨月胎が元通りへっこむなら、そうしただろう。 母に助けを求めて、膨らんだ乳房が戻るなら、そうしただろう。 目を閉じて祈れば開発された性感が治るなら、そうしただろう。 依然現実として、受け入れたくないこの体は、ありのままにある―― まだぎりぎりのところで折れずに残っている人間としての矜持のために、 霞はがくがく震える足に力を込め、だらりと体を縛る胸と腹を持ち上げ、 開発され尽くしてびりびりと痺れてくじけそうになる心を励ましながら、 髪より細い可能性に向けて、道を探り始めた―― ★ 壁には穴が開いている…外界に繋がっているだろうか? かがめば通れないことはないが… 霞: はや、く… おかしく、なっちゃう… 穴に入る/… 霞: だれか…だれでもいい、から…! たすけ、て…! 霞: (なんで、にげようとしてるんだっけ…) 触手の柱の中に女性が取り込まれながら犯され続けている。 腹部は不気味にぼこぼこと蠢き、妊娠しているのは明らか… 周囲には彼女の産んだとおぼしき肉塊が蛆のようにたかっている。 もう助けることは不可能だろう。 霞: かぜ…ひかり… ここ、で、ぐ、ち…? 急いで出る/息を整える 霞: たすけて…だれ、か… 霞: つかれた…もう、いやぁ… ★ ふらふらとうろつく霞の体を、触手はたちまちのうちに絡め取る。 そこには、ある種の優しさ――無論、母胎、に向けてのものがあった。 せっかく臨月まで育てた孕み袋を、殊更に手荒く扱う必要もない。 ふっくら張ったそのラインを、太い触手がこりこりとなぞるように撫でる。 霞: やめ――っ\I[122] あぁ、あっ…ひ… ――ひう、おな、か――\I[122] 愛撫によってか、あるいは偶然か、股間からはばしゃばしゃと水が垂れる。 大量の愛液の混じった羊水が、霞の股座をびっちょりと濡らし、 胎動と陣痛、精神的ショックにぶくぶくと口から泡を吐きながら、 絶え間なく訪れる痛みと快楽に、霞はがくがくと痙攣を繰り返す。 霞: おぉお――あっ\I[122] あ――っ、ひ、ぃ――\I[122] …!\I[122]っぁあ…! 触手の先端が器用に陰唇をつまんでぐうっと股を開かせて、 その開いた隙間に何本もの指が付いた別の触手がずるりと差し込まれると、 胎児を引きずり出すために、ぐちゅぐちゅと膣内を掻き回しつつ奥に潜る。 霞の喉から出る声はもはや言葉にならず、悲鳴を上げるばかり。 ソーセージ状の触手の塊が、ぶちゅん、ぶちゅんと空気を弾いて飛び出し、 そのたびに霞はどうしようもない絶頂感と多幸感に染められていく。 何十本もの臍の緒がぶら下がった胎盤を剥ぎ取った触手が抜けると、 べこべこになった腹の皮が、力なく呼吸に合わせて上下していた。 霞自身はほとんど気絶したような状態で虚ろに天井を見ていたが、 子宮口はひくひく蠢き、両乳房からは大量の母乳が噴き出し続けており、 空いた子宮をまたすぐ埋めようと、性器を担当する触手と、 排卵、肉体改造、思考摩耗薬を充填した注射用の触手が霞に迫る。 ちくりと走る痛み、熱くなる全身に、疲労と快楽のカクテルが回って、 へらへらと笑いながら霞は、盛大に潮を噴きながらまた絶頂した。 産んだ肉塊の一部には、彼女を想起させる体毛の生えたものもあったが―― ただ光を取り込むだけの目には、もう意味のあるものは何も映らなかった。 *【触手二回目逃走】 霞: いっかい…いっかいだけイったら…やめる… いっかい…ん、んん… 看護婦: …先生、あれなんですが…その、 また、石戸さんが…ご自分を… 無理にでも、止めるべきでしょうか…? 霞: だめ、ぜんぜん、たりない、よぉ… なんで、なんでイけないのぉ…っ あんなに、あそこでは…! 医者: 体調に無理が出ない限りはやらせてあげなさい… たとえ絶頂できなくても、心を慰めると思ってね… 異種に教え込まれた快感は、すぐには抜けないからね… 触手の巣からなんとか脱出した霞――本人にも道のりはわからない。 凌辱による深い心身のダメージを軽減させるために運ばれた病院で、 触手と霞の遺伝子の混じった肉塊の摘出作業とリハビリが行われたが、 薬液によってネジを外された性感帯は元に戻らなかった。 霞: やだぁ、イきたい、イきたいよぉ…! うぅ、つらい、つらいぃ… 人間界で味わう快楽より、遥かに凶悪で容易に脳を破壊するほどの―― それは本人の自制心などでコントロールなどできない本能的なもの。 我慢しきれず、自ら巣に戻って苗床になることを望むのも仕方がないこと。 監視下で心を治しながら――記憶の底に沈めるしか方法がないのだ。 *【触手三回目】 霞: あ――\I[122] ひぃ、っ…\I[122] はひ、ま、た…! 抵抗する力を完全に失った霞は、いまだ肉獄に繋がれ続けており、 種付け、妊娠、出産のサイクルをひたすら繰り返す存在と化していた。 膣内を擦られるたびに絶頂、射精されるたびに意識の飛ぶ快楽、 胎動に軽く甘イキをし、出産の衝撃で泡と潮を噴いてまた意識が飛ぶ。 乳首も性器も真っ黒に色素を溜めこんでしまって、かつての姿はない。 妊娠期間が空かないよう、着床時期の違う複数の胎児群を同時に孕む、 多重妊娠できる体に作り変えられた霞は、常にみっちり張ったボテ腹だ。 胎児に栄養と霊力を与え続けられるように、他の全ては削ぎ落とされ、 内臓に寄生した触手が臓器の役割を果たして霞を延々と活かしており、 もはや元の彼女を想起させる要素は、脳の部分しか残っていないと言える。 凌辱や交尾とは既に呼べず――それはもはや触手の都合のいい臓器袋を、 栄養補給パックや別の遺伝プールを持った精嚢と繋ぎ変えるだけの行為。 膣内にはローターのように断続的に蠢いて性感を与えながら、 霞の膣道をメンテナンスする小型の肉塊が寄生しており、 それとは別に、排卵をコントロールする触手、胎内の精液を保存する触手、 確実に着床させ、先に細胞分裂を始めたグループと隔離させる触手などが、 いくら孕ませ、産ませても壊れないこの最上の孕み袋を使い続けるために、 本人の意思など全く顧みず、妊娠効率を突き詰めるために働いている。 霞の産んだ個体は既に数千から万にも届こうかという勢いで増え、 彼女が捕らわれてからこの繁殖巣の半径は数キロ単位で拡張された。 霞: は――\I[122]は――\I[122] あ…おっぱ、い…\I[122] こぼ、れ、る…\I[122] 一時的に触手柱との接続を断たれた霞は寝ぼけたようにあたりを彷徨う。 右胸には母乳を吸い上げ貯めるための触手がヒトデのように張り付いて、 それに吸い上げられていく母乳の動きと連動するように訪れる絶頂の波。 体を動かすごとに、耐えがたい快楽の暴力が脳をぐちゃぐちゃにする。 だが、霞は狂えない。瞼の上から巻き付いた肉々しい目隠しは、 耳から侵入して脳に影響を与え、生殖以外のあらゆる概念を希薄にし、 自分から望んでこの空間に貢献するよう、常に思考を誘導し続けている。 ――といっても、既に彼女は名前すらまともに言えない有様だが。 霞: う――\I[122]あ、へ… はへ、へ――\I[122] 左胸にもヒトデが張り付き、ちゅうちゅうと母乳を吸い上げ始めると、 がくんと膝折れた霞は四つん這いのまま、あたりをふらついた。 ほとんど本能的に、体を動かそうという信号だけが走っている状態で、 出口はおろか、すがるべき相手も、今の彼女には探せはしない。 霞: あ――? あ、はっ、ぁ…! うま、れ…る…\I[122] 肘と膝で地面に突っ伏し、ごく当然のように呼吸を整えいきみ始める霞。 普段なら、すぐに肉塊が十数個噴き出して小さな胎盤が飛び出すのだが、 今回の出産は、それより遥かに難産で、膣口の開き方も尋常ではない。 久々の痛みと未知の感覚に、霞の全身にはぶわっと脂汗が浮いて―― 股座から這い出てきたのは、人間の上半身が肉塊から生えた物体。 背中や足にあたる部位は紐状に細く伸びて、うねうねと宙を漂っている。 霞しか人間のいなかったこの空間に――初めて人の産声が響いた。 無数の兄や姉とは明らかに違う、意志を持った生物としての声。 霞のぼろぼろになった心に、最後の一押しを入れるには充分な変化。 混乱してへたり込んだ霞の腿の上に、それは這いよって乳をねだり、 思わず、指からの感触に反応してその肉塊を抱き上げた霞の耳に―― 屈託のない、母を求めて甘える赤ん坊の声がした。 霞: う――\I[122] あ…ぇ…\I[122] へひ、ひぃ…\I[122] 改造と出産の果てに、霞は人間の遺伝子を取り込んだ新しい種を創った。 彼女を母胎にした状態でしか得られない、極めて貴重で有益な個体は、 成長と共に人間の知能を持ち、触手由来の様々な能力を操るようになる。 繁殖巣の勢力拡大に留まらず、人間の文明すら脅かす異例の存在。 触手たちはその個体を増やすため、より霞の体を活用するために、 巣の一部として、完全に霞の全身を吸収し、取り込んでしまった。 他の雌を苗床に増やした個体群との掛け合わせをさらに重ね―― 今では、近隣の集落を襲って人間を浚うほどの脅威となっている。 大元である霞の体は、この一帯と生命が同期した状態であるため、 この巣が滅ばない限り、半永久的に半人個体を孕み、産む定めだ。 巣全体を一匹の生物として見た時の、主要な臓器の一つ―― 人に害なすものの中心核として、霞は使われ続けるしかなかった。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【妖魔開幕】 街をうろつく低級な妖魔の群れを見つけ、指示の通りに退治し始めたものの、 想像以上の数に、少しずつ霞はビルとビルの谷間、薄暗い路地へと後退する。 倒すこと自体は可能でも、複数体を同時に相手はできない―― まだ修行中の身には、少しばかり荷が勝つ状況であった。 一般人に見られるのも、巻き込んでしまうのもよくない…そんな焦りが、 若い霞の精神的な余裕を奪っていく。しかし、敵は一向に減らない。 頃合いを見て退却しようとするも、高い壁に囲まれ、狭い隙間しかない。 背後への警戒感を霞がほんの一瞬、緩めたと同時に―― 霞: うっ…! 鈍い衝撃、勝ち誇ったような鳴き声…掠れていく視界。 硬いアスファルトの上に体が投げ出される感覚、上から注がれる視線… それぞれを繋ぎ合わせて、死角からの襲撃を受けたのだと理解はしても、 それ以上、霞に取れる選択肢はなかった… *【妖魔一回目分岐前】 不意打ちされ、ようやく気を取り戻した霞は足元ごとうねる感覚に酔う。 上下左右があやふやで、時間の境界も曖昧、目眩いのする重い空気。 それは、明らかに人の世のものではなく、異質さだけが判然とあった。 経験の浅い彼女にも――自分がさらわれた、というのはわかる。 辺りを見渡すと、先ほど戦っていた相手――低級な悪鬼どもが、 霞の豊満な胸、細い腰、むっちりした腿と尻をじっと見つめていた。 人を襲う――それはつまり、人肉を餌として喰らう、ということ。 だが、もう一つ――特に若く、美しい女には、別の用途があった。 霞の背後に回った妖魔が、どん、と背中から突き飛ばすように押す。 前につんのめったのを、正面の妖魔が体を寝そべらせながら受け止めて、 ちょうど霞は、その上に跨るかのような格好で地面に手をついた。 にたりと牙を剥いて笑ったそれは、腰ごと跳ね上げるように―― 霞: あっ…ぐっ…! いた…っ! ずん、と鈍い痛み。突き上げられた体はそのまま落ちて、 純潔を引き裂いた異形の性器の上に、霞自身をまた食い込ませる。 反射的に逃げようとするも、足に巻き付けられた尻尾が邪魔をし、 慌てている間に、下からまたどん、と持ち上げられては落ちて刺さる。 痛みに歯を食いしばっても、却って周囲の妖魔を喜ばせるばかり、 犯されているのに、まるで自分から腰を振っているかのような有様。 だが抵抗する手段も、道具も、今の霞にはない。 この上下運動も単なる嗜虐のためではなく、その果てにあるのは―― 霞: (うう…出され、てる…!) 接合部を自分の眼で確認することはできずとも、熱い迸りと、 寝そべって見上げる妖魔の顔から、今まさに射精されていることはわかる。 人間の女をさらい、犯し、孕ませて――そうして、増えるもの。 自分の子宮が、そう使われるであろうというやるせなさ―― それから数体の妖魔に代わる代わる犯され、解放された霞は、 下腹部に感じる違和感が、段々と重さを伴ってくることに気が付いた。 異形との交わりで産まれる存在が、人間の胎児と同じ理屈であるはずもないが、 体感時間としては、異常なまでのスピードであると言えた。 霞: 嘘…なんで、こんなに早く…? …くっ、うぅ…! やだ、我慢が、もう…! 霞が捕らわれている空間は、現世とはあらゆる理の違う場所―― 胎児の成長する速度も、母胎への影響も、常世の道理に支配される。 恋も穢れも知らなかった少女の股座からは、たちまちのうちに―― 真っ赤な新生児が、臍の緒をぶら下げて生るのであった。 妖魔: 【まだデキが悪いな…ほとんどヒトじゃないか】 妖魔: 【使いもんにならねぇし、後で食っちまおうぜ  やってるうちにまともなのも産まれてくらぁ】 吐き気を伴う拒絶感、違和感、疲労感…意識はまたどろどろと融けていく。 再び気を取り戻し、赤子が消えたことに先ほど出来事を夢と思おうとするも、 股の周りに残った怪しげな体液と、薄っすら青みの差した肌、 眠りこける見張りの姿に、どれも事実なのだと突き付けられた―― ★ 霞: さっきのは…ほんとに、産んじゃったの、かしら…? 出産を経たにしては実感も消耗も伴わない、夢幻のような―― されど、確かに跡を残している、自分の血を引いたとおぼしき赤ん坊。 人間の女性を使って繁殖する――その意味を、己の身で体感させられた。 ここにいてはまずい――そんな確信と共に、霞はそっと歩き出す。 霞: (寝てる…今はこの見張りだけみたいね) 壁には穴が開いている…外界との出入口だろうか? 出ていく際に閉じるのを忘れていったのか… 穴を潜る/罠かもしれない 霞: (他に出口らしいものがないなら仕方ない…かな?) 勇気を出して入る/やめておく 霞: (よし…ひとまず逃げるのを優先して…!) 霞: (こんなわざとらしく…危険かもしれないわ) 機会を待つ/やめておく 霞: (まだ体に大きな不調はない…大丈夫、よね…?) 霞: (一旦落ち着きましょうか) *【妖魔一回目逃走】 世間一般の疾病の治療が目的ではない、極秘に管理されたある医療施設… 人の世の外からもたらされた病原体、呪い、精神への干渉など、 普通の病院では扱えない、不用意に広まってもいけないものを専門に、 なかば監禁にも近い形で治療と研究を行う場所。そこに霞はいた。 医者: これまで経過を観察してきましたが…ほぼ健康体と言えるでしょう。 胎内にあった異種の胎児と受精卵二個はともに除去済みです。 浸食率が心配でしたが、数回の月経を経れば治ると思われます。 霞: ありがとうございます、先生。お陰様で体も随分… あの、その…浸食率、というのは一体…? 医者: 異種の中には、母胎を自分の都合のいいように変えるものもいます。 性交や妊娠、出産が嵩むと…母胎の方も影響を強く受けるわけです。 今回霞さんは、まだごく浅い段階でしたから… 医者はそれ以上、あえて言葉を紡ごうとせず、気まずそうに口を閉じた。 異空間での時間感覚はあてにならないが、早く脱出していなければ…? その想像の先にある、おぞましい一つの未来予想図―― それが現実とならなかったことを、霞は心より安堵するのだった。 *【妖魔二回目分岐前】 霞: あっ…ぐぅ…っ…! う、うまれ…る…! 既に三…四回は産んでしまったのだろうか? 現世とは隔離された妖魔の巣の中に、霞のいきみ声が、また響く。 犯され、気を失い、いつの間にか出産が迫り、否応なしに産んでしまう。 痛み、疲労、混乱、そこにあるはずのものが、やがて霧のように失せていく。 これは現実なのか、幻か何かなのか――答えを直視したくない自問。 臍の緒の先で、じっと自分を見つめている赤黒い、何か。 それは確かに、自分の血を引いた存在である――はず。 実感を伴わず、母親にされ続ける、という狂気を帯びた繰り返し。 霞: 待って…もって、いか、ないで… 妖魔: 【次かその次ぐらい、そろそろ期待できそうじゃねぇか?】 妖魔: 【意外と早く済んだな…後十回は必要かと思ったぜ】 例のごとく、産まれた赤ん坊――人間のそれにしか見えないそれを、 せめて母親の前では食うまいという気遣いのつもりか… 耐え難く閉じる瞼と、視界の端で蠢く何体もの妖魔―― 霞が起きた時には、またすぐに次の種付けが始まるのだ。 霞: うう…また、お腹… あれ、こんなに、青く… そこからさらに数回の妊娠の後、ふと、霞は異変に気が付いた。 以前は臍の下程度までだった青い染みのようなもの――不詳の何かが、 今では、上端が肋骨の下に届くような高さに昇ってきており、 太ももの付け根から腰側へも、色が周り始めているのだ。 種付けの最中、何匹かがその青と地肌の境界線を爪先でなぞったり、 にたにたしながら手の平で握るように撫でていたのを、霞は思い出す。 つまりこれは、妖魔にとって、喜ばしいことであると同時に、 霞にとっては、忌まわしい凶兆に他ならない、ということ。 霞: え…! あおい、あか、ちゃん…?わた、し、の…? 産まれたのは、明らかに霞と違う肌の色をしていた。 環視する妖魔も、それまでの態度とは明らかに違う、満足感を見せている。 自分とは異質な存在感を持ったものが、これまでと同じように―― 己の子として、そこにある、という事実。見間違いなどでは、決してない。 朦朧とする意識の中、どさり、と懐の中に手渡されたもの。 青い――霞の産んだばかりの、子。息が詰まる。瞳孔が開く。 投げ出しそうになるその手を、妖魔は意地悪気に優しく留め、抱き直させた。 下腹部に広がる、あの色と同じ肌をして――乳を求めてむずがる、それを。 抗い難い母性の津波。霞は無意識に、その青い塊を強く抱きしめてしまう。 わずかにひんやりとした肌のその内に、自分と同じ心臓の鼓動があって、 母からの愛を受けて当然、と柔らかい乳肉に指を埋め、力弱く握る。 霞は心と体が、めりめりと音を立てて剥がれていくような気がした―― ★ あの赤ん坊を産んで、またその次を胎に仕込まれてしまってから―― 霞は妖魔たちの見張り方が、以前ほど厳しくないことに気が付いた。 せっかく捕まえた雌を逃がすまい、という鋭い視線はとうになく、 強引な種付けこそあれ――そこにはある種の、思いやりさえあった。 霞: (早く、霧島に帰らないと…私、おかしく、なる…) それは石戸霞という人間の、本能的な恐怖に根差した直観だ。 異常な空間、行為、日常、関係性…自分が、自分でなくなっていく。 同時に、産んだものへの愛着を感じ始めている自分が、確かにある。 もし、それと向き合ってしまったら――? 赤ん坊はじっと、霞の顔を見つめている… 霞: (お願い…そんな目で私を見ないで…) 抱き上げる/やめておく 霞: (かわ、い…ちがう、こんなこと思っちゃ…) しっかりと抱く/やめておく 霞: (ああ…やっぱり、この子は…私の、赤ちゃん、なんだ…\I[122]) 霞: (だめよ霞、気を確かに持たなきゃ…!) 壁には穴が開いている…外界との出入口だろうか? かがめば通れないことはない小ささだが… 穴を潜る/やめておく 妖魔たちはにたにたと霞の動きを観察している… そこには引き留めようという意思を感じないが…? 勇気を出して入る/やめておく 霞: (なんだか怪しいけど…逃げるチャンスだものね) 霞: (一旦落ち着きましょうか) 妖魔: 【見ろよ、こいつの眼…俺に似てないか?】 妖魔: 【次は、俺のガキを産んでくれよな】 妖魔: 【なんだ、そこの穴から逃げてくつもりか?  そんな体じゃ、人間界で生きてけないが…好きにしな】 霞: (何を言ってるかわからないけど…  あまり理解したくはないわね…) *【妖魔二回目逃走】 妖魔が巣としていた空間から、驚くほど呆気なく脱出した霞… 十回を数えようかという妊娠と出産の繰り返しの日々であったが、 外界では、それとは遥かに短い時間しか流れてはいなかった。 安心するもつかの間、置き土産の胎児により陣痛を覚えたために、 救急搬送される形で、異形関連の疾病専門の病院―― 言い方を変えれば、人界と異界の隔離のための場所に運ばれた霞は、 初めて、しっかりとした分娩台の上で、赤ん坊を産むことができた。 だが、彼女の体を蝕んでいたものは、その想像よりずっと根深く… 看護婦: 先生、石戸さんの病態は…命に別状はなく安定しています。 ですが、正直なところ… 医者: うむ…まだあんなに若いというのに、残酷なことだな… 浸食率が高すぎて、もはや人間の子を産むことは不可能だろう。 彼女自身の卵子が、異種の因子と融合してしまっている… 霞自身の、雌としての優秀さ――それは母体としての優秀さにもつながる。 母親として己を変えていく適性の高さは、妖魔の因子の受け入れやすさ。 胎内を調べた医療関係者は、胎児と受精卵の形から既に彼女の子宮が完全に、 妖魔を増やすためだけの孕み袋になっていることに気づいてしまっていた。 医者: 君の方から…避妊手術をするよう勧めてやってはくれないか。 私には…すまない、君に押し付ける形だが…同じ女性として… 二人はじっと、口を噤んでガラス越しに、眠っている霞を見る。 人の世に害なす存在しか産めなくなった女性を、見過ごすわけにも―― だがそれは、霞にとってもとても重く、苦しい判断となるだろう。 これもまた、異形に触れた女性の辿る、末路の一つである、とも… *【妖魔三回目】 時間も空間も歪んでねじれた巣の中に、いまだ霞は囚われていた。 ──いや、石戸霞、と呼ばれていたもの、と表現するのが正しいだろうか? 若い人間の雌を使って個体を増やす異種は性交時に、自身の体液を用い、 皮膚や粘膜から少しずつ魔力を流し込んで、母胎を改造していく性質がある。 数回犯された程度──あるいは出産にこぎ着けた回数が少ないのであれば、 胎児に蓄積される魔力も、逆流して母胎に残留する魔力も、低濃度だが、 汚染が進めば母性を強化されてしまう──人間の姿からかけ離れた子にも。 自分の子だと認識することは、自ら異種の母となるのを認めるのに等しい。 そして彼女は──受け入れてしまった。 異形に処女を奪われ、おぞましき精子に蹂躙された卵子の慣れ果てを。 そんな存在を、愛すべき我が子と心の底より思ってしまった霞は、 もう、心も体も――人間の頃の形を保っていなかった。 霞: あ、おっぱい欲しいの…? ごめんね、この子、をっ… もうすぐ、産み終わる、から…\I[122] 産まれてくるのは、どれも父親譲りの青い肌をした子ばかり。 妖魔の母として作り変えられてしまった霞には、それこそが血縁の証である。 第一子――と、思っているその雌個体の前には、いくつもの兄や姉がいたが、 彼女自身、人間にしか見えないそれを我が子と思うことはできないだろう。 かつての長い黒髪は、魔力によって赤紫に怪しく艶めいている。 額には乳白色のねじれた角質が二本、瞳も赤がかった血の色に。 背中からは、蝙蝠のような羽が一対と、それと同じ色彩の尻尾が一本。 透き通るようだった肌は、全体が真っ青に――どれも、我が子と同じ特徴だ。 雄の個体は、やがて父親と並んで母を犯し、兄弟をまた増やすだろう。 雌の個体は、父や兄弟と交わるだけでなく――人を誘惑する役割も担う。 人間から堕ちた霞には、そのような新たな役割は与えられず、 妖魔生産に最適化された子宮を用い、ひたすらに産み続けるのが仕事だ。 自分の血を引き、種付けから出産まで――産後の母との交わりも含めて、 セックスという行為によって、心と体を満たし続けてくれる愛し子たち。 己が産んだ子が、人の世にはびこり、人肉を喰らい、女をさらう―― そんな想像も、心まで変えられた霞には誇らしくさえ感じられてしまう。 ずるり、胎盤が血生臭く湯気を立てて股座から引きずり出されると、 霞の放り投げたそれに、何体もの妖魔が群がって涎を垂らして奪い合う。 その様子を尻目に、空いた子宮に次を仕込むため、また交尾が始まる… 産んだばかりの末子が、まだ産湯を済ませておらずともお構いなしに―― *【妖魔三回目後半】 小蒔: 霞ちゃん、お勤めの途中でいなくなったって聞いて… もう一年ぐらい…?無事でよかったです… 初美: ほんとですよー、六女仙も姫様もみんな心配してて… …ところで、久々に会えるからって… どうしてこんなところにみんなを呼び出したんですー? 霞: うふふ…だって、長いこと会えなかったんですもの… 紹介したい人たちがいるの、ね?みんな… 霞はそう言いながら、虚空に向けてぱちり、と指を鳴らす。 首をかしげる皆の前で、ぐにゃり、と視界のねじれる感覚―― いぶかしむ六人の目の前に、突然、数体の異形と… どこか、霞に似たものを感じさせる少女が、湧き出るように現れた。 小蒔: …!これって…人を襲う、鬼…なぜ、急に… 初美: まさか、霞ちゃんがここに呼んだんですかー…? それに…今気づいたけど、そのお腹と、隣の子供…! 霞は剣呑な空気を漂わせる友人たちに、あくまで笑いながら応えた。 満ち足りた笑顔、優しく腹を撫でる爪の伸びた指、 ほんのりと赤く染まる瞳孔に、発火するかのごとく染まる髪―― 次の瞬間、そこにいたのは彼女らの知る石戸霞ではなかった。 霞: 女の子に産まれて、一番幸せなことってわかるかしら…? ――愛する家族に囲まれながら、沢山産み続けること、よ。 みんなにも、この悦びを味わって欲しいの――おいで… 本性を現した霞の言葉と共に、何十体もの妖魔が一気に、廊下に生える。 修行中の女仙と姫の六人では、対処できる規模ではない。 若い雌を六胎も一度に、巣に連れ去ってしまえるチャンス、とばかりに、 妖魔はいずれも、下卑た夢想に満ち足りてげらげらと笑っていた。 先に母胎として作り変えられてしまった霞同様、彼女らも、 あの空間の中で、ひたすらに犯され、孕まされ、産まされ続ける運命だ。 人間の子を産めない体と、異形を愛する心を押し付けられて… それらを受け入れても、決して終わりのない肉欲の牢獄の中に―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【スライム開幕】 水源に怪しい物体が現れたせいで、水質が悪化したとの報せを受けて、 霞はその情報の通り、ある地下水道に赴いていた。 上水を流すはずのその区域では、確かに異質な臭いと粘り気が出ており、 それを辿るように、水の流れ出てくる上流の方へと歩を進める… 霞: なんだか空気がどんよりしてきたわね… そろそろ、何か出てくるかしら? 外れた鉄柵の向こう、ゆらゆらと怪しく揺れる水面の上側に、 薄く青緑に濁った、一塊の何かが見えた。より近づいて確かめると、 それは水の如く透き通った体をしながらも、確かな質感を持っている。 まるで生物のようにゆらゆらと、その場所だけが動いていて―― 霞: これが、この汚染の原因…? あまり強そうには見えないわね、処理できるかしら… 霞が手袋越しにその液塊に触ると、嫌がるように身をよじったそれは、 ぶすぶすと、表面からもやを立てて蒸発し、どんどん小さく萎んでいく。 スーツの利便性に感謝しながら、塊が消えてしまうまで触っていた霞は、 足元の水が、どこか透明性を取り戻していくように思った。 用事を済ませ、くるりと振り返る――まではよかったが、 先ほどの青緑が、足首周りにじわりと集まってきて足が重くなり、 さながら、泥沼に足を踏み入れたかのように、上げることすら困難になる。 危機感を覚えた霞の両側と正面から、大きな水音が上がり―― 霞: きゃっ! …わぷ、う、ぁ…ぼ、おぼ、れ… 手首を掴まれ、顔にべたりと水の塊が張り付き、動きと呼吸を鈍らせる。 がくん、と膝折れたその体を、さらに大質量の“それ”が覆い、 鉄柵をへし折りながら、遠く深く、水場の中へと引きずり込んでいく。 獲物を捕らえた獣が、巣に運んでいくような有様で―― *【スライム一回目分岐前】 ごうごうと降る水の音、下半身に広がる冷たい感触… 霞がはっと目を覚ますと、そこはスライムの群生地となった水源であった。 先ほど処理したものはあくまでごく小規模な端末に過ぎず、 それを破壊されたことで反応した本体に、ここまで引きずり込まれたのだ。 水の色も、スライムの体色により近い、薄い青緑のきらめきを伴っており、 立ち上がった霞の下半身をぐっと押さえつけるように、分厚く絡んでいる。 ひときわ嵩高く盛り上がった液面は、それ自体がゆっくりと波打って、 生物が呼吸とともに胸を上下させるのと、ちょうど同じ様相を呈していた。 霞: この池全体が…スライムってことかしら… これだけのサイズ…どうしようもないわね… 状況を冷静に分析しているようでいて、大きな見落としが二つ。 端末を処理できるような危険物を、なぜ懐まで誘い込んだのか? この物体は、人間と接触した場合にどのような行為に及ぶのか? ――霞はその答えを、すぐに思い知らされる。 霞: ちょっと、どこに入って…! つめ、た、やめなさ、いっ…… 異形の生物への対処を目的としたスーツといえど、相手は生きる液体。 元からスリットやメッシュの入ったデザインのため、潜る形で浸透し、 肌と衣類の間に、差し込むようにしてスライムがねじ込まれていく。 触れている一部こそ蒸発させられるものの、焼け石に水とはこのことだ。 手袋や靴下の先にまで充填されたスライムがぐぶぐぶと指をねぶり、 乳首の周りに膜を張って、ゲル状の舌が乳輪と乳頭を柔らかく擦る。 股間はさらに入念に、何十本もの舌と指とで愛撫される格好で、 嫌悪感と、それを上回る性的刺激に、霞は歯ぎしりをした。 霞: っ、く――! あっ、やめ…っ…! ひんやりとした肌触りながら、硬さをも持った先端が、 霞の最も敏感な場所、皮被りの肉芽をぎゅっと押し潰すように愛撫する。 神に仕える女所帯、というそのような行為からは最も縁遠い彼女には、 皮の内側と外側から同時に揉み潰されるなど、想像もできないことだ。 丹念にねぶられた乳首とともに、クリトリスも痛いほどに固くなって、 がくん、と全身の力が抜けた瞬間に合わせ、一層硬くなった核が中を抉る。 スライムにおける性器であり、雌の最奥を穿ち貫くためのもの―― 破瓜の血は、液面をわずかに赤く染め、すぐにその中に溶けてしまう。 霞: !うぶ、ぶも…っ! むっぐ…おぼっ、げほ…! やがてずるずると霞の全身を中に引きずり込んだスライムは、 その口にも腕を差し込んで喉までを繋げ、奥へと流し込んでいく。 軽い酸欠に朦朧とする意識と、それと真逆に火照り続ける胸や股間、 注射器のように押し込まれてくる粘度の強い何か―― スライムに頭以外を包まれて、ふわふわとした浮遊感の中で、 この行為の意味――生物の交尾に似たこれの行きつく先を、霞は想う。 雌の胎内に、自身の遺伝情報を送り込む、ということは―― 自分がこの物体に、子を産まされるということに他ならない、のだと。 ★ 霞: ごほっ、ごほっ…ぇ、ぐぅ…! にげ、な、きゃ… だがその決意をあざ笑うように脚はがくがくと震えてもつれ、 液面に触れた手足にはずるりとスライム化した水がまとわりつく。 ばたばたもがきながらも這って逃げ道を探す霞の周囲には、また液塊が―― 逃がしはしない、ここに留まれといわんばかりに… 霞: (つぎ、つかまったら…  もう…動け、な、い…!) スライムは満足したのか、 ただぷるぷると揺れている… 霞: (う…あ…  たす、け…) a 一度犯され、腰の砕けた状態の霞はあっさりとスライムに捕まえられた。 送り込まれた“何か”が股をゆっくりと伝って落ちていたのを、 そのままがっしりと握りこむようにスライムの腕が包んで、 体ごと持ち上げると、再びの抽挿が始まる。 霞: やめっ…! あぐ…ぅ…くっ…! 一度空いた穴を、ただ繰り返し開かれ、擦られるだけ。 だがそれは何より、自身の無力さを霞に突き付けていく。 破瓜の痛みとともに、屈辱の経験も褪せていってしまうようで、 腹の内から起こる熱の塊から、霞は必死に目をそらす。 その変化に気づいているのかいないのか、液塊はただ淡々と、 霞の膣内の形状に合わせて変化する挿入部を前後させ続けて、 彼女の口から、少しずつ甘い声を引き出そうとする。 しばらくすると、霞の体は投げ出され、体に力をいれようともがく… b 必死に這いずる霞の足首を、太く集まったスライムの触腕が掴む。 どこにそれだけの力があるのか、彼女の体は軽々と吊り上げられて、 ふわりとした一瞬の浮遊感の後、全身がずん、と重くなる。 それは肌にまとわりついた、粘性の高い液体のせいである、と―― 霞: あっ…! だめ、はなし、て…! 理解した時には既に遅く、力の入らない体は人形のように、 青緑の掌のなかで、大きく上下に転がされるようにして弄ばれる。 そして当然、その下端ではずっぷりと、先ほどまで挿入されていたのと、 同じ硬さと太さのものが、膣壁をごりごりと掻きまわしているのだ。 体は動かせずとも、その豊かな胸はスーツごとだぷんだぷんと踊り、 スライムの頭頂部にあたる液面に、ばちゃばちゃと当たって滴を飛ばす。 千切れ跳んだその切片は、頬や髪やらに着地してはそこを濡らしつつ、 本体に合流するために、嘗め回しながら自分の意志で滑り降りていく… c はっと気づいた次の瞬間には、スライムは霞の体をすっかり覆い、 底なし沼で足をかくように、無力な抵抗をするしかなかった。 それをあざ笑うかのように、スライムはねっちりと下半身を捏ね、 胸をお手玉のように転がして、じわじわと性感を与えていく。 霞: っつ――! ひっ、う…ぁ…! スーツの生地の内と外の両面から、スライムによる圧を掛けられて、 逃げ場のない乳房が波打ちながら悶え、乳首は震え、背筋が跳ねる。 乳輪からぐるりと包むスライムの膜、その上に布地、またスライム。 それぞれに硬さと靭性の違う素材が、ランダムに動いて刺激を通し、 先端だけでなく胸の付け根ごと、振り回されるように激しく揺れる。 上半身への愛撫だけでなく、太腿、臍、あるいは膣のひだ一つにまで、 スライムの指がほどよい力を込めて、丹念に擦り上げていく。 ゆっくりと、霞の体から抵抗の意志が剥ぎ取られ始める… d 霞は再び、顔までのほぼ全身をスライムの中に引きずり込まれる。 喉を通って、食道、胃、小腸、大腸…?どこまで犯されているのか、 今まさにスライムの袋の中で振り回される本人にすら、わからない。 分裂に利用する膣以外にわざわざ侵入する、ということは―― 内臓を通じて、霞の体を作り変えているのに他ならないのだが、 その果てに、自分がどうされてしまうのか、という想像など、 必死に鼻を動かしてわずかな酸素を吸入しようとする霞には不可能だ。 ましてや、膣も胸も同時にこね回されているのだから。 霞: こひっ…ひゅ… ぶぁ、うげ…ぉ…! 意識が途切れ、一段落するまでこの行為は終わることはなかった。 あらゆる穴から、スライムの体液を垂れ流しながら目を回す霞の周囲には、 まだ何体ものスライムが、獲物を逃がすまいとゆらゆら揺れている。 いっそ、諦めて――そんな思いを彼女が抱いても、責められはすまい。 e よたよたと這っていた霞は不意に、分厚い壁のようなものにぶつかる。 柔らかく、しかし重いその正体を頭を上げて確認するより早く、 その物体――この一帯に潜むスライムの本体部分は霞を呑み込んだ。 人間一人を優に包むその質量の前には、抵抗など一切意味がない。 霞: ごぼっ…! うぶ…んん…! 口から抜けた大きな泡は、そのまますうっとスライムの中を昇って消えて、 それと同じ体積の液体が、ずるり、霞の口内を潜り抜ける。 頭から爪先までの全体が、スライムの与える浮力と重みの間にたゆたって、 液塊の波打つのに合わせ、わずかばかりに上下していた。 もちろん、ただ反射的に獲物を取り込んだ――といわけではない。 本体の中には、このスライム全体をコントロールする核があり、 その核は、女性の子宮内で卵子と融合することで数を増やす。 ぐったりした霞の股間に宛がわれているのも、それを送り込むための筒だ。 霞の体が動くのに合わせ、その筒――性器といっていいそれが、 弛緩した股肉を容易に割り込み、ぐちぐち掻きまわしながら奥へ滑り込む。 窒息死させないよう、ねじ込まれた触手は表面から取り込んだ酸素を吐き、 二酸化炭素を吸って、強引に呼吸と意識を繋げさせる。 霞: うぐ…! くっ…ぅ、ぇえ…! もがくことすらできない。上下左右の区別なく完全に拘束されているから。 気絶することもできない。そのぎりぎりのところで、活かされているから。 逃げることなどできない。この物体の繁殖に使われるしか、ないのだから。 それは霞にとって、死と同値か、それ以上の―― 壁には穴が開いている…外界に繋がっているだろうか? かがめば通れないことはないが… 霞: いそいで、逃げ、なきゃ…! 穴に飛び込む/足がもつれた 霞: とにかく、まずは…距離を… 霞: こんなことしてる場合じゃ… *【スライム一回目逃走】 とある病院のベッドの上で、霞は眠り続けていた。 スライムの群生地から命からがら抜け出したものの、途上で気絶。 その異様な服装と、スライム由来の臭いから異常性ありと判断され、 特殊な疾病を専門に扱うこの衣装施設へと、搬送されてきたのだ。 子宮内には、分裂前のスライム核が発見されたためにそれを摘出。 体液の一部をスライムに置換されていたので、透析により排除。 内臓を浸食していた部分を切除、体表のスライム膜も除去。 結果的に言えば、命に別状のあるような状態ではなかった。 医者: …今日も目覚めず、か。 やはり、精神的な部分が大きいかな… それでも、霞はぐったりとベッドで寝込んでいる。 異種からの凌辱を受けて生還した女性としては、奇跡的な回復だが、 いまだ年端もいかない少女がまともに受け止められるようなものではない。 意識を取り戻さなければ、退院させるわけにもいかない――堂々巡りだ。 霞の体から採取したサンプルは、まだ最悪の事態にはたどり着いておらず、 不幸中の幸いと言えたが――霞がそれを実感するのはまだまだ先。 医者は小さくため息をついて、彼女の病室から退出していく。 いつか彼女が、親類縁者の下に戻れる日を待ち望みながら―― *【スライム二回目分岐前】 ――また、水の音に目が覚める。冷たい触感に、ぞわりと鳥肌が立つ。 相も変わらず、粘液質の生命体は、霞の胎内へと分身を潜り込ませていた。 破瓜直後と違うのは、彼女の腹部が明確に大きく盛り上がっていることで、 それは通常の性行為によって子を孕むのと、そっくり同じ様子であった。 無論、胎内にいるのは人間の子などではなく、スライムに孕まされたもの。 人間の赤子のような胎動こそないが、腹部の圧迫感はなんら変わらず、 うねるように流動しながら、子宮越しに内臓を圧し続けられるのは、 重量感と嘔吐感を彼女に与えており、霞はよく悪阻に悩まされていた。 霞: うぷっ…うっ、 おえぇ…っ! 定期的に、込み上げるものをぼちゃぼちゃと戻して足下を汚すのだが、 その内容物は完全に透明で、ゲル状の塊の他には何も混ざっていない。 霞を捕らえているこのスライムが飲ませる流動体の、吸収し損ないだ。 今の霞の体の大半は、この成分調整されたスライムでできている。 子宮に眠るのは、卵子を核としているとはいえ、ほぼスライムそのもの。 妊娠中と誤認した体は勝手にホルモンバランスを妊婦のそれに変え、 胸にも尻にも腿にも、肉が乗り始めてしまう――安定したお産のために。 霞が胎内のそれをまだ我が子と思わずにいられたのは、楽観的な想像による。 霞: また…出る… うぅ、気持ち、わる、い… 彼女は当然、液体が人間を孕ませることなどないはずだと思っているし、 腹部の膨満感は胎内に侵入された、物理的なものに過ぎない、とも。 だが、なぜスライムが自分をこんな形で生かすのか―― そんなことに想像が至らない――いや、目を背けようとしている。 胸の張り、子宮から臍の疼き、日増しに高まる腹部の内容物の排泄欲求。 それは、体が早く母親になりたいと本能的に語りかけているためであり、 単に、体に巣食った異物を取り除きたいという次元の話ではない。 預り知らぬところで、彼女の体はとっくに、屈してしまっているのだった。 性質の違う胎動――それは明らかに、出産を控えた胎児のなすものであり、 収縮を始めた子宮の動きも、感極まってつうっと垂れた二筋の白い母乳も。 ぐっ、と息を溜め、小便をする要領で下腹部に力を――羊水が跳ねる。 粘っこく径の太い液塊が、膣肉を拡げながら一際大きな水音を立てた。 霞: ふーっ…! うぅう…っ! くぅ、う…! 体全体で母の栄養を吸収できるこの物体には、臍の緒も胎盤もない。 お産を終えた霞の体は、べこりと伸びて凹んだ腹の皮が無惨な有り様だ 言い換えれば、すぐに次の種付けをしても、邪魔者はなにも、ない。 スライムが何をしようとしているか――理解した霞は、顔を青くした。 ★ 再び霞の腹部がみっちりと張った頃には、彼女も現況を理解していた。 早く逃げないと無尽蔵にこれが増えてしまう、自分が壊されてしまう―― 隙を見て拘束から逃れた霞は、横目にちらりと、壁に入った亀裂を見た。 手袋の先端、指にある異様な感触に、気づかないようにしながら―― 霞: うぅ…! このままじゃ…まず、い… 本体触手共通 スライムの胎児をめいっぱい詰め込まれて、まともに動けるはずもない。 折しも、子宮内のスライムは一斉に大きく胎動して外に溢れ出て、 四つん這いのまま、霞は獣のように吠えながら内容物をひり出し、 産後すぐに、スライムに全身を絡め取られて体内へと引きずりこまれた。 霞: だいじょうぶ…まだ… まだ、にげられ、る… 再びの種付け――抜けた分を補充するための、いつもと同じ繰り返し。 次こそは、と自由の効かない指をぐっと握り込もうとしたその時、 ぐずり、と嫌な感触がして、手袋の先が不自然な方向に折れ曲がる。 痛みはない。だからこそ恐ろしい。取り返しのつかない何かが起こった。 霞: え…? おれ、た…? ゆび、が…あれ…? 股間に突き立てられているスライムの性器が、精を吐きつけたことより、 自分がもう、人間でない何か別物になってしまったことの方が怖い。 その感触は、右手だけに留まらず、左手、両足の指にも―― 力が入らない。いや、入れてもちゃんと動いていないような気がする。 体ごと放り出されて、しばしの休息を得た霞は、恐る恐る手袋を外す。 ――骨が覗き、その周りを青いぶよぶよの肉が覆っているだけのもの。 自分の指のあるはずのところに、足元のスライムと同じ色のものが。 ぐっと曲げてみると――それはちぎれて、骨ごと液面にぼちゃりと落ちた。 霞: あぁ…うそだ… こんなの、うそよ… いやぁあ…っ! スライムは母胎である霞の肌を、 ゆっくりと慈しむように撫でている… 霞: はー… はー…げほっ、うぐぇ… 力を振り絞って逃げる/気力がなくなった 霞: にげ、な…きゃ… 霞: (なんだか…つかれて、きちゃった…) *【スライム二回目逃走】 なけなしの体力を振り絞り、張り巡らされた水路の一部に逃げた霞。 そこから逃避行を重ね、ようやく人の住む場所へと戻ったはいいものの、 彼女が医療機関を受診すると、検査結果に病院は大騒ぎとなり、 最緊急事項として、対異種汚染専門病院への輸送と隔離が決定した。 医者: …やはり彼女の扱いは… しかし… 腹部に寄生された程度で、既に回復したと霞自身は思っていたが── 血液を含めた体液の大部分が、地下に溢れていた液体に置換されており、 循環器も骨髄も、血液を巡らせるのと同じ仕組みで、スライムを流す。 霞が生きて水分をとるだけで、外界に溢れさせる危険性を常に孕むのだ。 繁殖に利用された性器の汚染も、他の内臓に比べて極めて重篤である。 子宮内膜の分泌物も、愛液も、尿も、すべてスライム混じり。 摘出不可能な核が、定期的に卵子の排出を促して強引に着床にこぎつけ、 何もしていなくても、霞はスライムの塊を産んでしまう体になっていた。 当然そんな体では、人間の子など産めるはずもない── あらゆる臓器を入れ換え、スライム化した四肢の末端を義肢にしたとして、 かつての人間としての肉体を取り戻すのは、限りなく不可能に近い。 そんな状態でまだ生きているのは、共生に特化した体にされているからだ。 看護婦: こうしている分には普通の女性なのですが… そろそろ、再摘出の時期も近いですし… 人間の意志と人格は持ちながら、生きているだけで害を成しうる存在。 人間界のためを思うなら、今すぐにでも観察を打ち切り、処分が妥当。 だが医者がそんなことを――というジレンマによっていまだ結論はなく、 今日もまた、霞はその胎内で、新たなスライムを育てるのだった。 *【スライム三回目】 霞: ぜんぶ…とけ、ちゃった… わたしの…からだ… 霞の手足は、長期間スライム浸けになったために骨までの侵食を受け、 やがて身に付けていた衣類もすべて脱げて、融かされてしまっていた。 立つことも這うこともままならず、残ったのは胴体だけで、 スライムの壁の中に取り込まれる格好で、霞は拘束されることとなった。 霞: やだ…まざらないで…! わたしが、いなくなっちゃう…! 指――だった箇所にスライムが絡むと、まるで恋人同士が手を繋ぐような、 ビリビリとした刺激が、全身におぞましい多幸感を流し込んでくる。 “これ”と一体にされてしまう――なれる、という実感。 指から脳までをぐじゅぐじゅとかき回される感覚。嫌悪感が揮発していく。 再び、霞の股間にスライムが性器を押し付けて種付けを始めた。 だかそれは、以前のような子宮を借りての分裂を目的としたものではなく、 足から下腹部を同化させながら、霞を一つの臓器として扱うような格好。 その接続に際しても、抗い難い満足感が強引に胸をいっぱいにしていく―― 霞: うぅ…やっと、で、た… あれ…?なに、これ…? 自分の産んだものを見て、霞は信じられないとばかりに目を丸くした。 これまで産んだ物体は、目も鼻もないような、ぬるりとした液の塊ばかり。 だが今産声をあげたそれの上半分は、まさしく人間の上半身そのもの。 ご丁寧に、赤ん坊のように親指を咥える真似までしてみせる―― 半人のそれはこれまでの個体の数倍はあり、最初こそ単胎であったが、 出産に成功したと見るや、同時に複数の半人個体を孕ませようとし始めた。 一体で子宮が限界になる巨大なものを、五体、六体と容赦なく―― 霞の腹部は異様なまでに膨らみ、彼女自身より重い赤子を抱えている。 それだけ張り伸ばされた皮も、同化が進んだために裂けることなく、 拡張されきった膣口と合わせ、出産用の機械と化してしまったかよう。 苦しさに涎と涙がぼたぼたこぼれても、それを拭くことすらできない。 それらの液体も、じきにスライムへと変化して勝手に動き始めるのだが。 霞: おもい…つら、い… あかちゃん、うみたく、ないよぉ… …いっそ、ころし…て… 腹部の重量感は、スライムのベッドの中ではいくらか軽減もされるものの、 指先――あるいは膣や腸壁から流し込まれる栄養で、胎児は成長し続け、 一体が出てもすぐに次が、出産のカウントダウンを始める無限の苦しみ。 乳首も陰唇も、幾度もの妊娠で真っ黒に、乳房は数回りも膨れてしまった。 ぽつり、と霞の吐いた弱音――死にたい、という絶望よりの言葉。 大きく波打ち、母の感情など我知らずと暴れる複数の巨大な胎児たち。 彼女の感情などお構いなしに、スライムは妊娠機能を酷使し続ける。 やがて、スライムによる浸食は頭蓋骨の内、脳までに届き―― 霞: あ、あへ…ふ…ぁ… し、あわせ…しあわ、せ… もっと、う、む… 苦痛を感じられないように脳ごと取り込まれ、全身を速やかに置換、 完全にスライムと一体化させられた霞は、それ自体が大きな核である。 彼女――だった、ものは、水さえあれば無尽蔵に半人個体を生産できる。 その生産速度も、これまでのサイクルとは比べ物にならないほどだ。 霞がスライムと化してから、彼女が産んだ個体群はたちまち数万の規模、 流域一帯は既に他の生物が住めるような状態ではなくなり、 水源を通じて他の地域、あるいは海洋にまでスライムの魔の手が伸びる。 それら一体一体と、霞は母として接続されており、意志を共有していた。 我が子が圧倒的な速度で世界に広がっていくことを喜び、 スライムに同化されていく全ての有機物を心より歓迎し、 その礎となって子を産み続けられる幸福に、彼女は酔いしれた。 たとえ、遠からずかつての仲間が骨まで融かされ食われるとしても―― ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【豚開幕】 霞: あぁ、今日も気持ちのいいお日様… 小鳥たちも楽しそう。 日の差し込む窓の方を向きながら、霞は大きく欠伸をした。 窓の外には森が広がり、何羽もの小鳥が窓の中の二人をじっと見ている。 くるりと反対側を向いて、部屋の真ん中へとゆっくりと歩き出す霞を、 同じ部屋にいる男は目で追い、やがて、後ろに歩み寄って肩に手を置いた。 霞: もう、昨日あれだけしたのに… こんな朝早くからしたいの?あなた… そうは言うものの、霞は手を払いもせず、そっと自分の手を重ねる。 男の――同棲している愛しい相手の方に向き直り、上気した顔で見上げると、 そのまま霞は男の顔に甘えるように唇を重ね、背中に回した手を下げていき、 彼の股間――既に硬くなったそれに、艶めかしく指を這わす。 霞自身もすぐに服を脱ぎ捨てて、その抜群のプロポーションを晒すと、 鼻息を荒くした男は、ベッドに移る手間も惜しんで霞を押し倒し、 彼女の最奥へと、猛りきった己の分身を突き立てる――孕ませるために。 霞も彼の子を授かるべく、両手両足を彼の背中に絡めて腰を密着させる―― *【豚一回目分岐前】 それは霞の見ているただの夢だ。正気を覆い隠す霧や雲に同じだ。 彼女が愛しい恋人――あるいは夫か婚約者か何かと思っている男は、 生物学的に見れば一匹の何の変哲もない雄の豚にしか過ぎず、 小洒落た調度の整った部屋は、殺風景な獣の檻にしか過ぎない。 二人の仲睦まじい姿を祝福する小鳥は、悪趣味な観衆の幻であり、 囀り声は、美女が醜い豚の慰み者になっていることへの嘲笑である。 日差しをたっぷり取り込むための大きな出窓も、実際のところは、 彼らの情事を見世物とするために備えられた、無機質なガラスの扉なのだ。 霞: おっ…\I[122] はぁ…っ!ひぎぃ…\I[122] 自分が嗤われているとも知らず、霞は、まるで恋人のように豚に奉仕し、 人の目に晒されていると知らず、霞は、まるで獣のように淫らな声を上げる。 豚はただ、自分のつがいが何を見ていようがお構いなしとばかりに、 ねじくれ曲がった性器で、霞の膣をめちゃくちゃに耕し、犯す。 結合部がじゅぶじゅぶと激しく泡立つ様に、見物人は大きく沸いた。 霞が愛液を撒き散らし、豚に射精をねだればねだるほど、 豚のチンポは気持ちいいか、かわいい赤ん坊を仕込んでもらえよ、と、 唇を歪ませた下卑た鳥が、霞たちの交尾をはやし立てる。 霞: …っ! あぁ、たくさん、でてる…\I[122] 霞を孕ませるためのものが、どぼり、どぼりと力強く打ち込まれていき、 それを追うように、ゼリー状の液体が蓋のように霞の膣内を埋める。 だぽだぽになった腹からは、収まり切れない二人分の体液がこぼれ、 藁の上にびちゃびちゃと、白と黄色の入り混じった水たまりができる… 呼吸に合わせてぷるぷる揺れる大きな両乳房には汗がべっとりついて、 房のライトの光に照らされると、霞の肌は艶々とあでやかに光った。 自分こそがあの女を滅茶苦茶に犯したい――と思った男も、少なくない。 だがあくまでこれは、そんな上玉が汚されるのを見るためのもの。 身の程知らずに嗅ぎ回ろうとした、年端もいかない弱っちい女を、 自分たちに逆らえばどうなるか、とわからせるためのもの―― 悪趣味な光景ではあるが、霞は抜け出せない幸福の底なし沼にいた。 心の底から、彼の――豚との愛の結晶を、欲しがっているのだから… ★ 青年: (何の人だかりかと思えば…チッ、胸糞悪ぃ…) 見物客の後ろに、一人の青年がいる。 彼は、この見世物を喜ばない程度の良識を持ってはいるが、 かといって、自分の身を投げ打ってまで助けるほどの正義感はない。 このまま見捨てて帰ったところで、誰も彼を気には留めまいが… 青年: (見なかったことにするか) 檻から離れる/もう少し見ていく 青年: (あの娘…どうなるんだろうな) 知ったことではない/もう少し見ていく 青年: 勝手に盛り上がってろ、クソどもが… 青年: (俺にできることもないだろうがな……) ふと足元を見ると、手頃なサイズの石が落ちている。 拾い上げる/拾わない 思い切り投げつけたら、あのガラスぐらいは割れるかもしれない… 振りかぶって投げる/足元に戻す 青年は群衆の隙間を縫うように勢いよく石を投げつけて、 窓に入ったヒビに驚いて人々が騒ぎ出すのに合わせ、素早く逃げ出した… 青年: (俺が何かしてやる義理もねぇな) *【豚一回目逃走】 檻に亀裂が入ったことで、霞の正気を失わせていた幻覚ガスが漏れ出し、 久々に新鮮な空気を吸った霞は、パニックになった観客に紛れて脱走した。 自分があそこに閉じ込められるまでの顛末までは思い出せないが、 あのまま留まっていたら取り返しのつかないことになる予感がしたのだ。 そしてようやく霧島まで戻ったものの――一連の失態は隠しきれず、 霞の修行は失敗となっただけでなく、六女仙の座も剥奪寸前に。 仲間に合わせる顔がない、と一時期引き籠りがちになっていた霞を、 友人たちはなんとか鼓舞し、数か月ぶりに巫女装束に袖を通させた… 小蒔: ほら、やっぱり霞ちゃんにはその恰好、似合いますよ。 …誰だって失敗はあるし、気にしないでくださいね。 霞: ええ…ありがとう…そう、したい…んだけど、 あの人たちの顔が…私を嗤う顔が、忘れられないの… 豚に媚を売る雌だって、耳元でささやくの…今も… 自責の念と恥とで、今にも消え入りそうな霞の表情は、暗い。 自分のミスで、霧島の仙女たちの評判を貶めた、と考えているからだ。 ――だが彼女の心中には、霞自身自覚していない、もう一つの感情がある。 獣相手とはいえ、孕み孕ませるための荒々しい交尾をした記憶… 人間相手のそれとは根本的に違った、未経験の快楽の残滓。 今でこそ忌避の感情が強くて、自慰などは避けている状態だが、 不意に、あの時植え付けられた生殖への本能的な悦びを思い出したなら―― 見えない爆弾を抱えたまま、霞は生きていかなければならない… *【豚二回目分岐前】 霞が豚との生活を始めてから――既に数ヶ月が経っている。 美女と豚が人目を憚らずにセックスしている悪趣味な光景は、 口さがない連中にとっては格好の話のタネとなるらしく、 彼女の痴態を見に訪れる人間は、いまだに減りもしない。 霞: もう、出しすぎ…\I[122] そんなにしたら、赤ちゃんびっくりしちゃう… そうは言うものの、霞は豚にしっかりと腰を寄せて射精を促す。 言葉の通り、霞の腹部はぽっこりと丸く膨らんでおり、 彼女がこの豚としかまぐわった経験がない以上―― その中身は、果たして豚の赤子以外にありえないのだった。 好き好んで霞たちの交尾を見に来ている連中の中には、 人と豚とが子を成すという異常な見世物を信じきられず、 交尾の合間に、また別に受精のための仕込みをしたのだろう、とか、 元から妊婦を女優にした、数ヶ月スパンの企画だろうと考える者もいた。 いずれにせよ、わざわざ豚のつがいの役をやるような女は好き者か、 借金か何かのしがらみで、逃げるに逃げられない状況にあって、 大衆の嘲罵を受けたところで文句も言えないだろう、と、 自分たちの欲望のために、霞の尊厳を娯楽として消費している。 ――そうして、さらに数ヶ月が過ぎると臨月を迎えた霞は、 豚との交尾を以前ほどは積極的に始めないようになり、 よほど強く迫られるか、勢いよく押し倒されない限りはしなくなった。 豚の方も自然と、自分の子が産まれるのが近いのはわかったらしい。 霞: あ…っ! うまれちゃう、かも… 手、にぎってて…! 陣痛に顔を歪めながら、豚の蹄に指を絡めて深く、長く、息を吐く霞を、 ある者は指差して笑い、ある者は興奮に目をぎらつかせ、 またある者は豚の精液まみれでひり出される赤ん坊に軽薄な同情をした。 ――本当に、彼女の股座から豚の子が弾けるように飛び出すまでは。 悲鳴と絶句。有り得ないことが起きた、というざわざわとした静かな嵐。 誰もが目を疑っても、霞と臍の緒で繋がったそのピンクの肉塊は、 彼ら自身の正気を疑わない限り否定できない物理的現象であった。 そんな観衆のことなど知らず、霞は我が子を大事そうに脇に寄せた。 興奮した豚は自分の子が乳をねだるのを意にも介さず、 空いた胎に次を付けるべく、霞にのしかかって腰を振り始める。 いつしか髪留めは壊れて、長い髪がばさりと大きく広がる。 うつ伏せになった霞の潰れた乳房に、子豚が這い寄っていく… ★ 青年: (…相変わらず、澱んだ臭いがするな、ここは…) あの時、霞に一瞥をくれて背を向けていった男が、またここにいた。 彼女の末路を見届けよう、だとか骨を拾ってやろう、という、 親切心に似た何かではなく、無関心に希釈された好奇心によって。 すると彼は、観衆の雰囲気や表情だけは以前と違うことに気がついた―― 青年: (…やっぱり、係わり合いになるべきじゃねぇな) 背を向けて去る/少し気になる 青年: (あの娘がどうなろうと…関係ない) 立ち去る/… 青年: (帰って全部忘れよう…) 青年: (せっかく来たんだし…もう少しいるか) ガラスの中には、少女とそれに懐く豚の赤子が見える。 もっと観察する/見間違いだ 状況から察するに、彼女はどうやら豚の子を産んだようだが…? 許せないと思った/見間違いだ 青年は歯をギュッと噛み締めて不快さをあらわにし、 大きめのコンクリート片を拾うと、力任せに投げ付けた… 青年: 人間が豚の赤ん坊なんか産むわけ…ないよな… *【豚二回目逃走】 ガラスに空いた大きな穴から、のっそりと豚が顔を見せた。 人間一人を優に組み伏せる筋力は、その体躯からも容易に知れる。 観客はほとんど反射的に、窓の穴から大きく距離を取るも、 豚が一歩一歩のしのしと歩くに合わせ、怯えを見せて逃げていく。 青年は豚の後ろ姿をじっと見ていたが――姿の消えたぐらいで、 若い女性の悲鳴や車が激しく衝突する音が聞こえてきたために、 自分の行いが急に怖くなり、肝心の霞を放ったらかしにして逃げた… 喧騒の去った後には、ぐったりと倒れて精液を垂れ流す彼女の姿だけ… 霧島からの使いが霞を回収した頃には既に遅く、 霞が豚を産む瞬間の動画だとか、臍の緒のついたままの豚の写真が、 あちらこちらのコミュニティに拡散してしまった後で、 “豚産巫女”の噂は、霧島の名とともに深く刻まれることになった… 当然、霞はもう霧島どころか、九州のどこにも住めなくなった。 豚の子を何匹も産んだ女だ、と名を調べればすぐわかってしまう。 いくら隠そうとしても、生来の美しさはそう簡単には誤魔化せないし、 大きな胸自体が、個人識別のための明覚な印になってしまう。 ――故郷からずっと遠くに、ようやく落ち着ける場所を見つけた頃には、 さすがに当初のような軽蔑と好奇の目で見られることは減ったが、 彼女を受け入れてくれる、今の交際相手が昔のことを知りはしないか、 知ったら見捨てはしないだろうか――と、苦悩し続けるのだった。 *【豚三回目】 霞: ねぇあなた、ここも段々手狭になったと思わない? …もうじき、また増えることになるし…\I[122] 何人もの愛しい我が子をそれぞれに慈愛に満ちた目で見ながら、 霞はゆっくりと、再び大きくなった自分の腹を撫でている。 彼女の言う通り、既に霞の産んだ子の数は片手の指では足らず、 今妊娠している分も合わせれば、さらに増えようかという勢いだ。 初産から乳の出のいい方だったために、彼らを飢えさせることこそないが、 それでも、寝るための場所が物理的に圧迫されていくのは避けられない。 わちゃわちゃと母に甘えてくる子供たちのことを思えば、広くしたい… 霞の精神は、かつての生娘のそれとはすっかり別物に成り果てていた。 霞: 忙しくて、髪も整えられなくてごめんね… でも、こういうのも好きだって言ってくれて嬉しい\I[122] 櫛が滑るほどの艶やかな長い黒髪は、子育ての中でぼさぼさに跳ねてしまい、 更に長さと毛量を増して、彼女のシルエットを大きく歪な形に見せる。 度重なるお産で胸にも、尻にも、腰にもそれぞれに熟れた肉が付き、 まだあどけなさを見せる顔つきと相まって、目を見張る美しさを産んでいた。 そんな妻の身体を味わおうと、夫は子供たちが見ているのも気にせず、 既に妊娠数か月に達して無駄な種を打つだけにしかならない相手にも、 いつものように激しく、快楽と繁殖に全てを注ぎ込んだ抽挿を始める。 霞もつがいの性器が突き刺さると、たちまち一匹の豚に変わって媚を売る… そんな彼らの痴態は、既に多くの人々が知るところであり、 人が豚と夫婦生活を送っている滑稽さや、人が豚を産むおぞましさ、 霞ほどの上玉が、豚の慰み者になって――それでもなお美しいことだとかが、 いまだにこの檻の前に、黒山の人だかりを作る理由となっていたのだ。 豚の腰の一突きごとに、歓声や罵声が重なって、不快な鳥の鳴き声になる。 カメラのシャッター音も、それを共有する通知音も、繰り返し繰り返し。 霧島の生き恥、豚の嫁、といった不名誉なあだ名の数も増え続け、 助けに来た仲間たちは――彼女と同じく、別の房で豚になっている。 霞: っく――っ、あぁ…! もうじき、いもうとが、うまれるっ…から、ね… ふぅ…っう! 手慣れたもので、いよいよ産まれる瞬間が近いと感じた霞は、 豚に耕されて黒く育ってしまった肉厚の性器を、足ごと開いていきみ始める。 ゼリー状の精液が羊水に流されて細かな塊と化してぼどぼどこぼれ、 ピンク色の肉塊が、その最奥からゆっくりと姿を現す―― 既に乳離れを済ませた子豚も、まだそうでないものも皆、頭のてっぺんには、 母親譲りの黒味がかった体毛がつむじを撒いており、血の繋がりを思わせる。 ――もう一匹、股間からぶしゅりと飛び出した。雌の個体だ。 わずかに引き継いだ特徴の他は、まるっきり父親と同じ豚の姿… それでも、いまだに夢幻の中にいる霞には、自分そっくりの我が子なのだ。 彼らが育てば、どちらに似るのだろう――そんな想像に囚われながら。 あるいはとっくに、自分も豚であると思い込んでいるのかもしれないが… いずれにせよ、またすぐに“次”の仕込みが始まることに変わりはない。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【虫開幕】 霞: これが本体ね…大きいだけで、動きは遅そう… 霞はただ一人、森林の奥地、未踏の樹海の真っただ中にいた。 近隣の生態系が乱れ…特に虫類が最寄りの集落で大量発生したことや、 見慣れない植物が繁茂し、餌を失った大型動物が降りてきた理由が、 何か人間の理解の及ばない力によるものだ、と判断したためである。 果たしてその予想の通り、異様な植物を辿った先にいたのは、 巨大な花弁と生物の眼球を思わせる器官を有した、食虫植物めいた花。 意志を持つかのように蔦はゆらゆらと左右に揺れ、目玉は霞をじっと睨む。 だが抵抗するだけの力を持つでもなく、花は身をよじるだけだった。 霞: すごい臭い…ううっ、たまらないわね… 早く帰ってお風呂にしましょう。 涎のごとく半透明に垂れる蜜からは鼻を背けたくなる異臭が漂い、 花粉もつん、と刺激のある刺々しい香りを漂わせながらガス状に広がる。 当然、霞の体には肌とも服とも区別なく、その臭いが噴きつけられていた。 ぐっと握った拳で花の中心に穴を開ける。すると、また臭いの濃い液体が… 帰りの道すがらに、小川で水浴びをしても全く薄まる気配はなく、 道行く人に怪訝な顔をされつつ、霞はなんとか霧島に帰還したのだった。 服を着替え丁寧に湯浴みをし、処理した生物についての報告をまとめ、 これで自分の修行は終わり、と胸を撫で下ろすも… 初美: んー… 霞ちゃん、今日のお勤め、そんなに激しかったですかー? なんだか、ちょっと…変な、臭い、がー…? 親友の言葉につられて巫女装束の袖を嗅ぐ。だが、異臭はどこにも―― 首を傾げながら、緩く帯をほどいて腋や腰に接した箇所や肌着を調べるも、 あくまで自分の鼻に届くのは、普段の体臭から逸脱しない範囲のもの。 困った様子でそそくさと服を着直し、廊下を進む霞に… 霞: 花…?いい、匂い…どこから来てるのかしら、これ? …あら、虫が入ってきてる。 もう、寄ってこないで、あっち行って…! うっとりするほどに良い花の香りが、自然と彼女の足を前へ前へと誘っていく。 足取りを先導するかのごとく、蠅の群れが周囲をわんわんと飛び回り、 それを手で払いながら、霞はふらふらとどこへともなく進む… 風呂に行ったはずの霞の姿は、そのまま誰にもわからなくなってしまった―― *【虫一回目分岐前】 霞: ここから… …!あれ、いつの間に私、こんなところに…? 無意識のうちに霞は、かつて修行のために巨大花を処理した森まで来ていた。 芳しい残り香がまだむんむんと、周囲の土や草木に絡んでいるように思える。 辺りを見渡してみても、既にあの花は朽ちきって残骸もなく、 なぜ自分がここに来てしまったのか――想像がつかなかった。 霞: (頭がぼーっとする…なんだか、暑い…?) 指が自然と、服の隙間に割り入り、少しでも肌を晒して凉を取ろうとする。 汗が揮発し、内に籠った熱と霞の体臭を風に乗せて、森の中に吹いていく。 青々とした香りが妙に心地よく、少しでも森の息吹を感じたくて―― 霞は誰に言われるでもなく、着ていた服を全て脱ぎ、草の上に寝転んだ。 ちょうどドームのように、幾重にも重なった梢が光を遮って、 枝と葉の擦れる音が、誰もいない空間にざわざわと、断続的に繰り返す。 呼吸音と心音とにリンクして、自分がこの森と一体になっていく… すると霞は、自分のすぐ近くに無数の生物の息遣いがあることに気付いた。 霞: はぁ…気持ちいい…ずっと…いたくなる… …あれ、虫が…こんなに… 寝転んだままでは、周囲を見渡すことなどできないが、 自分より遥かに小さい彼らの呼吸音さえ、聞こえてくるかのよう。 触角が指先に触れ、肌の上に腹脚が這い、髪の上に鱗粉が落ちる… 常人なら嫌悪するそんな様子を、霞は愛しいと思った。 霞: あはは、くすぐったい… もう、いたずらしないでよ… 霞を取り巻く虫の種類も数も、時間が経つごとに多くなる。 それらの様々な虫は、いずれも霞に引き寄せられるように集まっており、 霞は自然と、自分が彼らを呼んだのだと本能的に理解していた。 そして――虫たちが真に目指すのはもちろん、霞の一番大事な… 霞: えっ…そう、わかった… “ここ”に入りたいのね…? 開けてあげる。おいで… 指が秘肉を割り開き、艶々と血色のいい内臓の色を外気に晒す。 本来なら、彼女の夫となるべき人にしか見せないはずのものを、 土にまみれた矮小な虫が、何の感慨もなく踏み汚す… 一匹の芋虫が、膜を破り、まだ誰も知らない中を、進む。 霞: んっ… ぁ、いた…っ、大丈夫、気にしないで… 芋虫の身体は既に外部からは見えない深さに入り、 膣肉にぎゅうぎゅうに挟まりながら霞の最奥、子宮を目指す。 かつての彼女なら、気が狂うような光景…だが霞は、 自分に入り込むその虫を、心の底から受け入れてやりたいと思っていた。 そうして、その虫が体の全てを、彼女の膣内に埋めきってしまうと―― びゅるり、と生臭い何かが、奥の奥で弾ける。得体の知れない何かが。 芋虫の体内から出るものなど――きっと、ろくでもないものであろうのに。 胎の中にたぷりと揺れるそれを、皮膚越しに霞は撫でながら微笑んだ。 ★ 霞: そういえば… 私、なんでこんなところに…? ふと、魔法が解けたように霞は草布団からむくりと立ち上がった。 次を狙っていた虫たちが振り落とされてぼてぼてと地面に転がる。 まだ体の芯に、あの熱と興奮とが残ってはいるが―― 霞の心には、まだいくらかの理性と、現状を訝しむ判断力があった。 霞: (…急いで帰ることもないかな) 再び寝転がる/やめておく 霞: さっきはごめんね… 虫を手に乗せてやる/やめておく 霞: あなたも、“ここ”に来たいのかしら… いいわ、ちょっと待っててね… 霞: (少し体でも伸ばそうかしら…) 霞: (…道は、覚えてるわね) 森から離れる/やめておく 霞: (帰らなきゃ…霧島に…) 足を踏み出す/やめておく 霞: (ああ、体がドロドロ…川で、洗ってから帰ろう) 霞: (まぁ、もう少しいようかな…) *【虫一回目逃走】 霧島までの道すがら――霞は段々と、体の不調を感じ始めた。 膣内を中心とした、どっしりとした異物感…張るような感覚。 始めは、不衛生な場所にいたことが原因だろうか、とも思ったが、 いくら水浴びや湯浴みをしても薄れず、訪れた病院で―― 医者: ふ−む…石戸さん、あなた一体どこで何を? …失礼ですが、男性との経験はおありで? 霞: いえ、それはちょっと… ですが、男の方とお付き合いしたことは…ない、です。 霞の言葉に医師はますます眉間に皺を寄せて、カルテを睨む。 腹部の超音波検査の記録や、採取した体液の分析結果と照らし合わせ… 髭を忙しなく撫で、頭をガリガリと掻き、首を大きく回したのち、 合点がいかない、といった表情で、霞に告げた。 医者: あなたの身体には、妊娠時に近い兆候が出ています。 体調の不良は、おそらくそれに起因するものでしょう…が、 いないんですよ、胎児が。子宮内に異物らしき小さな影しか… 彼の言葉に、霞はどきり、と心臓を掴まれたような気がした。 あの森の中での行為が原因と、ほとんど直観的に理解をして。 そして同時に人ならざる虫けらに孕まされていたという事実にも―― 医師が勧める摘出手術にも、言葉を呑み込み、そのまま頷く… *【虫二回目分岐前】 あの森に霞が来てから――しばらくの時が経った。 木々は今日も、変わらず青々としたカーテンで霞ごと草地を覆い、 光量と気温とで、昼夜の過ぎるのを遠くに感じるだけ… 空腹感や疲労は不思議となく、時間が止まっているかのようにも思える。 霞: あ、動いた…\I[122] けれども、彼女がここに留まった結果は確実に表れていた。 あの時と同じように草の上に寝転がる霞の腹部は、明確に膨らんでいる。 男性経験もなかった彼女は、つい先日まで清らかな乙女であった。 しかしそれを知るのは――誰か一人の伴侶ではなく、数多蠢く虫けらだ。 人間の男――あるいは何らかの哺乳類か、超自然的な怪異か… それらとの交尾らしい交尾を経由せず、霞の子宮に巣食う“何か”。 芋虫や、甲虫、節足動物…“蟲”と呼ばれるあらゆるものとの交わり。 膣内への侵入という形は取っているが、本来の交尾とは似つかぬはず―― 霞: 出たいの…? でもごめんね、まだ早いみたい… その得体の知れないものを、霞は自分の血を引く存在だと確信していた。 するはずのない妊娠、存在しないはずの胎児――と呼べるかも不明のもの。 奇妙な胎動に頬をほころばせる姿は、普通の妊婦と変わらない―― 霞はすっかり、自分もこの森の生態系の一部なのだと思っている。 霞の肌の上に、また何匹もの蟲が集って、我が物顔に這い回る。 膣口に頭を突っ込んだり、乳首をぐるりと囲むように体を曲げたり… 異常な光景でこそあれ、それは赤子と母親のじゃれ合いのようでもあり、 あるいは夫婦の睦事にも、どこか似ていた… しばらくして。腹部の蠢きは、時間と共に段々と激しくなっていき、 一際大きく波打ったかと思うと――霞の股座から、何かが這い出す。 脱皮直後を思わせる、白く濁った半透明の物体…霞の体液にまみれながら。 それを皮切りに、霞の乳房からはぷしゃあと母乳が垂れてこぼれる… 虫たちは一斉に噴水の源に集い、樹液を舐めるがごとく群がった。 自分の体の上にいる虫たちの邪魔をしないように、霞はずっと大の字で、 何百、何千もの細く小さな足が皮膚を撫でる感触に酔いしれていた。 その間も、また股間から新たな白い塊が何匹も、臍の緒をぶら下げて… ★ ふと――霞の頭に、一つの想いが浮かんだ。 このまま森一杯に自分の子たちが増えれば、やがて移動が必要なのでは? そう考えるのも無理からぬほどに、彼女の周囲には無数の蟲がいる。 ここでずっと体を差し出すのか、新天地を求めるべきか―― 霞: やっぱり、皆もここの方がいい? このまま過ごす/考え直す 霞: (今のところ、問題はないんだけど…) もっとここにいたい/考え直す 霞: まぁ、いいか…ほら、おいで… 霞: (じっくり考えようかしら) 霞: (そうだ…もっと皆を、遠くまで…) 森から出る/考え直す 霞: (兄弟増やすなら、広いところの方がいいものね…\I[122]) 皆を連れていく/考え直す 霞: (どこに行こう…後から考えるか) 霞: (ここも、居心地はいいんだけどなぁ…) *【虫二回目逃走】 森ごと動いているように見えた、とまで言われた蟲の大移動現象… 一時期収まっていたはずの大量発生が再び起きたのかと、 近隣の住民は恐れたが、その中心に人の影がある、と知れると、 霞を強引に拘束する形で群れから分断、鎮圧・駆除作戦が開始された。 一匹一匹は、所詮毒も攻撃性も大したことのない虫であり、 中核であった霞を失った結果、一気に処理が進んで生態系は落ち着いた… ――だが霞の胎内には、いまだ何十もの蟲がうぞうぞと蠢いていて、 そのどれもが、それぞれに異なった種類と成長度合いをしていた。 摘出手術を進めた医師は、そのおぞましい状態に言葉もなく、 生物学の根幹を揺るがしかねない、人の遺伝子を得た昆虫の標本―― 中には、内骨格らしき器官を獲得し始めたものまであったと言うのだから、 霞の身体が、どれだけ異常な状態にあったかは、語るべくもない。 看護婦: 先生、また石戸さんの腹部が… 医者: またか…先週ほとんど取り出したのに、これで何回目だろうな… あのグロテスクな肉の塊が赤ん坊みたいに鳴くのを見ると―― うっ、ぷ…すまん、思い出してしまった… 何度摘出を繰り返しても、霞の胎内にはまた何匹もの“蟲”が現れる。 母親と臍の緒で繋がった、異常な生態を持ったまま… 段々と、彼女の胎内に宿る“蟲”は変容――あるいは進化を繰り返している。 医師や看護婦の想像した、人間と虫の混ざった成りそこないも、数知れず… ここに搬送されてからの霞は、ただ生きながらにして無尽蔵に子を産む。 蟻や蜂の女王が一生分の精子を体内に抱え、交尾なしに子を産むように… その果てに彼女が何を作り出すのか――自分たちは何を見てしまうのか? そのことを考えると、病院中の誰もが、背筋を冷たくさせるのだった。 *【虫三回目】 森の蟲の数は、かつて霞が対処に訪れた頃よりはるかに多くなってしまった。 近隣の人里は揃って、日常生活に支障が出るほどの虫害に遭い、 霞のいる森、およびその近辺の山々はほとんど人が訪れることはない。 蟲以外の生物も山を離れざるを得ず、生態系は異様な形に歪んでいるのだが、 本来捕食関係にある蟲同士も、兄弟同士での共食いなどはぜず、 かといって草食昆虫が、草木を残らず食い尽くす、といったことも起きない。 何を食べているのか――そもそもなぜ、虫との交尾で人が妊娠するのか? それらの問に、霞は答えを持たない。考えようとも思わない。 ほぼ常時臨月大に膨らんでいた霞の腹部はさらに数周りは大きさを増した。 数万にも届こうかという我が子に乳を与えるための胸も、どっしりと重く。 全身から漂う香りは、ちょうどあの花が撒き散らしていたものと同じ。 虫たちは繁殖と食事の全てを、霞の身体を経由して行っている。 霞: かわいい…\I[122] あら、また…うまれて、くる…\I[122] 霞自身、何を口にするというわけでもないのに、空腹や渇きを感じないのだ。 自分はこの森そのもので、この蟲たちの母で、それを産むための存在。 そんな内なる声に操られるようにして、彼らに身を捧げ続けてもなお、 彼女の中からは数限りない赤子――当然、蟲の姿のそれが、這い出てくる。 日によって産まれてくるものは違う。数も形も、色も、何もかも。 けれどそれらは全て、青白い殻の先で対照的な赤黒い臍の緒で霞と繋がった、 自然界の道理を完全に超えた、あってはならないはずの生物群である。 その点において、かつてこの森にいた異様な巨大花とも似てはいた。 ――時折、駆除のために人が森を訪れることもなくはないのだが、 飛び交う虫の群れは分厚い壁のように外敵を追い払い、中心に寄せ付けない。 中で何が起きているかは、完全に人間界の理解の範疇外となった。 外に溢れ出る蟲を処理するのがやっと、といったところ。 ふう、と長めに息を吐いて霞は草に寝転がった。いつもの出産の頃合いだ。 子宮内の蟲の数も、今では産む前からおおよそ想像できるほどになった。 産んでは孕み、また産んでは孕み…彼女の産道を、何かが通らぬ日はない。 それが外から内であれ、また逆であれ、霞は無限の愛情をもって接している。 霞: ねぇみんな、そろそろ、他のところにもいきたい…? このお山の外にも、きっといいところはあるわ… 母の言葉に、蟲たちはざわざわと歓喜に震え、森全体を揺らした。 森の核であり、自分たちを作り出す主の役割を、かつてはあの花が担い、 今は霞が担っているというだけのこと。それを自覚してはいないが。 彼女のいるところがこの森と同じ異空間であり、いるだけで周りを浸食する。 この森にいる今でこそ、霞の母乳と胎盤とで賄われている蟲たちも、 ここから出れば――必然的に、他の生物を餌食として生活することとなる。 この森の中では、産まれるものも霞の血を引くだけの蟲であるが、 その縛りが解かれた時、半人の遺伝子がどれだけ異常な変容をすることか… ここから出るということは、摂理から外れたこの森の理を外に出すこと。 霞という特異点を中心に、自然の形が歪んでいくということ… 蟲は、自分たちが世界を作り変えることへの期待と征服欲に満ちていた。 それを、幼さゆえの無邪気な好奇心と――霞が勘違いしたまま。 ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34 *【トゥルーエンド】 初美: ――ちゃん、霞、霞ちゃん…? ああ、起きましたねー。 姫様そっくりな寝顔でしたよー? ――はっ、と気を取り直し、ぼんやり霞んだ目を拭う。 遠くに聞こえる鳥の声から、やがてピントは目の前の友人たちの笑い声に。 垂れていた涎をすっと拭いて、何の気なしに視線を手元に落とす。 散乱した紙片には、ずらずらと堅苦しい文章が並んでいる―― 小蒔: もう、大事なお話なんですからからかっちゃいけませんよ。 …ところで、どこまでお話ししてましたっけ? 霞: ええと――そうそう、修行で神境を出て、 私が行ったのは―― 先達として、魔を滅し神を降ろす術を磨いてきた時の話… 霞はその経験をレポートにまとめ、小蒔や女仙たちに説いていた。 女性として、そのような任務に就くことの危険性や心構え、 緊急事態に備えての、バックアップ方法や連絡事項… 資料を読み上げながら、不思議と霞は体が浮くような感覚に囚われた。 確かに自分が通り過ぎてきたものが、ここには書かれている。 だが、どこか他人事のような――実感の欠けた想いがする。 ここに書かれているのは、本当に自分なのか――そんな気持ちが。 もし、ほんの少しボタンが掛け違っていれば――自分はここにいなくて、 どこかの誰かに捕まって、酷い人生を辿ることさえあったかもしれない。 たまたま自分がこうやって神境にいること自体、奇跡なのかもしれない。 薄皮隔てた平行世界の向こうで、子供を産まされていたのかもしれない… そんな別の自分が、じっとこちらを見つめているような気がした。 同じ“石戸 霞”の可能性同士、羨みも妬みも見下しもする―― ここにいる自分は、どのような道を辿ったものであったのか。と。 そして、選ばなかった道の先には、何があったのか――誰にもわからない。 霞: ――うん、これで説明は終わり… 皆、お疲れ様。私の番は終わったし、皆を手伝うからね。 …あらあら、小蒔ちゃん、寝てちゃだめよ…もう。 背中に感じていた視線は、やがてうっすらと消えていくようであった。 友人たちがどのような道を通るのか――まだ本人にも知りえないこと。 だがそれを少しでも良い方向に導いてやるのが、自分の役割である、と、 離れていく自分の幻影に向けて、霞は誓いを立てる… ――――――――――――――――――――――――――――28―――――34