二次元裏@ふたば

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242947 B24/05/07(火)20:54:09No.1186726440そうだねx2 22:01頃消えます
「ヴァン様〜!お膝より波が深い所にいっちゃだめだからね!ヴァン様泳げないんだから」
「ああ、ご心配ありがとう」
私は夏の日差しの中、パートナーの小さなレディと共に波打ち際で戯れていた。
今は人間の子供はバカンスの時期らしい。私は彼女の付き添いとして、仕事を休めないパパさんとママさんの代わりに二人、城ケ崎家の親族の家に泊まりに来ているのである。
「リアルワールドの海は何度か見た事があるが、海水浴をするのは初めてだ。いやぁ、君といると飽きない日々を送れて楽しいよ」
「えへへ、そう〜?嬉しい…あ!帽子!」
海風に吹かれて、彼女の花飾りのついた帽子が堤防の方に飛ばされていった。
「あ、ああ〜!んもぅ…ちょっと取ってくるから、溺れないよう気をつけてね」
レディはサンダルで砂浜をパタパタと駆けていく。私が心配される方なのか…?首をかしげながら彼女を目で追っていると、おぅい、と土手の方から声がする。彼女の親族だという老年のマダムだった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/05/07(火)20:54:38No.1186726659+
「スイカでも食べるかね、ヴァンさん」
「ああ、どうも」
「しかし都会の人は浜でもその格好なのかい、暑くないんかね」
私は苦笑する。ここの住民はデジモン慣れしていない為、ヴァンデモン族が人型に近い外見なのを利用して『そういう流行のファッションである』という事にしてあるのだ。我ながら少々無理があるかと思ったが、遠方のパパさんとママさんからの電話のフォローもあり、一応の納得は得られたのだった。
さて、私のパートナーに視線を戻すと、帽子を持ってとたとたと駆けよってくる。
「やあ、帽子が海に落ちる前に拾えてよかったね」
「ううん。帽子、落ちちゃったんだけど、そこを泳いでいたお姉さんが拾ってくれたの」
ほら、とレディは堤防の方を振り返るがそこには何の人影もない。
あれぇ、と傾げたレディの首元に、青黒いオタマモンのような形の痣が見えた。
224/05/07(火)20:54:57No.1186726790+
「レディ、ここはどうしたんだい」
私はその痣につん、と触れる。
「え、何か出来てる?やだー、クラゲ刺されかな…?うまく見えない。でも痛くもかゆくもないよ」
「オシルシだ」
後ろにいたマダムが低く呟いた。凄まじい形相だった。
「オシルシ?」
「あかん。のばらちゃん、家もどるで」
「オシルシ、とはなんなのです?マダム」
詳しく説明されないまま、我々は慌ただしくマダムの住む古民家に戻った。
324/05/07(火)20:55:19No.1186726974+
『城ケ崎さんちの子にオシルシがついた』
『うみぼっさんが来る』
村の大人たち…というかほぼお年寄りばかりなのだが、慌ただしく騒ぎ立てている。
渦中の私とレディは要領を得ないまま村役場に担ぎ込まれ、大量の塩を頭からかけられ、長時間にわたる祈りの呪文のようなものをじっと聞かされた。
「のばらちゃん、今夜はこの部屋から出たらいかんよ」
「ねぇ、一体何が来るの?」
すっかり怯え切った私のパートナーを安心させるために、私は事態に対する説明を求めたが、
「あれは正直わしらにもようわからん」
とだけ、暗い面持ちで老人たちは語った。
424/05/07(火)20:55:38No.1186727148+
日も落ち、暗闇に遠く波の音だけが静かに響く夜。
その静寂を破って、突然役場前に建てられたスピーカーからひび割れた音色が流れた。
これは私も知っている。子供たちが帰る時になるチャイムだ。
誰が触れるでもなく部屋の隅に置かれたテレビも付いた。砂嵐の向こうから声が聞こえてくる。
おかえりなさい、おかえりなさい、おか、お、おかえり、なさい…
襖がすうと開き、レディが部屋から出てきた。
「レディ、大丈夫だから部屋に戻っていたまえ」
「でも、あたし、帰らなく、ちゃ」
部屋の老人たちは真っ黒な目をして、ここだけ時が止まったように固まっている。
(これは…!)
一瞬の隙をぬって、私のパートナーは裸足で表通りに飛び出した。
524/05/07(火)20:55:55No.1186727284+
「ノバラ!」
彼女は瞬きもせず海を見ている。視線の先には昼間に帽子を落としたという堤防。
灯台の青白い灯りが巨大な影を照らし出している。
(あれは…デジモンだ!)
デジタルワールド圏の存在、ならば。
「失礼、レディ!」
私は彼女の首筋の痣に軽く牙を立てると、ちゅうとそれを吸いだした。
(やはり何かのプラグインだ。リアルワールドの生き物に干渉できる理由は分からないが…)
ぺ、とそれを吐き出してマントで口をぬぐう。
「大丈夫かい」
「あ、あれ…?どうしたの?ヴァン様」
小さなレディは腕の中で目を白黒させている。
海の方を見やると、巨大な影はもうどこにもなかった。
624/05/07(火)20:56:34No.1186727580そうだねx2
「のばらちゃん、明日帰んなさい」
家に戻るなり険しい顔でマダムは言う。
苦々しい気分だが私も賛成だった。
あのデジモンはまだこの浜にいる。
724/05/07(火)20:57:10No.1186727886+
ミレントさんとパートナーさんをお借りした怪文書です
いあいあごめんなさぁい!
824/05/07(火)21:00:05No.1186729203+
まだ5月なのに夏の話多いね!
924/05/07(火)21:00:07No.1186729223+
うわーゴーストゲームしてる!?
1024/05/07(火)21:00:27No.1186729391+
キャー!ヴァン様よー!
1124/05/07(火)21:02:52No.1186730548+
>私は彼女の首筋の痣に軽く牙を立てると、ちゅうとそれを吸いだした。
アウト!
1224/05/07(火)21:05:23No.1186731728+
>ミレントさんとパートナーさんをお借りした怪文書です
>いあいあごめんなさぁい!
こちらこそ使ってくれてありがとございます!
1324/05/07(火)21:05:38No.1186731837+
真面目なホラー回だ…
1424/05/07(火)21:06:05No.1186732032そうだねx6
>>私は彼女の首筋の痣に軽く牙を立てると、ちゅうとそれを吸いだした。
>アウト!
対処療法だからセーフ!
1524/05/07(火)21:31:37No.1186743976+
海の怪異いいよね…
うおっちょっと洒落にならん
1624/05/07(火)21:42:24No.1186748614+
真摯フォロー助かる…
1724/05/07(火)21:55:11No.1186753716+
>>>私は彼女の首筋の痣に軽く牙を立てると、ちゅうとそれを吸いだした。
>>アウト!
>対処療法だからセーフ!
リクエスト判定を!
1824/05/07(火)21:56:31No.1186754266+
>いやぁ、君といると飽きない日々を送れて楽しいよ」
ここヴァン様からの激重ポイント


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