二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1713693429611.jpg-(119454 B)
119454 B24/04/21(日)18:57:09No.1180833429そうだねx1 20:00頃消えます
『デスティニープランは我々コーディネイターがこれまでに培ってきた遺伝子工学の全て、また現在最高水準の技術を以て施行する究極の人類救済システムです』

『人はその資質の全て、性格、知能、才能、また重篤な疾病原因の有無の情報も本来体内に持っています。まずそれを明確に知ることが重要です。今の貴方は不当に扱われているかもしれない。誰も貴方自身すら知らないまま貴重な貴方の才能が開花せずにいるのかもしれない。それは人類全体にとっても非常に大きな損失なのです』

『私達は自分自身の全てを、そしてそれによって出来ることをまず知るところから始めましょう。これは貴方の幸福な明日への輝かしい一歩です』

『誰もが自分の定めを知り役割を果たして生きる。このプランにより私達は未来への不安と飽くなき欲から解放され、無益に争い戦い続ける悲劇の歴史に終止符を打つ事が出来るのです』
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/04/21(日)18:57:42No.1180833677+
「つまりは遺伝子による管理社会……これが戦いの連鎖を終わらせるための方法として、デュランダル議長の辿り着いた『答え』なのですね」
 放送を見ていたラクスが、その内容を端的に総括する。
「でも、いきなりこんなプランを導入・実行だなんて、そう簡単に受け入れられるのかしら?」
「プラントはレクイエムの被害の直後です。そして地上はロゴス狩りの影響で力を失っている状態……今や世界のリーダーである議長の示す道となれば抗い難いでしょう。もう戦わなくていい、失わなくていいと、人々が渇望している平穏な生活が約束されているのですから」
224/04/21(日)18:57:56No.1180833785+
「それなんですが……ターミナルから気になる映像が入っています」
 チャンドラの台詞と共に、ブリッジのモニターにある映像が映し出される。
「これは……」
 先刻のザフトの作戦で破壊されたはずの、レクイエムだった。
「どういうこと? 破壊されたんじゃなかったの?」
「基地攻略は元より最小限の破壊で済まされたそうですが……設備自体も未だ稼働している可能性が見受けられると」
「まさか、ザフトが……?」
「分かりませんが、どちらにせよあれが機能しているのなら、依然として世界は脅威に晒されていることになります。慎重に監視すべきです」
「……そうね」
324/04/21(日)18:58:18No.1180833962そうだねx1
 その数刻後。
「あー、いいお湯!」
「そうですわね」
「ん〜? アンタしばらく見ないうちに胸おっきくなった?」
「ど、どうしょう……下着のサイズは変わってなかったと思いますが……」
「そう? ったく、キラと私の揉み込みが足りなかったか〜? うりゃっ」
 フレイは後ろからラクスの胸を鷲掴みにする。
「ふ、フレイさん!」
 二人のやり取りから意味を察したカガリは、赤面しつつため息をつく。
「本当に呑気なもんね……」
「良いじゃない、別に。……ひょっとしたら、最後になるかもしれないし」
「ちょっ、不吉なこと言わないでください!」
 フレイとラクスのやり取りを見ていたミリアリア、マリュー、メイリンもそれぞれ駄弁る。
 アスハ邸の大浴場で、クルーの女性陣たちは入浴を楽しんでいた。ここまで付き合ってくれた皆への、せめてもの慰労とのことだった。
424/04/21(日)18:58:31No.1180834043+
「でも、デスティニープランねえ。もし通ったら私どうなるのかしら」
「……まだ分かりませんわ」
「私良くも悪くもルックスしか自信ないし。娼婦とか慰安婦とか?」
「そこまで言わなくても……」
「でも遺伝子で適性を決めるって『そういう事』でしょ?」
「「「「「!!」」」」」
「私じゃなかったとしてもそういう仕事に回される人は出て来るわよ。そんでそれを拒否したら多分アレをぶち込んでくるんでしょ? そんなの長続きするはずないわ」
「……ええ、その通りです。ですから、絶対に止めなければいけません」
 ラクスは、先ほどとは打って変わって毅然とした態度で答える。
「分かっているだろうが……明日、私はプランを拒否する声明を出す。そしてそれと前後して、貴女方には月に向かってもらう。そこでエターナルやクサナギと合流し、一気にあれを叩く。どんな理由であれ、あんな物が撃たれることはもうあってはならないんだ」
 カガリもまた、決然とした態度を取る。そこに、最早戦場で泣き叫んでいただけの姿はなかった。
524/04/21(日)18:58:59No.1180834236+
 風呂から上がった後、フレイとラクスは車でアークエンジェルに送り届けられる。全員同時でないのは安全対策とのことだった。
 車を降りた後、船に乗り込む直前にフレイはラクスに問うた。
「そう言えば、アンタ自身はどう思ってるのよ」
「何をですの?」
「デスティニープランよ。相変わらずふわふわした物言いだから、アンタ個人の考えが見えないのよ」
 それを聞いた途端、ラクスは再度表情と声色を毅然とした物に変える。
「勿論、断固反対です。デュランダル議長が用済みとなった者、意に添わぬ者をどう扱うかはご覧になったでしょう。アスランは濡れ衣を着せられた挙句殺されかけ、ミーアさんは私を誘い出す捨て駒にされました。そんな人間が世界をどう扱うかは想像に難くありません。……仮にそれらがなくとも、わたくしにとってプランは不利益しかありませんわ」
「不利益?」
「デスティニープランが施行されれば、おそらくわたくしはキラと一緒に居られなくなります。わたくしとキラの間には、子供が出来ない可能性が高いですから」
「……は?」
624/04/21(日)18:59:33No.1180834494+
 突然の告白にフレイは呆ける。
「ちょ、ちょっとそれどういう事よ!?」
「……大多数のプラント市民には秘匿されていますが、現在第三世代コーディネイターの出生率は深刻なレベルで低下しています。原因は遺伝子操作によって遺伝子の型が複雑になり、世代が進むほど受精卵が発生しない確率が上がるようになったからです。現在も解決策は見つかっていません。パトリック・ザラを初めとした保守派は科学技術の発展でなんとかなると楽観的に考えていたようですが……父シーゲルは、そうではありませんでした」
「ナチュラルとの間であれば問題はないので、父がナチュラルとの融和路線に転じたのもそれが最大の要因です。コーディネイターは単独で存続し得る種ではないと見切りを付けたとも言えます。ですから、ブルーコスモスが唱える遺伝子操作への批判もあながち間違いとは言い切れない面があるのです」
724/04/21(日)18:59:59No.1180834677+
「元をただせば、わたくしとアスランの婚約も親の関係以上にこの遺伝子的な相性に依るものです。キラとの場合、彼は第一世代ですが、わたくしが第二世代である以上は……少なくともあまり期待は持てないでしょう」
「そして現時点でも、プラントでは子供の出来ない組み合わせの男女は結婚を許されません。議長の言うデスティニープランはそれを世界レベルで更に推し進めるものですから、状況は変わらないか、より統制が強くなるだけでしょう」
「……アンタ、全部分かっててキラの所に……」
 フレイは呆然と呟く。それを聞いたラクスはフレイに皮肉気な笑みを向ける。フレイは、ラクスをとっさに抱きしめる。
824/04/21(日)19:00:11No.1180834783+
「ごめんラクス、私……」
「……キラの側に居ることも、彼に身を委ねたのも、運命でも何でもない、わたくし自身の意思で決めた事です。あのコテージでお二人と過ごした日々は、とても楽しく幸せでした。ですから、それを守るために戦うのです」
「ラクス……!」
「後、これは前々から言いたかったのですが……お二人に子供が出来ましたら、わたくしにも可愛がらせてくださいね」
 そう言うと、ラクスはフレイを抱き返した。
924/04/21(日)19:00:47No.1180835041+
 一方その頃。
「一部の人達にとっては……救済に映るんだろうか?」
「え?」
 放送後、キラとアスランはアークエンジェルの艦上で語り合っていた。
「俺は議長が世界のリーダーだなんて認める気はないし、プランによって訪れる世界が幸福とも思えない。でもそんなのは所詮俺個人の感傷で、戦いに疲れ平穏を望む人達にとっては……」
「……もう戦いたくないって気持ちは分かるよ。僕だって嫌だし。だけど、それでもこんなプランは駄目だ。怖いとさえ思う」
「どういうことだ?」
「遺伝子によって役割が決まるのなら、今よりもっと優秀な人間を作ろうとする人は必ず出てくる。それならまだいい方で、あの仕事のためにこう作ろうとか、あの役目の為に人間をこう作り変えようとか、絶対そういう事も起きる。結局それは、僕の出生や連合の生体CPUの悲劇の繰り返しだ。そんなの、当たり前になっちゃいけないと思う」
1024/04/21(日)19:01:00No.1180835143+
「キラ……」
「まあでも、そんな先の事より……僕は、僕の周りの大切な人達と、その人達の夢や未来を守りたい。それが願いだ。これまでも、これからも」
「そうだな……俺達だけじゃない。皆、今必死に戦ってるのは……夢や願いがあるからだろう。それが争いの原因だったなんて答え、俺は納得できない」
「そうだね……みんなの夢が同じだといいのに」
「いや、同じなんだ多分。でもそれを知らないんだ。俺達はみんな……」
1124/04/21(日)19:01:26No.1180835367+
 夜が明け、アークエンジェルの発進前にカガリからのスピーチが送られる。
「今日ここに集まってくれた者達は、事情は違えど同じ意思を抱いていると思う。我々は今日、デュランダル議長の唱えるデスティニープランに対し明確に反旗を翻す。彼の作ろうとしている未来に疑問を抱く者は我々以外にも居るはずだ」
「何のトラブルもなく、という保証は出来ないが、アークエンジェルには正式にオーブ軍第二宇宙艦隊所属として出来る限りのサポートを約束する」
「オーブとして何より望みたいのは平和だが、だがそれは自由、自立での中でのことだ。屈服や従属は選べない。そう願う全ての人々の意志を守るために、アークエンジェルにはその守り手としてどうか力を尽くして欲しい」
 スピーチを終えた後、カガリはラクスに激励を送る。
「無事を祈る」
「ええ。カガリさんも頑張ってくださいな」
「ああ。それから、ロアノーク一佐。アカツキを頼むな」
「お任せを」
 ネオは軍人らしい返しを行う。
1224/04/21(日)19:01:41No.1180835506+
「……アスラン」
 最後に、カガリはアスランの方に向き直る。
「色々言いたいことはあるが……済まない、多すぎて逆に思いつかないな」
「ふっ、なんだそれは」
「……だから一つだけ。必ず生きて帰ってこい。続きは帰って来たら聞かせてやる。これは『命令』だ」
「……了解した、カガリ代表」
 そう言うと、二人は互いに優しく抱擁し合った。
1324/04/21(日)19:01:53No.1180835606+
 アークエンジェルの出発直後、カガリの声明が全世界に向けて放送される。

『例えば私が今ここに居るのは、自らの意志と選択によって生きてきた結果だ』

『決められた道を歩むために人は存在するのではない。たとえ限られた選択肢でも、その道を歩み生きることは運命ではなく人の意志なのだ』

『決断や努力で切り開いた道もあるだろう。その選択を背負って人は生きていく』

『中立の理念とは人の意志そのものだ。我々はただそれを守り抜くのみ』

『よって我が国は……デュランダル議長の唱えるデスティニープランの導入を断固拒否する!』

 離れていく地球を見ながら、キラとアスランは語らう。
「カガリの声に賛同してくれる人が、沢山居るといいね」
「ああ……」
1424/04/21(日)19:02:06No.1180835709+
「では、はっきりと拒否を表明しているのはオーブとスカンジナビア王国だけかね?」
『はい。ですがこれに呼応してか、アルザッヘル基地に少し動きが見られます。現在、ミネルバを含む月艦隊が迎撃に向かっていますが……』
「おやおや、コープランドも大変だな。彼女のように頑張ることも出来ないのに一国のリーダーなどやらねばならんとは……まあいいだろう。ではまずアルザッヘルを討つ。準備を始めてくれ、オーブはそのあとでいい」
『はっ』
「……私はちゃんと言ったはずだがな。これは人類の存亡を賭けた最後の防衛策だと。なのに敵対するというのなら、それは人類の敵ということだ」
 デュランダルは、周囲の部下たちに指示を出した。
1524/04/21(日)19:02:29No.1180835914+
「アルザッヘルが……!?」
「間違いない、レクイエムだ!」
「やっぱり直してやがったか……」
 アルザッヘル基地がレクイエムの攻撃により壊滅したという知らせは、すぐにアークエンジェルにも届いた。
「やはり、従わねば死と議長は世界に示すつもりのようです」
「こんなもの見せられたら、カガリの声も届かないよ……!」
 その中で、一番動揺を示したのはアスランだった。
(議長……あなたも結局、最後はこうなのか!?)
 アスランは、歯ぎしりしながらただ壊滅したアルザッヘル基地の映像を睨みつけていた。
1624/04/21(日)19:02:43No.1180836025+
 その後、アークエンジェルは月でエターナル・クサナギ、および連合の残存兵力やデスティニープランに疑問を持つザフト戦力との合流に成功したため、キラを始めとする一部の人員はエターナルに移ることとなった。
「じゃあ、行ってくるよ」
「ええ」
 キラとフレイは、出撃前に最後の会話を交わす。
「あの……月並みだけどさ。君は、絶対に僕が守るよ」
「そりゃどうも……って言いたいとこだけど、私だけ守ってるわけには行かないでしょ? 貴方は今回の作戦の要なんだから、准将閣下」
「はは……」
 キラは正式にオーブ軍に編入されるにあたり、准将の地位を与えられていた(フレイは曹長)。カガリの弟という点や今までの武功、そして各種ナチュラル用OS開発の功績を加味したものであったが、戦場では基本戦って暴れることしか出来ない自分がそれはどうなんだ、と言う気持ちもなくはなかった。
1724/04/21(日)19:03:06No.1180836209+
 煮え切らないキラの様子を察してか、フレイはさらに檄を飛ばす。
「正直言うと、今更死ぬのなんて怖くないけどさ……でも、貴方が居ない人生にはきっと耐えられない。だから、必ず帰ってきて」
 そう言うと、フレイはキラにキスをする。
 二人の様子を見て、同じくエターナルに移る準備をしていたラクスも何やら物欲しそうな様子を見せる。
 それに気づいたキラは、ラクスに近づき顔を近づける………や否や、ラクスはキラの顔を掴み口吻、と言うよりディープキスを交わした。流石に面食らったのか、キラも目を見開く。
 それを見て事情を知る者は呆れ半分、羨望半分の目を向ける。
 しばらくしてから、ラクスは顔を離す。絡んだ唾液が、糸を引いた。
「わたくしもフレイさんと同じ気持ちです。皆で必ず帰りましょう、オーブに」
「ヒューッ! 大人しそうな顔して、やるなあ坊主も嬢ちゃんも」
「えっえっ……? どうしてキラさん、ラクス様ともキスしたんですか!? ていうかラクス様も明らかに舌入れてましたよね!?」
 事情を知らぬネオは感心して見せ、メイリンは動揺を示した。
1824/04/21(日)19:03:47No.1180836500+
「足の速い二隻が先行して中継ステーションを落とし、オーブ麾下の主力はレクイエム本体を破壊、か。近くにはザフト月機動艦隊もいるってのに。やれやれだな」
「でもやるしかないわ。負けたくなければ」
 マリューとネオは、覚悟を決める。
「エターナルの前に出る。ゴットフリート、バリアント起動。ミサイル発射管、全門コリントス装填。総員、第一戦闘配備!」
1924/04/21(日)19:04:01No.1180836607+
「要はやはりこの一次中継ステーションか。まずこれを落とさなければまたいつどこが撃たれるか分からない」
「うん」
「勝敗を決めるのはスピードです。敵の増援に包囲される前に中継ステーションを落とします」
「分かった。ラクス、発進する。いいね?」
「はい」
「アスラン、行こう!」
「ああ!」
「ミーティア、リフトオフ。総員、第一戦闘配備!」
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」
 キラとアスランは、最後の戦いに向けて出撃する。
2024/04/21(日)19:04:11No.1180836690+
「通信回線をわたくしに」
「はい!」
 ラクスは、メイリンに指示を飛ばす。
「こちらはエターナル、ラクス・クラインです。中継ステーションを護衛するザフト軍兵士に通告いたします。わたくし達はこれより、その無用な大量破壊兵器の排除を開始します。それは人が守らねばならないものでも、戦うのために必要なものでもありません。平和のためにとその軍服を纏った誇りがまだその身にあるのなら、道を空けなさい!」
 ラクスの演説に、少なからぬザフト兵たちが動揺を見せる。
 それと同時にキラとアスランは機体にミーティアを装備し、レクイエムの一次中継ステーションを破壊しに向かった。
2124/04/21(日)19:04:31No.1180836845+
「右舷よりミサイル4!」
「回避!ヘルダート!てぇ!」
 本格的にアークエンジェル・エターナルと敵艦隊の交戦が始まる。
「戦闘をやめ、道を空けなさい! このようなものをもうどこに向けてであれ、人は撃ってはならないのです。下がりなさい!」
 ラクスは演説を続ける。やはりそれに動揺したザフト兵たちの動きがあからさまに鈍る。
 キラとアスランはミーティアの火力を存分に振るい、守備隊の機体を一方的に無力化していく。
「アスラン!」
「ああ!」
 ステーションワンに接近したキラとアスランは、破壊の準備を始めようとするが、横槍が入る。
「あれは……」
「ミネルバ……グラディス艦長!」
 かつてアスランも乗艦していた、ミネルバだった。
2224/04/21(日)19:04:53No.1180837031+
「オレンジ12に新たにモビルスーツ4!」
「取り舵10!コリントス、てぇ!」
「ネオ・ロアノーク、アカツキ、行くぜ!」
 ネオの駆るアカツキと、それに随伴するムラサメ隊がアークエンジェルから出撃する。エターナルからも、ドムを駆るヒルダ達ハーケン隊の面々が出撃する。
「ラクス様の艦を討とうなんて、巫山戯た根性してんじゃないか! ええ!」
 ヒルダ達は、エターナルに近づくザフト戦力を容赦なく討っていく。
「グラディス艦長……」
 マリューは、ポツリと呟く。
「ミネルバ、来ます!」
「取り舵10、下げ舵15。ゴットフリート照準、ミネルバ! てぇ!」
 その内、ミネルバから発進した一機のMSが高速でエターナルに接近する。ルナマリアの乗る、インパルスだった。
2324/04/21(日)19:05:04No.1180837116+
(インパルス……お姉ちゃん!?)
「お姉ちゃんやめて! 何で戦うのよ! あんな物のために戦う必要ないよ!」
 思わずメイリンは叫ぶ。
「マーズ! ヘルベルト! あいつをやるよ! いいかい!」
「「あいよ!」」
 ハーケン隊は、ドムのスクリーミングニンバスを利用した波状攻撃……『ジェットストリームアタック』をインパルスに仕掛ける。インパルスは辛うじて躱すが、衝撃で吹き飛ばされる。
「お姉ちゃん!」
「ええい、キラ達はまだ取り付けないのか!」
2424/04/21(日)19:05:23No.1180837279+
 そして混戦の最中、ミネルバが陽電子砲ーータンホイザーを起動させ、アークエンジェルに照準を合わせる。
「ミネルバ、陽電子砲発射態勢!」
「っ、しまった!」
 アークエンジェルが動けばエターナルに当たる位置関係。タリアの優れた状況判断に感心しつつ、マリューは顔を顰める。
 そして、直後にタンホイザーはアークエンジェルへ向けて発射された。
 マリュー、フレイ、ミリアリア達は覚悟を決め身構える。
 しかし、そこに一機のMSが割り込む。ネオの駆る、アカツキだった。
「アークエンジェルはやらせん!」
 前大戦を思い起こさせるネオの行動に、呆然とするマリュー。しかしアカツキは爆散することなく、見事に陽電子砲を防ぎきる。
 それと同時に、ネオの脳裏にいくつかの記憶がフラッシュバックする。
2524/04/21(日)19:05:33No.1180837354+
 マリューと初めて出会った時。
 アラスカで彼女を助けに行った時。
 マリューと初めてキスをした時。
 ドミニオンの攻撃を防ぎ、機体もろとも吹き飛ばされた時。
 ロード・ジブリール主導の下、治療を受けた後偽の記憶を植え付けられた時。
 返すライフルでミネルバのタンホイザーを撃ち抜きながら、ネオ……ではない、ムウは叫ぶ。
「大丈夫だ、もう俺はどこへも行かない!」
「あっ……」
「終わらせて帰ろう、マリュー!」
「……ムウっ……!!」
 愛する人の本当の意味での『帰還』に、マリューは涙を溢れさせた。
2624/04/21(日)19:05:51No.1180837476+
 キラとアスランはステーションワンを破壊しようとするも、守備隊に阻まれ中々実行できずにいた。しかし、そこに思わぬ救援が現れる。
「貴様!またこんなところで何をやっている!」
 白いグフーーイザークと、黒いザクファントムーーディアッカだった。
「何をって、こいつを落とそうとしてんじゃんかよ」
「イザーク、ディアッカ……」
「俺が言ってるのはそういうことじゃない!」
「もういいだろそんなことは。それより早くやることやっちまおうぜ」
「えっ……」
「ディアッカ貴様!」
「こいつを落とすんだろ?」
「……ああ!」
 イザークとディアッカの露払いにより、キラとアスランはステーションワンの内側への突入に成功した。
2724/04/21(日)19:06:13No.1180837627+
「アスラン、行くよ!」
「ああ!」
 ミーティアのビームソードを最大出力にし、ステーションワンを内側から唐竹割にする。
「よし!」
 キラ達の活躍に、フレイはガッツポーズを取りながら叫ぶ。
 しかし、その喜びも長くは続かなかった。
「艦長! オレンジ186より進行する巨大構造物!」
「あれは……」
「要塞!?」
 月の背後から現れたのは、小惑星を改造したと思われる巨大な要塞だった。
「高エネルギー体収束! 来ます!」
 その要塞……メサイアから、かつてのジェネシスを思わせる高威力のビームが発射される。
 アークエンジェルとエターナルは辛うじて回避するが、その砲撃に、反デュランダル派の少なくない艦船が巻き込まれる。
「くそ、あんなものを伏せてあったとは……」
 バルドフェルドが思わず毒づく。
2824/04/21(日)19:06:37No.1180837818+
「キラ、俺はレクイエムに向かう! お前はあれを止めろ!」
「分かった!」
 しかし、その矢先に新手の2機のMSが現れる。
「シン……レイ……!!」
 デスティニーと、その相棒であるレジェンドだった。
 キラとアスランはミーティアをパージし、対MS戦に移行する。
 デスティニーはアロンダイトを構え、一目散にジャスティスへ向かってくる。レジェンドもまたフリーダムに狙いを定めたのか、ドラグーンの一斉掃射をそちらに向ける。
「もう止めろ、シン! お前が一体何を守っているのか、分かっているのか!?」
 オープンチャンネルでアスランはシンに必死に語り掛ける。
「あれは人でも国でもない! ただ従わない者を焼き尽くす為だけの兵器なんだそ!!」
「黙れ! 世界はもう変わらなきゃいけないんだ……だからオーブは撃たなきゃならないんだ!!」
 それを聞き、次の照準はやはりオーブなのかとアスランは戦慄する。
「ふざけるな! その為に何の罪もないオーブの人達に犠牲になれと!? お前が欲しかったのは本当にそんな『力』か!」
2924/04/21(日)19:06:59No.1180837993+
「アスラァァン!!」
 そこに、ルナマリアの駆るインパルスも加わる。
「よくもメイリンを……! 許さない!」
「引け、ルナマリア! 君とも戦いたくない!」
「何を! 逃げるなぁ!」
 インパルスはビームサーベルで切りかかる。アスランはそれを躱すと、ジャスティスの手足のビームサーベルで瞬く間にインパルスの右手と右足を切り落とす。
「きゃあっ!!」
「ルナっ!! くそ、よくも!!」
 デスティニーは更に動きの切れを増し、ジャスティスに襲い掛かってくる。
「シン! もうお前も、過去に囚われたまま戦うのはやめろ! そんなことをしても、何も戻りはしない!」
「何を……! 俺だって、守りたかったさ! 俺の力で全てを! けど、俺が撃ってるのは敵じゃないって、撃つのは奪うことだって、アンタが俺に言い続けてきたんじゃないか!!」
「なっ……」
(シン……俺は……お前を……)
 一瞬ジャスティスの動きが止まり、その隙をついてデスティニーはジャスティスの右腕を落とした。
3024/04/21(日)19:07:17No.1180838135+
「出来るようになったのは、こんな事ばかりだ……! でも、議長は戦争のない世界を創るために、俺の力が役に立つって言ってくれたんだ!!」
「もしアンタが正しいってんなら、その『力』で俺を止めてみせろ!!」
 デスティニーは掌のビーム砲ーーパルマフィオキーナでジャスティスに止めを刺そうとする。
「……諦めるな!!」
 ジャスティスは、足のビームサーベルで返すようにデスティニーの右手を吹き飛ばす。
「こんな風に力を使ってしまったら、お前は永遠に力の呪縛から逃れられなくなるぞ!!」
「な、何を!!」
 デスティニーは残った左手のパルマフィオキーナで攻撃しようとするが、ジャスティスの右足のビームサーベルで蹴り上げられ吹き飛ばされる。更に、ジャスティスは分離させたリフターで背後からデスティニーの翼を切り落とした。
「ああっ……!!」
 推進力を失ったデスティニーは、そのまま月面に落下していく。それを、半壊したインパルスが追いかけていく。
「くっ、シン……」
 アスランは苦々し気にそう呟くと、レクイエムに向かった。
3124/04/21(日)19:07:57No.1180838465+
「誰だ! 誰なんだ!」
 レジェンドと相対するキラは、その鬼気迫る雰囲気に戦慄を受けていた。
「分かるだろ、お前には! 俺は……ラウ・ル・クルーゼだ!!」
「そんな! 何故君が!? 何故君がまた!?」
「人の夢、人の未来、その素晴らしき結果、キラ・ヤマト! ならばお前も、今度こそ消えなくてはならない! 俺達と一緒に!!」
 レジェンドはドラグーンを使って更なる猛攻を加える。
「くっ……」
「生まれ変わるこの世界のために、ここで死ね!!」
「……! いや、違う!!」
 キラは、目の前のクルーゼを名乗る者に呼びかける。
「その命は、願いは、君自身の物だろう! それは、いつだって、誰にだって一つだ!」
「君は君だ! 彼じゃない!!」
 その一言に、レジェンドは動きを止める。
(止まった!? 今だ!)
3224/04/21(日)19:08:08No.1180838535+
 フリーダムは隙をついてフルバーストでレジェンドの四肢とバックパックを粉砕する。
「がっ……うわああぁっ!!」
 レジェンドを行動不能にしたキラは、そのままエターナルにとんぼ返りする。
「ラクス!」
「キラっ!」
 愛する人の無事に、ラクスは再三安堵する。
「ミーティアをお願い! あの要塞を落としてくる!」
「分かりました!」
 しかしフリーダムがミーティアとドッキングした直後、緊急通信が入る。
『エターナル、フリーダム!! メサイアが撃ってくるぞ! 射線上の連中を下がらせろ! 早く!』
 イザークの通信に、ラクスとマリューは全軍に回避命令を出す。
 直後にメサイアから第二射が放たれた。
 そしてそれは反デュランダルだけでなく、ザフトにとって友軍のはずのナスカ級数隻をも巻き込んでいた。
「くっ、なんて事を……!」
 キラはデュランダルの冷酷な判断に驚愕しつつ、メサイアに向かった。
3324/04/21(日)19:08:28No.1180838693+
 一方、レクイエムに向かったアスランは、その先でアカツキと合流する。
「少……一佐!」
「どっちでもいい、アスラン! さっさと終わらせて帰ろうぜ、女達のところに!」
「! 少佐、記憶が……!」
 その少し軽い語り口に、アスランは懐かしさを覚える。
 それぞれの特性を利用し陽電子リフレクターを突破したジャスティスとアカツキは、既に蓋が開き、発射直前状態のレクイエム内部に突入する。
「くそっ!」
「間に合え……!!」
3424/04/21(日)19:08:40No.1180838781+
 アカツキはシラヌイのドラグーンで砲門周辺を破壊し、ジャスティスはリフターを砲門の内側に突っ込ませる。
 直後、レクイエムの砲門は大爆発を起こす。それをとっさに確認した二人は、急速にその場から離脱した。
「ふう、お疲れさん……」
「……」
 ムウは仕事を終えて一息ついたといった感じだが、アスランの顔は未だに渋い。
「どうしたよ?」
「……俺にはまだやらないといけないことがあります、少佐」
 そう言うと、アスランはまさにフリーダムから攻撃を受けているメサイアに向かった。
「あっ、おい……」
3524/04/21(日)19:09:09No.1180838990+
 気絶したシンは、夢とも走馬灯ともつかぬまどろみの中に居た。
 そこに、もう会えないと思っていた人が現れる。
(シン。シン)
(ステラ? どうしたの、ステラ。駄目だよ、君はこんなところへ来ちゃ)
(大丈夫。だからちょっとだけ会いに来た)
(ちょっとだけ? ちょっとだけなのか?)
(うん。今はね)
(今は?)
(でもまた明日)
(明日……)
(うん!明日。ステラ、シンに昨日を貰ったの。だから分かるの。嬉しいの!)
(え?)
(だから明日)
(ステラ……)
(明日ね!明日!)
3624/04/21(日)19:09:41No.1180839257+
 シンは、ゆっくりと目を開ける。
「……ルナ?」
「シン……! 良かった……」
 目を覚ましたシンを見てルナマリアは安堵する。
「ごめん、俺……」
「いいのよ……あなたも私も、ちゃんと生きてる」
「そう、だね……はは……やっぱり、アスランは強いや……」
「……ふっ、そうね……」
「……どうなった?」
3724/04/21(日)19:09:52No.1180839340+
「レクイエムは落ちたわ。多分、もうすぐメサイアも……」
「そう……」
「オーブは、撃たれなかったわ。撃たれなかったのよ、シン」
「!」
 ルナマリアの一言に、シンは今まで抑えていたものが決壊する。
「う、ううっ……うわああぁぁぁっ……あっ、あっ、あっ……」
 ルナマリアに縋るように抱き着きながら、シンは泣き続けた。
 そんなシンを、ルナマリアは優しく抱き返した。
3824/04/21(日)19:10:15No.1180839485+
 メサイアに向かったフリーダムは、ミーティアの破壊力を持ってあらゆる部分を解体していく。
 まずは陽電子リフレクターを貼っている巨大なリングを破壊する。無防備になったところを、エターナルと共にミサイルで砲撃。最終的には内部に侵入し、内側で砲撃を炸裂させる。
 要塞としての機能を停止したであろうことを確認したキラは、機体から降りると、案内に従いデュランダルの居るであろう大広間に向かう。人員はすでに避難したか死亡したらしく、特に妨害に会うことはなかった。
 広間には、一人デュランダルが待ち構えていた。まるで、自分がここに来るのを待っていたかのように。
「来ると思っていたよ、キラ・ヤマト君。正直、ずっと君に会いたかったものでね」
 キラは特に返答もせず、銃をデュランダルに向ける。
「……なるほど。だがいいのかな、本当にそれで?」
 デュランダルもまた、キラに銃を向ける。
3924/04/21(日)19:10:39No.1180839656そうだねx1
力作なのはわかったが二次創作サイトに流したほうが良いと思うぞ
4024/04/21(日)19:11:00No.1180839793+
「やめたまえ。やっとここまで来たのに。そんなことをしたら世界はまた元の混迷の闇へと逆戻りだ。私の言っていることは真実だよ?」
「……そうなのかもしれません。でも僕達はそうならない道を選ぶことも出来るんだ。それが許される世界なら!」
「だが誰も選ばない。人は忘れる、そして繰り返す。こんなことはもう二度としないと、こんな世界にしないと、一体誰が言えるんだね? 誰にも言えはしないさ。君にも、無論彼女にも。やはり何も分かりはしないのだからな」
「でも僕たちは知っている。分かり合っていけることも……変わっていけることも! だから明日が欲しいんだ!どんなに苦しくても、変わらない世界は嫌なんだ!」
「……傲慢だね。さすがはあの男の息子、最高のコーディネイターだ」
4124/04/21(日)19:11:41No.1180840108+
>力作なのはわかったが二次創作サイトに流したほうが良いと思うぞ
最後にリンク貼ります
一応ここに投げてるのはそう宣言したからなんで
4224/04/21(日)19:12:06No.1180840285+
「傲慢なのは貴方だ! 僕はただの一人の人間だ! どこもみんなと変わらない、ラクスも! でもだから貴方を討たなきゃならないんだ! それを知っているから!」
「だから明日を求める権利があると? 人はその欲を振りかざし悲劇を繰り返してきたのだろう? 今の君のように。私はそんな世界を変えたかっただけだ。少しのあきらめと引き換えに」
「……詭弁だ! 貴方のやったことはただの脅迫に過ぎない! 僕達以外にも反発する人は必ず出てくる!」
「すぐに収まるさ。その為の『力』もある。本当は君にその力になって欲しかったのだが」
「……僕は兵器じゃない!」
「では君たちが今やっていることは何かね? これも君の運命だろう?」
「違う!」
 突然、第三の声が響く。キラがちらりとそちらを見ると、アスランが居た。
「人の運命は他人の理屈で決めるものじゃない! 自分の意志で選び取り、切り開くものだ!」
「アスランっ……」
4324/04/21(日)19:12:56No.1180840701+
「議長……何故、こんなやり方でプランを強行しようとしたんですか!? 言葉で人々を動かしてきたあなたが……!」
「……今を逃せばプランは成立しないのだ。人は痛みを忘れ繰り返す。その前に断ち切らねば。もう少し高いところから世界を見たまえアスラン君。人々の渇望した戦争のない世界が、あと少しで実現するというのに……」
「そんな風に世界を眺めているから、貴方は人の心が見えなくなっているんです! 貴方を最後まで信じて従った者達さえ、戦士だとか誰かの代わりだとか目を塞いで役割を与えるばかりで、彼らの心が軋み叫んでいたことを、貴方は知っていたのか!?」
 アスランの脳裏に、ミーアやシンの顔が走る。
「言っただろ? 人は痛みなどすぐ忘れる。運命を受け入れることで人の苦しみは終わり、世界は生まれ変わるのだ」
4424/04/21(日)19:13:14No.1180840853+
「違う! 人は過去を消すことなんてできない……過去があるから明日を願うんだ!」
 アスランは、あらためて銃を構える。
「……ずっと背負って生きていくというのかね? 人の罪と恐ろしさを。私の示す未来を捨てて、再び混迷する世界を君らはどうしようというんだ?」
「……覚悟はある、僕は戦う!」
 キラもまた、銃を構えなおす。
 しかし、二人の引き金が引かれることはなかった。
 一発の銃声と共に、デュランダルは胸から血を流し倒れる。
「「!?」」
 動揺し、互いに顔を見合わせるキラとアスラン。そこに、第四の声が響く。
「ギルバート!」
「グラディス艦長……」
 タリア・グラディスが、倒れたデュランダルの元に駆け寄る。
「やあ……タリア。撃ったのは、君か?」
「いえ……あの子よ」
 タリアが視線を向ける先を見ると、そこにはレイが居た。
4524/04/21(日)19:13:32No.1180841019+
「ギル……ごめんな……さい……でも、彼の明日は……うっ……ううっ……!」
 レイは、その場に泣きながら崩れ落ちた。
「ここまでね、ギルバート」
「艦長……そんな、ミネルバは……」
 アスランはタリアに問う。
「もう沈んだわ。ああ、クルーは殆ど無事よ。きっと、アーサーが上手くやってくれてるわ。……貴方たちの勝ちよ、早くここから逃げなさい」
 タリアは、二人に銃を向けながら告げる。
 キラは、踵を返しそこから立ち去ろうとする。
 しかしアスランはレイの元に駆け寄り、その腕を引いて起こそうとする。
「レイ、お前も!」
「おれは、行けない……俺は、ギルを撃った……」
「……レイ! 生きる方が戦いなんだ! だから……」
「駄目よ」
 そう言うと、タリアは再びアスランに銃を向ける
4624/04/21(日)19:13:50No.1180841177+
「貴方の言うこともきっと正しいのでしょう……でもね、人は生きる方が辛いこともあるの。その子も……そして私も、自分の犯した罪を生きて背負いきれない……彼らは、私が責任を持って連れていくわ」
「そんな……」
 アスランは呆然と呟く。
「アスラン……」
 レイが、縋るような声で呼びかける。
「シンに、伝えて……」
「シンには……『明日』を生きて欲しいって……」
「レイ……」
「私からも一つ、お願いがあるの。子供がいるの。男の子よ。いつか会ってやってねって、ラミアス艦長に伝えてくれる?」
「グラディス艦長……」
「さあ、早く行きなさい! 行って!」
「アスラン、もう時間がない! 僕等は、帰らないといけないんだ! 待ってくれている人達のために!」
「くっ……!」
 アスランはタリアに短く敬礼すると、キラと共にその場を後にした。
4724/04/21(日)19:14:11No.1180841326+
 キラ達が去って間もなく、広間にも火の手が広がる。
「レイ、貴方もいらっしゃい」
「あ、あぁ……」
 弱弱しい動きで、レイは二人の元に向かう。
「貴方もよく頑張ったわ。だからもういい、もういいのよ」
 そう言って、タリアはレイを優しく抱きしめる。
「うっ……うわあぁぁぁぁっギル! あ゛ぁぁぁぁぁぁぁっ……ぁっ……!」
 レイは、デュランダルの腰に縋りつき泣きじゃくる。デュランダルは、そんなレイの頭をいつものように優しく撫でた。
4824/04/21(日)19:14:22No.1180841409+
 タリアは、あらためてデュランダルに向き直る。
「ごめんなさいねギルバート。もっと、早くに気付ければよかった」
「構わないよ……君はこうして、帰ってきてくれた。それだけで十分さ……」
「……本当、しょうのない人ね。でも仕方がないわ。これが運命ということなんでしょう、貴方と私の……」
「ふ、よしてくれ……」
「……これからはずっと一緒よ、ギルバート」
 タリアは、横たわるデュランダルに口づけを施す。デュランダルの目尻から、涙が伝い落ちる。
 刹那、メサイアの広間は爆炎に飲まれる。寄り添う三人もまた、共に炎に包まれていった。
4924/04/21(日)19:14:48No.1180841620+
「キラは……?」
 沈んでいくメサイアを見ながら、フレイはポツリと呟く。
「フリーダムもジャスティスもシグナルはまだ確認できないわ……!」
 ミリアリアが、状況を説明する。フレイはそれを聞き、顔の前で祈るように手を組む。 
 その直後、爆発するメサイアから飛び出してくる二つの機影がモニターに映る。フリーダムとジャスティスだった。
「キラ、アスランも!」
 フレイは、その表情に素直な喜びを浮かばせる。それを見て、他のクルーも一安心とため息をついた。
「ジャスティス、フリーダム、シグナルを確認! イエロー8デルタ!」
 メイリンの報告に、エターナルのラクスもまた安心した様子を見せる。
「ゴンドワナに通信回線を開いてください」
「こちらはエターナル。ラクス・クラインです。ザフト軍、現最高司令官に申し上げます。わたくしどもはこの宙域でのこれ以上の戦闘継続は無意味と考え、それを望みません。どうか現時点をもっての両軍の停止に同意願います。繰り返し申し上げます。わたくしどもはこの宙域でのこれ以上の戦闘を……」
5024/04/21(日)19:15:07No.1180841761+
 キラは、取り敢えず距離の近かったアークエンジェルに向かう。アスランは「少し用事がある」とだけ言って月面に向かっていったため、一人で降りる。
 コックピットから降り、ヘルメットを投げ捨てたキラを迎えたのは、一足先に帰投していたネオだった。しかしよく見ると、何やら様子が違う。
「お疲れさん、キラ」
 その気さくな雰囲気は、かつての戦友にして兄貴分のそれに戻っていた。
「!! ムウさん、まさか記憶が……!」
「ああ、全部ばっちりだ……ちょっと見ない間に、色々大きくなったじゃないの、キラ」
「ムウさんっ……!」
 目に涙を浮かべながら、キラはムウに近づこうとする。
 しかし、キラより早く彼に駆け寄る存在があった。
5124/04/21(日)19:15:21No.1180841890+
「ムウっ!!」
 マリューは飛びかかるようにムウに抱き着く。
「よかった……本当に良かった……!」
「マリュー……言ったろ、俺はもうどこにも行かない。帰ろう、地球に」
「ん……」
 そう言うと、二人は人目も憚らず熱いキスを交わす。
「……やっぱり人前でするんじゃないですか」
 小声でボソリとつぶやいたが、口調とは裏腹にキラは笑顔だった。
「お帰りなさい、ムウさん」
5224/04/21(日)19:15:38No.1180842016+
「キラっ!!」
 続けて彼を待ち受けていたのは、フレイの抱擁だった。
「お帰りなさいっ……!!」
「うん、ただいま」
 フレイは、出発時と同じようにキラにキスをする。これじゃ人の事をどうこう言えないな、と思いつつ、キラはその感触に身を委ねる。しかし、それだけでは終わらない。
「キラっ!」
 いつの間にかエターナルから移ってきていたラクスが、同じくキラに抱き着く。
「次は私ですわ」
 フレイが顔を離すと、今度はラクスがキラに接吻を施す。
 ……むしろ自分の方が酷いか、と思いつつ、キラは二人のぬくもりから制の実感を得る。
「あいつ、俺の居ない間に何か凄え事になってんなあ……」
 三人で絡み合うキラ達を見て、ムウがポツリと零す。
「ま、人は人よ」
 マリューは、ムウに抱き着きながらにこやかに告げる。
5324/04/21(日)19:15:48No.1180842097+
 今回の戦争の終戦協議は、オーブ及びプラントの間で行われた。
 オーブとしても今回の件の責任は全てデュランダルにあるものとし、必要以上の賠償等は求めなかった。その後、ラクスはプラントの要請を受け、一時帰国。諸々の戦後処理を担当することとなった。とは言え、一度評議会議長に就任しその職も辞していることを理由に、あくまでオブザーバーとしての参加となった。
5424/04/21(日)19:16:05No.1180842230+
 そして……全てが落ち着いてから少し経ったある日。
「ふう……僕こういうのあんまり向いてないんだけどなあ」
「お前がやりたいと言ったからみんなで手伝ってるんだろうが!」
「いやそうだけど、まさかこんな重労働だとは……」
「私は好きだぞ、こういうの」
「そりゃまあアンタはねぇ」
「どういう意味だ」
「あらら、うふふ」
(何で私も手伝わされてるんだろう……別に良いけど)
 キラ、アスラン、フレイ、ラクス、カガリ、メイリンの六人は、慰霊碑周辺の花の植え替えを行っていた。塩で枯れるどころか爆風で地面ごと吹き飛ばされてしまったため、土から準備する必要がある。現在ようやく三分の二ほどが終わったところだった。
5524/04/21(日)19:16:28No.1180842440+
「どっちにしろ、これ今日中は無理ですよー」
「まあ、無理に一日で終わらせる必要もありませんけれど……」
「でも明日も続きやるとなると筋肉痛とか酷そうよ?」
「やっぱりラミアス艦長とフラガ一佐も……と言うか普通に業者を呼んだ方が良かったんじゃないか?」
 女性陣からも不満の声が上がり始める。
「あのー……」
「お手伝い、しましょうか?」
 そこに、一組のカップルと思しき少年少女が現れる。少年の方は、キラも見覚えがあった。
「君は……」
「シン!」
「お姉ちゃん!」
 元ミネルバ隊の、シン・アスカとルナマリア・ホークだった。
「本当に? 助かるよ!」
 キラは二人に微笑みかける。
 二人の現役軍人が加わったことで、作業の効率は格段に向上する。何とか日が沈む前に、土の準備と種まきを終える事が出来た。
5624/04/21(日)19:16:49No.1180842631+
「ありがとう、二人とも。て言うか、自己紹介がまだだったね。僕は、キラ・ヤマト」
「あ……シン・アスカです」
「ルナマリア・ホークです」
 三人を見てアスランは少し迷うような様子を見せたが、意を決したように語る。
「シン。彼が、フリーダムのパイロットだ」
「えっ!」
「キラ。こいつが、デスティニーとインパルスのパイロットだ」
「ああ……そうか、君が」
 そう言うと、キラはスッと手を差し出す。
「……!」
 シンは、それに驚いた様子を見せる。
「駄目かな、やっぱり?」
「……いえ」
 そう言うと、シンはその手を取り握手に応じる。それを、周囲は優しい目で見ていた。
5724/04/21(日)19:17:00No.1180842726+
「あの……俺……」
「……いくら吹き飛ばされても、僕等はまた花を植えるよ。今日みたいに。結構大変だけどさ」
「え……」
「それが俺達の、戦いだな」
「うん。一緒に、戦おうよ」
「あっ……うっ……うぅ……」
 キラの一言に、シンはとめどなく涙を流す。そしてもう一方の手でも、キラの手を握る。シンは、そのまましばらく泣き続けた。
5824/04/21(日)19:17:19No.1180842888+
 ほぼ日が沈み、周囲が薄暗がりに包まれる中、三組はそれぞれの帰路へ向かう。
 キラとフレイとラクスは、建て直されたコテージに。
 アスランとカガリとメイリンは、首長官邸に。
 シンとルナマリアはそれらを見送ってから、山手の方に。
 たとえ行く先が違ったとしても。
 求めるものが同じで、寄り添ってくれる人も居る。
 シンはその喜びを噛みしめながら、ルナマリアと共に歩いて行った。

〈SEED DESTINY編・完〉
5924/04/21(日)19:17:59No.1180843224+
どうもキラフレ「」です
まずはご指摘された通りバカみたいな長文失礼しました
とりあえず今回で運命編は完結です
正直ここまでやるとは思ってなかったので自分でもびっくりしてます
書くためにアニメとか漫画見返してて思ったんですが何だかんだ言われつつも運命はシンとアスランの物語なんだなと再認識したり
中盤は明らかにAA組持て余してんなとか当時の制作の苦労が偲ばれたり
高山瑞穂先生とか久織ちまき先生の再構成力すげえ!ってあらためて感心したり得る物は多かったです
この後は番外編みたいなのちょいちょい書いた後自由編に入ります
運命は自由に繋げる関係でそんな弄ってないんですが自由は結構大胆に変わる予定です
ではもうちっとだけ続くんじゃと言うことでよろしくお願いします
6024/04/21(日)19:19:19No.1180843865+
リンクです
纏めると案外読んでくれる人結構いて嬉しいですね
今回の分は14〜16です
https://www.pixiv.net/novel/series/11861256
6124/04/21(日)19:24:13No.1180846238+
>(止まった!? 今だ!)
言ってな……言ってる!
6224/04/21(日)19:28:42No.1180848322+
>「君は君だ! 彼じゃない!!」
> その一言に、レジェンドは動きを止める。
>(止まった!? 今だ!)
それっぽくしつつ笑わせるのやめて欲しい
6324/04/21(日)19:32:52No.1180850349+
アスランがレイを連れ帰ろうとするのいい
本編でもそうしてくれよ…
6424/04/21(日)19:35:27No.1180851581+
>運命は自由に繋げる関係でそんな弄ってないんですが自由は結構大胆に変わる予定です
>ではもうちっとだけ続くんじゃと言うことでよろしくお願いします
映画のまで再構成やるの!?楽しみに待ってるよ
6524/04/21(日)19:36:55No.1180852213+
タリアのクソ親度ちょっと上がってない…?
6624/04/21(日)19:40:14No.1180853773+
>タリアのクソ親度ちょっと上がってない…?
タリアはどう言い繕ってもウィリアム君置いて議長と心中するのは変わらないしもう公式でもそう言う扱いなんで
下手にフォローするよりは美しさと言うか自分好みにしてしまえって感じです
改変は金田一のあるラストシーンのオマージュです
6724/04/21(日)19:41:47No.1180854478+
完結お疲れ様
楽しかった
6824/04/21(日)19:42:59No.1180855045+
ちょくちょく他媒体の名台詞使うのずるいよ
6924/04/21(日)19:44:35No.1180855809+
>ちょくちょく他媒体の名台詞使うのずるいよ
この馬鹿野郎!を入れられなかったのはちょっと残念です
7024/04/21(日)19:45:33No.1180856297+
キラのハーレム見てシンがどんな反応するのか気になってしょうがない
7124/04/21(日)19:49:26No.1180858294+
慰霊碑訪れるシーンなんで原作だとカガリ居なかったんだろう…


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