摩天楼が建ち並ぶ都市、暗雲が立ち込み霧のような雨が降っている。 そこら中の屋外広告やテレビそれも聞いた事があるだけのブラウン管テレビのみであった。 画面からは音割れした音声でニュース番組と思われるものが延々と流れていた。 「…なんとか58?勇太読める?」 「俺も英語得意じゃないからなぁ…分からないや。」 「ローカル。ルーカル58だよ。」 いつの間にか光達の後ろに大人の女性が立っていた。 「人間…?」 黒髪に黒色のハイネックに白いのスキニーそして顔の左側に包帯を巻いている女性が立っていた。 「君達選ばれし子供だよね。私、鮎川 聖。君達と同じ選ばれし子供だよ。」 「俺日野勇太です。こっちは光。三上さんもそうだけど、選ばれし子供って大人のひともいるですね。」 「よろしくお願いします…」 「三上?へぇ竜馬君と会ったんだ。彼面白いよね。ねえ私の事何か言ってた?」 「いえ特には…」 「…そっか。彼無口だもんね。」 くつくつと独特な笑い方をした。 「えっと鮎川さんはどうしてここに?」 「パートナーデジモンもいないみたい。」 「う〜ん…実は困ってる事があってね。私のパートナーデジモンが捕まっちゃってね。なんとかしてもらいたいんだよ。」 「…なんか余裕そうですね。」 光は勇太の後ろからボソッと言った。 「そうかい?ごめんね。どうにも昔ねいじめにあってから上手く表情が作れなくてね。」 「…光!」 「えっす…すみません…」 「私も彼がとても大事なんだ。彼を助けてくれないかい?」 「もちろんです!同じ選ばれし子供ですしね!」 「…そうだね。ありがとう勇太君は優しいね。私の事は聖でいいよ。」 「それで、誰がそんな事…。」 「…あれさ。」 周辺の屋外広告、テレビがノイズが増え、次の瞬間、月が大きく映し出されノイズ混じりの不気味な音楽が流されてはじめた。 道の奥から眼球のような模様から緑色の触手を生やした生き物がデジモンを絡めとるようにした。そんなのが数十数百と押し寄せて来ている。 「デジモン…?」 「分からない。私は便宜的にアルゴモンって言ってるけど。デジモンのアルゴモンと何か違うみたい?」 「違う?」 「こっちだよ勇太君!案内するよ!」 鮎川が勇太の手を握り走り出す。 「ちょっと、待ちなさいよ!」 光達も慌てて追いかける。 「この雨のせいでね!あいつらがどこから湧いて出てきてデジモンを操ってるんだ!君達に」 「聖さん危ない!」 道の死角からデジモンの斬撃が飛び鮎川の足を切り付ける。 勇太が庇いなんとか深傷にはならなかった。 「ヴォーボモン!」 「プチフレイム!!」 死角にヴォーボモンが火球が広がる。 「…?」 「大丈夫ですか!?」 「ふふ大丈夫でもちょっとすぐに歩けないかも…」 鮎川はちらりと光を見て。 「くっくっでも怖かったよ勇太君」 光に見せつけるように勇太の首に手を回す。 「なっ!?ちょ…ちょっと」 「デビドラモン。」 「う゛う゛う゛う゛」 デビドラモンが鮎川を背負おう。 勇太達はなんとか無人のビルに逃げ込みアルゴモン達をやり過ごした。 ビルの中にも無数のテレビがあり、同じような番組を流している。 設備と張り紙のポスターを見るとどうやら、ここはテレビ局のようであった。 「くっくっありがとう勇太君。まるで特撮のヒーローみたいだったよ。」 「そんな…へへありがとうございます。」 「…デレデレしちゃってガキみたい。ヴォ―ボモンもそう思わない?」 「ん?…あぁそんな事言っちゃだめだよ光。」 「ふん。なによ。」 「くっくっ君も大変だね勇太君。妹さんは私にお兄ちゃんを取られそうで妬いてるみたいだ。」 「こいつとは兄妹じゃないし!そうだとしても私が姉よ!」 「光声大きいよ。それに俺達以外にそんな態度だと怖がらせちゃうよ。」 「勇太君は優しいね。」 鮎川は勇太の手に指を絡める。 「ちょっと聖さん。光見てますって。」 「…っ」 「あそこだよ。」 「へ?」 勇太の手を取り窓の外を指さす。そこには摩天楼の中に工場があった。 「さっき。この雨がデジモンが狂わせてると言ったろ。あれがあの工場から出てるんだ。困ったことにね。そこを人間が守ってるんだ。 私のパートナーであるテッカモンも捕まっちゃたんだ。 …ねえ勇太君お願い私を助けて。」 「でも…俺ヴォ―ボモン進化させられなくて。」 「なら、これを使うといいよ。私が持っているデジメンタル。今、私はデジモンいないしね。」 「デジメンタル!?」 鮎川はデジヴァイスを通じて黒色のデジメンタルを渡した。 「でも…俺…勇気のデジメンタルも使えなくて…」 「くっくっ大丈夫さ。見てみな君のデジヴァイス。」 デジヴァイスが輝いてる。 「これなら…!俺…ずっとみんなを守れなくて…!ありがとうございます聖さん!」 「勇太…」 勇太は鮎川に完全に懐いたようであった。 「…なら、ひとりで行けば…進化できるなら私なんてもういらないんでしょ!!!」 「光!」 光は廊下の奥へ歩いて行った。それを勇太は追って行った。 鮎川はその様子をいつもの笑みで見送った。 「すみません。聖さん…。光はいかないって…本当に困ってるひとがいる時に…いつもいつも。」 「勇太?」 ヴォ―ボモンとデビドラモンが不安そうに勇太を見る。 「くっくっねえ勇太君きみさえよければ光ちゃんじゃなくて私と旅しないかい?私ね君の事気に入ってるんだ。どうだい?」 鮎川は勇太の顔を近づけて話す。だがその視線の先には奥から覗き見ている光にあった。 「お…俺は…その…」 「戻ったらでいいよ教えてくれないかい。」 「勇太!さっきのどういう事!!そりゃあ光はわがままばっかだけど!勇太の大事な仲間だろ!それを優しくしてくれるからってあんな態度良くないよ!!」 工場へ行く道すがらヴォ―ボモンが先ほどの勇太の態度について苦言を呈していた。 「俺!そんな勇太と一緒に進化したくないよ!!」 「…ヴォ―ボモンちょっと聞いてくれないか。」 暗雲の中で何かが蠢いているのが見えた。 「こんなところにいたのかい。光君。」 「…」 光は屋上にいたアンテナを傘代わりにしていた。光は鮎川が話しかける。 「さっき勇太君と話してたんだけどさ…勇太君もう君と一緒にいたくないってさ。」 「う゛う゛う゛う゛う゛勇太はそんなこといわない…」 デビドラモンは鮎川を威嚇する。 「ふん。だったら好きにすればいいじゃない。私にはあんな馬鹿いらないわよ。」 「勇太君あんまり君の過去の意味理解してなかったんじゃないかな?彼も男だね。全部説明したら私の方が…くっくっ好いってね。」 「黙れ…黙りなさいよ!!!いちいち言わないでよ!!!初め会った時からあんた癪に障るのよ!!」 「くっくっ好きなひとを取られるのがそんなに悲しいかい?」 「黙れ!!!!」 鮎川は全く怯まずそれどころか心地良さすら感じてるようであった。 「よく知ってるよ。一目見た時から勇太君が君の大事な支柱だって。その支柱がなくなればそこに君の本当の…」 「それいじょうはなすな!!!!!おまえデビドラモンきらい!!!光いじめるな!!!!!!」 「くっくっ怖いね。それじゃあまた後で会おうか。その時こそね。」 勇太は工場に辿りついた。奇妙な事に隠れながらではあったがデジモンの姿が全く見当たらなかった。 そして、工場には他のところにあったテレビなどがなかった。 「勇太見て鮎川さんが言った通りデジモンが守ってる。ガードロモンだ。」 「…」 鮎川の言う通り工場を守るデジモンがいた。 だが、街で会ったデジモンとは毛色が違った。街で会ったのは生物系のデジモンであったがここにいるのは機械系のデジモンだけであった。 「あなた達。ここで何してるの?」 「ヴォ―ボモン!」 「プチフレイム!!」 工場に爆発音が響く。 「あらあらまあまあ!随分な挨拶じゃないかいあんた達!」 「人間の子ども?こんなところで何を!鮎川 聖の仲間なの!?」 そこには婦警の姿をした妙齢の女性がいた。 「おばさんこそ!こんな事してデジモン達を苦しめて何がしたいんだ!」 「おばさん!???私まだ20代なのよ!!!!」 「えっ…あっすいません。」 あまりの迫力に勇太は気圧され謝ってしまった。 「あら!!すみれちゃん!あんた言われてるわよ!普段から色気のないことばっかだからいい加減彼氏作れっていつも言ってるでしょ!そういうとこから色々と女は枯れていくのよ!!」 鳥型のパートーナーデジモンが口やかましく。戦闘中に構わずべちゃくちゃと言っている。 「勇太!!」 勇太のデジヴァイスが輝く。画面には鮎川から譲り受けた黒色のデジメンタルが映っていた。 「…」 工場の方から爆音が響いた。光が顔をあげると暗雲は消えそこには月があった。 月は異常なほど巨大な満月であった。その存在感はまるで生物のようであった。 「・・・」 光は目が離せなかった。何か引きつけらる感覚があった。月だけが心に残る支配されるような。 光のデジヴァイスが輝く。 「はっ!…えっ?な…なに!?」 「光…あれみて!」 デビドラモンが指さす方向に巨大な立体映像が流れていた。 見渡すと周辺のテレビ屋外映像も同じ映像が流れている。 「なに…これ…」 「アメリカ尊厳維持局。有事対応の映像さ。」 「鮎…川…さん。」 鮎川が光に寄って来る。 「我が国は敵勢力に屈したため、栄光を守る為にみんなで集団自決しましょう。  銃器を手に取って、銃口を口の中に当ててください。ありがとうございます。  合衆国国家尊厳維持局が、あなたの行動のお手伝いをしに伺います。ってね。 アメリカが以前作ったと言われてる集団自決用の映像さ。それがデジタルワールドに流れ着いたのさ…その元凶と一緒に。」 「元凶…?」 「君も見ているじゃないか。あの月さ。月は最も明るい星の光を受け全てを飲み込んでいく。 照らされた生き物は全てが月に支配される。アポロ11号が月に足を踏み入れひとの支配としようとした時、月もまた星を支配しようとしたのさ。今まで流れていた映像は月がジャックした月を見させるための映像さ。 だが、驚いたよ。デジモン達は支配を広げないためにこんな映像を流すとはね。」 「映像?」 「君が今見ているアメリカ尊厳維持局。有事対応の映像さ。 流用したんだろうね。これを見たデジモン達は自分が支配されきる前に自分達の手で消えていった。残ったのは映像の影響を受けにくい機械型のデジモンだけ。それで不愉快な人間共が機械デジモンの手を借りてこの街を、月を雨で覆い隠してしまった。 あの工場、私の持っている闇のデジヴァイスを弾いてしまってね。パートナーも掴まって、困ってたんだ。」 「それで…勇太に近づいて…。」 「正直自分でなんとかしようと思えばできるんだけどね。でもこのテレビ局から月を見させる…天体観測の映像を広げないといけないからね。壊されても大変だし、それに君がいた。」 「私?勇太じゃなくて?」 「君さ。勇太君も可愛いけど私は君の方に興味があるんだ。」 くっくっと鮎川は笑う。 「一目見た時から気に入ったんだ。君は私と同じだって。勇太君のおかげかな。何か薄皮みたいにへばり付いてるのはあるけどその下には穴の開いた空っぽな箱がある。穴からは汚物のような黒い物があるって分かったんだ。君の心はその薄皮のせいで窮屈そうだ。」 「中二病ってやつ?あんたなんかと一緒にしないでくれない?」 「くっくっよく言われるよ。でもねどうしても、その黒い目を私に向けて欲しくなったんだ。 ねえ、さっきの爆発。勇太君は私があげたデジメンタル使ったかな。」 「…知らないわよ。」 「くっくっやっぱり勘付いてんだね。あれ、イーヴィルスパイラルってデジモンを暗黒の力で操るのを加工して作ったんだ。 使わなくてもいい。持ってるだけで勝手に起動するんだ。まあ保険だね。さっきの爆発…勇太君生きてるかな?」 「あんた!!!!!!!!!!!まさか!!!!????」 「その目だよ!!!!光ちゃん!!!私を呪い殺せそうなその目だよ!!ギガドラモン!!!!!!」 月に見える影が次第に大きくなる。それは徐々に巨大な龍の姿だと分かる。紫色の両腕をサイボーグにした龍のデジモンだった。 「光!!」 「進化よデビドラモン!!」 「デビドラモン進化!!!レディデビモン!!!」 いつものレディデビモンへの進化と違った。姿はレディデビモンだが黒い炎のようなものが背後にある。その炎は山羊の頭に翼が生えているように見える。 「よくも!!!よくも勇太を!!!!!!」 レディデビモンとギガドラモンが組み合う。あまりの体格差にレディデビモンが負けるが負けると思われたが両者の力は拮抗していた。 「情念の為せる業かな!!でもね!!!」 鮎川はギガドラモン達を見つめ今までにない笑顔をしていた。それは今までのへばり付いた笑顔ではなく。正真正銘本心からの笑顔だと分かる。 そしてその笑顔は歪んでいた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 ギガドラモンの機械の両腕が割れそこからミサイルが飛ぶ。レディデビモンの近距離で爆発する。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 ギガドラモンが雄叫びをあげる。それは正しく獣のものだがそこには人間の下卑た笑い声が混じっているようであった。 爆風の煙が光にも掛かる。しかし光は怯まずギガドラモンの方向を見据えていた。 「舐めんじゃんないわよ!!レディデビモン!!!」 「あ!!!がああああああ!!!!!デッドスクリーム!!!!!」 レディデビモンの周囲から重苦しい音が聞こえる。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!???」 ギガドラモンはその音に吹き飛ばされる。 吹き飛ばされた衝撃でアンテナが崩れる。立体映像やテレビの映像が乱れ消えていく。 鮎川に光が近づく。 「死ね。」 レディデビモンが鮎川に向け、手をかざす。 その時、暗雲が月を覆い隠し再び雨が降り出した 「光!」 「勇太!?」 壊れたアンテナの向こうから勇太とヴォ―ボモンそして婦人警官と鳥型のデジモンが現れる。 「鳥藤 すみれ。シンドゥーラモン…。」 「警視庁電脳犯罪捜査課です。鮎川 聖。電脳テロ等準備罪で逮捕します。」 「聖さん…。」 「やぁ勇太君。なんで生きるのかな?それにどうやってここに?雨まで。」 鮎川は先ほどまでの歪な笑顔ではなく、いつものへばり付いたような笑顔に戻っている。 「光が…あの時追いかけた時、聖さんが怪しいって…俺信じたくなかったけど、光を信じたんです。 それで工場行って選ばれし子…すみれさんに話を聞いて確かめようと…会った時デジヴァイスが光って…それで誰かがデジヴァイスからあのデジメンタルを弾いて!」 「あんな子供にすぎたおもちゃなんてね。お生憎。腐ってもデーヴァのひとりなの。爆発も私の力である程度ちょちょいのちょいよ!ちょっと工場の電源落ちちゃったけどね!今はこんなだけでも昔はブイブイ言わせてたんだから、あんな子供のおもちゃなんておちゃのこさいさいなのよ!全く最近のガキンチョときたら火遊びが過ぎるんだから私が若い時…「と…とりあえず、あなたの悪事もここでお終いよ。パートナーデジモン達もいないし大人しく観念しなさい!」 「くっくっこれで捕まったと?光ちゃんならともかく君達が私を終わらせるのはその綺麗な瞳じゃあちょっと役者不足かなごめんね。」 「綺麗な瞳は感謝するけど、これは演劇でもなんでもないの。シンドゥーラモン!」 「プーヤヴァーハ!!」 シンドゥーラモンの背負っている宝杵から電撃が撃たれる。 鮎川の笑顔は変わらない。 「テッカモン。」 「斬電剣!」 シンドゥーラモンの電撃と鮎川の間に浮遊する刀を持った球体のデジモンが入り込み電撃を打ち払った。 「けけけ。随分となまっチョロいな武器も自分も手入れが行き届いてないんじゃないかおばはん。」 「テッカモン!?確かに捕まえてたのに!?」 「まっ!相も変わらず失敬な玉っころね!!!これでも最近はちゃんとフィットネス通ってるのよ!!!」 「工場もそのまま破壊してくれれば助かったのに。」 「へっ逃げ出すのにも苦労したのに随分な言いようだな。それに鉄なんて切っても楽しくもなんともねえんだよ!」 「くっくっ言ったろ自分だけでもどうとでもなるって。おや鳥藤さん達じゃなかったかな?」 「でも、まだこちらが数では…「ギガドラモン。テッカモン。ジョグレス進化。」 「な!?」 ギガドラモンとテッカモンが分解され混ざりあっていき、光の翼を持つ鎧をまとった竜人型のデジモンに進化する。 「究極体、ダークドラモン。形勢逆転だね。」 「こんな隠し玉を持ってたなんて…!まずい!シンドゥーラモン!!」 「ダークドラモン。パルスレーザー。」 ダークドラモンからビットが飛び。そこから斬撃のようなレーザーが飛びビルが崩壊する。 シンドゥーラモンが電気で作成した盾で勇太達を覆いレーザーから庇う。 「今のなら楽に死ねたのに。一応私も組織人でねこの局はともかくせめてあの工場くらい壊さないと…嫌だな…怖いじゃないか。そんな目で見られちゃ。分かったよ。勇太君にちょっかいかけたのは謝るし今日は帰るよ。」 「?」 鮎川は誰とも目線を合わせずどこかの誰かと話している。そのままダークドラモンに乗りこの場を離れようとする。 「聖さん!」 勇太が鮎川に駆け寄る。 「全部!全部嘘だったんですか!俺!信頼してたのに!」 鮎川は勇太ににこりと笑いかける。 「また会おうか。勇太君、光ちゃん。 あっそれと勇太君。私が言うのはなんだけど怖いストーカーには気を付けなよ。」 「聖さん!!」 そのままダークドラモンは遠ざかっていった。 「待ちなさい!シンドゥーラモン!!」 「…ご…ごめんなさいすみれちゃん…さっ…さっきのでこ…腰が逝ったわ…あたたた。」 シンドゥーラモンが腰を抑えて苦しそうにしている。 「し…仕方ないわね…君達とりあえずこのビルから離れるわよ。」 「やっぱり駄目ね。私達のゲートじゃあなた達を現実世界に返せないわ…。」 ビルの倒壊から逃げた勇太達は工場へ避難した。 「警察のでも駄目なんですね…」 「ごめんね。デジタルワールドって私達でも完全に把握できてるわけじゃないんだ。」 「選ばれし子供も謎だらけなのよね。近所のエンジェウーモンさんの話じゃゲートは子供達それぞれにあってなんでもデジタルワールドの神様みたいなのが選んでるらしいのよぉ!そんな神様がいるなら私の腰もどうにかして欲しかったってもんよねえ全く。ああそこそこもっと下よ!ああいい!!いいわあ!」 勇太達は腰が痛いというシンドゥーラモンに乗っかりマッサージをしていた。 「光だけでも元の世界に帰してあげららばと思ったんです…が…!」 「ふん!そんなこと言っても鮎川とは旅なんか無理…よ…!!」 「ちょっと痛いわよあなた達」 「だから聖さんとはそういんじゃ…ない…って!」 「その聖さんってのが未練たらしいの…よ!!」 「痛っ!…痛いわよ!!悪化する!悪化する!からあげ作ってるわけじゃないんだからそんなに踏んで揉んだら死ぬわよ!!!!」 シンドゥーラモンは勇太達を振り払った。 「あなた達もパートナーがこんな感じで大変ね。」 「うぅ…」 「はは…」 「死んだと思ったのよ!勇太が!!ほんとに…本当に心配したんだから!!!」 光は涙目になっていた。その様子に勇太の威勢もすぐに消えてしまった。 「ご…ごめん。」 「ほら、喧嘩は終わり。それよりこれからどうするのあなた達?」 すみれがふたりの間に入る。 「とりあえず、レジストシティに帰ろうと思います。報告もしないとだし。」 「…うん。」 「ごめんね。私も人手がいないから応援でデジタルワールドに来てるから、ここを離れられない。 とりあえずなんかあったらここに居るからすぐに来なさい!あとこれ!色々持っていきなさい! 勇太君上手く進化できないなコレ!警視庁で開発した簡易進化の紋章!新人用の進化させるやつなの!!!」 「えっ!?ほんとにそういうのあるんですか!?あ…ありがとうございます!」 「やったね勇太!これで僕もみんなの役に立てるよ!すみれさんあり…「あとこれ!デジタルワールドの料理ブック!野宿の時役立つわよ!それに簡易トイレ…これはただのトイレじゃなくて女の子は色々あるからね!!!あとこれもね!!!…」 「はは…」 デジモンとパートナーって似るんだな勇太は思った。 「それじゃあ色々ありがとうございました!」 「…ました。」 少し休憩して勇太達をすみれは別れる事となった。光は先にすたすたと歩いていく。 「勇太君ちょっと待って。」 勇太はすみれに呼び止められた。 「私ね…光ちゃんのあんな顔初めて見たんだ。」 「えっすみれさんって光の知り合いだったんですか。」 「まあねお姉さんも警官だし、ちょっと応援とかでああいうキッズ達がいるとこ見守りとかするしね。 それに、あそこでも光ちゃんみたいな小さい子って珍しいのよ。なんどかお説教もしたしね。」 「だからなんか大人しいというかよそよそしかたんですね。」 「はは嫌われちゃってるのかもね…でね、あの子のあんな泣き顔初めて見たのおじいさんやおばあさんにもあんな顔してるとこ見たことなかった。 だから…本当は私達情けない話になってしまう。大人がしないといけないのだけど…お願いします。あの子をお願いします。」 すみれは大きく頭を勇太に下げた。 「…分かりました。絶対に俺が守って光を現実世界に帰します。」 「…それだけじゃないんだけどね。ま!お願いね!」 すみれは頭を上げてにこりと笑った。それは夏の向日葵のような爽やかな笑顔だった。 「ね。何話してたの。」 合流した勇太に光は怪訝な顔で聞いてきた。 「別に。なんでもないよ。」 「ふん。モテモテの勇太さんは色々と大変なのね。」 「ほんとに違うって…。ねえ光。」 勇太は光の手を取る。 「俺が絶対に光を元の世界に帰すから!」 「…ふん。何よ今更。当然よ!当然!ヴォ―ボモンも進化できるようになったんだから頑張りなさいよ!」 「うん!」 「デビドラモンも頑張る!」 勇太達のデジタルワールドの冒険はまだ続く。