「やっと着いたぁ!」 勇太達がデジタルワールドに漂流して数十日が経ちヴォ―ボモンの故郷であるレジストシティに辿り着いた。 「レジストシティってなんか全体が図書館みたいだね。」 「私、本嫌ぁい。」 「きらぁい。」 レジストシティの街の入り口には複数の立方体が組み合わさったオブジェがあった。街の建築物は外見から図書が並べられているものばかりであった。 「レジストシティはデジタルワールドの色んなデータが流れ着いてくるんだ。」 「データ…」 なんとなくは感づいていたがこの世界って… 「それで、街の長老のジジモンのジジ様とババモンのババ様が僕に選ばれし子供…勇太がこの世界に来るって教えてくれたんだ。」 「ジジモンのジジさ…なんか紛らわしいわね。」 「デビドラモン、ギルモンのとき、1かいあったことある。ジジさまいろんなことしってる。ババさまたまにこわいけどやさしい。」 「よぉ泣き虫ヴォ―ボモン。へぇ本当にお前がパートナー連れて来たのかよ。」 「オーガモン…。」 手に持つ棍棒を両手でパスしながらオーガモンと数匹のゴブモンがヴォ―ボモンに話しかけてきた。 「ヴォ―ボモン…知り合い?」 「…」 どうにもオーガモン、ヴォ―ボモンの様子から友達という感じではなさそうだった。光もその雰囲気を感じ取ってか目つきが鋭くなっている。 「僕がどうだろうと、お前には関係ないだろ。」 「へへへそう邪険にするなよ。俺とお前の仲だろ。泣き虫、飛べないヴォ―ボモン。うぉい。うぉい。」 オーガモンがヴォ―ボモンを小突く。 いつもならすぐに噛み付くヴォ―ボモンがどこか大人しかった。この感覚を勇太も光も知っていた。 「おい。やめろよ。知り合いみたいだけど感じ悪いぞ。」 勇太がヴォ―ボモンとオーガモン達との間に割って入る。 「へっ初めて見るけど人間様ってのは随分勇敢なんだなぁ。こんなに細っこくて成長期のデジモンかと思ったぜ。こんなので異変が解決できるのかねぇ。」 オーガモンは勇太をその長い爪で突っつく。 …乳首に当たっている。怯む以上にこっちの方が嫌だと勇太は思った。 「おい。緑色のパンイチ共。その乳首は私んだ。さっさと失せな。」 「う゛う゛う゛う゛う゛」 頼むからこれ以上やめてくれ。勇太は苦虫を嚙み潰した顔をしながら切に思った。 「げっデビドラモン!?」 「おい、ビビってんじゃねえよ…チッ。そんな人間連れて来てもお前がジジ様に選ばれる訳ねえだろ。ジジ様とこ行くんじゃねえぞ。」 オーガモンがヴォ―ボモンに近寄り囁く。ヴォ―ボモンはやはり大人しかった。 「二度とウチの黒いのの前に現れんなっタコ。」 去っていくオーガモン達に光は中指を立て悪態をついた。 「大丈夫か?ヴォ―ボモン。」 「いかにもな奴だったわね…あんな奴なんてイチイチ気にすんじゃないわよ。あんたもウジウジしてたらぶん殴るわよ。」 「デビドラモンの木の実食べる?」 「…ごめん。ありがと。うん!ジジ様のとこ行こみんな!」 ジジモンの家はレジストシティの一番奥まった箇所にあった。行くには様々な施設を入り経由しないと辿り着けなかった。 「ヴォ―ボモンのにいちゃんかえってきたんだ!」 「わぁ!ほんもののにんげんだ!」 「ほら話かと思ったけど本当にやったんだな!ヴォ―ボモン!」 行く先々で、幼年期や成長期のデジモンに話しかけられていた。 「なによ。てっきり浮いてんのかと思ったら割と慕われてるじゃない。」 勇太と光はヴォ―ボモンに話しかけてきた幼年期のデジモンを抱っこしながら歩いた。 「ヴォ―ボモンは小さい子の面倒見もいいし優しいからね。弱いし無鉄砲だから自分より強い奴に噛み付くから面白くない連中もまあまあいるから、飛べないとか馬鹿にされる事も多いけどね。」 「もうちょっとクレバーに動いて欲しいよね。いいとこもいっぱいあるのに。」 「うるさいなあベアモン。テリアモン。どうせ僕は無鉄砲だよ。」 こちらは本当に友達なのだろう。勇太はなんだか安心した。 「それにしても成熟期以降のデジモンあんまり見ないね。」 というか全くいない。他の場所では会うこともあったのにここでは最初のオーガモンくらいしか成熟期デジモンに会っていない。 「うん…そうだね。」 デジモン達の空気が一気に重くなった。勇太はやってしまった事を察した。隣で光から刺すような視線と後ろからデビドラモンの「あ…。」という声が聞こえた。 「その事についてはワシから話そう。」 声を掛けたのは白髪に大きく蓄えたあごひげが特徴的な老齢の人間の見た目に近い…恐らくデジモンであった。 「ジジ様!」 ヴォ―ボモン達が駆け寄る。件のジジモンらしい。 「人げ…デジモン?」 「ジジモンというか本当にジジイじゃない。「目上のものになんちゅう言い草じゃ!」 「いった!」 光は後ろから箒で叩かれた。そこには口を縫い合わせた老女の姿のデジモン。ヴォ―ボモン達の話から察するにババモン。ババ様であろう。 「勇太このババア叩いた!」 「今のは光が悪いよ。」 「いやいや。しかし、よく来たのう。ワシはジジモン。そっちがババモン。皆からはジジ、ババと呼ばれとる。」 「主らが日野 勇太に鬼塚 光そしてパートナーのデビドラモンじゃな。」 「よ…よろしく…お願いします。光。」 「…お…お願いします。」 「おねがいします!」 「えと…俺達の事知ってるんですか?」 「ふぉっふぉ。そう固くなるもんじゃないぞ勇太ちゃん。ジジは知っている事を知っているだけじゃ。だから主たちの疑問に全部答えられるわけじゃないぞ。ささっ立ち話は腰が痛くてのぉ。ウチで話すかね。」 「光ちゃんあんた細っこいね!ちゃんと食べてるんかい!?今ババ飴ちゃんしか持ってないけど後でちゃんとご飯作ってあげるからね!」 そういってババモンは光に黒色の飴を渡して先を歩いていく。 「こっちの世界でもジジババってよく分からないお菓子くれるのね。」 そう言って光は貰った飴をどこか嬉しそうに頬張った。 「それでどこから話すかのぅ…」 「するかの!するかの!」 勇太達が案内されたジジモンの家は如何にもな日本家屋の茶の間であった。 ただ窓にはアクアリウムのように魚と飛行機が泳いでおり、やはり異質感があった。 「全部!全部よ!ここってなんなの!?そもそもデジモンって!?私達なんでこっち来ちゃったの!?元の世界に帰れるの!?」 「光ちゃん。1つずつさね。せっかちな事ばっか言ってるとババみたいにすぐ老け込んじゃうわよ。お茶に、隣街のベジーモンのババに貰ったケーキあるから食べんしゃい。」 「けーき!けーき!」 手慣れてる。光は久々の甘味に夢中でそっちに意識が持っていかれて静かになった。ババモンは勇太に親指を立てた。 「まずは、この世界からのぅ。勇太ちゃんは見るに感づいてるんじゃないかの?」 「あっいえ…その…俺も合ってるか分からないんですが…」 ジジモン、ババモンは静かに勇太の発言を待ってくれた。 「雑多に自然の中にも電子部品が組み込まれてるような…その異質な光景に、デジモン達。それにレジストシティとかデジタルワールドとかの名称。なによりデジモン達が進化の時に見せた変化の仕方。」 勇太はデビドラモンがギルモンから進化するときのまるでフレームのような皮膚の内側を思い出した。 「情報の…文字通りでデジタルな世界なんじゃないかって…。」 「ふむ。やはり気付いておったか。そしてその不安そうな顔は」 「…俺や光も身体が…」 「どういうこと?」 光がケーキを食べながら勇太達に聞く。 「デジタルとは勇太ちゃん達の世界でいう情報の世界。そこは決して物質的なものじゃない。そうすると考えるのは2つ。 1つ、意識つまり心だけが別れて飛ばされて、肉体は今まで通り生活している。 2つ、肉体が分解されて意識のみがこっちに飛ばされている。」 「私達、幽霊になったって事!?」 「れでぃが口に含んだ物出すんじゃないよ!」 光はババモンの箒で頭を叩かれる。 「安心せい、光ちゃん。勇太ちゃん。主らは肉体事ロードされてこのデジタルワールドに来てる。スワンプマンも幽霊もないから安心するんじゃ。」 「スワ…?まあならいいわ。」 「それじゃあ母さん達も心配してるんだ。それにここで死ねば…。」 「まぁそこら辺は察しの通りじゃ…」 「…私は…まぁ心配ないわ。で、結局このデジタルワールドになんで私達が呼ばれたの?ヴォ―ボモン達はなんか異変?解決してくれとかゲームみたいな事言ってたけど?」 「うぬ…最近になって各地の街の成熟期以上のデジモンが失踪する事が度々起こるようになったのじゃ…それに今まで存在しなかった街や土地がいつの間にか現る事も起きている。デジタルワールドがデータの世界だし稀に起こる話ではあるのだが、頻度があまりにも多すぎる。そしてそこに失踪したデジモンがいたのじゃ。」 「じゃあさっさと連れ戻せばいいじゃない。」 「…何者かにデータを弄られているのか。まともな応答もないしこちらに攻撃的になっておる。ただ黙々と何かの目的の行動をしているみたいなのじゃ…。 攻撃的なデジモンも増えておるしデジモンの仕業とも言えぬ不可思議な現象も多くなった…経験則となるが闇の勢力の仕業じゃろ。」 「だから、成長期までのデジモンしかいないんですね。」 「いつもいっしょにいてくれるけんたるもんのにいちゃんたちもいなくなっちゃた…」 「もうあえないのかも…」 不安そうに周りのデジモン達はどよめいた。中には涙ぐんでる子もいる。 「…」 勇太はその顔を唇を噛んだ。それは様々な感情によるもであった。 「そして、こういったデジタルワールドに異変が起きると決まって人間の世界、リアルワールドから主らのような人間の子供が呼び出されそのパートナーデジモンと共に異変を解決してくれたのじゃ。 一体何者が勇太ちゃん達を選んでるのかそれはジジにも分からん。すまんの…」 「自分達が困ったら勝手に呼び出して、危ない目に遭わせるなんて随分都合のいい話ね。」 「光。」 「いいんじゃ…勇太ちゃん。それについては光ちゃんの言う通りじゃ…本当に申し訳ない。」 ジジモンとババモンは深々と頭を下げた。周りにいるデジモン達は不安そうな顔でこちらを見ている。 「…まぁいいわよ。どうせその異変を解決しなきゃ帰れないんでしょ。ヴォ―ボモン達の情けない顔に免じてやってあげる。その呼び出した奴にも文句言わなきゃ気が済まないしね!でしょ勇太!」 「光!勇太!」 「ひかり!」 「あっこらデビドラモン、暑苦しいわね抱きつくんじゃないわよ!」 「…」 「勇太?」 勇太は黙ってジジモンを見た。ジジモンもその視線の意味が分かっているようであった。 「…すまん勇太ちゃん。」 「何よふたりで黙って気色悪いわね。」 「そこの成長期のヴォ―ボモンとヒョロヒョロの人間様じゃ役者不足って事だよ。」 「オーガモン!」 レジストシティの入り口であったオーガモン達がジジモン達の家に入ってきた。入口と同じように両手で棍棒をパスしながら近づいて来る。 「こりゃ!オーガモンものの言いようってのを知らん奴じゃの!無礼じゃぞ!!」 「ババ様、でもそういうことなんでしょジジ様?」 「ちょっとなんなのよこいつらさっきから滅茶苦茶感じ悪いじゃない。」 「ヴォ―ボモン…俺が上手く進化させられないのも知ってるからですよね。」 「…ここからの旅は今まで以上に危険な旅になる。光ちゃんとデビドラモンちゃんは完全体へ進化させることができるが今のヴォ―ボモンと勇太ちゃんじゃ余りにも危険すぎる。」 「だから白黒付けようってこったよ。てめえらかそれとも俺か!?」 「へへどうせオーガモンさんに決まってますがね!弱虫ヴォ―ボモン」 「はあ!?あんたが!?あんたみたいな腐れ脳みその筋肉野郎に務まるわけないでしょ!?」 「じゃあその進化もできない弱虫野郎に務まるのかよ?」 「…んぐっ!?あんた達も黙ってないでなんか言いなさいよ!?」 「…とりあえずジジさんの言いたいことは分かりました。少しヴォ―ボモンと話させてもらえますか?」 「うぬ…。」 「おいおいおい!なんだぁ!?まさか怖気づいた…「デビドラモンごめん。お願いしていい?」 「わかったゆうた!おい!う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!!」 「てめえ!おい!離せ!」 「離せ!こら!ウィルスが移るだろ!!」 デビドラモンがオーガモン達を引っ張り外に連れ出し追い払う。 「明日、正午から広場で決闘だってさ。」 ヴォ―ボモンはレジストシティが一望できる丘にいた。勇太はヴォ―ボモンの隣にスッと静かに座った。 「そっか…」 「俺はさ…やっぱり光達と一緒に行きたい。あの子達の…誰かの悲しい顔も見たくない。」 「それは…僕も同じだよ。」 「でも、ヴォ―ボモンの辛い顔だって見たくないよ。」 「なんだよ…何が言いたいんだよ。」 「…俺はヴォ―ボモンとならきっと色んな辛い事も乗り越えられる気がするんだ。」 「はっきり言えよ!勇太も僕がビビってるんだって!!ビビッて立ち向かえない弱虫ってはっきり言えよ!!」 「そんな事思ってないよ。でも俺も保育園の頃のガキ大将が今でも怖いんだ…分かるんだよ。だから、ヴォ―ボモンが戦わないって選ぶなら俺はいいと思うし、他の誰にも笑わせない。」 「なんだよそれ…。分かんないよ勇太…。」 「うん。ごめんね。でも俺はヴォ―ボモンと一緒に旅したい…だから待ってるよ。」 勇太はそう言って立ち去った。 「なに気取った言い回ししてんのよ…」 ヴォ―ボモンがいる丘の建物の影で光も聞いていた。 「やっぱそうだった!?…うわ!?伝わったかな…俺こういうの慣れてないんだよ…。」 勇太は光の横で座り込んだ。 「そんなことしなくても首根っこ掴んで連れてけばいいのよ。すぐにいつもの調子に戻るわよどうせ。」 「俺はそうは思わないんだ…苦手意識っていうのかな…上手く言えないけどそういうの持ってる相手に立ち向かうって多分、今までに会った完全体の敵に立ち向かうより辛いし怖いんだと思うんだ…。」 「…まあ分からないでもないわ。」 「それに立ち向かわないで逃げても前に進めるならそれでも俺はいいと思うんだ。」 「…そんな甘い事でどうにかなるもんじゃないわよ…」 「ジジさんが言いたいのもそういうことだと思う。だから俺達を試そうしてるんじゃないかな。 俺はヴォ―ボモンなら立ち向かえると思ってる。でも、それはヴォ―ボモンが決める事だ。だから俺待つよ。明日。」 違うわよバカと光は呟いた。 「来なかったらどうするわけ?」 「…そしたら俺は気まずい事になるかも。」 「なによそれ」 勇太と光は笑い合った。 その日はジジモンの家で泊まる事になった。振舞われた夕飯はデジタルワールドに来てから一番今までの世界に近い食事が出された。 米に、味噌…ではない何か茶色の甘みと旨味のあるスープ。よく分からない野菜がゴロゴロ入っていて旨い。畑から取れたという肉をチーズと野菜で絡めたもの。虫の佃煮など様々なものであった。 「こりゃ光ちゃん!しっかり野菜も食べんしゃい!栄養が偏ると身体壊すわよ!!」 「いやよ!そもそもなんで虫なんか出してるのよ!」 「日本でもイナゴの佃煮とか蜂の幼虫の揚げ物とかあるし、それに結構美味しいよこれ。」 「飯時にグロい話するんじゃないわよ勇太!」 「光ちゃん!箸で人を指すのは無礼じゃぞ!勇太ちゃんも若いんだからもっと食べんしゃい!!ほら!これも食べる!」 「あ…ありがとうございます。いや、もうご飯2杯もいただいてますし…あっこのキャベツの炒め物美味しいよ光。俺が作るより全然美味しいし食べてみなよ。」 「ババさま、デビドラモンうまくはしつかえない…」 「そりゃあすまんかった!今スプーン持ってくるから待ちんしゃい!」 「あっ俺取ってきますよ。」 「ええ!ええ!勇太ちゃんはお客様なんだからしっかり食べんな!」 「ジジはお客じゃないんだから、もっと動きんしゃい!」 なんだか久々に賑やかな食事だった。光も不思議とジジさんと…特にババさんには打ち解けていた。細かな所作からくるふたりの人徳によるものかもしれない。 ただ、そこにヴォ―ボモンの姿はなかった。 泣き虫ヴォ―ボモン。飛べないヴォ―ボモン。好きで泣きたい訳ではない。好きで飛べない訳ではない。叶うなら泣かないほどの強さが欲しい。叶うならどこまでも高く遠く飛んでいきたい。 なのになぜその下卑た笑いを向けられるのか。自分の心を勝手に推し量られ責められなければならないのか。暴力を振るわれ、笑う。悲しむ。怒る。自分の心を制限しないとなのか。 ただ、言われると自分自身がそんな矮小な、ここに居る事すら許されない存在のように思わされる。そうではないと頭で分かっていても絶対的なものだと揺るぎがない。揺るがせるはずの力が湧いてこない。ただただ心が疲れていく。 自分がどれ程変わったと思っても結局のところ、何も変わっていないんだと思い知らされる。 勇太と…光とデビドラモンと一緒にいて変われたと思った。今まで虚勢で積み上げていた自分自身になれたと思った。 でも突きつけられるのはいつまでも進化できない自分自身であった。結局選ばれるのは何かをつかみ取れるのはオーガモンなんだ。僕はいつまでも飛べないで地面を這っている。勇太は僕の事を過大評価している。僕自身が自分を信じられない。 「…ん。」 まどろんで気が付いたら夜が明け大分日が高く昇っている。眠い。疲れた。勇太達はどうしてるだろうか。お腹が痛い。でももう間に合わないだろうな…。もういいよね…全部。 オーガモンとの決闘の広場には多くのデジモン達が集まっていた。もうそろそろ正午になる。 「オーガモンが皆に吹聴したのか困った奴じゃな本当に…」 「おいおい!肝心のヴォ―ボモンがいねえじゃねえかやっぱり泣き虫は情けねえなぁ!なあみんな!!」 「飛べねえけど逃げ足は早えみたいじゃねえか!」「逃げ足ヴォ―ボモン!」 「あんた達こういう時はこういう風に中指立てて思いっきりガン飛ばしてやるのよ!」 「「あ゛あ゛あ゛!?なめたくちたたくとはあがたがたいわせてスカモンになるまでウンコもらさせてやっぞ!!」」 光とデビドラモン。ヴォ―ボモン側のデジモンは野次を飛ばす観客のデジモンに中指を立てていた。 「光…教育に悪いから変な事吹きこまないで…。」 「うっさいわね!何が来るよ!あの黒バカ全然来ないじゃないの!どうするのよ!!あんな緑肌顎外れパンイチ露出狂野郎に好き勝手言わせて!!」 「…うん。」 勇太は依然として前を向いていた。 「たく!どいつもこいつも!!付き合ってらんないわよ!!!」 「ひかり~!」 光はガニ股で怒りながらデビドラモンと一緒にどこかに行ってしまった。 「ゆうたにいちゃん…ヴォ―ボモンにいちゃんくるよね…。」 ボタモンが不安そうに聞いて来る。勇太はボタモンの頭を静かに撫でた。 「来るさ。必ず。」 「おい!もう正午だぜ!どうすんだよ!?ジジ様!」 「…やむおえん。ヴォ―ボモンが正午になってもこなければオーガモンの不戦勝とし、異変の解決はヴォ―ボモンではなくオーガモンに託す事とする!」 「だとよ!?カスなんかがパートナーになると恥かいちまうな!ひょろもやし野郎!」 「…」 勇太は黙ってオーガモンを見据えた。 「あんたまだこんなとこいたの。」 「光…。」 広場から去った光達はヴォ―ボモンのいる丘に来ていた。 「なんだよ勇太の次は光まで…。」 光はヴォ―ボモンの隣にドカッと勢いよく座った。デビドラモンはちょこん後ろの方にオドオドしながら座った。 「緑糸の露出狂が調子こいてるわよ。あんた行かなくていいの?」 「もう…いいよ。もう。」 「あんたが良くても!!勇t…。チッ。 ヴォ―ボモン。あんた、なんで選ばれし子供に…勇太に会いに来たの?」 「・・・」 「ふん。まあ大体分かるわよ。惨めな鬱屈とした自分を変えたかった。やせ我慢してても、この街で、あの露出狂へのあんた見てれば大体分かるわよ。」 「…笑いたきゃ笑いなよ。」 「笑うわけないでしょ。」 ヴォ―ボモンが顔を上げると光はまっすぐ見つめていた。それに耐えられずヴォ―ボモンは顔を伏せてしまった。 「私だって今までの自分から変わりたいと思ったのよ。ここに来て、私みたいなクズでもよく知らなくてもバカにしないで受け止めてくれて、自分が惨めになっても他人の所為にしないで前向いて諦めなかったバカを見て、こいつが…こいつらが手握って隣に居てくれるなら怖くても立ち向かってやろうって。」 「それは…勇太や光だから…きっと選ばれし子供だから違うんだよ。」 「あんただってそうよ!成長期で碌に進化できなくても、あんたは一度だって逃げてない。デビドラモンと一緒に肩並べてたじゃない。」 「デビドラモン、いっかいもヴォ―ボモンがばかとかじゃまとかおもったことないよ。」 「あんたが自分を信じられなくなるなんてのは正直よく分かるわよ。でもね、信じられなくなったらあんたを信じているあのバカ。 …バカ達の私達を信じなさい。」 「…そんなのただの重荷だよ。自分のエゴで他人を縛り付けてるだけだよ。」 「そうね。ずっと私もそう思ってたわ。ジジイやおばあちゃんからの思いを私は受け止められなかった。でも、あんたのここが少しでも動いたならきっとそれは…」 光はヴォ―ボモンの胸に指を指した。 「きっと…きっと変われるはずよ。過去は変えたくても変える事はできないそれでも今と未来だけは…。」 「僕は…。」 「おい!もう正午だぜジジ様!!!」 「まだ、1分あるはせっかちじゃなの。」 「へっ来ないんだから変わりないだろ。」 周辺のデジモンも帰り始めているのもいるヴォ―ボモンや勇太に対しての野次や罵倒も多くなってきていた。 「あと5秒!」 「4!」 「3!」 勇太は下唇を噛んだ。 「2!」 「い…「ちょっと待ったああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」 デビドラモンが勢いよく広場の真ん中に突っ込み土煙があがる。 「勇太!!!」 「ヴォ―ボモン!!」 ヴォ―ボモンは勇太に駆け寄り抱きついた。 「遅いよ。」 「ヒーローってのは遅れてくるっていつも勇太言ってたじゃん…ごめん!でも俺!」 「分かってる。行こう。」 落下地点から咽ながら光とデビドラモンが観客席に戻る。勇太達とすれ違う。 「光。デビドラモン。ありがとう。」 「げほ。げほ。ふん!ほんとよ手のかかる馬鹿がふたりもいると苦労するわよ!」 「ヴォ―ボモン、ゆうた!がんばってね!」 「別に結果とかはどうでもいいけど、せっかくだから負けんじゃないわよ!」 「「うん!」」 オーガモンが前にやって来る。いかにも面白くないという顔をし棍棒を両手でパスしながら近づいて来る。 2人と1人の顔がこれでもかと近づき睨み合う。 「随分と待たせるじゃねえか、俺ぁてっきりビビッて逃げ出したんじゃねえかと思ったぜ。」 「そいつは悪かったね。スカモン大王級のウンコが出たもんでね。」 「へっ!まあどうでもいいぜ俺ぁお前のその生意気な顔をそのウンコみてえにぐちゃぐちゃにするのをずっと楽しみにしてたんだからよ。それにしても2対1たあ如何にも自分ひとりじゃ何もできねえお前らしいじゃねえか。」 「昨日の時点でジジ様も認めてたろ。お前だって武器持ってんじゃねえか。バカにしてるヒョロガキの俺とヴォ―ボモンに今更そんな事言い出すとか大分ビビッてんな?ほんとは口だけでウンコ漏れそうじゃねえのか?」 「「「…」」」 一瞬の静寂の後轟音と土埃が舞う。オーガモンの持つ骨棍棒が地面を割りひとひとりなら入れそうな大きさのクレーターを作る。 「あの露出狂ほんとに勇太達を殺すつもり!?」 土煙からヴォ―ボモンの肩を掴み引っ張られながら勇太が出てくる。 「相変わらずなんつう馬鹿力だよ!?」 「ヴォ―ボモンあの棍棒避けながら土煙を回せていって!やっぱり危険なのはあの棍棒だ!俺に考えがある!」 「分かった!」 「プチフレイム!」 ヴォ―ボモンは火球をオーガモンと地面に当てていく。だが、オーガモンへの火球は適格に棍棒にかき消されていた。 「チッ目くらましかよ逃げるのだけは相変わらずうめえ奴だよ!てめえは!!!!!」 やたらめったらにオーガモンは棍棒を振り回す。衝撃は観客席を揺らすほどであった。 「何逃げてんだよ!逃げずに戦え!!」 観客からの野次にヴォ―ボモンの身体が反応するのが勇太に分かった。 「ヴォ―ボモン大丈夫。落ち着いて耳を貸すな。」 「分かってる!」 しかし、ヴォ―ボモンの声には興奮が隠せていなかった。当たり前であるが焦りと恐怖があるのだろう。 「…」 勇太はオーガモンの動きを見た。オーガモンは一歩だけ遅いとはいえ土煙の中でヴォ―ボモンと勇太の動きを把握できているようであった。 口だけではない。やはり闇雲じゃなくて直観でも筋道を立てて攻撃している。さっきより棍棒を振り回す頻度が落ちて来ている。こちらが分かるんだ。 オーガモンは棍棒を両手でパスしながら、狙い時のみ棍棒を的確に振り下ろしてきた。動き回る量では圧倒的にこちらの体力の消耗が早い。 「ヴォ―ボモン…!」 土煙の動きが数瞬やんだ。ヴォ―ボモン達の動きが止まった。 オーガモンは両手で棍棒をパスしながら当たりの気配を探っている。 土煙が何かが飛んでくる。オーガモンはそれを捉え棍棒を振り下ろす。轟音と衝撃、土煙が舞う。 「がっ!!!」 鈍い声が飛ぶ。 「はっ所詮こんな程度の浅知恵でどうにかできると思ってんのかよ。」 オーガモンは両手で棍棒をパスしながら声の方向に向かう。 「うっぐ…はぁ…はぁ」 うめき声は苦しそうに絞り出されていた。 「ヴォ―ボモン。もう諦めろよ。ウザいしキモいんだよおま「今だ!ヴォ―ボモン!!!」 「人間の声!?」 「プチフレイム!!!」 後方のあらぬ方向からヴォ―ボモンの火球が連打される。 宙に浮いていたオーガモンの棍棒は火球に弾かれ転がっていく。 土埃が晴れるとそこには腹を押さえ蹲っている勇太のみがいた。 動揺して火球の発射方向を振り向いて無防備なオーガモンの顔面、身体に火球が直撃する。 「がああああ!!!」 「おっもっい…!!!」 体勢が崩れたオーガモンに向かい勇太は地面に転がった棍棒を広いオーガモンに当てた。 鈍い音とオーガモンの絶叫が響く。 「勇太!」 「うん!」 ヴォ―ボモンが棍棒に火球を当て遠くに吹き飛ばす。 ヴォ―ボモンが勇太のいる位置に来る。 「大丈夫!?勇太!?」 「掠っただけ…!それより一気に畳みかけるよ!!!」 「うん!プチフレイム!!!」 ヴォ―ボモンは出せる限りの火球をオーガモンに向かい連射する。土煙とオーガモンの絶叫が響く。 ヴォ―ボモンの口から黒い煙が上がり、咳込む。オーガモンの声が止み土煙だけが舞ってオーガモンを覆い隠す。 「はぁ…はぁ…」 「まさか…ヴォ―ボモンにあのオーガモンが…」 「オヤブン…」「オヤブン…」「あの野郎…!」オーガモンの取り巻きのゴブリモンから動揺の声が上がる。 「やっ…「覇王拳!!!!!!!!!!!」 誰もがヴォ―ボモンの勝利を疑わず、勝利を宣言しようとした時それをかき消すようにオーガモンの雄叫びと闘気のようなエネルギー波がヴォ―ボモンと勇太を吹き飛ばした。 「がっ!!!!あ…おえ゛!…げほげほ…!」 ヴォ―ボモンも倒れて中々立てずにいる。人間である勇太のダメージはより深刻で口を切っただけなのかそれともどこかの器官を傷つけたのか口から血を吐いていた。 「俺が!!!!俺様は!!!!強く!!!強くなったんだ!!!!何もしないで!!!人間に会っただけで!!!強くなった気でいるてめえとは違うんだあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」 土煙から怒号と共にオーガモンが現れた。身体には流血と炎症が見て取れ確実にダメージはあるが、その所為なのか強い興奮状態が見て取れ尋常な様子ではなかった。 「まずいの光ちゃん…あやつ興奮で意識が飛んでおる。ヴォ―ボモンこれまでの旅で強くなっているようじゃが逆に仇になっておる。ワシらも行く。ババ!!これ以上は駄目じゃ!!!」 「ひかり!!」 「ええ!!」 「がああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 光達がオーガモンに駆け寄るより速くオーガモンが雄叫びと一緒に勇太達に向かって行く。 「間に合わない!!!!」 オーガモンがこちらに向かってくる。勇太は…駄目だ。ダメージが酷すぎて動けそうにない。 やっぱり小手先だけじゃ駄目なのかな。このままじゃ殺される。やっぱり僕は駄目なんだ。空が太陽が遠ざかる。 このまま…目を閉じ…でも…でも!嫌だ!!勇太は僕を信じて待ってくれてたんだ!!!僕の心に火を燈してくれたんだ!!!僕を信じてる勇太を!勇太が信じてる僕を!!!!裏切りたくない!!!! 「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ヴォ―ボモンの雄叫びと共に勇太のデジヴァイスが輝き出した。それはデジヴァイスのヒビを広げる程の光であった。 「死ねええええええええええええええ!!!!!!!!!!」 「ヴォ―ボモン!!!!!進化あああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」 ヴォ―ボモンの身体が光輝く。オーガモンの闘気を帯びた拳が勇太とヴォ―ボモンに振り下ろされる。 「ヴォ―ボモン…?」 蒸気と火。熱が広がる。オーガモンの拳と勇太の間に火を噴く黒い巨体があった。 「ラヴォーボモン!」 「ヴォ―ボモンが進化した…?」 リベリモンの時のような一時的な光を纏った進化ではない。ヴォ―ボモンは完全にラヴォ―ボモンへの進化を遂げた。 「てめええがなんで!!!!!」 ラヴォ―ボモンがオーガモンの拳を弾き、観客席の上部へ吹き飛ばす。 「遅いよラヴォ―ボモン…。」 「ごめん。勇太。行こう。」 立ち上がった勇太はラヴォ―ボモンの背中に乗る。 「幾らパワーが上がっても!!!その巨体じゃすっとろいだろ!!!!!」 「「うわ!!!???」」 オーガモンは観客を巻き込みエネルギー波を飛ばす。 「あいつ!!!勇太掴まってて!!!」 ラヴォ―ボモンはその巨体とは裏腹に素早く駆けた。地面から円を描くようにエネルギー波を避け、観客席上部の壁に飛び移り駆け炎を纏った尾で広場中央にオーガモンを吹き飛ばす。 「がっ!!」 「勇太!ラヴォーボモン!」 「大丈夫!光!ここは任せて!他のデジモンを避難させて!!!」 「調子乗ってんじゃねええええええええええ!!!!」 オーガモンはエネルギー波を全方位に乱射する。 オーガモンを中心に円を描くようにラヴォ―ボモンは避けていく。 轟音が止むとそこにラヴォ―ボモン達の姿はなかった。 「どこ…!だ!!!」オーガモンは地面の変化に気が付いた。 振動と轟音と共に地面が盛り上がり何かが飛び出してくる。 「地面にあった盛り上がった土!!!覇王拳でボコボコだから気が付かないとでも思ったかよ!!!!!!!!」 飛び出したものにオーガモンはエネルギー波を当てる。だが、そこにいたのはラヴォ―ボモンではなかった。 「鱗…!!!!!????」 エネルギー波に弾かれたのはラヴォ―ボモンから取った表皮を盾代わりにした勇太であった。 「やっぱりまた!引っかかると思った!!!ラヴォ―ボモン!!!!!!!今だ!!!!!!!」 勇太の叫びの合図とともにオーガモンの下の地面が盛り上がる。 「グレイトフレイム!!!!!」 地面から巨大な火球が飛ばされオーガモンを空中へ吹き飛ばす。しかし直前でオーガモンはエネルギー波を飛ばし直撃を防いでいた。 「ラヴォ―ボモン!!!!これで最期だ!!!」 「ああ!!!!グレイト!!!フレイム!!!!」 「クソがああああああああああ!!!!!!!!!!!覇!!!!王!!!!拳!!!!」 ラヴォ―ボモンの火球とオーガモンのエネルギー波がぶつかる。 両者は拮抗したように見えたがエネルギー波が徐々にかき消されていく。 「なんで!!!!なんで!!!!お前なんだよ!!!!!!!!!!!!!!!」 火球がオーガモンを直撃し爆発した。そのままオーガモンは落ち地面に叩きつけられる。 「はぁ…はぁ…」 ラヴォ―ボモンはヴォ―ボモンへ戻っていた。 勇太とヴォ―ボモンは倒れたオーガモンの前に行く。 後ろからデジモン達を避難させた光達が向かってくるのが分かった。 「クソ…クソ…。」 オーガモンは意識が戻ったのか呟いている。 「てめえらよくも!!」 オーガモンの取り巻きのゴブリモン達がヴォ―ボモン達とオーガモンの間に入る。 「オヤブンはずっと努力してきたんだ!!!毎日みんなを取り戻すんだ!!!ってなのに!!なのに!!!なんでてめえなんかに!!」 「やめろ…すっこんでろ。」 オーガモンが今にも襲い掛かりそうなゴブリモン達を止め端へ避ける。 「知ってるよ…。ずっとオーガモンが…ゴブリモンの時から特訓してたのを…。」 「…。」 「だから…だから!!僕も変わりたい!強くなりたいって思ったんだ!進化できなくても!強くなくても!!!」 「じゃあ!!なんで俺を否定するんだよ!!!強くなっても!!!それで負けたら!!!!俺は…正しくない負け犬じゃねえか!!!!!」 「じゃから、ワシは主とヴォ―ボモンを戦わせたんじゃ。」 「ジジ様…。」 「オーガモン。主の言う正しさは結果じゃ。肉と肉がぶつかり合う物理現象に過ぎない。ただ、正しさは、強くなるのは、どうあろうかとする道はひとの数だけある。それを結果だけで正解を決めてしまえばお前はいずれ巨大な闇に飲み込まれる。奴らは巨大で底がなく蠱惑的だ。光など闇に比べれば小さく儚い。ただそれを燈し続る心がなければすぐにでも闇に呑まれ大局的な勝敗以前にお前達を不幸にさせる。」 「なんだよそれ…。」 「勝ち負けではない。勝負の結果ではなく選ぶのは弱さを認めつつそれでもと強いものに挑める心の強さじゃ。」 「主が心優しいのはワシだけじゃないヴォ―ボモンも知っておる。いなくなった者を思い影で涙を流してたのも取り返すためずっと鍛錬を続けていたのも、ゴブリモンに居場所を与えていた事も。主がただの無法者ならヴォ―ボモンだってここまで思い悩まなんだ。」 「なんだただの変態露出狂じゃなかったのね。」 「…光。今真面目な話だから。」 「闇の力を目の当たりにし、仕方ないとは言え主は強さと結果のみを求め、それが全てを正当化する正しさと思い込んでいた。だから今度は力じゃなく心をジジと鍛えようじゃないか…異変に立ち向かうのはそれからでも遅くないて…。」 「クソ…。」 オーガモンから涙が流れていた。ただそれは決して負の感情から出るものではないと勇太達は理解した。 「すまんかったのヴォ―ボモン、勇太ちゃん。主らを試すような真似をして。このとおりじゃ。」 後日、怪我も癒えた勇太達は異変を解決する旅に出る事となった。 その見送りでジジモン達が見送りに来て改めて頭を深々と下げていた。 「謝らないでください。きっと俺とヴォ―ボモンには必要な事だったんだと思います。」 「うん!僕全然気にしてないよ!おかげで強くなれたし!」 「まっ。あの後、進化を試しても結局できなかったけどね。」 「ちゃ…ちゃんと危ないときはできるはずだよ!僕がみんなを守るんだ!」 「ヴォ―ボモンえらい。デビドラモンまもってもらう!!」 「あ…頭撫でないでよ…」 「デジヴァイスのヒビが大きくなったのも、やっぱり俺には何かあるんでしょうか…。」 「ジジも知ってる事しか知らんくてすまんのう勇太ちゃん。ジジも分からん。 ただ、勇太ちゃんの目には力がある。今回の1件で確信が得れた。それは選ばれた子供なんかよりもよっぽど信用ができるものじゃ。 勇太ちゃんとヴォ―ボモンならきっと大丈夫じゃ」 「私達が面倒見てやるから大丈夫よ!ふん!」 「ふん!」 「光ちゃんは勇太ちゃんの言うこと聞いて!しっかり食べんじゃぞ!立派なレディにならんとすぐ愛想つかされるからの!!!こっちきたらババ達にしっかり顔見せるんじゃよ!」 「ははは…。」 「俺もすぐに…追いつくからな。」 「うん…。」 ヴォ―ボモンとオーガモンは向き合った。 「…泣き虫って言ったの悪かったな。」 「うん…。」 ヴォ―ボモンは静かに手を差し出した。 「んっ…。」 「…はっ!」 ヴォ―ボモンとオーガモンはその手をお互い叩いた。 「待ってるから!」 「ああ!」 ヴォ―ボモン達はお互い笑い合い別れた。 勇太達はジジモンから聞いた異変が起こっているというlocal58という地域に向かう。 レジストシティ去る勇太達に爽やかな風が吹いた気がした。