繫殖個体では欲求の解消が追いつかなかった遺伝学レコードif ////// 「んっ、はぁ、」 研究に集中しなければいけないのはわかってる 「んん、…っ」 こんなことをしてる場合じゃないのもわかってる 「は、やく、さっさと、ぉおおっ…、」 それでもベッドで、床で、あるいは改装中の倉庫の穴の中で横になって秘所を弄る手は止まらず、欲望を滾らせて硬くなった棒を擦る手は刺激を求めて速さを増すばかり 既にベッドは吐き出された白濁や汗、溢れ出た潤滑液で汚れ切り、清掃のことを考えると嫌になる わたしたちに僅かに残った冷静な部分の半分はそんなわたしたち自身を軽蔑し、残った半分はみんなに襲い掛からないよう自制するので精一杯 興奮のせいで疲労感そのものは薄れているのに、両手それ自体は疲労を訴え休息を要求する 「つ、疲れた…でもまだシ足りない…」 各個体ごとに自分で鎮めるのには限界がある、となれば 「って、ダメダメダメ、みんなに手を出すわけには…」 多分目の前に出てきたらまどかちゃんだろうと手を出してしまいそうなくらいに茹った頭で、それでもギリギリ地下の広い空間に外部活動個体の全てを集め、閉じこもることは出来た 反響する荒い息、自然と高まる室温に湿度、外分泌腺からふわりと広がる発情フェロモン 正直、嫌悪感がないわけではない 卵胞から放出された時点で受精卵の状態にある生体クローン槽、いわゆる生殖個体たちとはわけが違う。自分同士で交わるというのは、言ってみれば究極的なナルシシズム行為であり、自分自身のことが好きではないわたしたちでなくとも出来れば避けたい行為なのは間違いないだろう 「あっ、あっ、そんっ、な、あっ!」「ダメ、なの…に…いっ!?」 そんな逡巡が馬鹿らしく思えるほど、きもちよかった ある個体で四つん這いになり、別の個体2つでその口腔と膣を犯す/犯される 別の個体で仰向けに寝転がり、その上に騎乗位で跨って腰を振りながら、両サイドに立つ別個体に手奉仕する/させる 複数個体で連なって同時に挿入/被挿入を試し、疲労でぐったりとした個体を道具のように使って/使われてみる まだ出し足りない、もっと出して欲しい もっと胤を捲きたい、もっと胤を植えられたい 欲望がワルプルギスの夜の纏う暴風雨も十倍も強く渦を巻いて、ついに一線を越える 「もう、いいよね…♡ほむらちゃん専用だけど、いいよね…♡」 「ほむらちゃんが来る前に、試しておかないとだし…♡」 「何か不備があったら困るし、味見するだけだから…♡」 ほむらちゃんが来た時のために、身の回りのお世話に特化したほむらちゃん専用個体 本来ならほむらちゃん以外の誰も開封してはいけない専用槽を開き、丹精込めて生み出されたその穢れを知らない身体を、ほむらちゃん以外の誰も奪ってはならなかったその処女に、童貞に、じわりじわりと手を伸ばす 禁忌を犯す後ろめたい背徳、ほむらちゃんを裏切る仄暗い興奮、そして純潔な身体で襲われるあってはならない期待感に、全ての個体の全ての心臓とその補完器官が暴れだす それ以降は、記憶がはっきりしない ////////// 「最悪だ……」 対毒性能の高い戦闘個体による除染作業が終わり、家庭内個体での清掃活動と細かな除染や一般労働個体での機能低下個体群の移送が始まっている 繫殖個体を配置することで収まったと思っていた繁殖欲求はただ抑え込まれていたにすぎず、閾値を越えて暴走した今回のアクシデント 「なんでこんなことに……」「喋ってても進まない、さっさと手を動かす!」 などと、ついつい一人芝居をしたくもなるほどに状況は悲惨だ 最終的に一部個体が機能停止(いわゆる「死亡」に相当)するに至っただけでなく、稼働する個体もその過半は元のタスクには復帰困難と相成って 使用可能な個体数が一時期の半分を下回ったというこの大惨事を補填するため、わたしたちは1つの『判決』を下した 「主文後回し!そんなに繫殖していたいのなら、いっそお前らだけでそれだけやってろ!判決!繫殖個体化改造!」 今回の暴走で制御から半ば逸脱した個体群、その生き残り全てを生体クローン槽に改造して損失の補填に従事させ、残りの個体は家庭内個体などを除くその全てから生殖能力を排除する ほむらちゃんの為に用意した個体に手を出すようなわたしたちには、きっとそれが適切な処置だ