二次元裏@ふたば

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292048 B24/04/18(木)06:47:52No.1179516028+ 10:33頃消えます
「」イマーの皆さんおはようございます
デジ対怪文書を書きました
長文ですがお付き合いください
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/04/18(木)06:48:07No.1179516047+
PM13:26──都内港湾地帯、デジモン災害放棄区画。
かつての繁栄の見る影もなく、赤銅色に包まれ静寂を湛える城郭に……その日は不釣り合いな来訪者の姿があった。

「……やっぱり私はこの作戦には賛成できません。あまりにも危険です」
「……ですよね」

望遠鏡を覗く男。デジタル庁デジモン対応特務室……通称デジ対所属、芦原倫太郎。同行しているのは電脳犯罪捜査課、烏藤すみれ。
レンズに映るのは廃工場と……そこに屯する覆面の賊。

『あーマイクテスト、マイクテスト……はい、こちら酒多。芦原さん見える?正面に二人いるはずだけど』
「ええ、確認しました」

インカムを通し、後方の通信指揮車でモニターしている酒多酒々井の声が響いた。
……彼らはこれより、電脳社会の暗部に巣くうマフィアの牙城に挑む。
224/04/18(木)06:48:20No.1179516059+
───


発端は数か月前に発生した放棄区画でのパケット数増加だった。

少年少女連続失踪に端を発した一連のデジタル事件以降、リアルワールドでは突発的な通信障害が頻発している。
それは不安定なデジタルワールドの影響か、はたまたリアライズか。
当初は多少の混乱が生じたものの、喉元過ぎればというもので……今では人々は慣れきっており、TVでは予報が流れているほどだ。

今回も同様に思われていたが、増加は一回に終わらず定期的、周期的に発生し続け……人為的介入を疑うには十分となっていた。
折しも同時期、点在する放棄区画を中心とした同心円状に薬物所持、使用による摘発者が急増。
摘発者の証言、そして逮捕された外国人バイヤーに一切の入国記録がなかったことからデジタル庁と警視庁は確信した。
二つの事件は繋がっている。──廃工場を拠点に、デジタルワールドを通じて反社会勢力が暗躍している。
324/04/18(木)06:48:41No.1179516077+
これまでにデジタル庁と警視庁は合同での摘発作戦を二度敢行した。
捜査課の指示のもと警官隊が突入し、デジモンの介入があった場合同行したデジ対のテイマーが対処する。
しかし作戦は二回とも失敗。突入した頃には拠点はもぬけの殻で、痕跡はほとんど残されていなかった。まるで、こちらの動きを把握しているかのように。

二度の失敗を経て芦原の出した結論はシンプル、かつ最悪のものだった。身内に内通者がいる。
知る者は多いとはいえ庁外秘の計画だ。おしゃべりなシンドゥーラモンを介しても漏洩には限界がある。さすればどうしても身内を疑わざるを得ない。
最悪の可能性に悩む宇佐美室長代理に対し、芦原は一つの計画……もとい、賭けを進言した。
424/04/18(木)06:49:11No.1179516115+
───


廃工場付近、ちょうど監視の死角となる位置に……スーツ姿の青年と青い髪の少年がいた。

「どう?緊張してる?」
「だ、大丈夫です」
「無理はすんなよ?まあ何かあっても俺たちがケツ拭いてやるから、気楽にやってくれ」

青年ははにかみ、神妙な面持ちの少年に声をかける。デジ対所属のテイマー、詩虎ヨリオ。もう一人は外部協力者の高校生、風吹冬矢。
524/04/18(木)06:49:24No.1179516130+
「肯定。彼らの実力は本物だ。泥船に乗ったつもりで構わないだろう」
「……お前、そんなベタな勘違いするキャラだったのか?」

冷静にボケる冬矢のパートナー・ハグルモンに対し、ヨリオのパートナー・ベルゼブモンが思わず突っ込みを入れる。
彼らこそ、今回の突入作戦の主軸。二人+二体。総勢、たったの四名。

「あの子も……出るんですか」
後方より見守るすみれは動揺を隠せなかった。この無謀な作戦に、少年が加わっている。
「彼は……自分から志願したんです。デジモンと戦うのも、人と戦うのも変わらないと」
「……」
624/04/18(木)06:49:36No.1179516144+
『そろそろ13:30。突入の準備を……あっこらナニモン!それはつまみじゃなくて無線だ!』

通信ごしの騒ぎに苦笑する一同。一瞬だが張りつめた空気が解れた。

『ったく……あっ、時間!芦原さん!』
「分かりました、作戦開始!」
「はい!カードスラッシュ、超進化プラグインS!」

冬矢の手にしたディーアークがカードを読み込み、ハグルモンが姿を変える。──進化、フロゾモン。

「進化完了。突入する」
「おう!しっかり頼むぞ!」

ヨリオの応援を背にフロゾモンが走り出す。猛牛の如く駆ける真紅の巨体の前では、廃工場の壁など紙細工同然だった。
724/04/18(木)06:50:01No.1179516172+
その時間、マフィア達はデジタルワールド経由で売り物となる麻薬を受け入れていた。
不意を突いて現れた侵入者に慌てた彼らはライフルを乱射するが、その体には傷一つつかない。

「第一段階終了。第二段階に移行する」
「了解。さあ、乱れ撃つぜ!」

号令とともに、フロゾモンの上部からベルゼブモンが回転しながら飛び出した。
現れた影に戦闘員たちが目を奪われる中、その合間をぬって嵐が吹く。二丁のショットガンを乱射する必殺技、ダブルインパクトだ。
何十発と放たれた弾丸は全て催涙ガス弾。白いモヤに包まれた戦闘員達は咳き込み、次第に倒れていく。

芦原のプラン、それは極少数のテイマーとデジモンによる奇襲作戦。
限りなく人員を抑えることで漏洩の可能性を減らし、リアライズされる前にデジモンの力で強引に制圧する。
おおよそ作戦と呼べるものではない、無謀極まるものだが……それを成立させてしまうのがデジモンという生物だ。
824/04/18(木)06:50:13No.1179516180+
芦原の読みはもう一つあった。今回の相手はあくまで裏社会の戦闘員であり、一般的なデジモンテイマーではない。
隠密を是とする彼らの大半はデジモンを収納して行動しており、加えて対人戦闘の癖で、咄嗟にリアライズではなく効きもしない銃での迎撃を選んでいた。
これが普通のテイマーの場合、即座にデジモンによる応戦を行っただろう。

安全を確認したのか、フロゾモンがバックで出てくる。続いて突入するのはガスマスクをつけたヨリオだ。
「デジ対だ!お前ら神妙にお縄につけ!……って通じんのかなこれ」
既に銃声は聞こえない。内部の戦闘員は完全に戦意を失ったようだ。ヨリオとベルゼブモンはライフルを取り上げ、ぐったりとした彼らをひとまとめに捕縛していく。

ついでに工場内に重なった積荷を裂いてみると、そこには梱包された白い粉末がぎっしりと詰まっている。
「芦原さん?証拠のブツは見つけました、間違いないですよ」
ライフルなんかぶっ放して今更間違いも何もない、か。彼は報告の後で静かに呟いた。
924/04/18(木)06:50:25No.1179516197+
───


「……終わりましたか?」
「それならいいのですがね……」
騒乱は終わり、しばしの静寂が周囲を包む。
デジタルワールドを巧みに利用した武装マフィア。奥の手を隠し持っていると考えるのは不自然ではない。
あるいは、限りなく大雑把な制圧を試みた以上……取りこぼしがあるかもしれない。案の定、酒多が叫んだ。

『芦原さん、監視ドローンで確認した!6人くらい逃げ出して……待って、リアライズした!デジモンが来るよ!』
瞬間、大地を揺らすような激しい足音が聞こえてくる。振り向くと、付近の建物の陰からグローブをつけたサボテンとでも言うべきデジモンの群れが迫る。
トゲモン。戦闘員たちのパートナーにして最大戦力。そのサイズはまちまちだが、大きいものは五メートル前後はあった。
差し詰め、指揮官だけでも潰しておく算段なのだろう。仮に襲われれば一対一ですらひとたまりもないが、芦原に不安はなかった。何故なら……。
1024/04/18(木)06:50:39No.1179516221+
「喝!!!」

芦原の直上、空中から姿を表す影。ドウモンだ。
目を伏せ、印を結び、呪文を唱え……一喝。すると、見えない何かに払われたかのようにトゲモンたちが飛ばされていく。
敵が後方の指揮官を直接攻撃する可能性は十分に考えられる。ドウモンは芦原の指示により姿を消して待機していたのだ。

「恐れ多くも倫太郎さんを手にかけんとする魑魅魍魎共!この愛の守護者ドウモンが貴様らの悪しき魂に天誅を……」
「酒多さん!」
長台詞を遮り芦原が叫ぶ。

『……こいつらの数と大きさなら大丈夫。火力使用の要件はクリアしてるよ!」
「聞いたか、冬矢くん!火力使用を許可する!」
「はい!グラシエイトミサイル!」
1124/04/18(木)06:50:51No.1179516227+
超信地旋回で向き直ったフロゾモンの背から、氷柱のような弾丸が煙を噴いて迸り、倒れたトゲモンに炸裂する。白煙が吹き抜けた時、芦原は肌寒さを感じた。
フロゾモンの必殺技、グラシエイトミサイル。生成した冷凍弾で目標を氷に閉ざす。
サボテンに類似した性質を持つトゲモンの体は寒暖差の過酷な砂漠の環境にも耐えられるが、急速冷凍では話は別だった。

「もう一発撃てば終わりそうです、どうします!?」
数秒の沈黙ののち、再び声を上げる。
「構いません!もう一度グラシエイトミサイルを……」

芦原が再度の許可を下ろした瞬間……トゲモンと彼らの間を遮るように、空間が軋みを上げた。

『急速なパケット数増加を確認!何かがリアライズするよ!』
「何ですって!?」
1224/04/18(木)06:51:07No.1179516247+
眩い光の中から現れた未確認の存在。それはガンマン風の衣装に身を包み、胴は巨大なリボルバー銃を模したようなデジモンだった。
想定外の事態に芦原はミサイルの発射中止を命ずるが……少し遅かった。
氷の弾丸が再び放たれる。しかし、そのデジモンは全く動じない。

「……」

迫りくるミサイルを一瞥した後、腰から抜いた二丁拳銃が閃く。刹那、六発のミサイル全てが中空で爆ぜた。
……訂正。意図したものか果たして偶然か、一発だけ軌道を逸れ明後日に向かうものがあった。

「しまった!?」

その行く手には対岸の港湾施設がある。誰もが最悪の結果を想像したその時……もう一つ銃声が鳴り響いた。
1324/04/18(木)06:51:22No.1179516265+
……ミサイルは再び向きを変えた。海底に没すると、数秒ののち轟音と十数メートルの水柱が上がり、それは瞬時に氷のモニュメントへと変わる。
これが人の行き交う場所……例えば新宿駅、渋谷のスクランブル交差点にでも落着したらどうなるか、想像に難くないだろう。

「……すいません」
「後始末はしてやる。アイツはそう言ったろ?」

燻る煙を吹き消し、ベルゼブモンは銃を収めた。

「……にしても」
視線の先、静かに佇むそのデジモン……リボルモン。
「奴が幹部、というわけか」
やがて白煙が彼らを包み、再び青空が覗いた頃、残った戦闘員やトゲモンたちの姿は消えていた。
1424/04/18(木)06:51:37No.1179516279+
『反応消失。恐らく……撤退支援に来ただけかと』
「……そうですか」

……作戦終了。ここに、芦原の賭けは一応の成功を見た。
1524/04/18(木)06:51:47No.1179516293+
───


PM14:22──都内港湾地帯、デジモン災害放棄区画。
打ち捨てられたその廃工場には今や赤い光が閃き、サイレンが鳴り響く。
区域内には後処理に追われる警官たちが行き交い、テープで阻まれた外には、事件を嗅ぎつけた野次馬、マスコミの山。
在りし日の姿もこれほど騒がしくはなかっただろう。

「ちょっとすみれちゃん!なんでこんな大事なことワタシに言ってくれなかったの!?」
「ははは……」

事後処理の傍らで、烏藤すみれは駆け付けたシンドゥーラモンに詰み寄られていた。
彼女が怒るのは無理もない。何せその口の軽さを警戒し、わざわざデジモン禁制のバーにまで行って打ち合わせたくらいなのだから。
1624/04/18(木)06:52:10No.1179516321+
デジタル庁主導で行われた今回の奇襲作戦。
建前上は合同捜査が故にすみれも呼ばれたのだが、その役割はただの立会人。彼女は何もできなかった、と言うよりさせてもらえなかった。
ふと、作業中の警官たちに目をやる。この中に敵に通じている者がいるかもしれない。苦楽を共にした筈の仲間に。
突き付けられた残酷な現実。彼女の行く手には暗雲が立ち込めていくようだった。

「申し訳ありません、このようなことに付き合わせて」
「芦原さん……」

見かねたのか、芦原が声をかける。

「室長代理からの伝言です。『何があっても僕は君の味方だ』、と。説得力がないかもしれませんが……私も同じつもりです」
「……ありがとうございます」
1724/04/18(木)06:52:26No.1179516341+
……少しだけ、その表情が和らいだように見えた。彼女もまた遠き理想のためにここで止まってはいられないのだろう。
先が見えないのはデジ対にとっても同じことだった。電脳犯罪の増加に従い、デジ対は本来の理念とかけ離れた対デジモン戦力部隊としての色を強めていく。
道は日増しに険しくなっていく。それでも進むしかないのだ。その先に追い求めた光があると信じて。

「りんたろぉぉぉぉ!!」

……飛び込んできた金切声が重苦しい空気をかき消した。

「……ドウモン、今は……」
「大丈夫だった!?痛いところない!?倫太郎に何かあったらと思うと私は、私はぁ……」

芦原のパートナー、ドウモンは芦原への愛情……否、劣情を公言して憚らない。
その姿は明らかに異様だが、これもまた彼らの目指す理想の一つと言える……のだろうか。
1824/04/18(木)06:52:37No.1179516356+
「……こんな状況でも続けるんだな、あのヒト」
「全くもって理屈は分からないが……こうまで続ける以上、あの求愛行動には何らかの合理的理由があるのかもしれない。一度模倣して研究を……」
「やめろよな!?あんなの誰が誰にやっても変態だ!すいません詩虎さん、あなたの方からも何か言ってやってください……」
突拍子もないことを言い出す相棒に困惑し、助け舟を求める冬矢。しかしその期待は見事に裏切られた。

「んー?俺は好きなものを正直にさらけ出せるのは素晴らしいことだと思うぞ。なあ?」
「何言ってんですか!?」
返ってきたのは斜め上な言葉。それも、一切の曇りのない太陽のような笑顔で。
追い打ちをかけるように、横のベルゼブモンも無言でサムズアップしてみせる。冬矢は頭を抱えずにはいられなかった。
1924/04/18(木)06:52:49No.1179516373そうだねx1
「あっそうだ、もう帰っていいんですよね?だったら俺たちここで抜けます!」
「ええ、まあ……何かあるんですか?」
「あるんですよ、この辺に。穴場の同人ショップ」
「え」

何処からともなくベルゼブモンの愛馬、ベヒーモスが姿を表す。いつもの熱烈アプローチを受ける芦原が狐につままれている内に、軽く会釈をした二人は爆音を上げ走り去った。
やり遂げた男たちの背中を見つめる少年は言い知れぬ不安に包まれていく。この組織、本当に大丈夫なのか?

「あはは、ヨリオちゃんは相変わらずだねえ。……ところでさー、芦原さん?なんでわざわざ内勤のあたしにオペ子させたわけ?専門じゃないんだけど?」

……芦原は言えなかった。
最悪の場合、酒多とナニモンに鬼殺しを注いで放り込むつもりだったとは。
2024/04/18(木)06:53:40No.1179516422そうだねx2
以上となります
お付き合いいただきありがとうございました

使った人たち
・芦原倫太郎&ドウモン ・烏藤すみれ&シンドゥーラモン
・酒多酒々井&ナニモン ・詩虎ヨリオ&ベルゼブモン
・風吹冬矢&ガードロモン(ハグルモン、フロゾモン) ・マフィア戦闘員&トゲモン
・リボルモン(ドラッグスター)

言及・設定のみ
・宇佐美京一郎 ・明智秀人

「」゛「」゛!「」゛「」゛!解釈違いごめんなさぁい!
2124/04/18(木)06:59:43No.1179516811+
洋ドラみたいなサスペンスモノリアワー勢好き
2224/04/18(木)07:02:21No.1179516983+
あのロリコン七大魔王シリアスな時は頼りになるな…
2324/04/18(木)07:05:38No.1179517205+
バッカスモンは最終手段としてもまずいって!
2424/04/18(木)07:39:22No.1179520261+
真面目な時のデジ対と真面目に活動してるマフィアが見たくて書きました
変人揃いですがやる時はやるのです…たぶん
あと相方が濃すぎてあまり言及されない気がするリボルモンを使ってみたかったのが一つ
2524/04/18(木)08:17:48No.1179525431+
おはようございます
実に素晴らしい現場の活躍シーンに感謝しかありません!
狐につままれる(物流)助かる…!
2624/04/18(木)08:36:14No.1179528139+
あーんハードボイルドだわ!
全文かっこいいわ!
2724/04/18(木)09:04:52No.1179532259+
デジモン出禁のバーとか確かにありそうだわ…
2824/04/18(木)09:13:21No.1179533444そうだねx2
えっデジ対って真面目な話できるんですか!
2924/04/18(木)09:16:35No.1179533881+
一応治安維持組織だぞ!?
3024/04/18(木)09:18:20No.1179534128+
>えっデジ対って真面目な話できるんですか!
じゃあなんですか
テレビ見てたら戦隊モノ+怪獣映画になって
テリアモンが卒倒すれば良いんですか
3124/04/18(木)09:21:10No.1179534553+
銃弾一発かまして霧と共に消えるリボルモン普通にカッコいい…
3224/04/18(木)09:30:30No.1179536024+
>えっデジ対って真面目な話できるんですか!
やることはやってるから馬鹿をネタにできる
いいね?


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