「はぁ〜っ……やっと終わったぁ」
警視庁電脳犯罪捜査課、時刻は20:30を回った頃。
数日前に発生したリアライズ案件の報告書を書き上げ、ようやく私は一息つくことができた。

「今日は早く終わったね！せっかくだから何か美味しいものでも食べて……」
「ぜんっぜん早くないわよ！！アンタ、この環境に慣れちゃダメよ！？いつかぶっ倒れちゃうからね！」
私の言葉を遮ってシンドゥーラモンがまくし立てる。

「後で上に文句言ってやるわ……もっと人員増やしなさいよ！キーッ！！」
彼女の言うことはもっともだけど……今はどうしようもない。

5年前の大規模デジモン事変。人的、物的問わず多数の被害を及ぼしたあの日から、人とデジモンを取り巻く環境は様変わりした。
反デジモン世論の高まりに合わせデジモン対策特務室、通称デジ対は規模縮小。
デジタルワールドの研究は著しく制限され、デジタル暴対法の施行によりデジモン犯罪は減少……最後は悪いことじゃないかもしれないけど。

変わったのは私たちも同じ。志郎くんはまだ立ち直れていないし、浩一郎くんもいつしか行方不明。
かく言う私も、シンドゥーラモンを連れて出歩くことは少なくなった。

「ほんと勝手なものよねー、5年前はデジモンが暴れたから締め付け厳しくしたってのに、今度はデジモンが暴れたから後始末押し付けるんだからサ。体のいい使い走りじゃないの！」

数か月前から相次ぐ少年少女の失踪。増加するリアライズ。
市井にはデジタルワールドを通じてマフィアや暴力団が暗躍しているとの噂が流れ、挙句には某市の大規模焼失……デジタルワールドに何かがあったのは明白だった。
各省庁はドタバタ騒ぎで、窓際じみていた電脳犯罪捜査課も今となっては電話が鳴りやまない。
キャパシティを超えたデジ対も、苦肉の策として一般の協力者をスカウトして回っている。
この前も京ちゃんが男の子を連れてきて……前々からデジモン絡みでマークしてた子なんだけど、どうもひどくやつれていた。理由は聞きそびれたけど……大丈夫かな。

「……あの時もこうだったのかな」

行方不明になった子たちは……昔の私たちと同じように、デジタルワールドを駆け回っているのだろう。
その時は大人たちの目が正直煩わしかった。確かに心配をかけて悪いとは思ったけど、あの手この手で私たちのやりたいことを邪魔したいようにも思えた。
だけど、今なら少し分かる気がする。年若い子供たちを危険な目には遭わせたくないし、できることなら代わってやりたい。
それができないのなら……やれることをするしかないよね。

「……すみれちゃん？」
「……ううん、大丈夫。なんでもないって。それよりこの前menskyで見たお店、今の時間ならまだ開いてるから一緒に行こうよ」

もっとも常に神経を尖らせるのも無理だというもの。気持ちを切り替えようとした瞬間……ベルが鳴り響く。
「はい、こちら電脳犯罪捜査課……」
後からシンドゥーラモンが言うには、受話器を取るのに1秒とかからなかったみたい。

──「……はあ」
「何さ、またなんかあったの？」
「京ちゃん、やられちゃったんだって」

電話の主はデジ対の芦原警部補だった。
数日前に京ちゃんから持ちかけられたデジモン案件。中学生が関わっていると聞いて、補導歴のある子のリストを渡したんだけど……どうも当たりだったみたいだ。
意識ははっきりしているとはいえ、局長代理がやられたとなっては流石に実力行使の許可が下りたらしく、テイマーを向かわせたから応援を頼みたいとか。

「それで受けちゃったワケ！？あたしら下請けじゃないんだよ」
「しょうがないでしょ。芦原さんは代理の代理で動けないんだし、それに……」
「……彼ね」

京ちゃん曰く、最初にこの事件を探っていたのは正義くんらしい。だったら今回も介入してくるかもしれない。
例え変わり果てても、その胸の内には変わらぬ正義がある。……そう私は信じたい。

「ところで、明智くんは？」
「やっぱ気づいてなかったのォ！？秀一ちゃんなら1時間以上前に終わらせて帰ったよ。ほら、これ！」
シンドゥーラモンが私の手に何かを押し込んでくる。これは……栄養ドリンク？
「あの子にお礼しときなさいよ？全く、いくつになっても一度入り込んだら他が見えなくなるのは変わらないんだから……」
ぬるくなった瓶を見つめながら小言を聞き流す。彼女と出会ってから幾度となく言われてきたことだ。

結局のところ、気づいてないだけで私の芯は変わっていないのかもしれない。それとも……変えたくないのかな。
「あの子もあの子よ！いつも真っ先に突っ込んでやられるんだから！丈夫じゃなかったらもう10回は死んでるわよ！」
……ごもっとも。

「ま、もう一働きしますか」
後でお返ししないとな、明智くんの好物ってなんだろう……などと思いつつ、空き瓶を置き上着を羽織る。行先は葛西邸。京ちゃんが倒れる前に訪ねた場所だ。

烏藤すみれ、26歳。警視庁電脳犯罪捜査課所属。
今日も私は戦う。あの日夢見た──人とデジモンが平和に暮らせる未来のために。

以上となります
短いですがお付き合いありがとうございました
いっぱいつかってごめんなさぁい！

あと書いてる途中でデジタル庁の新人が来てました
https://img.2chan.net/b/res/1177794672.htm

以下は考えたはいいけど挟めなかった分です

テレビをつけると飛び込んできたのはデジモン事件の話題。とは言っても今日は比較的明るい方で……

「相変わらずフェアリモンさん、頑張ってるわね」

液晶に映るのは紫髪の女性が華麗に舞う姿。巨大なデジモンを張り倒し、倒れたビルから親子を助け出す。
その勇姿はまさしくスーパーヒーロー……ヒロインって言った方が正しいのかな。

「いい子なんだろうけどさ、あの格好だけはどうかと思うわよワタシ！教育に悪いじゃないのさ！」
「ははは……」

まあ、強く否定はできないかな。そのせいで変なサイトもできてるみたいだし。怖くて検索したことはないけど。

画面が切り替わる。次に映ったのは真紅の鎧を纏う闘士……カイゼルグレイモン。

「これは井戸端仲間からの情報なんだけどさ、今度は究極体46体をまとめてやっつけちゃったらしいわよ」
「またまたー……そりゃ強いけどさ、盛りすぎじゃないの？」
「いやいや、これがマジらしいのヨ！人質にされた子の親が言ってるんだからさ！」
「……人質取られて1対46って余計怪しいと思うんだけど」

私は半信半疑だけど、納得してしまう気持ちは分かる。彼はとっても強い。
『リアライズでの襲撃案件が少数による散発的奇襲にとどまっているのは、正面切っての大規模侵攻ではまずカイゼルグレイモンに勝てないから』
……何から何まで滅茶苦茶だけど、これがデジ対が大真面目に出した見解。

格が違う。そんな言葉は彼らのためにあるのかもしれない。脱力しながら眺めていると……
「……うちの業務も手伝ってくれないかなぁ」
ついついボヤきが出てしまうのだった。

スピリットエボリューション勢は正体不明だからまさかカイゼルグレイモンが小学生とは思わないよな…

すいません誤字してました…
>「やっぱ気づいてなかったのォ！？秀一ちゃんなら1時間以上前に終わらせて帰ったよ。ほら、これ！」
×秀一→〇秀人です
あとここでのカイゼルグレイモン(カケル)は黒でした
ごめんなさぁい！本当にごめんなさぁい！

すみれさんお疲れ様だわ…
警察勢増やしてあげたい！！

リアルワールド時空のイモゲンチャはサイバーミステリ感あって好き

(画面外で亡くなってるクロウの恩師)

デジ対は最低限仕事できたら割と緩そうだけど電脳犯罪捜査課絶対業務キツいし…

>「いい子なんだろうけどさ、あの格好だけはどうかと思うわよワタシ！教育に悪いじゃないのさ！」
本人が一番そう思ってるやつだこれ

キャラ使われてる…
ありがたい…

カイゼルグレイモン強すぎる…

人数増えれば仕事も楽になるよ
捜査課においでよ

>キャラ使われてる…
>ありがたい…
どなたかは存じ上げませんが使わせていただきました
喜んでいただけたなら幸いです

警察の方は全然人増えないからな…

こういう祭りで設定すり合わせるのは難しいと思うんですが
リアル組は地に足ついたSFの香りがして好きなので絵も怪文書ももっと増えてほしいぃぃぃ！！
デジ対には変な人が集まりかけてますけど

>(画面外で亡くなってるクロウの恩師)
焼失事件ということでそれとなく触れたつもりではあります
街一つ丸ごと燃えたなら歴史を左右する騒ぎになってそうで妄想が楽しくなりますね

フェアリモンと一緒にシューツモンとアグニモンも映ってんのかな…

すみれさん現実世界でのリアライズ案件と大人勢での相剋に加えて
下手したら現実世界に帰ってきて一人彷徨い歩いてる竜馬くんのケアまでせざるを得ないかもしれないって聞いて流石に過労死すぎる

>現実世界に帰ってきて一人彷徨い歩いてる竜馬くんのケア
何があったんだ竜馬…

デジ対にヒトナードウモンを入れた張本人です
怪文書ありがたい…
デジモン側はデジモン側で人間さんと仲良くしたいサイドが
ヒトナー連合と呼ばれてる感じです
早く人間とデジモンがもっと仲良くなれる世界を作りたいですね…

>下手したら現実世界に帰ってきて一人彷徨い歩いてる竜馬くんのケアまでせざるを得ないかもしれないって聞いて流石に過労死すぎる
帰る場所のない竜馬くんを家に泊めてあげるおねショタすみれさん概念…？

(俺のエロとか需要ある？という顔)

>デジ対にヒトナードウモンを入れた張本人です
>怪文書ありがたい…
>デジモン側はデジモン側で人間さんと仲良くしたいサイドが
>ヒトナー連合と呼ばれてる感じです
>早く人間とデジモンがもっと仲良くなれる世界を作りたいですね…
こちらこそ使わせていただきました
色々と最悪ですが仲良くできるのはいいことですからね

>数か月前から相次ぐ少年少女の失踪。増加するリアライズ。
>市井にはデジタルワールドを通じてマフィアや暴力団が暗躍しているとの噂が流れ、挙句には某市の大規模焼失……デジタルワールドに何かがあったのは明白だった。
やだ…洒落になんない…

>>数か月前から相次ぐ少年少女の失踪。増加するリアライズ。
>>市井にはデジタルワールドを通じてマフィアや暴力団が暗躍しているとの噂が流れ、挙句には某市の大規模焼失……デジタルワールドに何かがあったのは明白だった。
>やだ…洒落になんない…
繋げると治安ヤバいな…

デジタルワールドが治外法権なのが悪い

ゴーストゲームとかテイマーズを見てると
リアライズするデジモンってそのまま動くと
そりゃ問題しか起こしてねぇ…ってなっちまう

大規模焼失多分生存者がほとんどいなくて怪獣がやったとも言い難いからうやむやになるしかないやつ

この文でのリアルはテイマーズよりデジモンがちょっと認知されてて事件が派手になってる感じで考えてます
正直に言うと祭りをきっかけに20年以上前のおぼろげな記憶でテイマーズを見たらハマって影響されたというだけですが…

あと作者様がインピオおじさんとすみれさんに関係はないと明言されていたのを見落としていました…ごめんなさぁい！

いいのよ「」ルモン！パラレルワールドは全て解決するわ！

人それぞれの世界があっていいんだ