「ゴーレモン!体の約9割が岩石のデータで出来た鉱物型デジモン!  自ら出すガスから体を守る禁断の呪文が彫られているぞ!  必殺技は『カース・クリムゾン』と『ゴーレム・パンチ』だ!」 「ソォォラァァァモン!!今そういうナレーション芸とかする場面じゃないぃ!」 「クロシロー、ボクはマシーン型だから人の心とかよくわからないんだぞ」 「それ嘘だよね…?」 俺…映塚黒白と相棒のソーラモンはゴーレモンから逃げていた 「ははは!楽しいな白黒!」 「それどころやないと思うでーアタル」 記憶喪失の友人、目黒中とそのパートナーデジモンのシーサモンと共に どうしてこうなったかと言うと… 昔、俺はデジタルワールドで選ばれし子供として冒険をしていた 笑いあり、涙あり、暗黒進化あり 今でも俺の中で楽しい思い出として残っている 帰って来た後、俺の失踪の原因を言い争って離婚さえしてなければもっと良かったけれど その時のトラウマで不眠症になってしまった俺はすっかり夜の散歩が日課になってしまっていた そしてあの男に出会った咥えタバコの男、デジモンイレイザーと呼ばれているらしい事は後で聞かされた 幸運だったのは2点、一つは夜中だったこと これのおかげで目がデジモンのように輝いていることに気がつけた かつての冒険で知っている、あれは悪意あるデジモンの目だ もう1つは手にペットボトルを持っていたこと とっさに相手に向けて飲みかけのペットボトルを投げられた この幸運のおかげで、男の放つ光線は俺から逸れた そのまま、逃げ出した俺はふと気がついた。デジモン絡みならかつての仲間達も危険なのでは?と そこで身を隠した後、スマホでかつての仲間に電話をかけることにした 冒険から帰った後、一度も連絡はしなかったけれど 離婚のゴタゴタで忙しかったのもあるけど、その後変わった自分を見て同情されるのも嫌だったから 「もしもし、アタルくん。えーっと覚えてるかな黒白、■■黒白」 久しぶりに旧姓で自分の名前を名乗る。少し声が固くなったのは緊張かそれとも別の感情だろうか? 「白黒?誰だおま…」 「目黒くん、ちょっと貸して。■■くん?」 「あれその声は…ユウメちゃん?ひ、ひさしぶり」 「大変なの、目黒くんが…!」 そしてアタルくんが咥えタバコの男に襲われたこと、その結果記憶が失われた事を知った 「すぐ行くよ。どこで待ち合わせる?」 この後、かつての仲間達と合流しデジタルワールドへ向かうことになった 夏休みであること、行く前に伝言が残せることで今回はお父さんお母さんに心配かけずに行けることが本当にありがたかった その後、色々な出会いや別れががあった 新しく招かれた小学生や中学生…悩みの質が重たすぎない? そして、大人達…人生が重たすぎる…! なんで上も下も闇が深い人たちばかりなんだ… いや、そうでもない人たちもいたけど…少なくとも自分の不幸なんて大した事じゃないなと思い知った そうしてかつての仲間や新しい仲間との冒険の途中、デジモンイレイザーの出没の噂の真偽を確かめに偵察にでたわけだが そこに現れたゴーレモンに襲撃され必死で逃げて… あれ?これはもしかして… 「クロシロー、走馬燈見てる暇でもないと思うぞ」 「はっ」 そこで俺はようやく、酸素不足と命の危険による極度の緊張から走馬燈を見ていることに気がついた 「大丈夫か、白黒。ここは俺とシーサモンが」 「そやで、逃げ続けるんもいい加減限界やわ」 と、アタルくんがありがたい提案をしてくれる。実際、強さで言えばソーラーモンよりシーサモンだろう しかし、記憶喪失の影響で戦い方が雑になってしまっている あるいはあの無口だが表情のうるさいアイツくらい雑でも強ければ任せても良かったかもだけど… ここは、俺が囮になって仲間を呼んできてもらう方が良いだろう。俺よりアタルくんの命の方が優先だ 「いや、ここは俺とソーラーモンが時間を稼ぐよ。その間に誰か連れてきてくれ」 「ん、多分それが一番いいと思うぞ」 とソーラーモンも同調してくれた。さすが相棒 「わかった、死ぬなよ」 「全力ダッシュで言ってくるでな!それまで気張りや!」 アタルくんがシーサモンに乗って離脱するのを見届ける 「さて…頑張って時間稼がないと」 「あっちあっつあっち!」 「クロシロー、頑張って耐えるんだぞ」 時間稼ぎの為に俺達がとった作戦。ソーラーモンの必殺技は一撃でゴーレモンを倒せる威力は無い しかし相手は飛べないタイプのデジモン。なら、前の冒険でも使った作戦が使える。その作戦を考えたのは俺じゃないけど その作戦とは、デジモンに乗って空中に陣取りつつ必殺技で地面をデコボコにして移動力を削ぐ! 本当は移動力を削いでいるうちにでかい一撃を当ててもらう、までがワンセットだけど今はしかたない 「シャイニーリング!シャイニーリング!あっち!シャイニーリング!」 問題があるとすればソーラーモンはボディが常に高温な事かなー 「クロシロー、根性出すんだぞ根性」 「うるっさいよ!ハグルモンの頃は無口だったくせにさぁ!」 「クロシロー、過去を気にしすぎだぞ」 なんとか上手くゴーレモンを翻弄していたが、元々長時間を想定していない作戦。ついに限界が来てしまった 目の前にゴーレモンの巨体が迫る。そして拳を振り上げ… 「ゴーレム・パン」 「「ピラミッドフォーメーション!」」 汐崎姉妹の黒と白のポーンチェスモンがゴーレモンの必殺技をがっちりと受け止める 「黒白くん、大丈夫!?」 「■■…じゃなかった映塚くん、お待たせ」 と言いながら2色のポーンチェスモンが双子ならではなのか、一糸乱れぬ連携でゴーレモンをその場に足止めする となれば… 「ディーダ・イヤ!!」 シーサモンの放つ無数の太陽の矢がゴーレモンを貫いた 「ふっ、どうだ俺のシーサモンの必殺技は。凄いだろう」 「アタルー、消されたんやししょうがないんやけどそこでかっこ付けられと少しはずいねん」 「いいじゃないかシーサモン。大丈夫だったか白黒」 そう言いながら尻餅をついた俺にアタルくんが手を差し出してくる なんだか昔の冒険を思い出して、笑いながらその手を握り返した 「俺の名前は黒白だよ。まぁ、思い出したら間違えなくなるかな」 なお、その後の調査でデジモンイレイザーの手がかりは発見できずじまいだった 骨折り損のくたびれもうけだったな… おわり おまけ ある日の野営中 「サチちゃんその…間違ってたらごめんなんだけど…アタルくんの事好きだったりとか…」 「ふええ!?なんで!?」 「いやその…戦闘中ちらちらアタルくんの事気にしてたからその…」 「え、えーっと…うん…言わないでね…?」 ある日の偵察中 「ユウメちゃん、アタルくんと何かあった?」 「え?なんで?」 「いや、遠慮がちと言うか、申し訳なさというか」 「うん、あのね、実は…」 ある日の談笑中 「白黒、佐茅も佑芽も可愛いよな…好きになりそうだよ」 「そっかー…うんそうだね…」 「アタルくんの記憶が戻るまで誰の恋路を応援すれば良いんだ…!!」 「クロシロー、余計なお世話だと思うぞ」 「ソーラーモン、俺は友達には幸せ担って欲しいんだ。両親みたいな修羅場はもう見たくない…」 「クロシロー、さりげないフォロー以上はダメだぞ」