「あﾞぁ〜……腹減った……」
「ここんとこデジタケと水しか食ってねえからな……」
彼らは彷徨っていた。
それも、空腹で今にも倒れかねない半死人の状態で。
「なんか、こう……。川でもあったら魚とか採ってくれやせんかねぇ、サゴモンの兄ィ……」
わざとらしいへりくだった演技で、少しでも空きっ腹をごまかそうとする男の名は一番。
長いパーマのイカついのか二枚目半なのか、微妙なところの人間である。
「そいつはお前が川を見つけてからの相談だな、一番よ……」
返す言葉を放つは、魔人型デジモンのサゴモン。
かつて天界から追放されるも、今はパートナーと自分探しの旅の最中である。
「…………」
「…………」
「ねえもんは、探してもねえよな……」
「仕方ねえな……」
その旅も、前途多難の様子なのだが。

「ん…………。あれ？　おぉい、なんかいい匂いしねえか？」
「どうした、幻覚ならぬ幻臭か、デジタケと間違えてヤベエキノコキメたか」
「いや本当に」
「あぁ？　…………嗅ぎ慣れねえが、確かにするな、向こうからだ」
「おいおいもしかして、このごま油とニンニクの香りは……。中華じゃねえか!?」
「チューカ？　あ、おい走んなよ」
空腹だと言うのに、いや、空腹は最高のスパイスだと言うのか。
彼らは匂いの発生源へと走り出した。

拝啓、おふくろ様。
想像よりも壮絶な光景が広がっていました。
「カカカカカカカカカカカカーーーーッッ!!!!　もっと強え火力を出しなーーーーッッ!!!!」
「豚ノ丸焼ィィィィ!!!!」
着包み来た女の子が炎上して、ヤクザより怖え顔したヤツがその子の上で鍋振ってます。
なにこれ夢？
それとも幻覚？
恐怖体験？

「オラよォ!!　『爆炸鸡肉的春卷(爆裂春巻き)』!!　完成了!!!!」
「ウガーッ!!!!　むぐむぐむぐ……うめーっ!!!!」
「カーカカカ！　相変わらず腹減ってる時のお前は良い食いっぷりだ！　カカカカーッ！」
「口の中で厚い肉汁が爆発するゥ!!　熱いけどやめられないとまらない!!」
「ハハハーーッ！　たくさん食えよーッ!!」
……思ったより平和みたいだ。
安心したのか俺の足は俺の制御も聞かず、ふらふらと連中の方に向かってしまっていた。
「……あん？　なんだテメエ？」
「あっ」
そして発見された。
「…………あの、二人前おいくらッスか？」
「あぁ、客か」
知らねえ内に迷い込んだ場所でも、こんな普通の飯屋みたいなやり取りできるんだな、なんて。
漠然と思っていた俺が居た。

「カカカッ、三日三晩水と茸とは壮絶な食生活してたな！　そこに座って待ってな！」
「あ、ウス」
何故か用意された椅子と机(中国っぽい)に座って、待つことにした。
しかしだだっ広い平原でこんな机に腰掛けるとはアンバランスな。
「はーい、お冷とおしぼりでーす」
「おっ、ども」
「あ？　お前……確か」
「あれ？　えーと確か名前……なんだっけ」
んん？

「サゴモン知り合い？」
「あぁ、いや、知り合いというか、見たことがあるんだよな、天界で」
「こんな豚の着包み来たおじょーさんをか？」
「や、豚の着包みは知らねえ……。顔をだ顔」
「あ〜〜、あたし、天界でシャカモン様に供えるためのお肉こっそり食べちゃったら、地上に落っことされちゃって〜」
やべえ事してんなこの子!?
シャカ……って、お釈迦様!?
「あぁ……暴食の罪で豚の姿にされたのか……」
「そんな感じ〜。キグルミで済んでよかったよね」
「何故に他人事？」
どうやらこの嬢ちゃん、とてもノンキさんのようで……。

「とりあえずチョ・ハッカイモンって名乗れって言われたから、それで」
「そうか。俺はサゴモン。お前と同じく天界を追放された身だ」
「お〜、お仲間さんだ」
「仲間……。いや、盗み食いの仲間……？　仲間？　仲間でいいのか？」
「しっかりしろサゴモン！　自分を保て！」
気持ちはわからないでもないけど、仲間と言われて疑問視するのは結構失礼だと思うぞ！

「おい八戒！　いつまでも客とダベってねえで手伝え！」
「あ、はいはーい！　じゃ、そゆことで後でね〜」
「あぁ」
チョ・ハッカイモンと名乗ったお嬢さんは、叱られて跳んでいった。
「あらま、給仕も手伝いもやんのか。大変だねえ」
「それが罪人に対する罰というものだろう」
「そんなもんかぁ？」
俺にはあのあんちゃんに、コキ使われてるだけのように見えるがねえ？

「──さてと、今日の客は空きっ腹だ。そこにガツンとした油モンをぶつけると、胃腸がマイっちまう」
「だから今回は粥にするぜ」
「おかゆかぁ。薄味そうだし、時間かかんない？」
「ケッ、まだわかってねえな八戒！　オレがそんなチンケな粥作るかよ！」
「ですよね」
「テメエはまず下ごしらえだ。人参、生姜、陳皮、大蒜を微塵切りにしな！」
「知道了(オッケ)〜！」

「まずは米の分量に合わせた水を沸かし、湯(タン)を作る」
「本来は本格的に出汁取りから始めてえが、急ぎのオーダーだ。ガラスープの素で代用するぜ」
「料理長、いつの間にそんなものを」
「カカカカッ！　隙を見て時短の食材を揃えておくのも料理人の努めってな！」
「さぁて、湯(ゆ)が沸いたら下ごしらえした薬味を投入してひと煮立ちさせるぜ」
「あれ？　いつもの“アブラドーシ”は？」
「ありゃあ普通炒めに使う技法だ。鍋モンや湯(タン)には向かねえよ。使うときもあるにはあるがな」
「へぇ〜……」
「何れお前もやるんだから覚えとけよ」
「えっ」

「にしてもラッキーだったよな、こんなとこで青空食堂があるとは」
「食堂じゃねえんじゃねえか？　旅荷物があるのを見るに、留まってるわけではないと思うぞ」
「そうか？　あぁそうかも」
なんてダベッてたら、あんちゃんが足早におぼんを持って向かってくる。
早くね？
「出来たぜェ！　『立即的薬膳稀饭(健康志向の時短粥)』!!　食ってくんな!!」
想像よりも早く出てきたし、想像よりも軽いものが出てきた。
……おかゆかぁ。

「あの、これ」
「ああん？」
「……インスタント？」
「舌切り落とすぞテメエ」
「舌!?　ス、スンマセン!!」
ケジメって小指じゃないの!?
この人怖ッ！

「ウダウダ言わずに食いな。マズイなら文句は聞いてやる」
「は、はぁ、じゃあ」
「俺もいただこう」
恐る恐る、どっちかというと味とかじゃなく包丁をギラつかせてこっちを睨んでいるあんちゃんに恐る恐る、レンゲを口に運ぶ。
一口、ぱくり。
「────」
「むおっ……!?」
こ、これは……。

「はっ!?」
気づけば眼の前のお椀に盛られたおかゆが無くなっていた。
お、俺のおかゆどこに!?
「サゴモン俺の分食った!?」
「何言ってるんだお前？　ガッツイて食ってただろうが」
「へ？」
「カーカカカカカカ！　あまりに腹が減りすぎて我を失ってた見てえだな!!」
「な、なにーーッ!!」
今まであったおかゆは!?
でも言われてみると腹がじんわり暖かい。
……食ったのか。

「ちょ、おかわりいい？」
「そう言うと思ったぜ！　多めに作っておいたから腹一杯になるまで食いな!!」
「ありがてえ!!」
それからしばらく俺は無心におかゆに貪りついた。
なんだろう、味が結構濃い。けど、クドくなくてスルスル入ってくる。
香味野菜の類は柔らかく、おかゆの食感の邪魔にならない。
それでいてしっかりと風味を主張してくるのが嬉しい。
おかゆっていえば、風邪引いた時に食う塩気のないヌルくなったアレ、というイメージが吹っ飛んでしまった。
話には聞いてたけど中華粥ってこんなんなんだな。
あー、優しいけど濃い味。柔らかいけど激しい香り。胃が許す限りどこまでも入っちゃう。
うめえ、うめえ。

「馳走になった」
「はーい、お一人様お召し上がり〜」
「カカカーッ！　どうだったオレの料理は！」
「美味かった。それに、気力が漲るようだ。これは……」
「ケケッ、気づいたか」
「朝鮮人参には胃腸虚弱、食欲不振、血色不良の改善の効果がある！　生姜も同様に、さらに整腸作用もある生薬だ！　陳皮は胃もたれにも効くんだぜえ！　ニンニクは言わずもがな、滋養強壮のスタミナ薬だ！　そいつらをブチ混んだ粥を食えば、気力も漲るってモンだぜ！」
「ほう……。ただの薬味と思いきや、食事一つにそこまで考えるとは」
「カカカカ！　中華には『医・食・同・源』って考えがあんだよ！　体に良いモンを食えば健康になるってなぁ!!　中華は魔法の料理だぜぇ!!」
「うめ、うめ」
「…………なるほど、魔法の餌食になったヤツが一人いるな」
「カカカカーッ！　いい夢見ろよォ!!」
「うまいうま〜い」
「で、なんでこっちにもいんだよ！」
「流石は盗み食いで追放されたデジモンだ……」

「所で、粥といえば長時間煮込む料理ではないのか？　よく早く出来たな」
「ククッ、オメエはそんじょそこらのデジタルモンスターとは違うみてえだな。その通り、本来粥は米を柔らかくするために弱火で長時間煮込む料理だ」
「では、何故」
「カカカ、こいつさ！」
「……乾飯(ほしいい)か？」
「残念、惜しいな！　こいつはアルファ米！　常温の水だけで食えるようになる現代の食材さ！」
「アルファモン？」
「どんな聞き間違いしてんだバカブタ。マイ、だ。マイ」
「本当にアルファモンだったら偉いことになっているぞチョ・ハッカイモン」
「……ま、とにかく、こいつを使ったおかげですぐに“戻し”が出来て柔らかく煮込めたってことだ」
「成程な」
「あーうめっ。すんませーんおかわりー」「それでお前はどれだけ食うんだ」
「カカカカーッ！　毎度ーッ!!」「出すのか」

ｵﾜﾘ

西遊記メンバーが出てきたら……書いちゃうよね！
あとャャャ君は「チッ、蛋がありゃもっとな……」とボヤいていました。
ご査収下さい。

筆が早いよ！
というかなんでデジモンの世界で一番がャャャの飯食ってる怪文書が生まれてるんだ…？

アルファモンでだめだった

夢のコラボ！

コラボ？コラボか……コラボでいいんだよな……

コラ……ボ？
おかしいな、テイマーはオリジナルキャラクターのはず……

ャャャはともかく一番についてはもう完全にただの本人だし…

ちなみにャャャ君は一目で「ヤーさんか」と気付きましたが
本編でもっとヤバい手合いと勝負しまくってるので平然としてます
……本、編？
俺は何を言っているんだ…………？

サゴモン出てたっけ？
と思ってログ調べたらスジモンアドベンチャーから来てたのか…

定期的に正気が危うくなるなスレ「」…

>俺は何を言っているんだ…………？
自分を見失わないで

一番が馴染み深いモデルで感動してる姿が容易に想像できるな

>……本、編？
それはどっちの？と問いたい衝動をかろうじて抑え込んだ

>ャャャはともかく一番についてはもう完全にただの本人だし…
大人の闇を照らそうと思ったらどう弄ればいいかわからなくてそのままの街にしてごめんなさぁい！

タマゴそのものはどうしても手に入らんからなあ…

>タマゴそのものはどうしても手に入らんからなあ…
もしどうしても食うなら唯一のタマゴであるデジタマを食うしか無いが
中身が卵白と卵黄である保証はどこにもないし
もしマジで食ったら絶対にデジタルワールドそのものから総スカンを喰らうというどうしようもなさ

卵も畑で採れんかな

>卵も畑で採れんかな
何故か無いんだよな
エグの実という卵もどきの木の実はあるけど所詮もどきだし…

顔がうるさい組み合わせだ…

>顔がうるさい組み合わせだ…
方やヤクザの男
方やマフィアを倒した男

>方やヤクザの男
カタギ！カタギです！

>>卵も畑で採れんかな
>何故か無いんだよな
>エグの実という卵もどきの木の実はあるけど所詮もどきだし…
なんかこう卵でいっぱいの冷蔵庫とか見つからないかな…

>>方やヤクザの男
>カタギ！カタギです！
ヤクザだった時が一番幸せだったんだろうなって言える男だからな…

本来存在しない卵でいっぱいと言われるとデッドマンズQの館幽霊思い出してこわいからだめ