【掌握】しょうあく 手の中に握り持つこと。自分の意のままに使いこなせる状態にしておくこと。 手芸用品店で買ったドール用の椅子。揃いのテーブルと、文字通り彼女の手製の圧縮カップ。手のひらサイズになってなお、彼女のスケジュールは何も変わらないようだ。とはいえ頭身は縮み手足も短いものだから、バランスを取るには一苦労をしているらしい。立ったり歩いたりはまだおっかなびっくりで、しばらくは私の介護が必要だろう。 変わらないのはその身に纏う威圧感のドレスとアーモンド形の瞳、そして生まれついての貴婦人たる不敵さ。 「お世話係になるというのなら、頑張ってもらおうかしら」 余裕綽々、ジェンティルドンナは紅茶を一口啜る。私とお揃いの薔薇の紅茶を。 どんなに強く振る舞っても彼女は私の掌の上にいる。くらい優越感が、それだけでは満たせない自尊心をくすぐった。 「ええ、任せてください。ご満足いただけますよう努めますわ」 試すような、値踏みするような視線。ミニチュアサイズの女王様は早速私に物申す。 「……そろそろ寝ようかしら。ベッドに連れて行ってくださる?」