落ち込みかけた心を晴らすべく、久しぶりに腕試しでもしようとクレーンゲームの台に歩み寄る。
今をときめくウマ娘たちのぱかプチが山のように積み上げられるなか、ある一角に目が留まる。
「ヒシミラクル……？」
それはとうの昔に引退したはずのウマ娘、そして自分が初めて担当した彼女のぱかプチであった。
『時代の名ウマ娘シリーズ』と銘打たれたそれは過去に製作された人気のぱかプチを復刻したものらしい。
青と白を基調にした勝負服、ふんわりとした葦毛の人形を眺めていると、無意識のうちに機械に硬貨を投入していた。
狙いを定めてボタンをタイミングよく操作する。アームが人形を掴み、運び、落とす。
ぽとり、ぽとり、ぽとり。
景品が取出口に落ちるたびに陽気なファンファーレが鳴り響く。そういえば初めて彼女のぱかプチが作られた時も、こうしていくつも手に入れたものだった。
ぽとり、ぽとり、ぽとり──

「……ハッ！？」
気が付けば周りにはちょっとした人だかりが生まれ、財布の中から硬貨は消え失せ、代わりに狭い取出口一杯にヒシミラクルがギチギチと詰まっていた。
その大きさを持て余していた本屋の紙袋にぱかプチたちを詰め込むと、そそくさとその場を後にする。
周りが見えなくなるほど夢中になるとは、やはりどこか疲れていたのかもしれない。
行き交う人々に時折奇異の視線を向けられながら、溢れんばかりのぱかプチの詰まった紙袋を手に帰路につく。
指先に伝わるずっしりとした重みは彼女と共に得た成果でもあり、そして未だ超えられない過去でもある。
それでも今の自分に出来ることをやるしかない。それがこの仕事を続ける時に誓ったことだからだ。

(例のBGM)

「ただいま」
「おかえりなさ〜い……わっ！ なんですか〜それ」
玄関で出迎えてくれた彼女がパンパンに膨らんだ紙袋を見て目を丸くする。
「あれ？ これ、わたし？ へー、まだ売ってたんだ〜」
ひときわ大きなぱかプチを取り出して顔の横に掲げる。ふにゃふにゃとした笑顔が二つ並ぶ。
「いやいやいや、でもこれは多すぎですよ〜。うちには昔のがあるし……そうだ、小学校と幼稚園のバザーにでも出しましょうか」
「ああ、そうしてくれ……」
今更我に返った気恥ずかしさを誤魔化すように食材を冷蔵庫にしまっていくと、ぱかプチを胸に抱いたヒシミラクルが隣にやってくる。

「”トレーナーさん”、さてはお悩みだな？」
「……そうかもしれない」
「ふっふっふ、だったら元プロのわたしが相談に乗ってあげよう」
昔と変わらずおだてれば調子に乗る彼女も、それに乗せられる自分も、あの頃と変わっていない。
ならばあの頃と同じように頑張るだけだ。ミラクルとはいつも普通の中にあるものなのだ。

ミラ子の母性に甘えたいときもある

最初に登場する現役ウマ娘の伸ばし棒からもミラ子成分を強く検出できる

良い…

>そうだ、小学校と幼稚園のバザーにでも出しましょうか
ミラ子ママ…

>狭い取出口一杯にヒシミラクルがギチギチと詰まっていた
なんかダメだった

落としたらすぐに取って！詰まるほど放っておかないで！