ファインと共に駆け抜けた3年間はまさに胸弾むような、輝ける日々だった。
触れるもの全てが心を躍らせる。彼女はそう歌ったが、それは俺も同じこと。
これからも彼女と共に過ごせると思うと胸が高鳴るが──勘違いしてはならない。信頼と恋愛を履き違えてはならないのだ。
加えて言えば、俺達はトレーナーとウマ娘。そしてファインの立場を顧みれば、いつか必ずお別れの日は再びやって来る。
だから俺はこれから先寂しくないように──寂さに耐えられるように、少しずつ慣れる準備をすることにした。

「ねえ、明日空いてるよね？　一緒にお出かけしようよ♪」
「ごめん。明日はちょっと先約があって」
「……ふーん？」

具体的には、婚活である。

恋という病を治す薬があるとすれば、それは恋に他ならないというのが俺の持論だ。
即ち、ファインの他に好きな人を見つける。さりとて、そんな素敵な人が口を開けて待っているだけで現れてくれるはずがない。
必要なのはスキルアップ。ちょっとずつ、ほんのちょっとずつ、ファインと過ごす時間を減らす。そして空いた時間を自己研鑽に当てる。そして自らを高めた後に出会いの場を増やす。
完璧な計画だ。

「ねえ、予定ってなにかな？」
「勉強。最近英語を学び始めてね」
「ふーん？　何で急に？」
「これからのことを考えたら絶対に必要だからね。将来に向けて」

そこでまず真っ先に思い付いたのが英会話。グローバル化が進む昨今、英会話スキルは必要不可欠。ビジネスでも婚活においても覚えて損はない技術だろう。

「！　それって……！　うん！　わかった！　私も協力するね！」

そんな訳で週末の夜はファインやSP隊長も交え、俺の部屋でロイヤル式英会話教室が開催されることとなった。その甲斐あってある程度はこなせるようになったが──これで、良かったのだろうか？

ファイン達が英会話のためにちょくちょく部屋に訪れることで、彼女達の私物が増えた。
マグカップやティーセット、タオルケットや歯ブラシまで。カーペットやテーブルのグレードもランクアップした。
本当にこれで良いのだろうか？　何かがズレているような気もするが……迷っている暇があるなら行動だ。

「キミって本当に飲み込みが早いんだね。驚いちゃった」
「これも将来のためだからな」
「……っ！　ふふ、楽しみだね♪」

次に取り組んだのはマナーや仕草、歩き方などの立ち振る舞い。
いかに能力があろうとも、立ち振る舞いが粗暴では全てがマイナスとなってしまう。
これに関してもファインが最高の先生となってくれた。公の場でも問題無い立ち振る舞いを身に付けることができるだろう。
そう、彼女の隣でも──ん？

「……これで、いいんだっけ？」
「大丈夫。王女様のお墨付きだよ？」

着々と技術が身に付いているのを感じる。
しかし出会いは増えているどころか、むしろ減っているような。

「お前、最近なんというか……気品があるというか……」
「貴族様って感じ……？」

同僚の男性トレーナー達からの意見も募ったが、立ち振る舞いは問題無く身に付いているとのこと。
であれば、と。同僚の女性トレーナー達に声を掛けてみると、最初は乗ってくれるのだが少し話していると萎縮したかのように去っていってしまうのだ。

「火遊びは程々にしておいた方が良いかと」
「恋多き殿方も素敵だけど。あんまり意地悪だと拗ねちゃうんだからね？」

ファインと SP隊長からもこんな指摘を受けてしまった。

火遊び。つまり、遊びにしか見えないということだろうか。しかし、俺は本気だ。本気で婚活に取り組んでいる。
ならば次は──見た目だ。

「うんうん！　キミにピッタリだよ！」
「ええ。王室の前に出ても問題ない威風堂々とした立ち姿かと」

大枚叩いて購入したスーツ。ファイン達からの反応も好評。

「良かった。ファインのお陰だよ。これからのことを考えれば、ちゃんと慣れておかないといけないからな」

かつての俺であれば服に着られてしまっただろうが、今の俺はファイン仕込みの伊達男。
たとえ王室勢揃いの舞踏会であろうとも、女性をエスコートしてみせる自信がある。

これで全て完璧だ。俺は意気揚々と街へ繰り出し──

「──モテない」

考えてみれば当然である。
お出かけをすれば必ずファインやSP隊の誰かが側に居る。『ファイン離れ』のために始めた婚活なのに、気付けば彼女が側にいるのが当たり前になっている。
これは良くない。いや、分かっていながら目を逸らしていたのは俺だ。
覚悟を決める必要がある。

「……大事な話って？」

ファインを屋上に呼び出し、二人きりで向き合う。何か期待を込めた眼差しで見つめてくる彼女に、俺はある意味残酷なことを告げないといけない──そう思うと心が痛むが、覚悟を決めて口を開く。

「俺達、今のままの関係だとダメだと思うんだ。今までずっと、君に甘えていた」
「それって」
「……ファイン。俺は、結婚したいんだ」

言ってしまった。ついに、言ってしまった。
ファインは口元を抑え、ポロポロと涙を零している。3年間でも見ることのできなかったファインの号泣する顔が、今、目の前にある。

「うん、うん……っ！」

ぎゅっと、俺の胸に飛び込んで抱きついてくるファイン。
そんな彼女に何をしてあげればいいのかわからなくて──俺は、そっと抱き返して頭を撫でた。

「ごめんな。伝えるのがこんなに遅くなって」
「ううん、大丈夫、大丈夫だよ！　むしろずっと早いくらい……！　キミの覚悟、キミの想い……受け取ったから！」

ファインと一緒に屋上を出て階段を降りると、SP隊が待ち構えていた。
ファインの化粧は涙で少し崩れている。
殿下を泣かせるとは何事ですか──そんな風に叱責されるかと思っていたが、不思議なことに祝福と拍手で迎えられた。
俺の婚活はそんなにおめでたいことなのだろうか。
しかしSP隊長は酷く動揺していたようで、この時からファインだけではなく俺のことまで殿下と呼んでくるようになった。

そんなこんなでファインに俺の覚悟を告げて、一週間が経ち──今俺は、飛行機に乗っている。クラスはファーストクラス。隣の席──ベッドには当然のようにファインがいる。

「あちらで直接会うのは緊張するな……」
「大丈夫だよ。これまで私達が積み重ねてきたものがあるから」

一緒に実家に来てくれないかとファインにお願いされ、急遽決まった海外旅行。
担当トレーナーをご家族に直接紹介することはそう珍しいことではなく、勿論異論は無かった。
向こうにはファインの父だけでなく姉君もいるだろう。不安と緊張が無いと言えば嘘になる。
しかし、もしかしたらあちらの国で出会いなんていうのもあるのかもしれないな──と、少し先の未来に想いを馳せたのだった。

こんな感じでトレーナーと恋心の板挟みになるけど覚悟を決めて殿下への想いを振り払いたかった

手遅れがすぎるだろ！

自ら外堀埋めてない？

もはやコントか何かか

キャラソンいいよね…

恋心の方は成就したみたいだぞ
よかったな

どこで気付くんですかね…

>自ら外堀埋めてない？
そんな……こんなにも婚活アピールをしているのに……
>「（キミとお別れをする）これからのことを考えたら絶対に必要だからね。将来に向けて」
>「良かった。ファインのお陰だよ。これから（婚活）のことを考えれば、ちゃんと慣れておかないといけないからな」
>「……ファイン。俺は、（キミを忘れるために他の人と）結婚したいんだ」

だってほら…トレーナーとウマ娘がそういう関係になるのってよくないし…そもそも相手未成年だし…俺とファインそういう関係じゃないし…

男に呼び出されて結婚したいんだなんて言われたら誰だってそう思うだろ…

バーカ！！

どこで気付くのかの賭けが開かれそうなぐらいバカ！！！

にぶにぶのトレーナーのばーか！！！

ブックメーカーがネタにしかねねぇ

この状態で勘違いだとか言ったら流石のファインも平手打ちぐらいしそう

結婚するって言うまで異国に監禁されそうだ

王様と二人で話す機会が出来てすれ違いに王様は気付くかもしれない
でも王様が出来る事は諦めたように肩に手を置くことだけなんだ…

姉上も落としそう

王妃によって一服盛られて朝起きたら隣にファインが寝ててそこにわざとらしく王妃が…

想いは本物だからまぁ何とかなるだろ！多分！

適切な距離感久しぶりに見た

「君とこうして過ごすのも最後だな（婚活に専念するから）」
「そうだね（明日からは夫婦だもんね）」

気がついたらファインの部屋のベッドで処女奪ってるなこれ

ファイトレなら最終的には「まあいいかぁ！よろしくなぁ！」みたいに受け入れそう

>気がついたらファインの部屋のベッドで処女奪ってるなこれ
それはちゃんと起きているときにしたいと言う殿下の乙女心による意向によってそれ以外は奪うくらいになってるよ

プレイボーイな王配殿下としてニュースになるトレーナー

>気がついたらファインの部屋のベッドで処女奪ってるなこれ
無理やり奪わされるんじゃないかな…

姉上も気に入って狙いそう

ファインが……っ！してるの初めて見た

かわいそうにもう無事に日本に帰れないぞあいつ

覚悟決めろぉっー！

ベッド付きのファーストクラスなんて人生で搭乗する機会があるとは思わなかった。
どこまでも快適な空の旅。欲しいものを告げればクルーが即座に持って来てくれる。
いや、告げずとも常にこちらが快適でいられるように調整してくれている。

「贅沢過ぎてちょっと怖いな」
「あはっ、こういうところも慣れないとね♪ ちゃんと適切なお仕事を振るってことだもん」
「慣れ、かぁ……でも、次があるかなぁ」
「キミが望まずともあると思うよ？」
「どうだろう。もしかしたら、飛行機に乗る機会なんて二度とないかもしれないし……」
「！……そっか。キミは、そこまでの覚悟を決めてくれたんだね……」
「ああ。君とのこれからを思えばね」


みたいな感じで殿下に婚活に向けた覚悟を知ってもらいたい

オイオイオイいよいよ本格的に二度と祖国の土踏めないわこいつ

>かわいそうにもう無事に日本国籍じゃいられないぞあいつ

同僚がツッコミ入れたいけどまあ幸せそうだしいいか…ってなってそう

同僚たちが(向こうでも元気でな…)って見送るやつだこれ

クソボケ通り越してロボットだろこれ

主語！主語が足りない！

好意自体は抱いてるからな…

ド級のバカだけどファインが惚れ込む辺りいい人ではあるのだろう
バカだけど

でもね
勘違いする殿下も悪いんですよ

なんだかんだ致命的な事にはならないだろうさ
たぶんきっとおそらく

もうちょっと殿下の嫉妬とか曇り顔が見たかった

致命的よりひどいことになるからな…

そなた…いや…うん…(ﾎﾟﾝ…)

多分こいつ学園挙げて盛大に見送りされたのをトレーナーとしてご両親に挨拶に行くだけなのに大げさだな…とか思ってるわ

ファインのご実家自体そうやって繁栄してきたかもしれないし…

たぶん同僚もわかってて何も言わない

今すぐテレビつけろテレビ！

>そなた…いや…うん…(ﾎﾟﾝ…)
……あの殿下！？

ピルサド姉どうにかしろ…

ファインに惹かれてるのは間違いないし悲しませるようなことはしないだろう…

>今すぐテレビつけろテレビ！
ファインモーションが結婚するらしいとの報せをテレビで目にした時は些かショックを隠す事ができなかった。
しかし大切な教え子の門出だ、盛大に誠意を込めて祝ってあげようと思う。
相手は一般人らしい…本人の口から紹介されるまで言い出さない方がいいのだろうか？

まあアイルランドについたら殿下とねんごろになって良いんだ！って気付くだろうから…

トレーナーはさぁ....このスカポンたん！！

外務省ならびに愛国大使館の合同声明がでちゃうんだ

別にクソボケなままでも面白いけど殿下の事好きになっちゃってるわけだしこれもう詰みだよ
オラッ認めろ！

関係ないけどもし殿下の精神が殿下が普通の女の子なパラレルワールドに飛ばされる話とか読みたい

ファイトレが旅行に行ったきり帰ってこない…

殿下から王室の義務とっぱらったらえらいことになるぞ

>別にクソボケなままでも面白いけど殿下の事好きになっちゃってるわけだしこれもう詰みだよ
>オラッ認めろ！
でも俺みたいな母国語も異なる異国人が受け入れてもらえるわけないし……
立ち振る舞いだって王族とは無縁の庶民だし……
見た目だって王族と並び立つには華がないし……
ファインのことは大好きだけど……

>>今すぐテレビつけろテレビ！
>ファインモーションが結婚するらしいとの報せをテレビで目にした時は些かショックを隠す事ができなかった。
>しかし大切な教え子の門出だ、盛大に誠意を込めて祝ってあげようと思う。
>相手は一般人らしい…本人の口から紹介されるまで言い出さない方がいいのだろうか？
もしかして結婚相手を紹介するために俺をアイルランドまで連れてきたのだろうか
いささか寂しくはあるがそこまで信頼されてるとはトレーナー冥利につきるつきるな

旅行かな…旅行かも…？

鴨葱アンジャッシュほんと笑っちゃう

>でも俺みたいな母国語も異なる異国人が受け入れてもらえるわけないし……
>立ち振る舞いだって王族とは無縁の庶民だし……
>見た目だって王族と並び立つには華がないし……
>ファインのことは大好きだけど……
ひとつひとつ丁寧に順番にハードルをクリアしていきましたよね？

というか籍入れたら流石にレース辞めるのかな？

これだけ気品あったらモテそうなんだけどナンパしてるときに後ろでSPが「断れ」みたいなフリップあげてたりしたのだろうか

>これだけ気品あったらモテそうなんだけどナンパしてるときに後ろでSPが「断れ」みたいなフリップあげてたりしたのだろうか
「そこでボケて！」

社交界の態度で一般女性に接しても引かれるだけじゃないかな…

そりゃ異国の王女様の隣に同じくらい気品のある男がいて声を掛けに行くやつはいないだろう…

既にちょっと付き合うだけであなたと一緒にいるのは息苦しいとか言われる男になってそう

同性でも突然場違いに気品のある男に声かけられたら身構えるわ

泣いちゃう殿下が普通に可愛い

殿下の方からグイグイ来ることが多いのでペースを握られてる殿下は貴重だな…

>同性でも突然場違いに気品のある男に声かけられたら身構えるわ
しかも近くにお嬢様かSPっぽい者が居るんだ
事情知らなきゃ警戒までするわ

>これだけ気品あったらモテそうなんだけどナンパしてるときに後ろでSPが「断れ」みたいなフリップあげてたりしたのだろうか
相手に所作とか褒められた時に素でファインモーションのおかげとか言って無自覚に惚気てたりするのか裏で何かが行われてるのかのどっちだろう

SPが控えてる高級スーツに身を包んだ気品ある立ち居振舞いの男にナンパされてもついていくやついねえよ！

予定断られて詮索する殿下可愛い…曇らせたいべ…

完全に男を磨きまくってから満を持して意中の女性にプロポーズしてるんだよなあ…

すれ違いが判明した時の様子が見てみたすぎるが今までの積み重ねがあるから結果は変わらないんだよな…

>SPが控えてる高級スーツに身を包んだ気品ある立ち居振舞いの男にナンパされてもついていくやついねえよ！
ナンパすっていうか舞踏会でどっかの令嬢に話しかける人種だからな振る舞いが

>俺達はトレーナーとウマ娘。そしてファインの立場を顧みれば、いつか必ずお別れの日は再びやって来る。
これ結果的に全部クリアしてない？

>>俺達はトレーナーとウマ娘。そしてファインの立場を顧みれば、いつか必ずお別れの日は再びやって来る。
>これ結果的に全部クリアしてない？
トレーナーとウマ娘→夫婦
ファインの立場→同じ王族
お別れの日→永久に来ない
PERFECT!!

トレーナーが男性的に磨きが掛かり過ぎて却って普通の異性から引かれるやつでは…？

「殿下」

街中で SP隊長の声。ファインが近くにいるのかと辺りを探るが見当たらない。

「……■■様」
「あ、俺か」

と、名前で呼ばれてそこで漸くSP隊長が俺に呼び掛けていたのだと気がつく。
ファインがいないのにも関わらず、俺を殿下と呼ぶとは──ファインの隣に俺がいるのが当たり前だと思われているのだろうか。
嬉しいような寂しいような。
しかし婚活に専念するとそうも言っていられなくなる。俺は隊長と向き合って、

「慣れないと、ですね」

みたいな感じでSP隊長にも婚活に専念したら俺とファインとの時間が減ることに慣れてもらわないといけませんねって注意したかった

>泣いちゃう殿下が普通に可愛い
根っからの王族とはいえ未成年がストレートに好きな相手から結婚しようって言われたらなあ…

こいつはこいつでファインと離れなくていいなら結婚しそうで

これ殿下と結婚しなかったらさされるぞ

殿下って確かゲーム内で泣くシーン無いよな？

>みたいな感じでSP隊長にも婚活に専念したら俺とファインとの時間が減ることに慣れてもらわないといけませんねって注意したかった
(既に殿下の伴侶となり一生を捧げる覚悟をお決めに…本当に出来たお方ですね…)

「俺とファインの時間も減る(お互いに公務も行わなければいけない)からなれないとね･･･」と受け取っちゃうでしょ！！！！

結婚したら何某かの爵位は賜りそうだな…

まあ公務や外遊で一緒に居られないときはあるだろうな…

トレ公…

>トレーナーが男性的に磨きが掛かり過ぎて却って普通の異性から引かれるやつでは…？
今まで普通だった同僚がいつのまにか西洋貴族みたいになってたら確かに引くかもしれん…

>殿下って確かゲーム内で泣くシーン無いよな？
泣きそうな顔はしてたけど泣くまではいってなかったかも

この調子だと帝王学学ばされてる可能性もありそうでな…

殿下は日本での思い出作りの為トレーナーを色々誘ったりしていた
トレーナーはそんな事しなくていい自分が君について行くから今後も一緒にいようと返した
これは美談ですね