「あん……煙草ならいくらでも吸ってもいいのに」
そういう訳にはいかない。ウマ娘は嗅覚に優れており、軽い臭いでも気にする……と教授に言われて以来煙草は手にしていないのだ。
「アタシがお金出してもいいんだよ？」
余計ダメだ。確かにココンは俺よりも稼いではいるが……。
「レースの賞金で暫く遊んで暮らせるって言ったのに律儀に働いちゃってさー」
担当バのヒモという生き方も存在するらしいが、俺には出来なかった。まあ現在少しいい部屋に住んでいるのは彼女の貯金が安心感をくれるからなのだが。……ともかく、俺は一度、彼女の人生を棒に振るような真似をしているのだ。
そうだ、彼女が阪神大賞典にて敗北した夜のことである。

皐月賞ではライバルのビターグラッセに遅れを取った。その次の日本ダービーではグラッセよりも上の順位になったものの、アタマ差で1着を逃していた。だが夏合宿後の菊花賞、彼女は2着に大きな差をつけて1着となったのだ。
類稀な肺活量と呼ばれる程に長距離向きである彼女に与えられた次のレースは有馬記念だったが……結果はギリギリ入着の5着だった。かなり焦った。いくら強豪が集まるとはいえここまでとは、と。その次の目標を阪神大賞典に据えたのだが……ここで敗北した。それも、ビターグラッセに。
衝撃だった。長距離でココンが負けるはずがないと思っていた……ココンも同様に考えていた。実際に負けた分、彼女のショックは強いものだったのだろう。……恥ずかしい、もう走れない、などと随分弱音を吐かれた。そんな彼女に、俺は最低の提案をしたのだ。一緒に逃げちゃおうか、と。

「どうしたの？遠くなんか見ちゃって」
ああ、ちょっと昔のことを思い出してたんだ……と返す。右腕が少し痛んだ。昨日の行為中、ココンに噛ませた痕が悲鳴を上げているのだろう。彼女の歯形に……軽く口づけする。ココンは少し赤くなってむくれた。
「キスがしたいならアタシとすればいいでしょ」
ごもっとも！少し乱暴に抱き寄せ、彼女の薄い唇に自分のそれを重ねた。少し驚いた様だったが、すぐに目を蕩けさせて舌を入れてきた。甘美の電流が2人を支配する。

俺が提案したのは、有り体に言ってしまえば駆け落ちだった。おそらくあの晩、駅のホームで駿川たづなに発見されていなければ本当に遠くに逃げていただろう。当然問題になり、職を失う危機だったが……秋川理事長が頑張ってくれたようで厳重注意で済んだ。他のトレーナーであれば違ったかもしれない。俺は秋川理事長……の前の理事長のお気に入りだった。半分コネで入ったようなものであるし、前理事長のお気に入りということでやたらプレッシャーもかかっていた。駆け落ちは自分のための行為だったのだろう、と今更ながら思う。

この一件でグラッセに挑発され、ココンは一念発起。見事春の天皇賞を制した。G1の勝利はそれが最後。グラッセはその後、宝塚記念や秋の天皇賞を獲った。
「ん……ぷは……昔のことと言えばさ、アタシが専属契約を持ち出した時のことなんだけど」
唇を離し、お互いの口を銀糸が繋ぐ。ああ、懐かしい。
トレーナーとしてトレセン学園に入った俺は基本的に選抜レースを眺めるだけの生活を送っていた。駿川たづなには早く担当を見つけるかチームを担当するかしろと急かされたものだが3ヶ月くらい誤魔化した。しばらく経ち、同期がどんどん仕事を得ていることにぼんやりと不安感を覚えていると、長距離の選抜レースを走り終わったココンが話しかけてきたのだ。
『暇ならアタシの担当トレーナーになれ』
だとか。

「あの時はグラッセが先に担当見つけててねー……焦ってアンタに話しかけちゃった」
俺は確か……なんとなく冴えるものがあると感じたんだっけ？そんな格好つけた理由じゃなくてたづなさんからの圧が怖かっただけかもしれない。ともかく彼女と契約を結んだのだった。
「なんでアンタだったんだろうね？アタシの好みはこう……キチッとしてる、いかにも仕事できる人ですーって感じだと思ってたんだけど」
なぜお前だったのか、というなら俺がココンに惹かれた理由も謎が多い。まず俺が趣味で見ていたレースはほとんどが短距離だ。長距離は年末の有馬記念以外ロクに見ていなかった。そして……俺の女性の好みは長身で豊満な、盛ったモデルのようなタイプだったはずだ。ココンはスレンダーではあるが大人っぽい体型とは言えない。それが、体を重ねるほどの関係に発展している……訳が分からない。
「あー、なんでこんなクズを好きになっちゃったんだろ？アタシ」
クズて。返す言葉がなくて悔しいのでココンの頬をムニムニと弄る。もー、などと言いつつも微笑みは絶やさない。本当に、なぜこんな関係になったのか。

そういえば、と切り出す。最近はアオハル杯？とやらのチームの担当をしているのだが、そこで驚くべき特技を見つけた。なんと俺のチームがランキングを急上昇しているのだ。近い順位には個人で名を挙げたウマ娘が多いのだが、俺のチームにいるのはせいぜいG2勝利バ……それでも充分なのだが……くらいだ。G1を何勝もしたウマ娘に対抗できているのだ。どうやらチーム指導の才能があったらしい。
「アタシはチームとか無理で専属探してたのに、アンタはチームの方が向いてたのねぇ」
ココンはその性格からチームに馴染めなかった過去を持つ。当然現役時代は1人で走っていた。
「噛み合わなさすぎね、アタシたち」
その通り。笑みを溢す彼女に同意する。お互い異性のタイプも才能も、何も噛み合っていない。全く別の歯車だったはずなのに、ここまで同じ機械に入れられたまま動いてきてしまった。奇妙な運命共同体だ。

さて、と体を起こすと、ココンがしなだれかかってきた。次戦うことになるチームの資料を見直そうと思ったのだが……こうなっては暫くこのままだ。お返しに彼女の双丘の先を指の腹で刺激した。
「んっ……♡アタシは、いつでもいいんだけど？」
今から燃え上がると一日中彼女と愛し合うことになりそうだ。据え膳食わぬは男の恥、というがここはこの程度でやめておこう。やるとしてもせいぜい二度寝だ。起こした上体を再びベッドに沈めて瞼を閉じた。
「あー、よくさ、駆け落ち？について謝ってくれるけどさ」
ココンが語りかける。俺は何も返さない。
「あの時は本気で、心の底から感謝してたんだからね？アタシに逃げ道を教えてくれたの、アンタぐらいだったし……たづなさんに見つからなきゃ、本当に逃げてたから」
驚いた。控えめに言ってもドクズの行為だったので非難されていると思っていた。
「アンタはほんと……アタシが生きてきた中で一番魅力的な男だからさ」

少し考えてから声を出す。その魅力的な男が、チームのウマ娘に取られるんじゃないかと心配にはならないのか？と。それを聞いて彼女は笑った……ようだ。
「アンタみたいな男、好きになるのはアタシくらいなモンでしょ？」
俺もそう思う。自身を好くのがココンぐらいだということについても、ココンを心底から愛するのが俺ぐらいだということについても。
ココンの体重と体温を感じながら眠りに落ちる。おそらく一生、この底なし沼の運命共同体……否。一つの繭の中の運命共同体なのだろう。そうだと……いいな。

おわり
理事長代理が管理主義しなかったかする前に封殺されたかの世界の幻覚
ソルブレインとか愛が止まらないとか色々聴きながら書きました

いい…

お互いぎこちない関係からの駆け落ち提案だったんだろうね……そこから関係が深まったんだ……いい……

想定の2倍くらいの長さになったな…

>想定の2倍くらいの長さになったな…
初夜だの昨夜のうまぴょいを書く仕事がまだある

雨降って地固まるとはこのことか

あっいい…

いいね…

どこかで掛け違えてきて
気が付けば一つ余ったボタン
同じようにして誰かが
持て余したボタンホールに
出会う事で意味が出来たならいい

書いててオーバーヒートしたので前日ぴょいとかはまた別日ということで…

そういや出し損ねた情報だけど
ココンの喘ぎ声がメチャクチャに響き渡ったせいで以前住んでた部屋を追い出されてます

何故そんなひどい落ちを…

文を作っていったら自然に抜けてて…

>文を作っていったら自然に抜けてて…
仕方ないなぁスレ「」はココンの喘ぎ声の凄いうまぴょい怪文書で手をうとうじゃないか

よーしネタがまた新しく生まれた
うるさいぴょいと静かにしようとするぴょいで2種類書ける

>どこかで掛け違えてきて
>気が付けば一つ余ったボタン
>同じようにして誰かが
>持て余したボタンホールに
>出会う事で意味が出来たならいい
また懐かしい歌を…いいよね
何もかもがちぐはぐな部分が噛み合った2人

多分歯形の辺りに入る予定だったんだろうな…

いいぞもっと書いてくれ

Cygamesはただちにリトルココンの身長体重スリーサイズを公表せよ

>うるさいぴょいと静かにしようとするぴょいで2種類書ける
パンツ脱いだから早めに頼むぞ

ごめんそのパンツ明日まで取っておいてくれ