レースが終わった後、私は移籍を命じられた
トレーナーの言い分は…彼自身そう言ったつもりはないのだろう
だけど私の中では、移籍の理由はこうまとめられた

この人の指導には、私の次元ではついて行けない…と
例えデビュー戦で1位を取っても、彼にとってはまだ低次元のレベルのレースであり、
これから先、限界と呼ばれるものを何度も越えなければG1では勝てない
適切な指導でなければ、私の方が壊れてしまうだろう…と

ふざけるな！そんな「先が不安だから」と言う理由で指導を放棄するのか！
…デビュー戦1位を取った私が惜しくないのか！……そう言いたかった
けれど私をより上手く育てられると言う別のトレーナーに、土下座して頼み込んでるのを見たら、
もう何も言えなくなっていた

実際彼の…先任トレーナーの目利き通り、新しいトレーナーの指導は肌に合っていた

前より自由に走ると言う事は出来なくなったけれど、
足の速さはメキメキと上がって行くのを感じた
このまま限界を超えてみせたのなら、彼も喜ぶだろう、そう割り切った

そして、何度目かのレースで私は先任トレーナーを久しぶりに見た
ただ最初に見たのは彼じゃなく、彼が世話をしているスズカたぬきではあった
ゲートに集まり、入ろうとした時に、ぴょいんと文字通り飛び出して来たのだ
私の隣のゲートに入れば、開くのを今か今かと言う感じでシャカシャカと足踏みをしている
「…あ…たぬき先輩…走るんです？よろしくお願いします」
移籍したとはいえ一応先輩だったので挨拶をした

するとクスクスと笑い声が反対方向から聞こえだす
「あなた、たぬきに敬語使ってるの？可愛いわね」
「…一応同じトレーナーに後から師事を貰ったからね」
「あー、あなたの先任トレーナー？あの変人って言われている」

「変人…ね」
「だってそうでしょ？たぬきをレースに出すなんて変わった人だし…ほら、あれ」
隣の子が観客席を指さして、視線を向けてようやくその人を見る
私の今のトレーナーにヘコヘコと頭を下げていた……私の事について何か話しているのだろう
「あなたみたいな優秀な子を手放したマヌケとも言われているわよ、彼」
「な！？」

事実彼の行動は、そう言う評価をされてもおかしくはない
その上あの頭を下げているあの姿を見たら、知らない人からは見下されるのかもしれない
だけど、それでも、あの人は私の事を考えてくれた…だから今私は速くなったんだ…！
だから文句の…せめて皮肉の一言でも言ってやろうと思った…思ったんだ

………………音が止んだ……
さっきまで隣から聞こえていた草の擦れる音が止まった…それだけ…
それだけなのに周りが一気に静かになったような…そんな錯覚に陥るほどの冷たい何かが私の心を襲った

――ウイニングライブ
私はセンターとメインボーカルを任され、今こうして歌っている

あの後のレースで、私は自己べを更新した
限界の1つを突破して、一つ上の次元にたどり着いたのだ

……そうして得たのは…1着と大きく離されての2着だった
自己べを更新しただけあって、私と3着のウマ娘の間にも大きく差があったのだから、決して遅かったわけではない

そして、なんで2着の私がライブのメインを張っているかと言うと…

「〜♪」
1着を勝ち取った、たぬき先輩が歌ってくれないからである
彼女はライブ会場をせわしく走り回っている…
私の歌に合わせて楽しそうにピョンピョンと飛び跳ねたりと、パフォーマンス重視と言う感じだ…可愛いけど…

今思い出してもたぬき先輩の走りは異質だった
そして実績を手に入れた先任トレーナーが、いまだにあの子の世話をしている理由も何となくわかった

たぬき先輩の走りの質は、もう低次元高次元と言う問題ではない
限界が何なのかすらわからなくさせる、滅茶苦茶で、やんちゃで、わがままで…自由な走りザマだった
皆みたいに「すばしっこいたぬきだ」と笑う事は…もう私には出来なかった

…くやしかった…けど…それなら、なおの事へこたれていては駄目だ
私は目指すんだ…！更なる上へ…！高次元へ…！あの異次元に手を届かせるために！

ふと観客席の一角を見つめる
あの先任トレーナーがインタビューを受けて困った顔をしていた
勝因などを聞かれても、本人たちにもわからないだろう

変人さんは少しは痛い目みておけばいいと、クスリと意地悪く微笑んでしまった

そりゃスズキ先輩だもんな…

「彼女との宿泊先がメジログループだったと言うのが本当ですか？」
「…事実ですが、経費削減のために格安の宿を探した結果そうなったまでです…後レースに関した質問をお願いします」
「聞いた話では一緒にお風呂も入ったり一つの布団で寝たとも聞きましたが」
「それはあのたぬきの世話でしかなく、決して如何わしいものではありません…レースの話をしてください」
「担当バとはそういう関係ではないと？」
「当たり前でしょう！？そんな不埒なトレーナーはトレセン学園には居な…い…はず…です…
　少なくとも自分は、担当バが美少女ではなくたぬきです、あれに興奮するような変態じゃありません」
「あの外見では興奮しないと？」
「…自分は、乳房等の女性的外見に魅力を感じています…レースの話を…」

「ですが、わたくしの一心同体の旦那様は、
　『君の担当になった時からこの胸にしか興味が無くなってしまった、責任を取ってほしい』
　と、わたくしの慎ましげな胸に毎日執着してくれますわ、それもう時には優しく時にはねちっこく…」
「あんたらの夫婦の営みを聞いて俺にどうしろって言うんだよ！？誰か！この芦毛のリポーターさん止めて！」

最後にメジロかぁ！

たぬき怪文書が二つ！？

たぬきってウマでいいの！？

>この芦毛のリポーターさん止めて！
この創設者なんでもやってるな

メジロ割を使ったのに何もしなかったとは由々しき問題でしてよ

かっこいい話だったのにメジロはさあ

きたか…！

たぬきとは言えスズキを怒らしちゃったらそりゃまずい

芦毛のリポーターってお前町長じゃねーか！

なんなら姿形以外本物に一番近いからなスズキ…

牽引してるとは言えブルーファルコンぶっちぎるスズキは余裕で時速100km超えてるだろうからな…

>「…自分は、乳房等の女性的外見に魅力を感じています…レースの話を…」
これひどくない？

めちゃくちゃ笑顔で走るの可愛いよねスズキ…

たぬき向けのトレーニング自体はしっかりされてるからな
しかしちゃんとゲートインしてスタート切れるんだなこのたぬき…

ちゃんとトレーナーが付いてきてレースも見てくれるって確信してるから
なんの不安もなくゲートに入ってスタートできるんだ

走るの大好きなスズキは強い
ウマ娘の原点なのかもしれない

脚質もスピードも本物と遜色無いだろうしトレーナーの腕も完璧だからそりゃ凄いよな…

能力値に限界がなさそうだ

マッサージはおとなしく受けるたぬきいいよね

唯一の不安材料の脚もトレーナーのお陰でもう全く心配ないからな…

>これひどくない？
おっぱいが好きって事で一つ…

たぬきがインタビュー受ける訳ないしそりゃトレーナーが喋るしかないのか
いや質問ひどくない？

>いや質問ひどくない？
ですが

しまった！メジロシティだ！

>そんな不埒なトレーナーはトレセン学園には居な…い…はず…です…
気持ちはわかるが言い淀んじゃダメだよ！

こないだのアレか！

モブウマ娘がいいキャラしてて読んでて楽しかった

卑屈になっちゃうけどこのトレーナー本当ウマ娘想いでいいよね…
たぬきもそりゃ懐く

本物のスズキと同等の速さだからなこのたぬきは…

インタビューで自分の性癖言う羽目になっている…

パイオツ！とかフリップに書くジョッ…トレーナーもいるから性癖暴露はよくあるよくある

おっぱい大きいウマ娘の担当とかしたかった…と呟くんだろうなこのトレーナーは

チビスズもある程度は人の言葉を理解できるのか
…逆でいつもは聞く耳がないだけか

スズキ…お前ランナーズハイ以外の感情あったのか…

このペドレーナー！

トレーナー本人に全くその気がないから自覚がないものの
温泉で混浴して一緒の布団で寝たって公言してるから他人からすると…

しゃかしゃか言わせてるのをやめてじっとこっちを見てるたぬき

>しかしちゃんとゲートインしてスタート切れるんだなこのたぬき…
>私の隣のゲートに入れば、開くのを今か今かと言う感じでシャカシャカと足踏みをしている
けっこうギリギリだな！

子供の頃ミニ四駆を同時スタートさせるために板で前を塞いだコト思い出した

>しゃかしゃか言わせてるのをやめてじっとこっちを見てるたぬき
※表情は変わっていない

この市長自分の見間違えを強引に事実にしようとしてない？

>………………音が止んだ……
>さっきまで隣から聞こえていた草の擦れる音が止まった…それだけ…
>それだけなのに周りが一気に静かになったような…そんな錯覚に陥るほどの冷たい何かが私の心を襲った
これだけでスズキがキレてる…ってなるのいいよね

こんなインタビューばっかされてたら困った顔にもなる

むぅ…異次元の逃亡者…

🌀

>この市長自分の見間違えを強引に事実にしようとしてない？
いいでしょう
メジロですのよ

>この市長自分の見間違えを強引に事実にしようとしてない？
見間違えではありませんわ
あれは確かに一心同体ですわ

はたから見ればギャグマンガのワンシーンみたいな
ぴゅ〜〜と言う擬音と共に飛んでいく光景だったのだろう
そんなと一緒に走って勝敗を決めないといけないと言う恐ろしさを知った後輩ウマ娘だけは顔を青ざめた

お前の足を一生支えてやると言ってましたわ
一心同体以外のなんだって言うんですの！

>お前の足を一生支えてやると言ってましたわ
>一心同体以外のなんだって言うんですの！
言ってたかな…言ってたかも…

>これだけでスズキがキレてる…ってなるのいいよね
常に走っていたいほど走るのが大好きなあのたぬきスズキが足を止めたんだ
やばい

聞く気もなければしゃべる気もないような子だし…

見た目はたぬきなのにしっかり足は本物のそれなのズルくない？

おまじないと称して脚をサワサワする間は静かに出来るんだぞ！

>おまじないと称して脚をサワサワする間は静かに出来るんだぞ！
でもそれトレーナーじゃなかったら音速の蹴りで殺されそう
ルドルフも知らん人相手だと指おってくるし

本物のスズキでも大丈夫かも

体が小さいとはいえ水の上を走れるからな…

ライブでちょろちょろぴょんぴょんしてるのカワイイ

>「担当バとはそういう関係ではないと？」
>「当たり前でしょう！？そんな不埒なトレーナーはトレセン学園には居な…い…はず…です…
もっと自信を持って否定してくれ！

ウワーッまたヤバイ方のアグネスがやらかしたぞーっ！

どっちだ！？

異次元スピードで逃げるチビスズ
何とか食らいつこうと必死で走って自己べを出した後輩ちゃん
どうせ二人ともすぐバテるだろうと高を括っていた他のメンバー

彼は少々人見知りでしてね
あまり接していない他のトレーナーとその担当の子との間柄がよくわかっていないんだと思います
え？そりゃそうですよ、自分も担当の子とは適切な距離感での厚い信頼関係を築いています
なっテイオー！

たぬきの足の長さ≒トレーナーのうまだっちサイズ

才能があってたぬき相手に負けて本気で悔しがれる後輩ちゃん
G1に出てきて妙に上位へ食い込んでくるモブぐらいの実力者にはなりそう

メジロは何でもかんでも一心同体で推し進める姿勢を何とかした方がいい

スズキたぬきもトレーナーのこと好きなの？

たぬきのスズキはマジで一貫して速いからな

>なっテイオー！
ｿｳﾀﾞﾈﾄﾚｰﾅｰ
ﾄｺﾛﾃﾞﾎﾞｸｵﾝｾﾝﾉﾍﾟｱﾁｹｯﾄﾓｯﾃﾙﾝﾀﾞｰ
…ねぇ行こうよ

>スズキたぬきもトレーナーのこと好きなの？
思いきり走らせてくれる！だから好き！の至ってシンプルな考え
そこに男女の特別はない

淡い恋心もあるかもしれないしないかも知れない
何もしゃべらないたぬき相手に尋ねても無駄であろう
ただし走るためにサポートしてくれる人と言う信頼はあるんじゃないかな

このたぬきトレーナー自己評価低いだけで優秀なんだな…
後輩ちゃんに逆ぴょいされろ

>ただし走るためにサポートしてくれる人と言う信頼はあるんじゃないかな
マッサージしてくれた結果秋天での転倒が軽傷で済んだってちゃんと認識してるみたいだしね
マッサージがなかったらどうなってたかまで分かってるのかもしれない

sp92301.png

あらかわいい

どうでもいい奴に命より大事な脚を触らせないだろ

なんでこのたぬきはスズキ相当の速さなのにルドルフの方のたぬきはへなちょこばっかりなんだ…

>何もしゃべらないたぬき相手に尋ねても無駄であろう
他のたぬきを考えると喋れてもおかしくないのでは…？

>なんでこのたぬきはスズキ相当の速さなのにルドルフの方のたぬきはへなちょこばっかりなんだ…
勲章がないし集めてもスズキスズメとかに持っていかれるから…

他のたぬきから温泉チケット送られるくらいにはたぬき視点でもいいコンビっぽいからな

>>これだけでスズキがキレてる…ってなるのいいよね
>常に走っていたいほど走るのが大好きなあのたぬきスズキが足を止めたんだ
>やばい
ただ止めたんじゃないだろうなおそらくはためたんだ
本気を見せつけ折りあるいは摘み取るつもりで

一心同体のコンビだし…

>なんでこのたぬきはスズキ相当の速さなのにルドルフの方のたぬきはへなちょこばっかりなんだ…
しっぽが濡れてるし…