我ながらおかしなことを言い出したモノだと自覚はしている。…何せ一夜限りの浮気をしたトレーナーと、彼を誘ったスカイさんをデートさせようというのだから。
きっとこれは、二人にとっては罰になる。でも、本質はそうじゃない。私は何も二人を罰したいわけでは無いの。
私は、トレーナーとスカイさんに笑顔でいて欲しいだけ。以前のようにとはいかないのなら、以前よりも幸福に。
二人とも、私のかけがえのない人だから。その為には、このままではいけない…と、そう思ったの。

私は彼が好きだし、ずっと一緒にいたい気持ちは誰にだって負けるつもりは無いわ。……きっとそれは、彼女もそうなのよね。『堂々と向かってこい』とは言ったものの、面と向かってそう切り出せない気持ちだって、私はわかってしまう。

私だって最初は、トレーナーと担当という立場を気にして踏み出せなかった。
……結局URAファイナルズの後、温泉旅行に行った時とうとう我慢が出来ずに想いを伝えて、今のような関係になっているけれど。
社会的に見れば、教員と学生が付き合っている時点で問題なので、インモラルさという面で言えば私だって彼女のことを強くは言えないと思う。
スカイさんの積もり積もった気持ちの重さ、そしてそれを溢れさせた時の混沌。それを前にした彼の心を思うと、私にはどうにも二人を責められないの。

二人が泥を被ったのなら、私だって被ってみせる。そう思えるくらいに、私にとっては大切な人達なの。だから、私は二人を許したい。
私はこれからもトレーナーと一緒にいたい。スカイさんともお友達でいたい。
でもスカイさんは、自分だけ悪者になって私達から逃げようとしている。…自分の恋心からも。
そんなこと、許せないわ。

デートプランを考えるため、ということで放課後。キングにカフェテリアに呼び出された。
場所は隅っこの二人席。あまり堂々と話せる内容でもないためだろうか。
授業でうたた寝してしまって約束の時間を少しオーバーしているため、小走りでカフェテリアへと向かう。

「ちょっとスカイさん、遅刻よ」
「やーごめんごめん、机が寝心地良くてさぁ」「あなたねぇ…、まぁいいわ。早速始めましょうか」
「……ホントにするの？」
「もちろん。どうしても気が進まないなら、私への贖罪とでも思いなさい」
「何がなんでも、って事ですか」「そうよ。よくわかってるじゃないの」

「…というわけでスカイさん。彼とどこか行きたいところはあるかしら？」
「振りが雑過ぎない？……うーん、釣りはいつも行ってるしなぁ」
「先に言っておくと、メジロシティは除外よ」「行かないよ！？ていうかなんでよ」
「トレーナーから全部聞いたわ。なんでも“相性”がすこぶる良かったらしいじゃない？」
「そんなことまで話したの……」
「えぇ、情事の全てを話しなさいと“お願い”したら正直に話してくれたわ」
「“お願い”ねぇ……」
「そんな二人があんな街に入れば最後、きっと二度と出て来れないわ」
「キングは私の事をなんだと思ってるのさ」
「私からトレーナーを奪おうと逆ぴょいを仕掛けたお友達」
「おっしゃる通りです……」

「まぁ、半分冗談よ。要は一日で回りきれる範囲にしましょう、という事よ」
「なるほどね(トレーナー、無事かなぁ)」
「トレーナーなら無事よ。諸事情あって自室からは動けないけど」
「平然と心を読まないで…、あとそれは無事じゃないと思うんだけど」
「だってどこかの誰かにフェロモン漬けにされたし、ちゃんと染め直さないと」
「ﾋｪ……」
「今はまだ“私のトレーナー”ですもの。……まぁそれはさておき、デートよデート。どこかないの？行きたいところ」
「んー…デート、デートなぁ……」

正直な話、特に行きたいところとかはない。というか、既に行きたいところはだいたい連れ回してしまった。しかし、キングは一度言い出したら絶対に折れない。これは弱ったぞ、とりあえず様子見していこう。

「うーん……買い物でも行く？」「買い物ってどこへ？」
「ほら、服とか見たり」「欲しい服でもあるの？」
「ほら、ウインドウショッピングってやつだよ、二人でぶらつくのもいいでしょ」「まぁ、あえて普段通りというのも悪くないわね」
「でしょ？悪くn」「でもなんか足りないわよね」「えぇ……」
「だってあなた、理解してる？トレーナーを惚れさせるつもりで行くのよ？」
「そう言われてもなぁ……？惚れさせるってどうすればいいのかわかんないんだけど」
「それは…ほら、男心を刺激する感じで」
「……キングはそれ出来るの？」「……出来るわよ」「見栄張る事でもなかろうに」

これはダメかもしれない……と思ったところで、一つ思い出したことがあった。

「あ、そう言えば」「どうしたのよいきなり」
「いやね、この前商店街でぶらぶら買い物してたらね？福引きで水族館のペアチケット貰ったの思い出してさ」
「あなたそれをなんでもっと早く言わないの！」
「いやー、キングたちにあげようかなって思ってたから、すっかり頭から抜けてたよ」
「イイじゃない水族館。静かで、距離も近くなりやすくて、雰囲気もバッチリ。それで行きましょう」
「水族館かぁ……そういえばトレーナーとも行ったことないかも。確かに丁度いいのかな」

「じゃあ決まりね。あなた、ちゃんと誘うのよ？」
「え、私が誘うの」「なんで私がスカイさんのデートにトレーナーを誘うのよ」
「それもそうか……う、うん、わかった……」
「……何今更緊張してるのよ」「いや、だって私…“デート”に誘ったことは無いから、その……」
「っハァ〜、あなたねぇ……まぁいいわ、ちゃんと誘うのよ？」
「……わかった」

私がトレーナーを…デートに……？
今まで散々似た様なことはしてきたはずだけど、いざ意識すると、なんかこう……え、なんだろう。すごい恥ずかしい。なにこれ？
こう、段階をすっ飛ばしたせいなのかな？すごくドキドキする。え、デートって…ホントにデートするんだ……。
……などと心の中でぶつくさ言ってると、キングがおでこをちょんちょんと小突いて私を呼び戻してきた。

「スカイさんスカイさん、どうしたのよ」「え？いや別に、緊張するなーって」
「あなた…フフッ、結構顔に出るのね？見てるこっちが恥ずかしくなりそうよ」
「……えっ、そんなに？」「えぇ、口元緩んでるわよ」
「マジか……気を付けないと…」
「あら、恋に恋する健全な乙女って感じで良いじゃない？少なくとも、前よりはいい顔してるわ」
「……そっか、そうなんだ」

キングの『堂々と向かってこい』という言葉の意味が、少しわかった。
自分も、私も、トレーナーも…三人が傷付いて、それでも幸せになれるだろうという選択肢。キングは、私なんか目じゃないくらい欲張りだ。
だって、こんなに胸が高鳴る。こんなに、痛いくらいにドキドキしてるけど、それがすごく満たされる。

あぁ…私は今、恋をしてるんだ。

曇天のウンスに薄日が射し込む絵面とか見たいなぁと思い書かれた文章です。
9本目までまとめ→ su4845792.zip
時間が取れず更新が遅れる……

すげえ女だよキング…まさしく王の器

染め直しのシーンが見たいわ！

恋を意識するウンスかわいい...

ウンスもトレーナーもキングの器の大きさに甘えっぱなしじゃないですか…

当たり前のようにメジロシティが出てきてダメだった

メジロシティがある世界線だという事わかって一気にギャグシナリオになった！

明るい感じになってるけどビターさは隠しきれない…
ところでメジロシティ的に寝取りぴょいは良いのか

すでに行ったことがあるかもしれないしすべて終わったあとに行ってもいい
全ての可能性があるな

欲張りキング！

キングの器が大きすぎる

キングは二人のお母さんかなんかなの

このキング…欲に溺れたウンスに恋を与えてやがる…！