…おーい…おーい!トレーナーくん!…ふぅ…ふぅ…やっと追いついたよ。君、私とのトレーニングに付き合ったおかげか、随分と体力がついたみたいだねぇ。 それとも私の投薬の結果なのかな? まぁそんなことは置いておいてだトレーナーくん、君は今朝のニュースを見たかい?…え、なんだって?…あぁ見てないのか? だめじゃあないか、君は私の助手として昼夜問わず常にアンテナを張り巡らせていないといけない。それじゃあ一から説明してあげよう。 えーとパソコンは…ぃしょっと。ほらごらん、このニュースだ。 『露南部で新種見つかる ウシ・キリンと異なる特徴』 これがどうかしたかって?全く君がそこまで鈍い人間だとは思わなかったよ。 そのみつかった生物の写真をよくみてごらんよ。___どうだい、ここまで見れば君でもピンとくるようだねぇ。 そう、耳周りと尾部だ。我々ウマ娘にそっくりじゃあないか!ニュースをみてすぐに関係筋から詳しく聞いてみたんだが、 この生物はさっそく『ターパン』と名付けられて研究がスタートされたらしい。性格は比較的温厚で人に順応しやすく、 シカやヒツジといった偶蹄目ではなく一つながりの爪、いうなれば奇蹄であったことが新種であることの決め手となったそうだ。 詳しい生態は追って調査するとのことだが、どうだいトレーナーくん?!これは世紀の大発見かもしれないぞ! かねてより説明してきたことだが、我々ウマ娘の存在は神秘のベールに覆われている。生物学的にはもちろん、医学的にも人間と類似した症状が起きるのにも関わらず人間の治療法が適用できないといった、 解明できない部分がかなり残っている。私も『ウマムスコンドリア』の存在こそ信じてはいるものの、それが体内でどう機能しているか言ったことに関してはまるで分からない…。 まさしく謎が謎を呼ぶ生き物なのだよ。 確かに君たちと我々だって見た目こそ酷似しているもののまるで違うように、この生物も期待外れに終わるかもしれない。 このもし、もしもだ。今回見つかった『ターパン』がウマ娘と関与する部分があるとすれば、こういった謎はスルスルと紐をほどくように解明されていくかもしれない。 生活レベルが一変するだろうし、ゆくゆくはウマ娘の平均寿命やアスリートとしての活動期間といった部分にも大きく…あぁ、興奮してきたよ。 トレーナーくん、君、パスポートは持っているだろうね。___え?なんだって?行くにきまってるだろう、 当然だとも!こんな今までの事象がひっくり返らんばかりの発見を目の前にして、どうしておめおめとこんな場所で過ごしていようというんだい? なぁにレースには支障はないだろう。君が組んでくれたローテーションは、こういった不測の事態に備えてそれなりに間隔を空けてあるはずだ。 なんだったらそのまま海外挑戦というプランも…冗談だよ。 さてタイム・イズ・マネーだトレーナーくん、早速荷造りの手伝いをしたま…うひゃっ! あぁ失敬失敬、どうやら自分のしっぽにつまづいて転んでしまったようだ。興奮しすぎるというのは、どうも体を知らず知らずのうちに緊張状態にするようだ。 君に追いつくまでにも何度も転びかけたし、さっきのパソコンだって持ち切れず危うく落としかけたところだったよ。ククク…全くらしくない。 …どうしたんだいトレーナーくん、そんな何か信じられないものを見るような顔をして。まぁ無理もない、我々はこれから信じられないものを見に行くんだからね。 顔がこわばるのも仕方がないのかもしれないな。 え、なんだって?君も体調がすぐれないのかい?なんだかいつもより声が小さいような気がするが… え? ……え?