この短い間にフラワーの色々なことを知った。
感情豊かでころころと表情を変える。
真面目で頑張り屋で少し無理をして背伸びしがち。
危なっかしいくらい純真で騙されやすい。
しっかり者、字が綺麗、料理が上手。
頭がよくて、面倒見がよくて、負けず嫌い。
お日様のような暖かくて優しい笑顔が世界一可愛い。
私に懐いてくれていて、からかうと面白くて……、隙が多い……。
抗いようもなく、私は彼女に惹かれていった。
取り返しがつく内に距離を取るべきだったんだと気付いた時にはもう手遅れだった。
毎日、少し、また少し、フラワーは大切な女の子になる。
そして、フラワーのことを好きになるたびに、ほんの少しずつ息がしづらくなる。

私が自分の気持ちを自覚したのは、いつもの花壇が綺麗な公園の土手でサボっている時だった。
いつものようにフラワーが私を呼びに来た。
フラワーは誰が見てもわかるくらいに疲労していた。目の下にクマができていてるし、普段ならここまで軽く走ってこれるのに息が切れている。夜ちゃんと眠れていないんだろう。
トレーニングなんてしている場合じゃない。ここで一緒に休むべきだ。
……フラワーが寝不足でも、私がサボる理由にはなっていないんだけど、フラワーは少しの逡巡の後コクンと頷いた。
こういうところ心配なんだよなあ。この前タキオンさんにも言いくるめられて怪しい薬飲みそうになってたし。
フラワーのいる方の腕を広げて隣に誘う。フラワーはなんだか緊張したようにそわそわしながら腰を下ろして私の隣に寝転んだ。
フラワーは律儀に私の身体にぴったりとくっついた。その瞬間、ジンとした痺れが身体全体を襲う。遅れて心臓が暴れ出す。全身の毛穴が開く感覚がする。

叫んで飛び上がりたいような衝動を私はかろうじて抑え込んで、なんとか表面上平静であるように装った。
丁度私の腋のところにフラワーの頭がある。私のすぐ横で、無防備なフラワーが横たわり目を閉じている。彼女の体温が触れた身体の側面から伝わってくる。
知らず、つばを飲み込んだ。
フラワーはよほど無理をしていたのか、すぐに寝息を立て始めた。
胸の内に湧き上がる愛しいという感情。大切にしたいという思い。
それと同時に、私は確かに、フラワーに欲情していた。
フラワーに触れたい……。
そっと手を伸ばして、彼女の頭を優しく撫でる。それ以上のことをしたいという欲を抑えながら。
疲労の色が浮かんでいた表情が僅かに和らぎ、心地よさそうに額を手に擦りつけてくる。
眠っているフラワーは天使のように愛らしかった。私も自分の顔がほころぶのを感じる。
……胸がギュッと痛くなる。
どうしてこの子に恋してしまったのだろう。
手に入らないと分かっているものを見ても、苦しいだけなのに。

フラワーの夢を見たあと、目が醒めると枕が濡れていた。重傷だなと内心自嘲する。
鏡を見ると少し目の端が赤い。まあ、これなら化粧でわからないようにできる。
さっさと手櫛で髪を整えて、いつもの昼行灯の顔を作る。ほら、笑え、私はそんなシリアスなキャラじゃないでしょ。
悩みなんかありません、いつでも自由なスカイさんですって顔をしなくちゃ。

朝からフラワーの調子がよくないことはなんとなくわかっていた。
お昼に食堂に誘うために声をかけようとしたら、目の前でフラワーが倒れた。苦しそうに浅い息を繰り返すフラワーを抱えて保健室まで走った。
動かしたら危ない病気かも知れないのに、その時の私はそんなこと考えもつかないくらい全く冷静でいられなかった。
保健の先生はフラワーの様子を見てすぐに何かを察したみたいで「心配いらない」と私を宥めた。

😇💯

フラワーが目を覚ますのを待つ間、何度も安心するように言われたけれど、私はどんな顔をしていたんだろう。
フラワーが目を覚ますと「また助けられた」と彼女は言った。
私が助けた？　ううん、私は何もしていない。
私はフラワーとエッチなことがしたいんだよ。……気持ち悪いでしょ。優しくするのも下心があるんだよ。優しく見える人には気をつけようね……。
フラワーの言葉に、自分がなんて答えたのかはよく覚えていない。先生にフラワーが目を覚ましたことを伝えて、そのまま逃げるように保健室を後にした。
走る気になれなくて、かといって釣りをしたり公園で昼寝する気にもなれない。自分がどうやって歩いているのかもよくわからない。
今頃になって心臓が痛くなる。フラワーが目を覚まさなかったらと思うと怖かった。
でも、それ以上に信頼してくれているフラワーを裏切っているという事実が苦しくてたまらなかった。

後日、フラワーが改めてお礼にとお弁当を作ってきてくれた。本当にいい子だ。
好きな子の贔屓目を抜きにしてもすごく美味しい。お弁当にしてはかなり手が込んでいてきっと作るのに時間がかかっただろうなと思う。
パクパクと食べて味の感想を言っていく。フラワーは照れながら嬉しそうに私が食べる姿を見ている。
……でも、それよりも気になることがあった。とても濃い思春期のウマ娘特有の臭い。
学園の至る所に充満してるし慣れてとっくに麻痺して昨日は気が付かなかったけれど、今日こうして近くで話してみてはっきりと分かる。
この子、発情期だ。しかもかなり重いやつ。
……ちょっと興奮してる自分が心底嫌になる。
「好きな人でもできた？」
私の言葉に、フラワーはピクンッと身体をはねさせる。目を丸くして私の顔を見上げた。
わかりやすいなあほんとに。
「……はい。私今、恋をしています」
はにかむフラワーは可愛かった。

フラワーが好きになった人か。どんな男だろう。……このお弁当も、そいつの為の試作品ってことかな。
じわじわと心臓に苦い汁が染みこんでくるような気がする。
フラワーは恥ずかしそうに頬を赤く染めて、俯いて身体の前で手を組んでもじもじと指を動かしている。
「今は近くにいられるだけで幸せです。ご迷惑になるかも知れないですし」
……専属トレーナーかな。よく聞く話だし。
「……でも、ちゃんと話せるようになったら。伝えたいんです。とてもお世話になりましたし、これからもお世話になる人だと思うので……。驚かせちゃうでしょううけど、正直な気持ちをちゃんと打ち明けたいんです……」
「フラワーは可愛いし、優しくていい子だからきっと大丈夫だよ」
私は努めて軽く言う。
フラワーは更に顔を赤くしてウマ耳をピンと立てて、尻尾を揺らしている。本当に、可愛いな。頭を撫でたくなるのをグッとこらえる。
「お弁当ありがとう。すごくおいしかったよ」
ぱあっととても嬉しそうな笑顔を見せるフラワー。
その顔は、私じゃなくてその好きな人に見せてあげなよ。

その日はいつになく真面目にトレーニングをこなした。走っても走っても胸の靄が晴れることはなかった。
フラワーが好きになったという男に対する醜い嫉妬が胸の中を渦巻いている。
いつかはこんなこともあるかも知れないとは思っていたけど、思ったよりずっと早かった。
フラワーが好きな人と上手くいって、その時に友達として心からおめでとうと言えるように心構えをしておくつもりだった。

フラワーの幸せを祝福したかった。
なのに、今私の胸の中に湧き上がるのはどす黒い感情ばかり。
割り切ることができない。フラワーが私以外の人間に慕情を向けていることが嫌だ。私だけを見て欲しい。
私にこんな感情を抱く資格なんかないのに。拒絶されることを怖れて気持ちを打ち明けることもせず、下心を抱きながら友達として接している私には。
抑えようとする程膨れあがる感情を今すぐに制御しないと自分が何をするかわからない。
――すごい音鳴ったな……。壁に叩きつけた拳がブルブルと震える。骨折れてないといいけど。
噛みしめた奥歯がミシミシと音を立てている。
肺に溜まった泥を吐き出すように息を吐く。普段の私を装う余裕くらいは戻ってきたようだった。
ルームメイトがいないってのはこういう時に便利だ。手を血まみれにしてても誤魔化す必要がないんだから。
ほどいた拳を顔に貼り付けた笑顔みたいにヘラヘラと振りながら廊下を歩き、自室に戻った

その夜、初めてフラワーを想像しながらオナニーをした。右手の痛みなんてどうでもよかった。
ベッドの上で、枕に頭を突っ込んで膝をついて腰を腰を持ち上げ股間を指でまさぐる。空いた手は胸を撫でたり軽く揉んだりする。
私の名前を呼ぶフラワーの姿を何度も頭の中で再生する。
今聞いてるかのように鮮やかに蘇るフラワーの笑った声、驚いた声、疑う声、怒った声、照れた声。
公園の土手で私にぴったりくっついて寝ていた彼女の体温。穏やかな寝顔。
……今日嗅いだ彼女の匂い……。
『スカイさん！』
あ、これ……イキそう……。
頭が痺れる。甘い痺れが背骨を伝って全身を包んでいく。
ビクビクッと腰が震える。股間に挿した指が軽く締め付けられる。
ポタポタと股間の下に敷いたタオルに雫が垂れる。
オナニーをしても滅多にイケない私は久しぶりに絶頂を味わった。
ものすごい罪悪感と、少しの開放感が胸を埋め尽くして、呼吸が少ししやすくなった。
「フラワーから距離を取ろう」
口に出して、自分に言い聞かせた。

フラウンスに頭をやられました
前回から大分間が空いてしまいましたが、続きものです
フラウンスもっと流行れ

ｷﾃﾙ…

多分保健室の先生に相談にのってもらってたやつだよね
つづきうれしい

これはアンジャッシュ展開かな？

もっとウマ百合怪文書出てこい

フラワーのクラスやウンスの部屋割はまだ不明なので勝手に設定しています

😇

>多分保健室の先生に相談にのってもらってたやつだよね
>つづきうれしい

そうです

>これはアンジャッシュ展開かな？

百合には葛藤が欲しいと思ってしまうタイプで……

なんだい
ここの所はウンスの怪文書をやけに見るが（もっと増えて）

百合って感じあまりしないからなぁウマ娘

無理無理無理尊しゅぎるーっ！！！
あっ

とてもいい…

ありがとう
CP解釈一致すぎる

>百合って感じあまりしないからなぁウマ娘

トレーナーを女に設定すると局所的には凄まじい百合になるんですけどね。マヤノとか
ウマ同士だとフラウンスくらいか……
個人的にはマクイクとかチケタイで妄想してるんですが

>ありがとう
>CP解釈一致すぎる

やったぜ

空欄は無くてもいいんだよ

>空欄は無くてもいいんだよ
新参なのがばれる

👼゛゛゛
⚰

これにはデジタルもニッコリしながら死亡

飄々とした子の感情的な部分すごく良いよね…

読みたかったんだ
ありがとう…

フラウンスもいいね！ 重ければ重いほどいい

デジタルさんが死んでる…

デジタルは生きてるほうが珍しいから

こんなこと言ったら殺されるかもしれないけど
タキオン混ぜたい

フラワーがこの年には早い珍しいしかも気を失うほど重い発情期になった話を見たときから続きが読みたかった
両思いで最高の気分だ

su4826301.jpg

あの…結ばれる続きはどこに…

あああ
あああ
あああ
あああ
あああ

発情期って匂いで分かるんだ…

こういうのもいいよね！

https://tsumanne.net/si/data/2021/04/26/7240659/
フラワー視点の前の話はこれかな
合わせて読むとさらに尊くなる

>su4826301.jpg
やる気が上がった
やる気が上がった
やる気が上がった

>フラワー視点の前の話はこれかな
>合わせて読むとさらに尊くなる
ありがとう
すごくいい…

ッチーのリンクはやめときなよ

>フラワー視点の前の話はこれかな
>合わせて読むとさらに尊くなる
読んでてこっちまで胸が苦しくなったわ！
両想いのすれ違い😇

どうして誰を好きになろうとウンスは湿っぽくなるのだろう

はやく続きかいてよぉ！
すれ違いいい…

（本当はフラワーのが年上なんだよね…）