簡素なコンビニの弁当で夕食を済ませる彼を見るたびに思う。
私だったら、彼のために手作りで用意してやれるのに、と。

初詣で私の為に祈る彼を見て思う。
私だったら、彼の祈りを独占してみせるのに、と。

バレンタインで私からチョコレートを受け取る彼を見て思う。
私だったら、恋人以外からチョコレートを受け取る必要のない程に、彼を満たしてやれるのに、と。

私だったら。私だったら。私だったら。

「……あぁ……」

自分を慰めるこの手が。
彼のものだったらいいのに。

烏兎匆匆と月日は流れ、有馬記念直前。このレースを制すれば、私は八冠を達成する。
だが、今の私の心は。

「私と一曲、踊ってくれないか？」

二人でクリスマスパーティーを抜け出し、手を取り合って踊る。仲睦まじい恋人の様な振舞。
例え、彼の心に私の入る隙間がなかったとしても、私にはこれで十分だ。

──その、筈だった。

「……一つ、聞いてもいいだろうか」

「今日は……あの指輪は……」

いつも左手にある銀の輝きが、今日は無かった。

私の問いに、彼は眉根を寄せて困ったように笑う。
やめてくれ。そんな顔をされると、心の奥底に秘めた想いが止められない。

「今日は着け忘れちゃって」
「……そうか」

彼の返答に、落胆を覚えてしまう自分に嫌悪する。もしかしたら、私の付け入る隙間が出来たのではないか、と。ほんの一瞬でも、期待を覚えてしまった自分に。

「感心しないな。あれは君の奥方との繋がりを示すものだろう？」
「……あぁ、えっと。その事なんだけど……」

「実はあれ、フェイク……というか……」

「ほら、トレセン学園って年頃の子が多いから。彼女たちを不安にさせないようにするにはどうしたらいいかなって悩んだんだけど……」

「アレを付けてれば、『そういう目』では見てないってわかってもらえるかなって思って」

「……今にして思えば、本当に失礼だったと思う」

「みんな走る事に、自分の夢に真剣で……あんなもの、最初からいらなかったんだな」

「ごめん、言うタイミングを逃がしてて……ルドルフ？」


「ル、ルドルフ……？」

『汝、皇帝の神威を見よ　Lv.5 → Lv.10』

あっ

【差し切り体制】

うまぴょいしたんだ！

さて。
答えのわかりきった結末を長々と述べる必要は無いだろうが、ここまで私の語り合いに付き合っていただいた諸君への礼として簡潔に現状を述べるとしよう。
まず一つ、私は有馬記念を制し八冠の称号を得た。今の私が皇帝の肩書を捨てシンボリルドルフという一人のウマ娘として走って欲しいと請われたのならば、敗北は存在しない。
そして二つ目。

「ル、ルドルフ、今日はもう……」
「ふふっ……まさか、まだこれからだろう？」

彼の左手の指輪の輝きは消え失せ、代わりに至る所に絆創膏が貼られるようになったという事だ。

まあこれはトレーナーさんが悪いよ

クソボケにならずに済んだな！

初志貫徹──とは、少し意味合いが異なるが、私の想いはここに結実した。
彼への恋心が揺らぐ事は、片時もない。今までも、そしてこれからも。
「トレーナー君、私の愛は鋼鉄の如く揺らぐ事はないが……受け止めてくれるかな？」
「あ、あぁ……勿論だ！」
「ふふ……そう応えてくれると信じていたよ。ところで、今のは気付かなかったか……？」
「え……？」

鋼鉄の、愛。アイアン・愛。
些か無理があったか──いや、きっと、私の洒落への追求も、諦めずに続けていればきっと叶う時が来る筈だ。
試しに明日エアグルーヴにも披露してみよう。

私は志を新たにし、彼の胸板に頭を預け目を閉じた。

強い！シンボリルドルフ！
早い！シンボリルドルフ！！！

諦めようとしていたものが手に入ってしまったなら執着心が強くなるのは必然

ほいやる気ダウン

嘘はバレるものだから…

最初は叶わぬ恋に焦がれるルドルフを書いてましたが私の心が弱かったのでこうなりました
ルドルフと温泉行きたい

恋人がいる振りをしてるのがバレて
ぴょいに持ち込まれたトレーナーは両手できかないという

>最初は叶わぬ恋に焦がれるルドルフを書いてましたが私の心が弱かったのでこうなりました
>ルドルフと温泉行きたい
私の性癖には合っていますよ

>最初は叶わぬ恋に焦がれるルドルフを書いてましたが私の心が弱かったのでこうなりました
私の性癖には合っていますよ

>最初は叶わぬ恋に焦がれるルドルフを書いてましたが私の心が弱かったのでこうなりました
これで正解だから何も問題なし

シンボリルドルフ！完全に抜けだした！強い！強すぎる！
後続を大きく突き放したまま今ゴールイン！
皇帝の名に恥じぬ圧倒的強さで卑しか女杯も制しました！

>私の性癖には合っていますよ
ほぼ同着

素晴らしい走りを見た

最近よく脳が回復する

エアグルーヴ以外はやる気アップするしええやん！

ルドルフとイチャイチャしたい……

もっと前から恋人がいるのにたづなさんや桐生院とデートするトレーナーを疑うべきだったのかもしれない

既婚者に叶わぬ恋する姿が美しい
そして結局幸せになるのがやっぱりいい

>最初は叶わぬ恋に焦がれるルドルフを書いてましたが私の心が弱かったのでこうなりました
「」は自分で脳破壊してから甘い話に縋るの好きだな！

乗り換え上手め！
最高だ！

この後テイオーにNTRれるんだよね…

テイオーにはテイオーに理解あるトレピッピがいる筈だから……

皇帝甘々文書は日々の活力になるのでもっと増えて欲しい

その時、ふと閃いた！このフェイクの指輪は、怪文書の増産に活かせるかもしれない！

甘々は助かる…

>皇帝甘々文書は日々の活力になるのでもっと増えて欲しい
ダイワスカーレット辺りにやってみたいですね

>最初は叶わぬ恋に焦がれるルドルフを書いてましたが私の心が弱かったのでこうなりました
>ルドルフと温泉行きたい
何一つ間違っていないから胸を張りなされ