「また何か、悩み事でも？」
「いや、それは既に解決している。今考えていた事は、些事としか言いようのないことさ」
「そうですか……」
贅沢なものだ、と自嘲する。
欲望というものには限りがない。一つ叶えれば更にその先へ。私は自分が思っていた以上に我儘なウマ娘だったらしい。
彼と恋人という関係になって尚、胸の奥からは溢れんばかりの衝動が湧き上がっている。
私の母も、父と結ばれた時はこのような気持ちを抱いていたのだろうか？
「……！　ワガママな、我がママ……！　ふふっ……！」
──これは、悪くない出来栄えではないだろうか？
確かな手応えを感じ、身震いする。
エアグルーヴはどう思うだろうか？
横目で反応を伺うと、眉間に皺を寄せてスマホを操作していた。誰かと連絡を取っているのだろうか。破顔一笑とは対極の表情を浮かべていた。
……残念ながら、私のジョークはその耳に届いていなかったらしい。
また今度、タイミングが合えば披露するとしよう。

「ところでエアグルーヴ」
「は、はい！　何でしょうか……！？」
声をかけると、耳と背筋と尻尾を勢いよく伸ばして身構えるエアグルーヴ。その額には一筋の汗。
「いや、そこまで身構える話ではないのだが……うん。私が聞きたいのは、その鞄から覗く漫画のことだよ」
私が指差す先。エアグルーヴの鞄のファスナーが開いたままになっていて、そこからカラフルな背表紙が見え隠れしていた。
タイトルは『初恋キャロットケーキ』とある。以前に彼と観た映画を単行本にしたものだろうか。
「ああ、これは誰かの落とし物だと生徒会に届けられたものです。私も参考に──んん、いえ、私の方で持ち主を探してみようかと」
「なるほど……エアグルーヴ」
「はい」
「それは、私が預かっていてもいいだろうか？」

『夜ふかし気味』になった……。

『偏頭痛』になった……。

『肌あれ』になった……。

コンディションが『絶不調』になった。

会長…

翌日。
私は、彼の手で有無を言わさず保健室のベッドに寝かされていた。
「……本当に、申し訳ない」
彼が心配するのも無理はない。私の目には隈、そして瞼は腫れていたのだから。
何かあった？──そう優しく聞いてくれる彼に言い淀む。
しかし、真に己を恥じているのであればここは誤魔化すべきではない。
「……大した内容じゃない……ああ、本当につまらないことなのだが」
エアグルーヴから借りた漫画のこと。そして、その内容が同じ題名を冠する映画とはまるで異なっていたこと。
最初は主人公の恋人として登場した生徒会長の少女が、最終的には失恋して物語が終わりを迎えたことを、彼に話した。
「我ながら馬鹿げているだろう？　本当に情け無く感じるよ……」
シンボリルドルフたるものが、なんたる無様か。
自分と彼の関係を物語の登場人物に投影し、あまつさえ不安を覚え生活に支障を来たすなど。
「すまない。この遅れは必ず取り戻──！？」

彼に、抱き締められた。

>『夜ふかし気味』になった……。
>『偏頭痛』になった……。
>『肌あれ』になった……。
>コンディションが『絶不調』になった。
ひどすぎて字面を見ているだけで吐き気がする

会長怪文書は健康に良いとされる

これでもまだ不安か、と彼が聞いてくれる。
そんな筈はない。
彼の胸に頭を、耳を預けると、トクントクンと心地よい心音のリズムが聴こえる。私を支える、逞しい身体。
「……一つ、我儘を言ってもいいだろうか？」
彼の承諾を得て、彼の膝を枕にする。
やや硬く、男性らしい膝。私と共に歩む、力強く安心できる脚。
「あぁ……これは……」
苦しくないか、と顔を覗き込んでくれる彼の頬に手を伸ばす。
「ふふ…… 黒貂之裘、いやそれ以上だな。この世でこれ以上の枕は存在しないさ」

「ああ、だがもう一つだけ。我儘を言わせてもらいたいな」

こいつらもっとうまぴょいしてくれ！

『夜ふかし気味』が治った。

『偏頭痛』が治った。

『肌あれ』が治った。

『練習上手◯』になった。

『愛嬌◯』になった。

『キレもの』になった。

『注目株』になった。

コンディションが『絶好調』になった。

チョロすぎんだろ！

思い詰めながら舞い上がってる…

こっそり読もうとした本を泣く泣く預ける副会長...

気炎万丈。
心身共に満たされた今の私は誰にも負ける気がしない。
今なら全世界のウマ娘を相手取っても勝利を掴める──その自信がある。
「ありがとう、トレーナー君。君にはいつも助けられて……」
彼に感謝を告げていると、保健室のドアが開く音。遅れて、鞄か何かが床に落ちた音。

「あ、あの、あの……ボ、ボク、会長が倒れたって聞いて……」
「い、いえ！　私達は何も見てはいません！」

テイオーとエアグルーヴが頬を紅潮させ、瞳を左右に泳がせている。テイオーは兎も角、エアグルーヴがここまで取り乱す様子を見せるのはいつ以来だろうか。
──私に任せて欲しい、と彼に目配せをして彼女達に歩み寄る。
そして、その耳元に口を寄せて。


『ささやき』

サクラバクシンオーにも負けずとも劣らない逃げ足で去っていた二人の背中を眺めながら、良かったのか？と彼が聞いてくる。
「ふふ、構わないさ。彼女達のことは彼女達のトレーナーに任せよう」
しかし……と言い淀む彼の頬に手を添えて、私に視線を固定させる。
「今は、私だけを見ていて欲しい……今の私は我儘なんだ」
そう。

「我が、ママよりもな！」

この注目株って週刊誌的な意味で？

ちゃんちゃん
ってか

>『注目株』になった。
雑誌記者さんですか？ええあのシンボリルドルフと担当トレーナーが出来ている…と
えぇ…はい…

しっぽりルドルフ…

しょんぼりルドルフからの鮮やかなしっぽりルドルフ

ルドルフと温泉に行きたかった
ちなみにエアグルーヴがスマホと睨めっこしていたのはいきなりブッ込まれた駄洒落について自分のトレーナー君と相談していたからです

>ちなみにエアグルーヴがスマホと睨めっこしていたのはいきなりブッ込まれた駄洒落について自分のトレーナー君と相談していたからです
またやる気下がってる

何ささやいたんだよ

>ちなみにエアグルーヴがスマホと睨めっこしていたのはいきなりブッ込まれた駄洒落について自分のトレーナー君と相談していたからです
仕方ないね

甘々会長文書もっと下さい

よかった…
女帝とも浮気してるのかと思った…

保健室で絶好調になって注目株

うまぴょいは調子を良くするからな…

>「我が、ママよりもな！」
やる気が下がった

今日もどこかでエアグルーヴのやる気が下がる

>保健室で絶好調になって注目株
保健室でうまぴょいしたのみんなにバレたか...

会長結構やきもち焼きかもしれん

ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!

頼ることを教えてくれた同じ夢を見て共に立ってくれるトレーナーだぞ
そら嫉妬もする

>1617357507329.png
⤴︎⤴︎⤴︎

カワイイカワイイ我儘ルナちゃん

>頼ることを教えてくれた同じ夢を見て共に立ってくれるトレーナーだぞ
そしてそのトレーナーはルドルフの為にたづなさんとラーメン屋へ行く

>雑誌記者さんですか？ええあのシンボリルドルフと担当トレーナーが出来ている…と
>えぇ…はい…
これ垂れ込んでるのルナですよね？

ウマ特有の共感能力の高さでトレーナーに女の子女の子するのはウマ娘の特権だからな