そうして今、自分の給与ではとてもじゃないが外食のラインナップに並べられない料亭で、カニ道楽を待っている。何でもバクシンオーが助けた老人が店主らしく、無料のペア食事券を貰ったそうだ。
「大切な人と使いなさいとの事だったので！トレーナーさんを連れて来たかったのです！！」
そう満足そうな顔で言われ、嬉しいような照れ臭いような。しかし大切な人とは、随分信用されてるようだ。
だが折角のペア券だ、他に使う相手はいないのか？例えば親御さんや彼氏とか。
「家族一人と一緒なんて、仲間外れができてしまうじゃないですか！まして彼氏なんて言語道断！不純異性行為は委員長的にNGですので！！」
なのでトレーナーさんに。と言うバクシンオーの瞳は真っ直ぐで、何故か耳が熱くなる。

大切と言って貰えるのは嬉しいが、ちょっと親密さ加減がおかしい様な気もする。確かに彼女との出会いは運命的だったと自分でも思うし、いつか、必ず長距離でトロフィーを取らせてやると思っている。だがそれにしても、彼女の距離感や差し向けられる感情の熱に、たまに違和感を感じてしまう。
そして決まって、この違和感の正体を探そうとするとバクシンオーが顔を覗き込み、まるで別人の様に、今にも壊れてしまいそうな、どこか懐かしい表情をするのだ。

だから、思考を手放す。担当ウマ娘にあんな顔をさせては、トレーナーの恥だから。彼女には笑顔が似合うのだ。
「さぁカニが来ましたよ！！トレーナーさん！！沢山食べてください！」
そう言ったバクシンオーに、自然と、勝手に、体が動いてカニ剥き鋏を渡す。
せっかちな彼女の事だ。イガイガと引きこもるカニはさぞ苦手だろう。ついでに使い方もレクチャーしてやる。
そうして彼女はバクシンバクシンとカニを剥き、恐ろしい量を食べさせてくるはずだ

ん？何でこんな事を知ってるんだ？彼女と外食なんて初めてじゃないか。でも、何で、何で彼女は乗った事もない自家用車を知ってたんだ？どうして彼女の、不安気な表情を懐かしいと思ったんだ？
くそ、楽しいはずなのに、頭が痛い。最近ずっとだ。頭が痛い。

ループに気が付いてしまった…？

コワイ！

因子付かないしねしかたないよね…なのか長い距離走り隊…なのか
ループの原因はどっちなん？

因子付かず温泉も出ず、本日6週目のバクシン育成開始三ターン目でイベント発生したのでふと
無事温泉は見れたけど因子付かず
バクシン育成は終われない

彼女だけはずっと全部覚えているんだ
最初に交わした約束を叶えるまでは

一回りしては戻り
青い空をずっと手探り

いいよねカニイベント…

>一回りしては戻り
>青い空をずっと手探り
ラップみたい

誰より身近な距離で感じた記憶…